澄野拓海「希望ヶ峰学園?」 作:たくみきんぱつ
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『オマエラ、起きてくださーい。朝7時になりましたよー。
あ、そうそう。動機を配っておきましたから、自分のコテージにて確認をしたりしなかったりしてくださいね。』
朝のモノクマのアナウンスによって、手元にある紙の意味を理解する。
これは、動機なのか。人を殺すための動機じゃなくて、オレ達を絶望させるための動機。…こんな出鱈目が動機?
『今回の動機はオマエラがいつも口をそろえてボクがポンと思いついた動機に対して出鱈目出鱈目うるさいので、本当に出鱈目を用意しました。あ、一つ以外はね。じゃ、そういうことでヨロシク~。」
そういうことか。そう思った矢先、ピンポンもなしにガチャっという音を立てながらコテージの扉が急に開く。
オレはそれに反応して振り返る。視線の先に立っていたのは七海だった。
「…澄野くん、見ちゃった?」
「え?」
間髪入れる隙も無く、彼女がコテージに入って来たのは急いでいたからかもしれない。
見ちゃったというのは、おそらくこの動機のことなのだと理解することは早かった。
「あ、ああ。動機は…そうだな。見ちゃったよ。」
「遅かったか…。ごめんね、チャイムもなしに押し入っちゃって。」
「いや、いいよ。この足じゃ移動するのも手間だし。」
「そっか。…澄野くんにお願いがあるんだけど。いい?」
お願い? 七海からなら、まぁ大丈夫か。
「狛枝くんのコテージの鍵を貸してほしいんだけど、いいかな? 彼の動機を回収しておきたいからさ。」
「狛枝の? そういうことなら別にいいけど、動機って見なくても平気なのか?」
「見たり、見なかったりしろってモノクマが言ったでしょ? だったらわざわざ見なくてもいいはずだよ。」
「…七海は見てないのか?」
「見てないよ。絶対に罠だからね。だからみんなにも見ないように、十神くんと一緒に呼び掛けて回ってるところだよ。」
迂闊なことをしてしまったかもしれない。なんで足まで怪我してるっていうのに、あからさまに置いてある紙を見てしまったんだろうか?
…罠だよな。今日のモノクマアナウンスがそれを隠そうともしないくらいには。
「そういえばさ、昨日って狛枝くんのことはどうしたの? その足じゃ彼を拘束したりするのは難しいと思うけど。」
「ああ、それは他の奴に任せて…って言ってもみんなあんな調子だったからな。日向に一回任せたけど、縛ったりとかはしてないかもな。」
「そっか、大体わかったよ。でももう、この状況なら狛枝くんを縛る必要はないかもね。」
「それは、どうしてだ?」
「…えっとね。多分だけど、もうクライマックスが近いっていうか。そんなことしてる場合じゃないっていうか。モノクマが色々と急いてるせいだから…。とりあえず、時間がないからもう行くね。」
「え? あ、ああ、わかったよ。」
懐から鍵を取り出して、こちらに伸ばされた掌の上に置く。
そうすると、足早に七海はコテージから出て行った。
十神もそうだけど、二人とも行動が早いな。昨日のアレがそうさせてるのか…? なんにせよ、何も起きなきゃいいけど。
オレは片足を引きずりながらベットまで戻る。
この朝の時間にできることは対してない。足の怪我はそれまでに機動力を削ぐものだと実感する。
これじゃ、いざって時にマズイんじゃないのか? でも、そんなことを考えても仕方がないよな。もう二つ目と中央の島以外には行けないし。それなら、わざわざモノケモノと戦うこともない…か? でも襲ってくる可能性もゼロじゃないはずだ。
他にも考えられることはある。動機のことだ。このことを考えること自体が罠かもしれないが、あんなことを書かれていちゃ気にならない方がおかしい。
なんなんだ? 大切な人が存在しないって。…カルアとか、母さんや父さんのことだよな。でも、この時代にいないのは確かなことだ。そういう意味なら納得できなくはないけど、それは何か違和感がある。絶対的な絶望の真相という名前の付いた動機に相応しくないっていうか、やるならもっと別のことというか。このことを、オレが絶望すると思って選んだことが少し変だ。単に絶望的な気分にさせたいなら、昨日みたいな手段を使えばいいだろうに。
…考えても仕方がないか? モノクマのことを理解できるだなんて到底思っちゃいないが、でも考えを止めたらそれはそれでダメな気も…。
深く深く思考の海に沈んでいく、そんな時だった。チャイムが鳴り、コテージの扉が再び開いた。
目を向けると、そこにいたのは罪木だった。
「罪木、おはよう。」
「はっはい。おおおはようございますぅ。」
罪木のいつもよりも数段どもった様子に、オレは困ってしまう。だが、その状態も仕方のないことだろう。昨日の地獄の時間にモノクマの動機、動揺しない方がどうかしている。
「えっと、とりあえず落ち着いてくれないか? そんな様子じゃ任せるに任せられない。オレは罪木を信頼してるし…大丈夫だ、みんなで協力すればきっとなんとかなる。」
まったく根拠のない、なんとかなるなんていう言葉を吐く。これが何に繋がるかわからないが、現状はそう思って信じるしかない。それ以外にきっと立ち向かう最善の方法なんてない。
「そっそうですよね。すみません、動揺してしまって。ええと、今すぐに包帯も取り替えますね。あと、痛み止めも。痛い所があれば言ってください、適宜調節しますか。」
「わかった、頼むよ。」
早くこの怪我を直さないとな。異血の力でも、オレには傷を癒せる力はないし。
癒しの力……。いや、今は思い出すな。無いものねだりしても仕方がないだろ?
