澄野拓海「希望ヶ峰学園?」 作:たくみきんぱつ
あと6話の江ノ島をちょっとだけ直しました なんか違和感があったので
誤字報告ありがとうございます。
評価入れてくれ方ありがとうございます。それでルーキーの方に上がったのかな?
お気に入りも五十いきましたありがとうございます。
「さぁ、モノクマはいったいどんな動機をキミ達に与えてくれるんだろうね? まぁ、希望の象徴と呼ばれるキミ達なら難なく乗り越えられることだろうから、何も心配なんていらないんだけどさ。 そう考えると、今から踏み越える絶望はより強いものであってほしいよ。 日向クンはどう思う?」
「…やめろ、話を振ってくるな。」
「狛枝、キミはそういう言動はもう咎めない。だが、モノクマの行動を肯定するような物言いはよしてくれ。」
オレ達は狛枝も含めて全員で、中央の島まで橋を渡っていてもうすぐ着くというところだった。
動機か…、それって本来、苗木達のコロシアイってもあったかもしれないことなんだよな。
…なんでオレはあの時、希望ヶ峰学園にいたんだろうな? オレがあの時に都合よく希望ヶ峰学園にいなければ、コロシアイは起こっていたかもしれない。タイムリープが失敗して、あの日の希望ヶ峰学園に来たのなら、そこには何か理由があるのか?
「ねぇやっぱり、こいつ橋から突き落とそうよ。」
「日寄子ちゃん、気持ちはわかるけどやっちゃダメだよ。モノクマが何するかわからないんだから。」
「爆発が響く夜もいいっすねー!」
「道化師よ、その口を塞ぐがいい。今の俺様は虫の住処が悪い。」
「居所じゃないんですね…。」
「たくっ、この年になって集団登校か? 小学生でもねぇのによ。」
「狛枝はともかく、まとまった方がいいのは事実だろ?」
九頭竜と日向の話を聞いて、少しだけ東京団地のことを思い出す。
集団登校とか…あったかなぁ? サイレンに関する訓練ならすごい受けた記憶があるけど。…あんなサイレンもこの時代にはないんだよな。
「待て、澪田。今、爆発と言ったか?」
「ペコちゃん…春の季語はすぐそこっすよ。唯吹の耳が確かに捉えたっす。具体的には三時と九時の方向!」
「時計なんてここにねぇぞ? 急に時間の話してどうしたんだ?」
「このバカ、つまり左右ってことだろ? なんで爆発音なんてしてんだよ?」
オレはその話を聞いて、左右を見回す。そうすると遠くて小さいが、ほんの少し見えるものがあった。
「煙?」
そう言った直後、前方から大きな爆音が響き渡った。
瞬間、そちらに目線を向ければ、今オレ達が渡っている橋からではなかった。もっと前方から、詳しく言えばもっと前方とその左右からだった。 オレ達の目に映ったのは、大きく燃え盛る赤い炎とそこから立ち込める相応の煙だった。
どこから発生しているのか見れば、それはオレ達が今渡っている橋と昨日解放されたばかりの二つ目の島に行くための橋以外の、すべての橋からだった。
「なん…だと?」
「も、ッ燃えてるー! なんでぇ!? なんで爆発したの!」
「ひっ避難じゃあ、こちらにも引火しかねんぞ!」
「え! でっでは、モノクマさんの件は!?」
「そうだよ。早く来いよ、このノロマ共がさぁ。こっちがどんだけ飽きてんのかわかってんのか!? …わかってるよね。わかった上で続けるんだもんね。」
「モノクマ!?」
オレは我駆力刀に構えながら、全員の前に出てモノクマに相対する。
こいつが橋を爆破したっていうのか!? なんでそんなことを!?
