澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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心臓躍動停止物語 捌

 オレ達の心配は杞憂で終わったのか、狛枝は倒れてから三十秒ほどで目を覚ました。

 びっくりしたな…いきなり倒れるだなんて、本当に今だけは勘弁してほしいな。

 

「狛枝、大丈夫か? いきなり倒れたんだぞ」

 

 狛枝は飛び起きるように少し状態を起こして、目を大きく開いてこちらを見ていた。

 …どうしたんだ? 

 

「狛枝? どこか悪い所でもあるのか?」

「だっ大丈夫ですかぁ? どこか悪い所があるなら、構わず言ってもらえると助かるんですが…」

「…………?」

 

 罪木とオレが心配しても狛枝は何も答えなかった。その様子はまるで、何も理解できずに何かに絶句してるみたいだった。

 本当にどうしたんだ? 何か様子が変だ。

 

「狛枝、本当に「…澄野クン、今日って何日目?」

 

 狛枝はオレの言葉に割り込むように質問する。

 今日が何日目って…急に何の話だ?

 

「ゴメン、澄野クンは寝てたんだったね。十神クン、今日ってこの島に来てから何日目?」

「妙なことを聞くな。自分で覚えていないのか?」

「なんていうか、今は自分自身が信用ならないんだ。だから、教えてほしい」

「…今日は六日目のはずだ。俺達がこの島に連れてこられてからはな」

「そう、なんだ……」

 

 そう言いながら、狛枝の目は絶え間なくゆれ動く。瞬きも普通じゃないほどに多い。その様子から、狛枝に何かが起きたことは一目瞭然だった。

 なんだ? 狛枝に何が起こったんだ? …そういえば、狛枝は気絶する寸前に小さい紙に触れてたっけ。

 

「狛枝、まさかさっき触れた紙に何かあったのか?」

「紙……?」

 

 狛枝はつい先ほどのことを覚えていないのか、自身の手元を確認して、その紙を視界に映す。

 

「……あ、ああ。この紙は……七海さんの。……ちょっと待って、ちょっと、どういうこと?」

「この紙を取った瞬間に倒れたんだぞ。それも覚えてないのか?」

「……あ、ああ。…うん」

 

 歯切れの悪い声を出しながら目線をどこかにやるようにして、狛枝は思考を続けている。それがはた目から見てもわかった。

 紙に何か書いてあったのか? でもそれでどうして倒れることになるんだ?

 

「その紙に何か書いてあったのか?」

「…いや、紙には何も書いてないよ」

「倒れたのって、もしかしてその紙せいか?」

「いや……どうだろう? ……澄野クン、この紙を少し触ってみてくれないかな?」

「え? まぁいいけど」

 

 オレは狛枝に言われてその小さな紙に触れる。

 そうすると、別に何が起こるでもなく白紙の紙の質感が指先から感じ取れるだけだった。

 別に何も起こらないな…。起こっても困るけど。これが、何かの手掛かりになるのか?

 

「どう? 澄野クン、何か…思い出したりしない?」

「思い出すって? 別に何もないけど」

「十神クンは? 罪木さんも触ってみてくれないかな?」

 

 狛枝にそう言われて、オレは十神や罪木にもその紙を手渡す。だが、結果はオレを同じようで何も起こったりはしない。

 

「何も……ないんだね」

「狛枝、キミはさっき思い出したりはしていないかと聞きいたな。それはつまり、キミはこの紙に触れて何かを思い出したというのか?」

「…そんな感じかな。詳しい内容は学級裁判で話すよ。……長くなりそうだからね」

「思い出したって、それって消された記憶か? どうして七海の持ってた紙に触れてそんなことを思い出すんだ?」

「いや、そうではないんだけど。…きっと、モノクマの仕業だよ。人の記憶を好きなようにできるなんてモノクマしかいないし」

「あのさ、なんでもかんでもボクのせいにしないでください。ていうか、狛枝クンは随分愉快なことになってるね。まぁ探偵役としてはこれ以上にない訳だし、ひょっとしてキミの幸運…不運が襲ってきたのかな?」

「モノクマ!?」

 

 モノクマがオレ達のいる砂浜に現れる。

 こいつ、捜査の邪魔…でもないか。…何しに来たんだ?