自分に言い聞かせるように、治療するとき特有の痛みに耐えながらそんなことを考える。
「えと、松葉杖も用意してあるんですけど、これを使って歩けそうですか? この状態ならおそらくできないことはないと思うんですが…。」
罪木のサポートを受けながら、何とか移動の練習をする。この移動には慣れが必要そうだが、今はこれでいくしかないだろう。
「その、無理はなさらないでくださいね。朝食なら持ってきますから。」
「いや、この調子なら運動はできないけど、移動くらいはできる。だから、オレも朝食会には参加するよ。…動機の件とか、昨日のこととか心配だし。」
「そっそうですかぁ。動機…あれは動機なんですもんね。」
「…罪木は見ちゃったのか?」
「えぇ!?」
あからさまに罪木が動揺する。これはきっと見てしまった上で、さっきのオレみたく十神か七海に指摘された口なのだろう。
罪木はオレに責められるんじゃないかという風な怯えで大きく声を上げる。
「ごっごめんなさぁい! わざとじゃないんですけど、たまたま目に入っちゃって、それでぇ!」
「まっ待ってくれ。別に責めてる訳じゃない。オレも同じなんだよ。少し考えたら罠だってわかるのに、迂闊だったなって。罪木もそうなのかって聞いただけなんだ。悪気はなくってさ。」
「え!? すす、澄野さんもそうなんですか? いや、そうですよね。全員のコテージに配られたみたいですもんね。」
コテージに配られたのか。…どうやって全員のコテージに紙を置いたんだ? 気づかれないようにって、かなり無理がないか? …これこそ考えてもしょうがないことか。
オレは松葉杖を使いながら、レストランまで移動する。
レストランには全員がそろっているという訳ではなく、まちまちに人がいなかった。姿が見えないのは、左右田、十神、九頭竜、狛枝、七海、辺古山だった。
レストランには昨日までの賑わいは消え失せていて、少々閑散としていた。当たり前だろう。今朝の動機を抜きにしても、気分のいい朝は迎えられなかったに違いない。
「澄野さん。おはようございます。足は大丈夫ですか?」
ソニアさんが気丈に振舞いながらも、いつも通りに接してくれる。
「おはよう。足は大丈夫じゃないけど、松葉杖があれば何とか歩けはするかな。」
「そうですか…。無理はなさらないでくださいね。わたくしにも、できることがあればおっしゃってください。」
「じゃあ、甘えさせてもらうよ。少量でいいから朝食をもらってもいいかな?」
「おまかせください! 今日は昨日のこともあって、花村さんが気を利かせてビュッフェスタイルにしてくれたのです。イイ感じに取ってきますね!」
そうして、ソニアさんはオレの分の朝食を盛り付けてくれた。
ソニアさんに礼を言って、オレは料理を口に運ぶ。そうすると、鬱屈とした気分が少しの間だけ吹っ飛んだような気がした。やはり、超高校級の料理人の腕はこんな時でも変わらないらしかった。
そういえば、ソニアさんって外国人のはずなんだよな。日本語が上手すぎて、普段は別の言語を喋っているなんて信じられない話だけど。…世界って広いはずなんだよな。
進行役がいない為、特にこれといった大きな会話もなく時間が過ぎていく。そして、そこから少し経ったくらいでレストランに姿を現す者達がいた。左右田と十神だ。
「よっよぉ、おはよう…。」
「とりあえず、朝食くらいはしないとダメだ。いくら昨日ことや今日のことがあってもな。」
「でもよぉ、昨日の今日でメシなんて腹に入んねぇだって。あの動機だって…。」
「ぼくの料理を舐めないでよ! むしろ舐めまわすくらいに、いつどこでだってキミのナカに入る料理だよ!」
「うーん。オメーのそういういつでも変わんねぇところは、こんな時だとむしろ尊敬すらすっかも…。何言ってんだろうなオレ。」
「低血糖だろう。いいから食べた方がいい。動機のことは全員が集まったら話をする。それまでに腹ごしらえは済ませてくれ。」
左右田が十神に引っ張られてレストランに連れられた。
左右田も、というかここにいる大体の顔色は優れないが、わかりやすく調子が悪そうだった。あとは特段にわかりやすいのは日向だった。
動機…。まさか、左右田も見ちゃったのか? 日向も…。
次の瞬間だった。不意打ちを食らったかのように、その声は耳に届いた。
「やぁみんな、おはよう! 素晴らしい希望の朝だね!」
狛枝凪斗が手を自由に、こちらに明るくそう笑いかけてくる。彼は一人でここまで来たようで、隣には誰もいなかった。
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