澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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結構あとから手直しました。


一章
未来の支配者は虚無を引き摺る 壱


 心が読まれたようだった。

 オレが声に出す前に既に答えは出されていた。

 一番驚いたのはそこではない。

 オレはその場をゆっくり立ち上がりながら言った。

 

 「……神座…だって?」

 「…………澄野拓海、あなたは思い違いをしています。僕は、あなたの考えるそれらには何の関わりもありません。」

 「ッどうして……。」

 

 どうしてわかるのか? どうしてそうはっきりと言えるのか? どうしてオレは此処にいるのか? どうして、どうして……。

 謎が尽きなかった。オレは手足を縛られてる理由でもないのに、どうしようもなく無知に不自由だった。

 カムクラはそんなオレを眺めながら、何でもないみたいにことを答えた。

 

 「どうして、そんな質問、才能に愛された僕には無意味です。 あなたが此処に居るのは、僕が詐欺師の才能を使い御曹司に成った僕があなたを誘拐したからです。」

 

 誘拐…だって?

 オレは瞬間的に宗方との会話を思い出す。

 まさか…コイツは……!

 

 「僕は、絶望ではありません。」

 

 すべて、質問を投げる前に答えが返ってくる。

 キャッチボールで自分の番がこないどころか、成り立っているのに壁打ち練習のそれに近い感じがする。

 絶望じゃない…? だったらなんでオレを誘拐なんてしたんだ……!?

 

 「あなたを誘拐した理由は単純です。予測ができなかったからです。」

 「予測ができなかった?」

 「…………。」

 「おい、なんか言ったらどうだ?」

 

 さっきまで饒舌気味だったのにカムクラは急に黙り込んだ。

 ……絶望、じゃないなら江ノ島盾子の仲間じゃないのか?

 でも、才能に愛されてるとかなんとか。よくわからない事を言ってるのは確かだ。

 

 「ツマラナイ。」

 

 そう一言呟くと、カムクラは椅子から立ち上がり、この無機質で埃を被った部屋を出ていこうをする。

 

 「ちょっと待てよ!」

 

 オレはカムクラの手首を強く掴む。

 カムクラもさして抵抗する気がないらしく、此方を向いた。コイツ、その場気分で行動してないか?

 

 「お前はいったい何がしたいんだ。 わざわざ誘拐までしといて、一言二言喋ったら終わりって。わけがわからないだろ……。」

 「……あなたはあの希望ヶ峰学園に突然現れました。僕の予測では、あなたは江ノ島盾子に見せしめにされて終わりでした。」

 「その予測とやらが外れたから? たったそれだけの理由でオレを誘拐したっていうのかよ。」

 「…………」

 

 カムクラは、何も答えなかった。

 

 「そうかよ……。」

 

 オレはカムクラを追い越して扉のドアノブに手を掛ける。

 逃げようとしてるのに止めないのか? 一体何がしたいんだコイツは? 

 誘拐されたにしてもカムクラにはやる気がなさすぎる。

 だから、誘拐されたっていってもあの未来機関の拠点の近くだろうと高を括っていた。

 そんなものは都合のいい思い込みなのなのだと理解した。

 オレの目に入って来たのは、人生で初めて見る光景だった。椅子が立ち並んでいて、天井は低く、空間に圧迫感を感じる。

 

 「あ、お話は終わった感じ〜? じゃあ次は私の番ね。」

 

 その声は前方の席から聞こえた。そこには最近、脳と身体に焼き付くように記憶がのこった存在が二人居る。片方はオレに話しかけるために身を乗り出していた。

 江ノ島盾子と戦刃むくろだ。

 オレは咄嗟に構えて、腰にあるの我駆力刀に手を掛けた筈だった。

 

 「…!?」

 「これさー。今私らが襲いかかったら、本当に心臓にぶっ刺して使うの? 自決で変身とか先進的過ぎない?」

 「……返せ!」

 「はい返す。」

 「なッ。」

 

 そうやって投げられた、刀身がむき出しになっている我駆力刀をしゃがんで避ける。

 しまった、後ろにはカムクラが!

 そんなオレの焦りは全くの無用だったのか、背後を向くと何の気なしに迫り来た我駆力刀を横に避けたカムクラがいた。

 さっきの部屋に突き刺さった我駆力刀をカムクラが抜いた。

 オレは身構えて背後にも警戒しながらカムクラに近づく。

 

 「それを…返してくれないか?」

 

 オレがそう頼めば無言のまま我駆力刀の持ち手の部分をこちらに向けて返してくれた。

 コイツは本当になんなんだ? 江ノ島盾子の仲間じゃない……のか?

 

 「江ノ島盾子、お前は何がしたいんだ? オレをこんな場所に誘拐して、オレに何をさせたいんだ?」

 「べっつにー? 今はカムクラ先輩と同じで、今はお話かなぁ? あと、誘拐したのはカムクラ先輩だよ〜。私はな~んにもしてないよ。」

 

 先輩? カムクラも希望ヶ峰学園の生徒だったってことか?

