澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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本当の外と人類最後の絶望と人生最初の希望 完

 誰もが目の前にある現実を受け入れるのに必死だった。だからこそ、この場でその現実を動かすのが彼だったのはきっと必然だった。

 完全に沈黙し、先ほどまでの意気揚々さが失われたモノクマに対して彼は決してもう曲がることのないだろう敵意を持って刃を向けながら言葉を紡いだ。

 

 「お前がどういう奴なのかは、わかった。」

 

 澄野拓海はほんの少しだけ迷った。コイツだけが持っている情報を聞き出すほうが先か? そもそもあの時のオレたちみたいに、コイツに手を出してみんなの体が突然爆発したら……?

 もちろん都合よく蘇生なんてできない。オレのように不思議な力だって持ってない。一度間違えたらそれまでかもしれない。だが、今のオレにやったみたいに誰かを突然、ものの気分で殺すかもしれない。

 どうすればいいか悩みながらも行動は一つだった。モノクマに、一歩一歩近づく。オレが動く度に誰かの息遣いや、後退る足跡が大きく聞こえる気がする。

 今、最も恐れられてるのはモノクマじゃない。俺なんだ。

 

 「お前が何を考えてるかは知らない。興味もない。

だけど! お前が人の命を奪うような奴なら、人の大切なものに手を出すよすような奴なら! オレは、お前と戦う!!」

 

 宣言だった。

 これが正しい行動なのか、間違ってない選択なのかはわからない。それでもこれが、澄野拓海が出した一つの答えだった。

 

 「……ナニ、オマエ? …主人公でもキドってるつもり?」

 

 そっちこそ、デスゲームの主催者キドりだろ。

 実際問題ここから事が運ぶにはオレとモノクマ、きっとどちらかが動くしかないだろう。

 そう思っていた矢先、オレの背後から猛烈な殺意と共に凄まじい身体能力が迫った。それの正体は超高校級のギャルと呼ばれているはずの女子高校生、江ノ島盾子だった。

 

 「江ノ島!?」

 

 オレは驚きながらも、首筋に迫ったナイフを刀で弾き返す。そして、天井から先ほどオレの心臓を貫いた槍が何本にもなって、またオレに刃を向けた。その場を転がって咄嗟に回避をする。

 そこを狙ったんだろう。回避した直後に2丁のガトリングでの鉛の雨がオレに降りかかった。すぐに立ち上がって、走りながら刀で斬撃を飛ばして一丁を破壊、地面と体育館の壁を蹴って跳んで直接もう一丁もたたっ斬った。

 これで相手には打つ手無しかと思った矢先一発の銃弾が、オレを打ち抜いた。衝撃に痛みが走る実際には学生鎧を貫くことはなかったので無傷で済んだが、通常なら直撃で即死していただろう。視線を向けると、ライフル銃をこちらに向けた江ノ島盾子がそこに居た。

 

 「江ノ島さん? 何で!?」

 

 苗木がそう声を上げて江ノ島とオレの間に立った。

 苗木誠にとってどうして、その言葉には本当に多くの意味が込められている。聞きたい事が100個でも200個でもあることだろう。それはきっと澄野に対してもそうだった。

 

 「苗木くん…今だけは……どいて!」

 

 江ノ島はライフルを持ちながら、片手で強引に苗木を退けようとする。そんな江ノ島に苗木は腕にしがみついてでも離さず、江ノ島に対して説得しようとしていた。

 

 「駄目だよ、江ノ島さん! こんなの!こんなの絶対おかしいよ!!」

 

 そんな苗木と江ノ島に気を取られたせいか、オレはモノクマから目を離してしまった。それがきっとこの場での最大の失敗だった。

 

 「…!? いけない!!」

 

 霧切響子の声は一足遅かった。オレの近くまで、モノクマが足から火を吹きながら高速で迫って来ていたのだ。

 直後にオレは大きな爆音と爆炎に包まれた。

 

 

 

 「うぅぅ」

 

 そう呻きながら、目を開けた。その時、オレは誰かの背中に担がれているようだった。

 

 「あ! 起きた! 澄野が起きたよ!」

 「早すぎだろ!あーあ、そっち担いどきゃよかったぜ。」

 「澄野っち、怪我はどうだ? 歩けるか?」

 

