澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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 苗木君視点
 クロスオーバーものじゃなくて全員生存IFものになるなこれと書いてる時思いました。


希望パラダイス 3

 それは、翌朝のことだった。

 自宅じゃない知らない天井に一瞬だけ戸惑いながら、昨日あった壮絶な一日を思い起こした。

 そうだった。ボクはあの後未来機関に保護されて…。

 夜更かしした割には体は結構動く。

 どうやらボクが最後に起きたらしく、大部屋の中は閑散としていた。

 ボクはこれからのことを少し考えながら簡単な身支度をした。

 これからどうなるんだろう? 高校生をしている訳にもしかないだろうしな…。

 

 そんな時だった。 

 舞園さんがボクだけがいる男子の大部屋のテントに慌てて入ってきたのは。

 

 「よかった…。苗木君ここにいたんですね。」

 「まっ舞園さん!? どっどうしたの?」

 「澄野君がいなくなったんです! みんな集まってますから、とりあえず来てください!」

 「え!?」

 

 澄野クンがいなくなった? どういうことなんだ?

 舞園さんがそう言ってボクは一緒に、昨日みんなで説明を受けた会議室に向かった。

 

 「おはよう!苗木くん。 早速で悪いが君が澄野君を最後に見たのはいつだね?」

 「おっおはよう。石丸クン。」

 

 会議室にはみんな集まっていて、澄野クンだけいなかった。

 

 「えっと、ボクが澄野クンを最後に見たのは、昨日の夜10時くらいだったよ。」

 「夜10時か…今までで一番遅いんじゃーか?」

 「苗木君と澄野君はその時に何をしていたの?」

 

 霧切さんにそう聞かれる。みんなにも同じことをしているんだろう。

 彼女は自分の才能すら江ノ島盾子によって忘れられていたが、未来機関の話によると彼女は超高校級の探偵という才能を持っていた。

 

 「ちょちょっと待ってよ。澄野クンは一体どうしたの?」

 「あいつは今行方不明だ。だからこうして、そこの探偵が事情聴取をしている。」

 

 十神クンが何故かイライラしながらそう答えた。

 十神クン…どしたんだろう?

 

 「えっと…ボクは昨日の夜、澄野クンに充てられたテントに行ってトランプに誘うおうと思ったんだけど、彼はグッスリと寝ていたみたいだからわざわざ起こすのも悪いと思ったからそのままそっとしておいたかな。」

 「澄野クンの部屋には鍵も掛かっておらず、誰でもそこに侵入できたのね?」

 「侵入って…まぁそうだと思うけど。」

 「…ていうかトランプってあんな達何してんのさ。」

 「いーじゃねーか別によぉ。いきなりこんなんになって訳わかんねーんだからそれくらい。」

 「朝比奈さん。それを言うならわたくし達も女子会のようなものしていたのですから、人様のことは言えませんわよ。」

 「テメーらは何呑気してやがんだ。」

 「楽しそうで良いではないか。」

 

 医務室にいた大和田クンと大神さんがボクらに向かってそう言った。

 考えをまとめきったのか、霧切さんが話を進行する。

 

 「つまりその夜更かしをしていた時間。私達はお互いのアリバイがあるということよ。」

 「男子はだいたい11時ちょいくらいだったか?」

 「女子もだいたいそれくらいでしたね。」

 

 霧切さんの話に葉隠クンと舞園さんが補足する。

 アリバイってなんだか本当に事件が起こったみたいだな…。

 

 「霧切さん、澄野クンは本当に行方不明なの? 誰にも言わずに何処かに行ってるだけってことはないの?」

 「その可能性もまだ無くはないけど、おそらく、これは誘拐だと思うわ。」

 「誘拐!?」

 「そうなんですぞ! 苗木誠殿。だからこうして推理もののように情報を集めて何かわからないかを調べているのです!」

 「ふん、バカバカしいにも程があるわね。昨日ここに来たばっかりの私達が犯人な訳ないのに。」

 「……ボク達って疑われてるの?」

 「そういうわけじゃないわ。ただ…何かされたかもしれないから。」

 

 何かってなんだろう? 澄野クンは大丈夫…じゃないな誘拐なら何をされてるか分からない。

 にしても十神クンは一体どうしたんだろう?