 

 「ていうかさー、こんな場所って言い方はなによ。飛行機乗ったことないの? あんたってさ、進んでるの遅れてるの?」

 「…………飛行機?」

 

 鉄板なんて付いてない見通しのよい窓をチラリだけ見る。だが所詮は二度見と言うやつだろうか。チラリとだけでは済まずに、オレは目の前の敵も忘れてその光景に目を奪われた。

 綺麗な青空だった。

 驚くべき部分は自分がいる物理的な立場と一緒に雲があったことだった。

 オレは今、空の上にいるのか……。

 

 「え〜〜本気に乗ったことないんだ〜〜。」

 

 江ノ島がすぐ隣にいた。

 だからか、オレは突然の江ノ島の行動を防ぐことができなかった。

 江ノ島はオレの顔を両手で包むように掴んだ。

 思わず顔が引きずった。そんなオレの様子を気にもせずにオレの顔に江ノ島は近づいた。

 ちっ近い近い近い!

 

 「あーなるほどなるほど。そーいう感じね。」

 

 オレはその江ノ島のセリフと同時にに強引に江ノ島の手を振り払って何歩か後退りした。

 

 「アンタってさ。日焼け全ッ然したことないだね。そういう世界で十数年生きてきた感じ? そうでしょ? ねぇそこってどんなディストピアなの? 教えてよ。」

 「おっお前に教えることなんてない!」

 「あっそ、まぁその様子じゃ、カムクラ先輩がアンタにツマラナイってなるのは当然かもね。普通だし。」

 

 普通って言われても……。

 普通で何が悪いっていうんだ。好き放題言いやがって…。

 

 「あーあー、宇宙人で、未来人でしかも超能力者っていう何処かの北の女子高校生も大満足の設定の渋滞だっていうのに、その設定の持ち主がこんな普通って、絶望的だわ〜。」

 

 は?

 今のは全部…オレのこと言ったのか……?

 宇宙人なのは地球から避難した他の連中が人工天体にいるからか? 未来人は文字どうり未来から来たから、超能力者は先日の体育館での戦闘の通りだ。

 最後のはともかく、どうして前者二つを江ノ島盾子は知ってるんだ!?

 

 「どうして知ってるんだ!? ってあからさまな顔をしてるな! まぁ、私の二年間を賭けた計画を台無しにしたお礼に説明をして差し上げましょう。

 まずねぇ〜。あなたの体を寝てる間に〜ちょ〜っとだけ調べさせてもらったの〜。そ〜し〜た〜ら〜、側は人間のそれとは似てるけど〜、中身は地球上に存在しない生物のもののそれだって、わかったんだよね〜。 それが、アンタが宇宙人って根拠。

 未来人だってのは…、あなたが希望ヶ峰の事を何も知らない様子だったからです…。人類史上最大最悪の絶望的事件が起こった今、希望ヶ峰ことを知らないのは…、ボケた老人と赤子くらいしかしません…。これだけで別の時代の人かもって…考えられますよね…。それだけじゃありません…。

 私様は見た! 貴様がこの世界に現れ出る瞬間をな! 放送直前で苗木誠が騒がしいと思えば…誰だお前は! そして、放送直前だったカメラにはお前がどこからともなく現れたのがバッチリ録画してあったのだよ人間。ワープ能力だけならば、外のことは知っていて同然。だというのに貴様はノコノコと自己紹介なんぞを始めた…。無知であることは私様にはすぐ分かったぞ! それがぁ、お前が時間すら越えてきた私の推理だぜぇ!」

 

 話を頭に入れると同時に江ノ島の変わりようも頭に叩き込まれる。キャラがぶれすぎだろ。そう一瞬だけ、本題から目を逸らした。

 人工天体のことを知った訳じゃない……?

 オレの肉体…異血が地球上に存在しない? そんな筈はない。だってこの力はあの部隊長達だって使っていた。だったら、この力は地球由来のはずだろ? なんでコイツはそんなハッキリと言い切るんだ? なぜだかあの時の蒼月の顔が目に浮かんだ。

 『それが、キミ達の考える真実だったね。』

 ……本当にコイツがすべての黒幕で苗木達にコロシアイをさせようとした奴なのか? だったら何でオレは寝てる間に宗方の言ったようにされていないんだ? 

 ……カムクラの…アイツのお陰なのか?

