とある黒騎士の手記   作:上代わちき

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一ページ目「鉱山と魔物」

 

 

 

◆一「北東の鉱山」

 

 魔物狩りの仕事が入った。

 今度の仕事は、あの「北東の鉱山」からの依頼だ。

 

 

 

 鉱山街ヴァンダルス。

 「北東の鉱山」として知られるこの街は、あの「エーデルシュタイン商会」の本拠地といえる街だ。

 

 この鉱山では宝石が採れるのが特徴で、この宝石はあらゆる属性の魔力を宿す。

 そういったものは儀式触媒だけでなく、魔術の触媒としても有用だ。

 

 

 だから宝石の需要は高い。

 適切に扱えば高値がつく。

 

 その源であるこの鉱山は、まさしく経済という川の水源の一つといっていい。

 

 

 

 個人的には、この街の酒場で食べたピエロギも捨てがたいがな。

 ウォッカとの組み合わせが絶品だ。

 デザート代わりの蜂蜜酒もいい。

 

 それから、石畳みの広場で開かれていた市場の賑わいも悪くない。

 彼の商会のお膝元というだけあって、祭りのような楽しさがある。

 宿の質も高く、ベランダから雄大な鉱山と青空を見渡せるのもいい。

 

 

 

 そんな魅力的な街だが、だからこそ狙う者もいる。

 そのうちの一人が、「森」に魂を売って怪物となり果てたあの「騎士」だ。

 

 

 竜狩りの白騎士ダーヌビウス。

 今回の標的だ。

 

 

 

◆二「エーデルシュタイン商会」

 

 「北東の鉱山」ヴァンダルスを本拠とする、音に聞こえし大商会。

 「エーデルシュタイン商会」の通称で知られるこの商会は、もともと鉱山の地主であるという。

 鉱山から採れた宝石から商売を始め、物々交換などを繰り返して大きくなった。

 

 

 いまや物流拠点をいくつもの都市にこしらえ、専属の運び屋を大量に抱えるほどの規模になっている。

 基本は街から街へ荷物を運んだり、途中の村に寄って荷物を届けたりする馬車持ちの行商人さね。

 

 こういった者達のおかげで鉱山の宝石は各地に行き渡り、役立てられている。

 儀式や魔術の触媒としての需要は勿論、特別な武具の素材としても使用されている。

 

 

 この大陸には「森の魔物」による脅威が潜んでいる。

 俺達人類には、奴らに対抗する武器が必要なのさ。

 

 

 

 だからこそ商会はここまで大きくなれたわけだが、逆に言えばそれだけ鉱山の価値が大きいということでもある。

 故に鉱山の守りについても、商会は大きく力を入れている。

 北東の国にとっても「北東の鉱山」は重要な拠点であり、国の支援を受けたその軍事力は並の都市の比ではない。

 

 

 そんな大商会の鉱山に手を出すのは、まぁ賢い選択ではない。

 白騎士ダーヌビウスはそんな愚か者の一人で、だから「森」にとって都合のいい存在だったのだろう。

 

 

 

◆三「森の魔物」

 

 昔に習ったことのおさらいだが、この大陸には人類の敵対者がいる。

 「森の魔物」だ。

 

 魔物というのは動物とは区別すべき、異常な霊的存在などを指す言葉だ。

 そういった手合いの内には、人類圏をあっけなく飲み込む「森」の化身と思わしき者達の気配がある。

 故に「森」の手が入った怪物どもを、「森の魔物」と呼称するのさ。

 

 

 

 奴らは基本的に、俺達人類に対して強い憎悪と殺意を覚える傾向がある。

 話し合いは通じないし、出会ったなら殺し合うしかない。

 

 さらに、奴らは人類の集落に対しても破壊の対象とする場合がある。

 エーデルシュタイン商会の本拠「北東の鉱山」なんかも、その一例だ。

 鉱山そのものを利用するのではなく、人類の資源としての鉱山を無力化して、経済的に人類を攻撃する意図があるようだ。

 

 

 奴ら「森」に、計算などはない。

 ただ人類を滅ぼすという至上命令にのみ従い、破壊と虐殺を繰り返す自然現象のようなものだ。

 だから本能的に人類の街を狙うのさ。

 

 

 

 

 だが、ここ数年はさらに「森」からの攻撃が酷くなっているようだ。

 いよいよ「森」も本格的に「北東の鉱山」を滅ぼそうと、力を入れてきているらしい。

 

 その一環として、奴ら「森」は人を取り込むようになった。

 何らかのアプローチを用いて、人類を「森の魔物」に作り変えて使役しているようだ。

 

 

 

 先述した竜狩りの白騎士ダーヌビウスは、まさしくその代表例だ。

 

 

 

◆四「森の魔女」

 

 今回の「森」は、所謂「魔女」を用意しているようだ。

 

 この場合の「魔女」とは、「森」に魂を売った女性を指す。

 ただ『「森」に魂を売った』という事実に対する内情は様々で、魔物に与した女性や罪を犯した少女、もしくは連座で裁かれた娘などもそう呼称されることもある。

 こういった「魔女」達の一部は我が故郷たる黒騎士城の地下に収容され、まぁ筆舌に尽くしがたい拷問にかけられる。

 つまりは"そういうこと"だ。

 

 

 だが一方で「魔女」の中には、本当に魔物化している者もいる。

 それが今回の「魔女」だ。

 

 こういった「森の魔女」はれっきとした脅威だ。

 一応こういう手合いも、余裕があれば生け捕りにして黒騎士城に連れ帰ることを推奨される。

 が、まぁその余裕がないことも多い。

 

 

 

 今回の「森の魔女」は、「北東の鉱山」近くの見張り塔にいた。

 いくらかの手下と共にな。

 

 この見張り塔は、先の「北東の鉱山」とダーヌビウスの戦争に使われていた、ダーヌビウス側の廃墟のようだ。

 そこで「北東の鉱山」の動向を偵察・監視していたと思わしい。

 

 

 それを潰す意味で、俺も廃墟に潜入したわけだ。

 鉱山側の案内と協力を受けてな。

 

 

 

 

 「森の魔女」は、左手から「闇の矢」を飛ばしたり、「魔法盾」を展開したりしてきた。

 さらに通常の武具を破壊する魔術「武装破壊」も行使していた。

 

 

 奇しくも俺も同じ魔術を使う身だからわかるんだが、「闇の矢」や「魔法盾」は使う身としても扱いやすく厄介な魔術だ。

 

 一方で「武装破壊」は大きな隙を伴う魔術だ。

 そのくせ黒騎士の特別な武具を破壊するほどの力もない。

 通常の武具を使う戦士にとっては脅威ではあるのだが、俺には効果がない。

 

 

 だからその隙を突いて、魔剣で叩き潰しておいた。

 これで多少は「森」の力を削げたことだろう。

 

 

 

 こういう強力な「森の魔物」は、ダーヌビウスを含めて四体いるという話だ。

 今回で一体倒したわけだから、残りは三体ということになる。

 まぁ、街の食べ物を楽しみながらやっていこうか。

 

 

 

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