 

 「十神君は何故か夜中に目撃情報があったせいで少し疑われているんです。」

 「わぁ! まっ舞園さん? なんで…ボクの考えてることがわかったの?」

 「エスパーですから」

 「え?」

 「冗談ですよ。それで、十神君は自分にそんな覚えはないって言ってるんです。」

 「情報が食い違ってるってこと? でもそれじゃあ十神クンは二人いることになっちゃうよ。」

 「そうなんです。だから霧切さんや未来機関の方は十神君に扮した誰かが澄野君を誘拐したのではないかと考えているんです。」

 「そうか、だからあんなに十神君は不機嫌そうにしているんだ。」

 

 自分の偽物がいて、しかも誘拐をしただなんて、そりゃあいい気分はしないよな。十神クンみたいなプライドが高そうな人は特に…。

 

 「そういえばさ、不二崎さんって昨日の夜何してたの? まだ聞いてなかったよね。」

 「ボクはえっとぉその、希望ヶ峰学園にいたんだ。」

 「希望ヶ峰学園にか!? なんでそんなこと…。」

 「未来機関の人たちが江ノ島さんが情報とか、何か残しているかもしれないって希望ヶ峰のコンピューターを調べてたんだけど…。そこでボクはそのお手伝いをしてたんだ。」

 「……みんな、本題に入ってもいい? 不二崎さん。説明をお願いできるかしら。」

 「え、でもぉ。…いいの?」

 

 本題? 澄野クンの話とは違うのか? 

 

 「霧切さん、本題ってどういうこと?」

 「澄野君のことは一回置いておいて、未来機関に任せたほうがいいと思うわ。

 私達はそれ以上にやるべきことがあるもの。」

 「やるべきこと?」

 「じっ実はね、行方不明になっているボク達の関係者の居場所がわかったんだ。」

 

 関係者!? それってボク達の家族や大事な友人や恩人ということだ。

 それを聞いた途端、ボクらは焦らずにはいられなかった。

 真っ先に不二崎さんに問い詰めたのは舞園さんだった。

 

 「不二崎さん! どこですか!? どこにいるんですかみんなは!?」

 「まっ舞園さん…。 えと、えっとね。」

 「舞園さん、全員落ち着いて。私達は今日にでも彼らを助けに行けるわ。何が起こるかわからないもの。昨日から既に未来機関にもそう話してある。

 だから、今は落ち着いて。」

 「…………不二崎さん。どこにみんなはいるんですか?」

 「……塔和シティにいるみたいなんだ。

 塔和シティっていう場所は世界でも数少ない大気汚染が起こってない場所で、塔和シティの運営をしてる塔和グループっていうのがあるんだけど…。

 その塔和グループは世界中に毒ガスを安全な空気にできる空気清浄機だったり、絶望に対抗する為の武器を売ったりしてるところで、未来機関もその支援を受けたりしているみたいなんだ。」

 「オレ達の身内は安全な所にいたっつうことか?」

 「いや、そうでもなさそうなんだ。」

 「これは私の推理だけど、安全な場所で都合良く生かされていたんだと思うわ。私達にコロシアイをさせるための動機として。」

 

 動機…。ボク達の大切な存在を人質にとってコロシアイを強要しようとしたってことか!?

 そんな酷いことを……。どうして…。

 母さんも父さんもこまるも、無事なのか…?

 

 「だから、急がないとマズイことになると思うの。

 もう、私達はコロシアイをしていない。だから…。」

 「人質は用済み。そういうことだろう?」

 「ええ、でも全員が行く必要はないと思うわ。大神さんと大和田君は特に。」

 「チッ、まぁしゃあねぇか。こんな怪我じゃ逆に足手まといだ。」

 「我も、行かぬ方が賢明ではあるだろうな。だが、状況によっては無理もしよう。

 不二崎、そこは本当に今安全な場所なのか?」

 「外聞を信じるのなら…だけど、実際は行ってみないと分からないかなぁ。」

 「よし! こういう時は俺の出番だな! これからその塔和シティがどうなるか占ってやんべ!」

 「葉隠は黙ってて!」

 「……ボクは行くよ。」

 「苗木君?」

 

 舞園さんが反応する。

 ボクが最初にこれを言い出したのが不思議だったのかもしれない。舞園さんがボクをどう見ているかは分からないけど。

 ボクは大和田クンや大神さん、それこそ澄野クンみたいに強い力を持ってるわけじゃないけど、それでもボクは自分の大切な人たちを自分の手で助けに行きたい。

 家族に一刻も早く会いたい。ボクも無事なんだって伝えたい。

 