「別に必要ないから、解体したんだよ。橋の説明は終りね。さっさと来て下さーい。」
「…やっぱり雑すぎるよ。GM気取りはやめたら?」
「千秋ちゃん…ボクはやめません。すべて無意味にして、目にモノ見せてやるまではね。まぁそれこそ意味ない無敵の人と化してるだろうけどサ。こんなにツマラナイの久々だよ。いつものことだけどね。」
モノクマは何を言ってるんだ? いや、それよりも、もう他の島に行けなくなったってことか? 必要ない? それはどこからの視点だ? こいつはコロシアイの舞台をわざわざ狭めるようなことをしてるんじゃないのか?
オレ達は警戒や不安を最大限にしながら渋々モノクマの言う通り、全員で中央の島に集まってしまった。
オレは我駆力刀をそのままに前に出て、モノクマからひと時も目を離さないように努めた。
これから何が始まるっていうんだ?
「はい…。オマエラ全員集まったね。じゃあ開演するよ。
とーびーだせ! ボクのジオラマー!」
モノクマがそう言った途端だった。あたりが暗くなり、注目を集めるようにモノクマが言ったジオラマにスッポトライトが当たっている空間ができた。そこに、自然に目をやってしまう。
オレ達は勘違いをしていたんだと気づく、これは生半可に精神を消耗させるものじゃない。コロシアイをさせるための動機なんじゃない。もっともっと趣味の悪い、人を不快におちょくる目的があったんだ。
一拍だけ置いたのち、誰かの悲鳴が聞こえた。誰かの絶叫する声が耳を通りすぎていった。
誰もが目を見開いて止められない。その現実を否定するために、本能がそれを捉えれて離さない。捕らわれているのはきっと自分自身だというのに。
そこにあったのは、オレ達の数人を除いた、凄惨な死体の姿だった。その中には、オレの死体もあった。
「うぷぷ。いいねぇ、オマエラの絶望は見飽きたけど、全員イッキってのは今までなかったかな?」
オレ達を嘲ける不快な声に反抗したくてたまらない。
でもそれ以上に、今は冷静にならないといけなった。少しでも、嫌な慣れのあるオレが正気でないと駄目だ。
オレはみんなに向かって叫ぶ。
「みんなッ! 見るな! 下を見るでも、目を閉じるでもするんだ! 見ちゃだめだ!」
「はーいではでは、簡単な解説でもしましょうかね。副音声が無料だよー! すごいお得だよー! 今なら出来損ないのウサギモドキもつけちゃうもんねー!」
「みっミナサン! 澄野くんの言うとりでちゅー! こんなの見ちゃいけまちぇーん!」
そう言ったモノクマの隣にはモノミが縄でぐるぐる巻きになってつるされているようだった。正直どうでもいい。
「まずシタイの分類を解説しようかな。
こっちにあるのはシロの死体、こっちはクロの死体だよ。被害者と加害者…オマエラが勝手に起こした殺人の結果と、オマエラが学級裁判で見事クロを当てた結果。ウププ、ヒトゴロシの末路ってやつだね。クロのオマエラはボクが丹精込めておしおきしました。
えっとねぇ、次はそれぞれの死因について解説していくよ。
まずシロとなったオマエラから、十神クンはたくさん刺されての刺殺、小泉さんは後ろからの殴殺、澪田さんは吊られて絞殺、西園寺は喉を刺されてショックで死んじゃった、弐大クンは勝負に負けて墜落死、狛枝クンはみんなで毒殺だったね。
クロはおしおきムービーを用意してあるから、みんなで視聴しましょうか。」
「もうやめろぉぉぉ!!」
日向の悲鳴がモノクマの声をかき消さんばかりに鳴り響く。
しかし、何もないようにことは進行していく。オレ達に抗い術はなく、ただ他人事として過ぎるのを待つしかない。待つしか…。
そうやって、右足が後ずさった時だった。踏みつけた地面が少しだけ動いた。
「あ、アッが!!」
右足にチクリと痛みが走ったと思ったら、それは大きい大きい痛みに変貌して次第に地面に立てなくなった。