 

「いやー、どうしようかな? どうしてやろうかな? どうしちゃおっかな?」

「…モノクマ、捜査の邪魔はしないでよ」

「捜査かぁ。そうだねぇ、それをきっとわかって千秋ちゃんはそんなものを用意したんだろうしね。…すごい生意気なことするね。ここでそれを消したら認めたようなものだしなぁ、しょうがないなぁ」

「モノクマは何をしにきたんだ? 認めたって何の話だ?」

「そこまでヒントは出しません。言ったでしょ? ボクは公平なクマなの! 裁判長なの!」

「モノクマ、お前が何をしに来たのかは知らないが、何もする気がないならすっこんでいろ」

「嫌われ者扱いですか。そうっすか。別にいいけどね、それじゃ捜査してくださいね」

 

 そう言うと、モノクマはその姿を消した。

 ヒント…狛枝が思い出したことが何か重要なことってことか? 記憶…でも消されたのとは別の記憶?

 

「狛枝だけどうしてその…記憶を思い出したんだ? その紙が原因なんだろうけど」

「記憶の話は一回やめにしない? 悪いけど、何を聞かれても多分答えられそうにないから、とにかく整理する時間をくれないかな?」

「そうか、まぁ今は長話をできる時間ではない。その紙が事件の真相にたどり着く為に必要なものかもわからないなら……そうだな、小泉か罪木に持ってもらうのはどうだ? 小さい紙だからな、どこかに飛ばされてはダメだろう。それにこの現場には全員が来るだろうし、その都度に他のみんなにその紙について捜査してもらう。それでどうだ?」

「十神クンの提案に賛成だよ。ボク達だけがこの紙の捜査をしても、多分これ以上の意味はないと思うしね」

「あ、じゃじゃあ、預かりますね…」

 

[七海千秋の持っていた紙]

 

 掌に収まるサイズの小さな紙。

 何も書かれておらず、白紙。

 狛枝凪斗はこの紙に触れて何かを思い出したようだ。

 

「さて、では次はどうする? この砂浜周辺にはこれ以上、これといった手がかりはないが」

「あの監視カメラはどうだ? あれなら決定的瞬間を捉えてるんじゃないか?」

「だったら、モノミが何か知っているかもな」

「……モノミ?」

「あ、あのう。呼びまちたか?」

 

 狛枝がなぜか初めて聞く名前を呼ぶみたいにモノミの名前を呼んだと思ったら、その本人がオレ達の前に現れた。モノミはいつもよりも幾分も悲しそうな感じだった。

 モノミと七海の間に何かあったのか? それとも、

 

「ああ、そういえばモノミだったね。危うく間違えてウサミって呼びそうになったよ」

「ええ!? 間違ってまちぇんよ! いや今はモノミでちゅけど、間違ってまちぇんよ!」

「そんなことはいいからさ。…とりあえず澄野クンの質問に答えてよ」

「あ、ええと。あの監視カメラはあちしも使えないでちゅ。そもそも、あれはミナサンを見守るためのもので…」

「誰が俺達を見守っているというんだ?」

「それは…ごめんなちゃい……」

 

 十神に問い詰められたモノミは、それだけ言って姿を消した。

 …監視カメラって、モノミが使ってる訳じゃないのか? だったらモノクマが使ってる? …それとも未来機関なのか?

 

「逃げちゃったね。ボクもウサミに聞きたいことがあったんだけど」

「ウサミって呼ぶのか? なんというか、らしくないな。たった数日の付き合いだけどさ」

「……数日か。まぁそうだね。ウサミは…らしくないかもね」

 

 そう言った狛枝の態度は、なんとなくよそよそしい

 狛枝は本当にどうしたんだ? 一体何を思い出したんだろう? でも、狛枝が話さない以上は考えてもしょうがないか。

 

「監視カメラは証拠にならないし、別の場所を操作しよう」

「では、次はどこに行く?」

「ボクは七海さんのコテージに行きたいな。もしかしたら何か、七海さんの行動を推理できる手がかりがあるかもしれないし」

「じゃあそこに行くか」

「十神、ちょっといいか?」

 

 七海のコテージに向かおうとしたオレ達に声をかけた人物がいた。それは、日向と九頭龍だった。

 

「…日向クン。……どうしたの?」

「ん? 狛枝…どうしたんだ?」

 