 「わかったわ、苗木君。他のみんなはどう?勿論、適材適所だもの無理になんて誰も言わないわ。」

 「あ、ボクはここに未来機関の人達一緒にいるよ。その方がきっとみんなのサポートもできると思うし…。きっとぉ、足手まといになっちゃうから。」

 「そういうことなら僕もここに残りますぞ。作家にペン以上に重い物を持てと言われても困りますし、不二崎殿が言うように足手まといになりかねませんから。」

 「私は行きます。グループのみんなを助けないとですから。」

 「オレも、行くっきゃねーよなぁ。体力あるんだし。」

 「僕も行くぞ! 家族を助けずして安心して眠ることなど出来ない!」

 「わたくしはやめておきます。出来ることは対してなさそうですし。皆様に任せますわ。」

 「俺も行くべ。やっぱり早く会いたいもんな!」

 「私だって行くよ! 悠太のことを放ってなんておけないもん!」

 「俺も行く。お前らに任せきりにはできん。」

 「あぁあたしも、行くわ。」

 「腐川さんも!?」

 

 思わずびっくりして声を上げてしまった。

 ボクがそう言った瞬間、なぜだかみんなの空気が変わった。

 どうしたんだ? 腐川さんがこう言い出すのは意外ではあるけど、腐川さんだって会いたい大切な存在がいるはずだ。

 

「どうしたのみんな? 腐川さんも行くことは駄目なの?

 確かに、体力とかは桑田クンとかと比べられるとないかもしれないけど、それはボクだって同じだよ?」

 「あーいや、そうじゃあなくってよぉ。」

 「ジェノサイダーはどうすんだって話だべ、苗木っち。」

 

 あ、そっか。完全に頭から抜けていた。 

 でも、ジェノサイダー翔が大神さんと大和田クンと一緒に時間を稼いでくれたんだよね…。

 味方って訳にいかないかな? そうしたら大きな戦力にもなるだろうし。

 

 「…悪かったわね。でもこんな駄目でグズでノロマなあたしにも大切な存在くらいいるのよ。」

 「腐川さん…あなたはもう一人の自分を制御出来る? 私はあなたを信じたいけど、出来ないのならそう簡単にはいかないわ。」

 「…………。」

 

 腐川さんが押し黙ってしまった。

 確かにジェノサイダー翔の存在は危険だ。

 でも、そんな事は言っていられない。今この瞬間にも、ボクらの大切な人達に刃が向けられてるかもしれないんだ。

 じっとしてなんか居られない。手段を選んでいる場合じゃないんだ!

 

 「…ボクが、腐川さんと一緒に最初に塔和シティに行くよ。それならどうかな?」

 「苗木君!?」

 「なっ、テメェ何言い出してんだ。」

 「勿論、危険だってわかってるよ。でも背中に殺人鬼がいるんじゃ、みんなは不安でしょ? 

 だから、ボクが腐川さんと一緒に一番前に立つよ。」

 「ななな何で、アンタが勝手に決めてんのよ!」

 「あ、ええと、腐川さんがよければだけど。」

 「ちょっと待ってよ! なんで苗木が最初に行くってことになるのさ! 行くならみんなで一緒に行こうよ!」

 「朝比奈さん、それは止めたほうがいいわ。江ノ島盾子がまだ何か企んで、罠を張ってるかもしれないもの。時間をずらして行ったほうがいいと思う。」

 「そっそんなことがわかってて、ささっ最初に行くわけないでしょ…。」

 「でも、それは逆に言えばさ。一番危険かもしれないけど、一番早くに大切な存在に会えるかもってことだよね? そうだよね霧切さん。」

 「……ええ。その通りよ。」

 「だったらボクは、一番最初に塔和シティに行きたい。」

 

 ボクは腐川さんに向かって頭を下げる。

 ボクが腐川さんを説得する方法は分からない。だから、こういう普通のことをするしかなかった。

 

 「お願いだ、腐川さん。ボクと一緒に塔和シティに行ってほしい。」

 「あっあたしに頭なんか下げて、それで説得なんてするつもり!?」

 「ボクは、腐川さんを信じてる!」

 「はぁ!?」

 「ボクは、家族が無事だって信じてる。みんなの大切な存在も生きてるって信じてる。だから今すぐにでも会いたいんだ!

 仲間の腐川さんのことを信じる!ボクらを助けてくれたジェノサイダー翔のことも信じる!

 だから、ボクを助けてほしい。」

 

 頭を下げて、勢いのまま閉じた目に無意識に力を入れながら言った。 

 ボクらの間に沈黙が流れる。

 

 「…………。」

 「……あぁもう! わかったわよ!! だからさっさと頭を上げなさいよ! このアンテナ頭! 