 

 「なぁ江ノ島。…お前はオレのことをどう思ってるんだ?」

 「キャー! 澄野さんったらダ・イ・タ・ン、そんな直球に乙女の心が知りたいんだ。」

 「そうじゃない…! お前にとってオレは、計画を失敗させた張本人だろ? だったらなんでそんな風にいられる? もっとこう、恨みだとか、憎しみがあるものじゃないのか?」

 「恨み? もちろんあるよ。だってあの計画は人類史上最大最悪の絶望的事件のフィナーレ、それを台無しにされたんだもん。」

 

 でもさ、それ以上にさ。 

 そう江ノ島は言葉をつなげる。

 

 「二年間も濃密な時間を賭けた計画が…! 張り切って考えたおしおきマシーンも何も使わずじまいで、挙句入学式すら満足に行えなかった…! 全部、ポッと出のアンタのせいで……。それってさぁ! それってさぁ…! そんなのってさぁ!」

 

 ゴクリと喉が鳴る。我駆力刀を強く掴む。

 江ノ島盾子を見据えた。

 

 「最ッ高に! 絶望的じゃない……!!」

 

 …………

 ……………………

 は?

 

 「……おっ…お前。……何を…言ってるんだ…?」

 「いい絶望を味あわせてくれたアンタは、恨みよりも絶望が勝つってことよ…。」

 

 どういう意味だよ……。わけがわからない…。

 ずっと黙ったままの戦刃むくろがオレを睨むようになる。

 その視線はなんだ…? 何を考えてるかは知らないけどやめてくれ……! 

 

 「……今は、オレに手を出す気はない。それでいいんだな。」

 「それくらい、自分でどうーとでも考えればぁ?」

 

 ずっとふざけてるなコイツ。

 オレは今、ここに生きていること事実を信じることにした。警戒を解いた訳じゃないが、続けるのも馬鹿らしくなってくる。

 今ここで戦闘を初めるわけにはいかない。狭すぎるものある。戦刃が単純に強者なのもある。オレの学生兵器は室内向きでもない。機内に攻撃が当たりでもしたら、ここは墜落して青い空の中を突き貫けることになる。

 そうすると、自然に何かできるわけでもなくなった。

 会話をしようにももう江ノ島とは話したくない。そう思うと行動は一つに絞られた。

 オレは機内を移動してカムクラが座っている窓際の座席まで行く。

 

 「隣…座ってもいいか?」

 

 カムクラはこちらを一瞥しただけで、直ぐに視線を窓の外に戻した。

 了承したのか、してないのか。カムクラのことがこの場で一番わからないかもしれない。

 オレは少しだけ遠慮しがちに隣の席に座る。

 …………。

 ……………………。

 ………………………………………。

 オレとカムクラの間に、いや機内全体で沈黙が続く。

 偶にあの双子の声が聞こえるぐらいだった……。

 普通故のサガだろうか。いらないであろう世話を焼くついでにこの飛行機がどこへ向かってるか聞こうと、話を切り出そうとした。

 

 「この飛行機は現在、アメリカに向かっています。」

 

 またもや同じだった。オレが質問するよりも先にカムクラが先に答えを言う。

 だからといって会話が続けられないわけじゃない。むしろ続ける理由になった。

 

 「…そうなのか。……そのアメリカっていうのは外国なんだよな? 日本から遠い場所にあるよな? どこにあるんだ?」

 「…………日本から、太平洋を挟んだ先にアメリカがあります。太平洋とは地球最大の海の名称です。」

 「……? オレ達は海の上にいるのか…?」

 「はい。」

 

 なに、アイツラの会話? 幼児かよ。

 そんな小言が向こうの席から聞こえた。

 悪かったな無知で…! ッく、こんなことならオレもカルアみたいに外の世界を少しでも知っとくんだった……。

 

 「なぁ、お前らはそのアメリカで何をする気なんだ?」

 「江ノ島盾子はあなたに計画を破綻させられたことの腹いせに、未来機関の基地を潰すつもりです。その下準備でしょう。」

 「……お前は?」

 「僕は江ノ島盾子に加担はしません。」

 「……じゃあなんでこの飛行機の乗ってるんだ?」

 「あなたを誘拐した時、江ノ島盾子が現れてこの飛行機に乗れと、僕に言いました。」

 「…………それだけか?」

 「都合が良かったからです。」

 

 都合……?

 ていうか、未来機関の基地を潰すだって!? それは…マズイんじゃないのか? いや、武装した大勢の大人に敵うものなのか?

 

 「……アレは、超高校級の絶望です。」

 「…………超高校級って、才能がそんなに凄いのか?」

 「アレは、口八丁だけで世界を相手取っています。才能だけではありません。才能だけでない存在だからそれだけのことができる…。」

 「……どうしたんだ? …………。そういえば、才能に愛されているってどういう意味なんだ?」

 

 カムクラはそこから先は何も言わなかった。機内での会話と言える会話はそこですべて終えた。

 

 オレもカムクラの眺める窓の外に目を移す。

 美しい青色が世界に広がっている。そのアメリカ、という外国に着けばこの色はすべてまた赤く染まるのだろう。

 それがこの飛行機の中で一番に染み込んだ記憶だった。

 




その場その場で書いてるので設定はガバガバです。

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