 狛枝は日向を見ると、なぜだか少し苦しそうな表情を浮かべた。それは、少し寂しそうにも思えた。

 

「…大したことじゃないから、気にしないで。それよりもどうしたの? 日向クン?」

「捜査…聞き込みだよ。澄野と狛枝は七海に最後に会ってるんだろ? その話を聞かせてくれないか?」

「嘘じゃなくて、今度は本当のことを言えよ? じゃなきゃぶっ殺すからな」

「…はは、それは遠慮願いたいね。大丈夫、ちゃんと本当のことだけを話すからさ」

「とりあえず澄野から聞かせてくれないか?」

「わかったよ」

 

 オレは今朝のことを思い出す。その内容を日向達に伝えた。

 今朝、何かできていれば…こんなことにはならなかったのか? オレに何かできていれば……。

 

「つまり、澄野は朝七時のモノクマのアナウンスで起床した後、動機を見た。その直後に七海が来て、ほんの数分も経たないうちに七海は狛枝のコテージの鍵を借りて澄野の部屋を後にした」

「ああ、そうだ。オレが知るのはこんなところかな」

「澄野クンの証言は正しいと思うよ。七海さんは今朝のモノクマアナウンスから大体五分くらいでボクの部屋にやって来たからね。で、その後はボクと七海さんは十分程度会話して、七海さんはボクの部屋から出て行ったかな。その後はボクも知らないよ」

「会話って何を話したんだ?」

「もちろん今日配られた動機の話だよ。あと、昨日のジオラマの話かな。でも、これは事件と関係するのかな? ボクは、今回の事件は今朝配られた動機とは関係なしに起こったものじゃないかなって考えてるけど」

「七海は自分の動機を見ていないはずだからな」

「待ってくれ、十神。七海の動機って他の見てない奴らの動機と一緒に燃やしたのか?」

「…燃やしていないな。七海の動機は回収していない」

 

 回収していない? でも、七海は他のみんなに言って回ってるって…。狛枝と十分も話したのはなんでだ? あんなに焦って出て行ったのに…十分もあれば、あと一、二人は動機を見るのを止められたんじゃないのか?

 

「どうして十神は七海の動機の回収しなかったんだ?」

「単に時間がなかったからだ。他のみんなに呼び掛ける方が先だった。七海なら朝食会にも必ず顔を出すはずだったから、その時に回収すればいいと考えていたんだ。……そうはならなかったが」

 

 十神はリーダーとしての宣言を守れなかったことを気にしているのか、いつもよりもずっと暗い雰囲気だ。でも、それは全員同じだ。

 それでも、オレ達は向き合わないといけないんだ。

 七海が何時に起きたのかはわからないけど、モノクマアナウンスの七時って考えると、七海はもしかしたらオレと狛枝の部屋以外に行ってないんじゃないのか? 

 

「…狛枝はどうして十分も七海と会話できたんだ? あの時の七海はかなり焦ってたはずだけど、どうして引き留められたんだ?」

「七海さんの考えていたことは、ボクにはわからないよ。でも、ボクが彼女を引き留めてしまったのかもしれない。それは否定できないよ。もしそうだったら、彼女にとって今日の動機よりもあのジオラマは重要だったってことになると思う。ボクと彼女の会話のきっかけは動機というよりもそっちだったからね」

「テメーはあの悪趣味なもんの話をしたってーのは、つまり自分や七海のやつの話をしたのか?」

「そうだよ。少し、気になったことがあったからさ。それを七海さんに聞いてみたんだ」

「気になったことってなんだよ?」

「…ボクの死体は他殺だったんだよ。しかもあれだけの傷があって毒殺。随分妙な設定だと思ってさ。だから、ボクをコロシたのかもしれないクロ…七海さんに意見を聞いてみたんだ。そしたら思った以上に話すことがあってね。それで十分っていう短い時間だけど、七海さんと話すことができたんだ」

 

 アレはモノクマの用意した偽物の出鱈目なはずだ。でも、七海もそのことを気にしてたのか?