 朝比奈がまず最初に声を上げた。次に桑田が苗木を担いで運んでいるのがわかった。オレは葉隠に担がれていたらしい。

 辺りを見渡すと、大和田と大神、腐川の三人以外がみんなで何処かに移動しているようだった。

 

 「ここは……」

 「宿舎がある方に行くの。今体育館は大和田君と大神さんが抑えてくれてるわ。」

 

 霧切がオレの身体を観ながら答えてくれるが、もう一人の名前がでなかった。

 

 「……腐川はどうしたんだ」

 「腐川さんは……多分味方…だと思うわ。」

 「どういうことだ?」

 「今は考えなくていいわ。それよりも今はこっちを聞いて。」

 

 霧切がオレが気絶した後どうなって今の状況になったのかを説明してくれた。どうやら、オレが気絶していたのは三十秒程度のことらしい。その間にもまたたく間に状況は変わった。

 まず最初に爆発に巻き込まれたオレは気絶した。次に苗木はその爆発に気を取られて江ノ島盾子に気絶させられた。そうすると、オレにトドメを刺そうとした江ノ島盾子を大神が止めて、江ノ島盾子に加勢しようと復活したモノクマを大和田が止めた。そうして戦闘が始まった内に十神と霧切がみんなを先導してここまで逃げてきた。

 そう、簡潔にまとめた説明を聞く内に宿舎の方に着いて、オレは葉隠に下ろしてもらい床に足をつけた。

 

 「澄野君、あなたはまだ動ける?」

 

 霧切にそう聞かれる。

 改めて自分の状態を確認した。足も、腕も万全とは行かないが動くには動く。戦闘もやろうと思えばできない範疇ではないだろう。

 

 「あぁ、ある程度な。」

 「では澄野拓海、お前には単刀直入に聞くぞ。」

 

 十神がそう言葉を強くして、聞いた。

 

 「お前は、あの鉄板が壊せるか?」

 「……それは、」

 「早くしろ。時間がない。」

  

 みんな黙っていた。全員が俺の答えを待っている。どうやらみんなは二人、いや三人が時間を稼いでいる内ににオレに鉄板を壊して無理やりこの学園から脱出するつもりらしい。

 学生鎧は未だに解かれてはない。オレの学生兵器ならあんな鉄板くらい軽々切れるだろう。だが、それでは終わらない気がした。ライフルにガトリング、それにモノクマ、きっとあいつら武器はそれだけじゃないはずだ。もしかしたら脱走した生徒ように外には罠だってあるかもしれない。外に出るのは迂闊だ。だが、そうも言ってられない。

 

 「あぁ、できるぞ。でも最初に外に出るのはオレだ。」

 「自ら先陣を切るか、お前は役割を理解しているらしい。いいだろう。」

 

 オレの答えに十神は満足そうになった。

 まだピンときてないのか何で澄野が最初なんだと葉隠が言ったが、外にだって罠があるかもしれないだろと返せば、ほかの面々もなんとなく理解したようだった。

 

 「じゃあ私、さくらちゃん達を迎えに行ってくるね」

 「ええ、お気をつけて」

 「むぅ、かたじけない。危険だと思ったら直ぐ引き返すんだぞ!」

 

 朝比奈が素早く彼らを迎えに行っている内にオレ達は鉄板の前に集合していた。

 構えながら自身の生徒兵器に力を込める。息を吸って、吐いた。瞬間、オレは生徒兵器を振りかざし、鉄板を四つ切にした。

 おお、と歓声が上がるが。それは直ぐに静まり返ることになる。空は赤く染まっていた。見える限りの建物はどこも崩落していたり、煙が立ちこめていた。オレにとっては空以外はあの百日間で見慣れしまった景色に似ていたが、他のみんなにとってはその事実だけで、絶句に値する光景だった。

 オレはそんなみんなを横目に外に出た。とりあえず、走る。走って走って、来ているかもしれない助けを探す。

 

 「おい! そこのお前! 今、校舎から出て来なかったか!?」

 「誰だ!?」

 

 そこには長物の銃を持った大人の男と女がいた

 俺は咄嗟に刃をそっちに向ける。

 

 「なッ、違う! 俺達は敵じゃねぇ! 俺達は中に居る生徒達を助けに来たんだ!」

 「…! 本当か!?」

 「ああ、そうだ。俺達は未来機関なんだ。ってお前さん、何で心臓が燃えてんだよ! 大丈夫なのか!?」

 「未来機関?」

 「…あ〜、そこんとこ分かんない感じ? 急に攻撃が止まってさ。とりあえず、今から学園に突入するから…。というか全員無事?」

 「今、中でくい止めて時間を稼いでくれてる奴らがいる。いいから早く助けてくれ!」

 