右足を見るとそこにはいずぞやの体育館の時のような槍が突き刺さっていた。自分がどんな状態かを把握したからだろうか? 痛みがどんどんと大きくなってたまらない。
「痛い! 痛い痛い!」
「澄野ッ!?」
「澄野さぁん!?」
「なっなんででちゅか!? 今のアンタにそんなことできるはずは…。」
「あのねモノミちゃん、ボクはなんにもしてませんよ。ただ、澄野クンがたまたま仕掛けてた罠に、たまたま引っ掛かっただけなんだからね。ていうか、そもそも澄野クンだけは制限が緩いしさ。
いやーでも、生徒を守る為の罠だったのに、その生徒が引っ掛かっちゃうなんて、運の悪いこともあるものだね。」
これは、簡単な見せしめだった。従わないとこうなるという、体のいい見せしめ。
痛みから逃れるために身を捩る。日向や罪木が駆け寄ってくるのが見えた。
それで終わればよかった。そこで痛みに悶えて、夜が終わるのを待っていたかった。でも、そうはならない。そうなることはない。
モノクマが上に指をさすと、そこにまた例のホログラムのようなものが出現する。
おしおきムービーが始まった。
そこからのことを、あまり覚えていない。
みんなが処刑されていく映像。みんなの等身大の顔、生きているとしか思えない表情、死を与えるためだけの悪辣で大掛かりな仕掛け、その全部が嫌だ。でもそう思えるほどに、すべてが本物に見えた。
「お前は何がしたいんだよ! こんなことが何の動機になるっていうんだ!?」
オレは痛みに耐えながらモノクマに吠えるように叫ぶ。その姿はまさしく負け犬の様だろう。でも、そうせずにはいられない。
「え? 動機? ボクそんなこと言ったっけ? うん? いや、言ってないはずですよ。オマエラ、ナニ勘違いしてんの?」
は? 動機じゃない?
「これは絶望させるために、わざわざ興味のないオマエラをジオラマにしただけだけど?
ああ、わかったよ。気の利かないクマだったねボクは、まぁそういうのが今流行りの愛嬌なんでしょ? オマエラは動機が欲しかったんだね、人を殺すための動機が。
でもさ、それは今回もうなしにしたんだよね。そろそろタイムアップにしたいっていうか、飽きたんで。
なので、オマエラにこれから配るのは、殺しの動機じゃなくて、絶望するための動機なんですわ。残念だったねー。」
絶望するための動機…? 絶望するため…絶望させたい? そのためのコロシアイなんじゃなかったのか? タイムアップ? 何の話なんだ?
モノクマは、モノミもそうだが、たまに…いや、いつも訳のわからない話をする。どこから話しているのか、どこの話をしているのか、いつの話をしているのか。それがいつもわからない。
「じゃあそろそろ閉演でもいいかな? オマエラ解散して…。」
「ちょっといいかな? 質問したいことがあるんだ。」
モノクマが地獄の時間を終わらせようとすることに、待ったを掛けた人間が存在した。
狛枝凪斗という人間だ。
「澄野クンの死因は一体何なの? 説明されなかったってことは、シロでもクロでもないんだよね? あと、ジオラマになってない人がどうしているのかな? せっかくなら、全員分用意すべきなんじゃないの?」
「ああ、そういえばそうだね。澄野クンは見せしめで死んだんだよ、本来の通りにね。澄野クンは見ての通り、出血多量で死んでます。ああ、見かけは信用ならなかったね。オマエの死体みたいに。
ジオラマになってない奴は、その回で生き残りを果たしたからだよ。別にサボったからじゃありません。キミって本当に失礼だよね。だから友達もいないんだよ。」
「…もう一つ質問いいかな?」
「オメーいい加減にしろ! こんな時間が終わるって言ってんだぞ! 質問なんて今することじゃねーだろ!」
「そっそうです! 澄野さんを早く手当てしないと駄目ですぅ!」
左右田と罪木が焦る様に狛枝に言葉を詰める。でも、狛枝は考え込むような顔で、少し黙るだけだった。
