アイは、僕のすべてだった。
それは依存だったのかもしれないし、
救いだと思い込んでいただけなのかもしれない。
愛梨さんがしていることが、本当は犯罪だということも分かっていた。
でも、誰にも相談できなかった。
いつも愛されたいと思っていた。
だから僕は嘘をついて生きていた。
だから僕は愛梨さんから向けられるそれを、
この行為を、「愛」だと思い込むことにした。
そうしないと、壊れてしまいそうだったから。
拒否するという選択肢なんて最初から頭になかった。
拒めば、きっと見捨てられると思っていたからだ。
優しくされるたびに、
僕は愛されているんだと自分に言い聞かせた。
そう思い込まなければ、
自分が受け入れてきたものの意味を、
否定することになる気がした。
そんな時に、アイと出会った。
初めて会ったのは、ララライで行われたワークショップ。
B小町というアイドルグループのメンバーで、センターをしているらしい。確かに綺麗で可愛いひとだな。
最初はそれくらいの印象しかなかった。
成り行きで、僕はアイに演技の指導をすることになった。年齢が近い僕が教えるのが良いだろうと、金田一さんが言ったのだ。
それから、何度か話すようになった。
変わった人だな、と思った。
そして、多分この人は僕に似ている、とも思った。
僕と同じ、”嘘つき”の目。
愛されるために、愛してもらうために、自分自身を嘘で固めている人特有の目をしていた。
綺麗で、可愛くて、美しい。僕も周りからこんな風に見られているのかなと思った。
たぶん、その頃からアイに惹かれ初めていたんだと思う。
一緒にいると、不思議と呼吸が楽になった。
何かを演じなくてもいい気がした。少なくとも、彼女の前では、「求められる自分」にならなくていい気がした。
それが安心だったのか、
ただ逃げ場を見つけただけなのか、
それが本当に“素の自分”だったのか、
ただ別の役を演じていただけなのか、
自分でも分からなかった。
やがて、僕たちは恋人になった。
アイは言っていた。
「愛が知りたいの。恋人を作れば、分かるかなって」
ずいぶん、アイらしい理由だと思った。
付き合ってしばらくして、
アイは僕に、妊娠したと伝えてきた。
言葉が、出なかった。
喜ぶべきなのか。怯えるべきなのか。どうしよう、なんと声をかけよう、責任を取らないと、そんなことを考えていた。
そんな時、アイは僕にこう言った。
”私ね、愛してるってことがまだよく分かんないんだ。でも、私は君を助けたいって思った。”
”会って欲しい人がいるの。”
その一言で、
僕の知らないところで、何かが動き始めているのだと悟った。
はなしがすすまない