 あたしなんかに頭を下げ続けるなんて、編集者だけでいいのよ! 気色悪い!」

 「…ありがとう! 腐川さん!」

 「なんで笑ってんのよ!? 罵倒してるんだからにフラれた当て馬みたいなツラにでもなっときなさいよ!」

 「ボクらが最初でもいいかな? 霧切さん!」

 「……わかったわ、苗木君。そこまでするんだものね。未来機関にはそういうことにしてもらうわ。」

 

 そう言って、霧切さんは会議室から出ていった。 

 やった! これで母さんも、父さんも、こまるも、助けに行ける! 

 

 「苗木君は…凄いですね。」

 「え?」

 

 舞園さんにそう言われる。

 凄い? ボクが? 

 ……待てよ。ボクが最初に行くなんて、言い出しちゃったけどそれでいいのかな?

 みんなだって会いたい人がいるだろうし、霧切さんみたいに探偵でもないしボクが最初に行っていいものなのか?

 

 「…みっみんな、ごめん。ボクが最初に行くなんて勝手に言い出しちゃって…。その……。」

 「苗木、テメェー…。」

 

 大和田クンに名前を呼ばれる。

 それだけじゃない。みんながボクに視線を寄越していた。

 素直に怖くなったが、すぐそれは解かれた。

 

 「体育館の時も思ったけどよぉ。漢気あんじゃねーか!」

 「え!?」

 「なんつーか俺は異論ねーよ。お前が先行ってこいよ。」 

 

 大和田クン!? 桑田クンまで…。

 超高校級の暴走族と野球選手にそれを言われてもよくわからないよ…。

 

 「苗木くん! 僕は感動したぞぉ! 

 そうだ! 僕には信じる気持ちが足らなかった! 彼女に助けられたのは事実だというのに…。自分の不甲斐なさが情けない!」

 「おし! 最初に行くのは苗木と腐川さんに任せたよ!」

 「殺人鬼を信じるバカが…。まぁだが、先陣を切らせるにはうってつけかもしれんな。」

 「みんないいの? ボクと腐川さんが最初に行くってことで。」

 「苗木誠殿ぉ! 今まさに、まさに、主人公というものを感じましたぞ!」

 「主人公?」

 「そこの低俗物書きを誰か黙らせなさいよ。」

 「苗木っち、今やった俺の占いによると…。お前の妹は大変な目に遭っちまうって出たんだが…、まぁ頑張れば大丈夫だべ!」

 「そこの詐欺師も黙らせなさいよ!」

 「詐欺じゃねーって! 三割当たんだからな!」

 「苗木君。」

 

 舞園さんがいつにもまして真剣な眼差しをボクに向けてくる。

 

 「舞園さん? どうしたの?」

 「苗木君は信じてるんですよね。私達の大切な人が無事だって。

 苗木君はその先も、あると思いますか?」

 「先?」

 「例えばの話ですよ…。こんな世界でまたアイドルなんてできるのかなって、またグループのみんなと一緒になれるのかなって……。」

 

 舞園さんの質問に対してボクは特に悩んだりはしなかった。きっと素直な気持ちを伝えることが一番だと思ったから。

 

 「……できるよ。だって舞園さんは超高校級のアイドルだし。それにさ、そのことをこんな状況でも考えられるなら、きっと舞園さんは何度だって立ち上がらずにはいられないじゃないかな?」

 「立ち上がらずにはいられない……ですか。」

 「ボクはアイドルのことは全然分からないけど、ボクは舞園さんがまたステージに立つなら、応援するよ!

 ボクは、舞園さんのファンだから。励ましになってるか…わかないけど……。」

 「……苗木君。……そうですね。そうですよね! 私にはまだファンがいるんですもんね! ありがとう苗木君!」

 

 そう言って舞園さんはすごく、すごくかわいい笑顔でそう答えた。 

 …………ボクの幸運ってまだ脈があったんだな。

 

 「苗木君、腐川さん、すぐヘリで出るから出発の準備をして。」

 

 会議室に戻っときた霧切さんがそう言うとボクと腐川さんは荷物の準備をした。

 といっても、持っていくものは大体未来機関の人が既にヘリに積んでいた。

 必要なものといえば、自分達の覚悟くらいだった。

 時間はあっという間に過ぎていき、気付いたらヘリに乗り込んでいて空を飛んでいた。

 そうしてボクと腐川さんはみんなよりも先んじて、塔和シティへと向かった。

 




次は澄野君を書きます…。
内容が思いついたらこっちの続きも書きます…。
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