 男とそう会話していると、女は通信機らしきものに何かを報告していた。しばらくもしない内に武装した大人が大勢現れ、最初に会話した男が指揮を執っていった。

 

 

 

 そうしてから、事は手早く進んだ。オレも大人達と一緒に校舎へ行こうとしたが、その必要はなくそのまま一緒に保護され、今は未来機関の中間拠点にあるテントの中にいる。

 大和田、大神、腐川の三人は結果的に云えば全員無事だった。けれど、三人とも傷は浅くはない。救助がもっと遅かったら危険な状態にまで陥っていたかもしれない。そう考えるとあの時、外に出て正解だったと言えるだろう。

 江ノ島盾子はどうなったのか聞くと、逃げた。そう返された。オレたちの知る江ノ島盾子は双子の姉、戦刃むくろだった。江ノ島盾子は外の世界で人類史上最大最悪の絶望的事件を起こし、人類を絶望に叩き落とした張本人。云うなれば、超高校級の絶望。

 それが苗木たちにコロシアイを強要しようとした。黒幕の正体であり、人類を絶望に叩き落とした存在だった。苗木達は本来希望ヶ峰学園をシェルター化することで事件から逃れようとしたのだが江ノ島盾子に逆に利用され乗っ取られてしまった。

 これらの事情は最初に会った男、黄桜公一からもたらされたものだった。

 そして驚くことに苗木達はコロシアイを強要される過程で、約二年間の記憶を失ってしまったらしい。所詰まるところ、高校生活の全ての記憶を失ったということだ。

 それを知ったみんなは大きくショックを受けていた。その様子を見て、オレはあの最終防衛学園の自分達も記憶喪失であった事を思い出していた。

 状況が似すぎているような……? これって、全部偶然でいいのか…?

 

 みんなは信じられないような現実から目を少しでも背けたいのか、オレに対しての質問攻めが始まった。

 

 「澄野拓海殿! 是非、あの血を操る系の超能力に付いて説明を要求しますぞ!」

 「そうだべ! 澄野っち、ありゃあお前の超能力だよな!なんつーか、宇宙人が持つ超パワーだよな!」

 「澄野さん。心臓の方は大丈夫なんですか?」

 「澄野君。わたくしも聞きたい事が山のようにあるのですが。まず最初にあの体育館での身のこなし、もしや澄野君は戦場にいらしたことがあるのですか?」

 「つか、なんだよあの身体能力さぁ。超能力で出してるわけぇ? なんかズルくね?」

 「血のこととか、心臓のことってぇ、現実的に説明がつくことなのかなぁ?」

 「澄野クン、本当に身体は大丈夫なんだよね?」

 「ちょちょっと、みんな! わかった。わかったから! 一個づつ、一個づつな!」

 

 オレはみんなにオレの知ることをやんわりとだけ伝える。世界死のことや最終防衛学園のことは伏せておくことにした。

 

 「この血の超能力は異血っていって、オレもよくわからないんだが、心臓を突き刺してその異血を活性化させることで使えれるんだ。それで戦場にいたっていうのは……そのあってはいる…かな。詳しくは言えないんだけど……。

 あと、身体は本当に大丈夫だから。本当に!」

 「澄野君。」

  

 霧切から名前を呼ばれる。

 霧切からも質問があるのか、まぁそれはそうか。答えれれるものだといいけど。

 

 「私は、あなたのことを信じるわ。あなたのあの宣言を。だから、これを。 

 それと、改めてお礼を言うわ。…ありがとう。」

 

 霧切に差し出されたのはオレがあの体育館で落とした物、我駆力刀だった。

 

 「これは…!」

 「逃げる時に隙を見て拾っておいたの。これの使用用途はその異血って力を使うことにあるんでしょう?」

 「あぁ、そうなんだ…。助かるよ、ありがとう。」

 「おい、澄野とかいったか! 心臓燃やしてたお前だよ! ちょっと来てくれ!」

 

 黄桜に引っ張られて、みんなのいる部屋から出る。

 今度はいったい何が起こったっていうんだ?

