嘘が壊す前に   作:nazuna4849

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カミキヒカルを助けたい


保護者に相談

 

 

これは、

ほんの少しだけ大人が早く気づいていたら、

「嘘」が誰かを壊す前に、

違う結末に辿り着けたかもしれない話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所の空気は、張りつめていた。

 

「……妊娠、した」

 

壱護社長は、椅子に深く腰掛けたまま、少し背中を丸めている。

ミヤコは何も言わず、ただアイを見ていた。

 

アイは笑わなかった。

冗談みたいに流すつもりも、なかった。

 

しばらくして、壱護社長がゆっくりと息を吐く。

 

「……相手の男は誰だ?」

 

 

アイは、一瞬だけ視線を落としてから、顔を上げた。

 

「……付き合ってる人」

 

それ以上、すぐには言わなかった。

壱護社長も、急かさない。

 

「私ね」

 

アイの声は静かだった。

いつもの軽さも、はぐらかす癖もない。

 

「“愛してる”ってことが、まだ分かんないんだ」

 

ミヤコが、ほんの少しだけ目を見開く。

 

「好きとか、一緒にいたいとか、

 守りたいって思う気持ちがあっても、

 それが愛なのかどうか、自信がなくて」

 

アイは、言葉を探すように一度だけ唇を噛む。

 

「でもさ」

 

顔を上げる。

 

「その人を助けたいって思った」

 

壱護社長の肩が、わずかに揺れた。

 

「今、すごく苦しんでる。

 一人じゃ、どうにもならない場所にいる」

 

アイは、逃げなかった。

 

「だから、決めたの。

 一人で抱えるの、やめるって」

 

そして、はっきりと。

 

「会ってほしい人がいる」

 

壱護社長は、しばらく黙っていた。

叱責も、怒声もない。

 

「……未成年か」

 

「うん」

 

それだけで、十分だった。

 

壱護社長は、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……分かった」

 

低い声。

重さを受け止めるための声だった。

 

「まずは、大人が動く」

 

その言葉に、ミヤコがそっとアイの肩に手を置く。

迷いの前じゃない。

決断のあとに、寄り添う手だった。

 

アイは、ようやく息を吐いた。

 

 

それから、アイは話した。

 

全部を細かく説明したわけじゃない。

でも、隠さずに。

 

どんな立場に置かれていたのか。

どれだけ長く、誰にも止められなかったのか。

そして――今も、その影響から逃げきれていないこと。

 

「一回の話じゃない」

 

アイは淡々と言った。

 

「ずっと続いてた。

 周りの大人が、気づいてなかったふりをしてた」

 

話し終えたあと、部屋は静まり返った。

 

さっきまでとは、空気が違う。

 

社長は、肘をつき、指を組む。

もう、椅子にもたれてはいなかった。

 

「……これは」

 

言葉を選ぶように、間を置く。

 

「スキャンダルの話じゃないな」

 

ミヤコが、小さく頷く。

 

「保護が必要な話よ」

 

社長は、深く息を吸って、吐いた。

 

「……大人が、止めなきゃいけない話だ」

 

それは、誰かを責める言葉じゃない。

責任を引き受ける言葉だった。

 

「会いに行こう」

 

 

 

 

「――カミキヒカルに」

 

その名前が出た瞬間、

この話は、もう後戻りできなくなった。

 

アイは、何も言わずに頷いた。

 

この人たちは、もう逃げない。

そう、分かっていた。

 




がんばった
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