とある黒騎士の手記   作:上代わちき

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二ページ目「黒騎士」

 

 

 

◆一「黒騎士」

 

 今回の「北東の鉱山」を狙う「森」の勢力の中には、「森」に墜ちた黒騎士の存在が二人確認されている。

 一人は、竜狩りの白騎士として成り上がった元黒騎士ダーヌビウス。

 もう一人は、その友「イーザル」だ。

 

 

 

 黒騎士とは、基本的に「黒い全身鎧」と「闇の魔剣」を装備して、森の魔物を打破する者のことだ。

 俺自身もその一人ということになる。

 

 従来の「騎士」との違いは、領地を持たないこと。

 黒騎士は魔物退治に特化している都合上、貴族や家としての側面を必ずしも持たない。

 だから収入が限られ、鎧の手入れにも事欠き、故にさび止めの黒を象徴とする。

 

 この辺りは家を持たないだけの"自称騎士"とも似ているな。

 言葉としての"黒騎士"とは、もともとそういう自称騎士を指す言葉だそうだしな。

 

 

 

 他方で。

 俺達は正式な「騎士」として叙任されるに値せずとも、その能力を国に認められている。

 そういう意味では、自称騎士とは大きく異なる、いわば"準騎士"とでもいう方が適切な職ともいえる。

 まぁ担う役割が大きく異なるから、これはあくまでたとえでしかないがな。

 

 

 

 ともあれ。

 森の魔物に滅することで人の世に貢献するのが、黒騎士の基本だ。

 

 だからその黒騎士の一部が「森」に取り込まれて魔物と化しているのは、それなりの異常事態だ。

 捨て置く手はない。

 

 

 

◆二「黒騎士城」

 

 黒騎士について補足するため、「黒騎士城」についても記す。

 

 

 黒騎士城とは、「北東の鉱山」からみて南西の雪深い山脈に隠れ潜む城だ。

 それと同時に、俺達黒騎士を束ねる組織の通称でもある。

 

 黒騎士城は、黒騎士に相応しいとされた者達に厳しい訓練を施し、試練を乗り越えたものに正式な黒騎士の称号と武具を支給する施設だ。

 試練を乗り越え一人立ちした黒騎士に対しても、国や各国の組織からの仕事を斡旋したりする他、冬ごもりや任務がない時の"家"として機能する場所である。

 あそこで出される、焦げ目ができるほどに熱いチーズのグラタンがうまいんだ。

 多くの本を所蔵しており、娯楽にも困らないのが嬉しいところだ。

 

 

 

 だが一方で、黒騎士の醜い業を背負う場所でもある。

 

 以前にも記した通り、黒騎士城には地下牢がある。

 「魔女」を収容するための牢獄だ。

 

 

 暗く寒い牢に収容された「魔女」は"手酷い拷問"を受け続けることとなる。

 俺は諸事情で一度も参加していないが、まぁそれだけ黒騎士の仕事は過酷と言うわけさね。

 

 仮にその「魔女」が、本来は裁かれるに値しない冤罪の持ち主であったとしても、黒騎士達にとって無関係なのだ。

 拷問に参加していないとはいえ、俺も黒騎士である以上同じ穴の狢であることは改めて肝に銘じておかないとな。

 

 

 

 他方で。

 元黒騎士のダーヌビウスは、この地下牢の在り方を憂いていたようだ。

 何せ、幼馴染の一人が「魔女」として収容されていたのだからな。

 

 

 ダーヌビウスは、己の功績を用いて「魔女」を牢から連れ出した。

 この一件が、今回に繋がる事件の動機……その一部かもしれんな。

 

 

 

◆三「黒騎士の武装」

 

 黒騎士の武装は、「黒い全身鎧」と「闇の魔剣」が基本だ。

 鎧は魔物からの一撃に耐えて、魔剣は紫と黒に輝く強力な「闇の刃」を飛ばす。

 いずれも黒騎士城にのみ製法が伝わる、特別な魔物狩りの武具さ。

 

 だが一方で、黒騎士達は各々さらに武装を整えていることが多い。

 

 

 たとえば俺は左手に魔術触媒を仕込んで、いくつかの魔術を戦闘の補助などに用いている。

 相手の攻撃を防ぎ被害をそらす「魔法盾」や、投げナイフの要領で気軽に飛ばして牽制できる「闇の矢」なんかをよく使う。

 

 

 他だと、竜狩りの白騎士ダーヌビウスは「大楯」を用いていたことでも有名だ。

 特に黒騎士時代は「大楯のダーヌビウス」として敬われ、その大楯を用いたシールドバッシュで魔物を吹き飛ばしていた。

 

 そんなダーヌビウスの友である黒騎士イーザルは、特殊な義手を用いていた。

 魔物との戦闘で左腕を失ったようで、代わりに鉄でできた義手をつけるようになったという。

 義手をつけた当初は何かと慣れていないようだったが、いつしか義手だからこそできる戦法を鍛え上げ、並みの黒騎士を超える技量を習得してみせた。

 故にイーザルは、「鉄腕イーザル」の二つ名で知られるようになった。

 

 

 そんなイーザルが、今回の敵の一人だ。

 気を引き締めなければならないな。

 

 

 

◆四「鉄腕イーザル」

 

 「森の魔女」やその手下達を始末し、街の軍部隊と共に見張り塔探索をしてから数日後。

 「北東の鉱山」に「森」の手勢が現れた。

 

 その棟梁は、「森」に墜ちた黒騎士の片割れ「鉄腕イーザル」だ。

 

 

 

 竜狩りの白騎士ダーヌビウスの幼馴染の一人であり、親友でもあるイーザルは、その二つ名の通り鉄の腕を持つ。

 そのイーザルの鉄義手には、特別な短剣が仕込まれている。

 

 赤い宝石を持つ短剣だ。

 案外「北東の鉱山」からの宝石かもな。

 

 

 

 宝石に宿る属性は火。

 イーザルはその力を用いて、義手短剣で突き刺した相手を爆破する戦法を好む。

 

 闇の魔剣で相手の動きを封じて、義手短剣で討つ。

 あるいは義手短剣で牽制し、闇の魔剣で敵を屠る。

 

 二つの強力な刃を持つイーザルは、実に優れた戦士であったという。

 

 

 

 生前のイーザルは、その二振りの刃を以て墜ちたダーヌビウスを討とうと試みた。

 そして返り討ちにあい、最終的に「森」に取り込まれたようだ。

 

 

 

 「森」に取り込まれた黒騎士は、まぁ並みの魔物よりは手強い。

 が、「森」に取り込まれたからこその隙というものもある。

 

 魔法盾で義手短剣を防いで、そのまま魔剣の「闇の刃」をぶつけて倒したよ。

 

 

 

 奴ら「森」の手勢は色々と策を仕込んで「北東の鉱山」に攻めてきたようが、それらは商会側の軍が対処したよ。

 その状態で棟梁たるイーザルを葬ったのだ。

 存外あっけなく街の安全を確保できた。

 

 

 

 これで「森」の手駒は二体潰したことになる。

 残りは、ダーヌビウスを含めて二体。

 

 生前のイーザルの無念を晴らすためにも、気張らなければならないな。

 

 

 

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