オレの足からは今も血が出ていて、罪木の応急処置では少し無理があるとわかる。
…痛いな、やっぱり怪我すると痛いもんだな。行き過ぎると…死んじゃうけど。…死んだら、生き返れないな。
「わかったよ次で最後にするからさ。」
「わかってねーだろ!? ふざけッんなよオメー!」
「ねぇモノクマ、このシロの死体って全部他殺なの? 自殺は混じってない?」
「話はちゃんと聞いてよね。はい、これらの死体は全部他殺です。死因はさっき解説したとおりだよ。」
「…狛枝、もういいだろう。」
十神がみんなの代わりに、諫めるに狛枝に言う。精神的にみんな参っているようで、それはリーダーである十神も同じのようだった。
「まぁ、うん、大丈夫。モノクマ! さっさとその悪趣味なジオラマを片付けなよ。みんなを絶望させたいなら、もう十分でしょ?」
「狛枝クンが不快に思うなら置いておくよ。オマエって気持ち悪いし、これでも見て反省して、人間的にも成長したほうがいいよ。」
「もっもう帰りましょう! 帰ってもよろしいのですよね!」
「はいー、解散ですよー。」
モノクマがダルそうに声を上げると、人為的な真っ暗な辺りは急に明るくなり、上を見上げれば星空や月明かりがあった。
みんなの動きは速いものではなかった。オレに関してはなおさらだ。
各々、誰かは誰かに泣きついたり、重い足を動かすように歩いていたり、誰かは自分よりも不安そうな人間に付き添ったり、中には何かを考え込むようにしていつもと変わらない足取りをする奴もいた。
オレは日向に肩を借りて、罪木に足の状態を随時確認されながら、最初の島へ戻る
「澄野、大丈夫か? いや、大丈夫じゃないんだろうけど。」
「…ああ、すごい痛いよ。」
「もう少しの辛抱ですから…、今、槍を抜いちゃうと血が本当に止まらなくなっちゃいますから。何もできなくてごめんなさぁい!」
「いや、だ…大丈夫だから。これくらいの傷なら、死にはしないし。」
「死ななきゃいいって問題じゃないだろ? 無理して喋らなくていいからな、大丈夫だ。…大丈夫だから。」
日向が励ますように言ってくれる。でも、鬱屈な気分だった。いや、簡単に言葉では言い表せない最悪な気分だ。…戦場で死ぬよりもきついかも知れない。
仲間が凄惨に、残酷に、最低に死んでいた。あれはただの作り物なのだということをいくら言い聞かせても、脳がそれを真実だとは断じない。確かに生きていた人間の姿…そんな気がしてならないからだ。
コテージで罪木に看病してもらって、麻酔をしてもらったおかげで痛みはなくなった。だが、なんとも言えない不快感は残り続けている。
看病を申し出た罪木を断ってコテージで一人になった。女の子と二人きりとか、そんな理由じゃなく、単に一人になりたかった。罪木や他のみんなも、きっとそうだろう。今は、誰かといる気分になれない。
明日は…どうしようか? どうすればいいんだろうな…。
現実から目を背けながら、オレの意識は闇に落ちていった。
新しい朝が来た。麻酔が引いて痛みが走る。その痛みが昨日のことが現実だと知らしめる、絶望の朝だった。
包帯を取り替えたり、麻酔を入れなければならないが、そういうのは専門家に任せたほうがいい。だから、罪木が来てくれるまでオレは何もしない。ただ、痛みに耐えるだけだ。
オレは痛む足に体重をかけて押さえつけようと、仰向けから横になる。
そうすると机の上に何かが置かれているのが見えた。
なんだ? アレ?
体をなんとか立ち上がらせ、手を壁に伝えながら立ち上がる。
そうしてなんとか、その紙を手にした。オレはその紙に書いてあることをなんとなく言葉に出す。
「絶対的絶望の真相? …大切な人は存在しない?」
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