 

「七海がお前のことをコロシたって考えたのか?」

「…そうだよ、日向クン。まぁただの勘ではあるけどね。でも、花村クンを抜いて四分の一、辺古山さんも抜いて三分の一だからありえない話じゃないでしょ?」

「ちょっと待てや、ペコがどうしてお前をコロシたクロじゃないって言える? あんな出鱈目を信じる訳じゃねーけど、その理由は聞かせろ」

「理由は簡単だよ。なんとなく、主役じゃないって思ったんだ。中途半端っていうのかな? あの事件の主役は九頭龍くんと辺古山さんだとするのなら、クロは九頭龍クンになるはずでしょ? でもそうはならずにクロは辺古山さんだった。モノクマの視点で考えると、九頭龍クンと辺古山さんの関係を利用してコロシアイを起こさせたほうが愉快のはず。そこまでのストーリーがあるのに、ボクが入り込む隙なんてないよ。それに、多分だけど辺古山さんにコロされたのは小泉さん辺りじゃないかな?」

「テメーは自分が関わっていれば、オレがクロになってもっといいコロシアイをしてたって言いてーのか?」

「そうだよ。ボクが関わっていたのなら、あんな突発的な殺人になっていないと思うからね。ボクだったら他殺か自殺か、それすらも一瞬で判別できないように計画するよ」

 

 狛枝はどうしてデスゲームの司会者視点を持てるんだ? というか、他殺か自殺か判別できないってどんな発想なんだよ? やっぱりこいつどこかズレてるというか、オカシイ奴じゃないか? 普通の部分もあるけど。

 

「話を戻すが、七海は七時に澄野の部屋に来て狛枝の鍵を借りた後、七時五分ほどに狛枝の部屋に行って十分程度話した後、つまり七時十五分に狛枝の部屋を後にしてその後は誰も知らない、それで合っているか?」

「うん、間違いはないよ。まとめてくれてありがとう、十神クン。話した内容は置いておいて、とりあえず七海さんの行動は今わかる範囲だとそれが一番最後のはずだよ」

「七海はその後に、何故かこの砂浜に来たってことか?」

「それはまだわからないよ。犯人が何らかの方法で七海さんをコロシた後に、この砂浜に七海さんの死体を置いたのかもしれないし」

「それは今のところ分からない部分だろう。そこは学級裁判で明らかにすればいい」

 

[澄野と狛枝の証言]

 

 七海は七時に澄野の部屋に来て狛枝の鍵を借りた後、七時五分ほどに狛枝の部屋に行って十分程度話した後、七時十五分に狛枝の部屋を後にしてその後は誰も知らない。

 

「…じゃあね、日向クン、九頭龍クン」

「…? ああ、またな」

 

 オレ達は日向と九頭龍と別れて、さっき決めた通り七海のコテージに向かった。

 

 

 

「はい、ボクの出番ですね。パルスパルス、おらさっさと調べろよ」

「お前どんどん雑になってきてないか?」

「うるさーい! さっさと捜査しろよ。のびのびしてる時間なんてないんだからね!」

 

 モノクマは七海のコテージの鍵を開けて、そう文句を言いながら去っていった。

 

「ここが七海さんのコテージか。…思ったよりも物が少ないね」

 

 七海の部屋は少し寂しい感じで、いってしまえば超高校級のゲーマーらしさが少なかった。

 このコテージにあるのは、どこからか持ってきた古い型のテレビと据え置き型のゲーム機がぽつんと置かれてうて、その他には机や椅子がある程度で特にこれといった特徴はなかった。

 

「机の上に何かある…?」

 

 机の上に置かれていたのは『修学旅行日記 2224』と書かれた一冊のノートがあった。

 日記? 2224ってどこかで見たことある数字な気がするな? 

 

「中身を見てみる? 人の日記の中身を勝手に見るのは本来いけないことだけど、こんな状況じゃ仕方がないかな?」

「…見たくて見るわけじゃない。というか、狛枝はこの日記を見るつもりだろ?」

「まぁ、七海さんには聞きたいことが山ほどできたところだからね。少なくとも今のボクの状況なら誰だって七海さんのことを探るよ。たとえそれが勝手に日記を見るような行為だとしてもね」

「狛枝、それはどういう意味だ? 今のボクの状況というのは?」

「それの詳細は学級裁判できちんと話すよ。それよりも今は日記を見てみよう?」

 

 狛枝に少し強引に促され、オレ達はその日記の内容を確認した。

 そこにあったのは七海から見えている世界の一端だった。

 

読みたいやつ

  • Eルート(今やってるやつ)
  • Kルート Eルートが終わったらするやつ
  • パラダイス編(苗木視点)
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