 

 「お前が使ってるのは本物の超能力なんだよな?」

 「……あぁそうだよ。」

 「だったら、なおのことまずいじゃねぇか」

 

 黄桜に連れられた場所は会議室のような場所だった。

 目の前にある大型のモニターが光出す。そしてそこには堅物そうな顔をした一人の男が映し出された。

 

 「お前が、澄野拓海か?」

 「……そうです。」

 

 画面越しだというのに、男の出す圧力に屈して思わず敬語になる。

 

 「俺は未来機関の副会長、宗方京介だ。澄野拓海、今から話すことを決して忘れるな。いいな?」

 「はっはい。」

 

 未来機関の副会長……? 偉い人…ってことか?

 決して忘れるなって、そんな怖い顔で言われたら忘れたくても忘れられないだろ。

 

 「最初にお前には感謝をしておこう。希望ヶ峰の生き残りを救った功績は間違いなくお前にある。

 だが、だからこそお前はこれから絶望につけ狙われることになる。」

 「それは……どういうことですか?」

 「まず、お前たちの体育館での入学式。詰まるところ、お前の超常現象は全世界に放送されていた。」

 

 …………? 今、なんて言われた?

 

 「もちろん、江ノ島盾子に、絶望に対抗した力を場面…。お前がモノクマ、もとい江ノ島盾子と戦ったところもだ。」

 「ちょちょっと、待ってください! どうして全世界に放送なんかが!?」

 「……江ノ島盾子の本来の狙いは、希望ヶ峰の生徒にコロシアイをさせ、それを世界に見せつけることでより深い絶望に人類を叩き落とすことだったからだろう。」

 

 見せつけるって、どうして…? …………絶望? わけがわからない……。そんなのおかしいだろ! 

 

 「話を戻すぞ。江ノ島盾子の計画を失敗させた、不思議な力を持つ希望……。それが世界の認識になるだろう。

 その希望を折るために、お前はこれから絶望につけ狙われることになる。もし、絶望に捕まりでもすれば露悪的に処刑されるのは目に見えていることだ。」

 「そんな……。」

 「だからこそお前には、未来機関の手の届く所に居てもらうぞ。そこからの話は直接する。通信を切る。」

 

 宗方がそう言うと、モニターは黒く表示される。

 これから…オレはどうなるんだ?

 

 「あーあーそんな、深刻そうな顔しないでって。別に悪いようにはしないと思うしさ。むしろいい待遇になると思うぜ。それくらいお前さんはすごいことをしたんだからな。」

 

 黄桜が励ますようにオレを言う。

 オレの心配はそれだけじゃなかった。外の世界を知るごとにオレの知る世界は全てなくなっていったからだ。

 カルアにも…もう会えないだろうな……。母さんにも、あいつらにも……。

 オレはどうしようもない喪失感を覚えながら、用意された個室のテントの部屋に戻る。

 疲れた……。

 オレは簡易ベットに力が抜けるように横たわる。

 そうして、オレは意識を海の中に手放した。

 

 

 

 「おい、起きろ。お前に話がある。」

 

 十神の声が聞こえる。

 重い体をゆっくり持ち上げて、テントの入り口をめくる。十神の姿はなく、オレはなんとなく空を見上げた。

 まだ外は真っ暗で、星が綺麗だった。

 

 「あれは、月か?」

 

 満点の星空の中に一つだけはっきりと見える大きな丸い星があった。

 あれが本物の……月。時代によって、見える星が違ったのか?

 あの百日間にあんな星はなかった。

 ぼんやりと、そんなことを考えていた直後だった。

 

 ゴンッ

 

 頭を殴られた。痛みが走る前に、オレは意識を手放した。

 最後に見えたのは、無表情の十神の顔だった。

 

 

 

 ……………………。

 …………ここは、どこだ。

 ……オレは、何をされて…。

 そこは先ほどまでいたはずの綺羅星の下ではなく、灰色の無機質で人工的な部屋だった。

 瞼を開き、顔を上げた先に赤い瞳を持った長髪の男がいた。男は椅子に片足を上げて座っている。オレはその男の持つ瞳に打ち抜かれるように見つめられていた。

 誰……なんだ?

 

 「僕は、カムクライズルです。」

 




プロローグ 完 

色々考えてたけど江ノ島がクラスメイト(お気に入り)以外を学級裁判に参加させる気がしなかったのでこうなりました。

全員生存エンド(江ノ島含む) 
ダンガンロンパIFに近い感じになりました
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