銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜 作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)
――ニューボルドー大戦。
中央との経済格差によって生じた歪みが爆発した、自由星系連盟史上最大の大戦争。連盟歴2096年から始まり、2300年に終戦した百年以上続いた戦争。サラトガ二百年戦争に比べたら期間は短いが、開拓の進んでいない辺境セクターに致命的な傷跡を残すことになった。
宇宙空間による艦隊戦によって破壊された船は大半が回収されずデブリとして宇宙を漂っているが、損傷が比較的少ない船はナキンのようなリサイクル惑星に曳航されてリサイクルの時を待つことになる。
と言っても、巨大な船を解体するには手間も人手もお金もかかるため、あまり人気があるとは言えない仕事だ。だから運ばれてきた船が解体されずそのまま放置されて、墓場のような有様となっている。
かつて戦争で活躍し、傷を負った軍艦たちが等間隔に砂の上に並べられ、解体されるのを待ちわびているその光景は、どこか哀愁を漂わせていた。
でも、これこそがあるべき姿なのかもしれない。平和な時代に、過剰な戦力は不要なのだから。傷を負い、新しい生を得られる日を心待ちにしている戦争の英雄たちに心の中で敬礼しつつ、墓場の中へと足を踏み入れてゆく。
「えーと、クズハちゃん。どこら辺に目的のお宝はありそうかな?」
「あのミネカゼ級駆逐艦の残骸。あの中に軍資金が入ったコンテナがありそうだな」
傷を負った勲功艦の間をすり抜けて、クズハちゃんと共に進んでゆく。胸が少しだけ高鳴る。お宝を求めての冒険。ワクワクしてしまっている自分。冒険者になればこのワクワクを味わう事ができるんだろうか?
……私もかなりチョロいのかもしれない。そう考えると冒険者と言う仕事も悪くないような気がしてきた。人と自分が傷つく可能性も存在してると言う事から目を逸らせば、だが。
「……む、先客か?」
「おかしいね、ここら辺は人が滅多に寄り付かない場所なのに……」
目的地の駆逐艦、その傍でブラスターや火薬式の実体弾銃で武装した連中が屯していた。数は凡そ五人ほど。
咄嗟に私とクズハちゃんは物陰に隠れて様子を伺う。
穏やかでは、ない。
ぴこぴこ、とクズハちゃんは狐耳を動かしながら目を瞑り、神経を集中させている。私では先にいる口を動かしてる姿しか見えないが、ワーフォックスとしての聴覚を活かして何を話してるのか聞こうとしているようだ。
「目標……ブツ……懸賞金……彼らも、お宝を探しに来たみたいだな」
そう言いつつ、端末を操作して、カメラで彼らの顔を隠し撮り。行儀が良いとは言えないが、怪しい武装集団相手には仕方あるまい。撮影した顔写真を、警察の一般向けのデータベースで照合していってるらしい。
「……っ! あいつら、賞金首だっ……! 罪状は……殺人強盗、拉致、人身売買、監禁、強姦……! 宇宙海賊!」
「思った以上に凶悪犯で困惑を隠しきれないのが私なんだよね」
あいつ等はヤバい奴らだ。
君子危うきに近寄らず、と言う格言は聞いたことはある、が……。盗みも殺人も厭わない宇宙海賊の連中が実家からそう遠くない場所に屯しているのはあまり気分が良いとは言えない。……。
「……暫く様子を見ようか? 相手がどこかに行くならばお宝をさっさと回収してここから離れよう」
が、どうやらそう簡単に上手く行かなかったらしい。海賊連中はこちらの視線に気が付いたのか、銃を構えながら二人ほどこちらの方へと近づいてくる。
「っ……あ、あいつ等。女だったら犯して、売り払うって……!」
鋭い聴覚が災いしたようだ。彼らの下衆な言葉を聞いて、クズハはぷるぷると熊に睨まれた子狐のように震えてしまっている。ふむ。荒事は避けたかったが、仕方ない。
何より、犯しも殺しも上等な犯罪者は個人的に、気に入らなかった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「火薬銃とブラスターで武装した海賊を一瞬で制圧したのか、ノース……強いんだな」
高強度の『矢傘(ヤガサ)』そして身体能力強化の『当千(トウセン)』、土人形を生み出す『土偶(ドグウ)』この三つの魔法だけで十分だった。生み出した土人形を近づいてくる連中へと向かわせて注意を引いた後に、身体能力を強化した私が駆逐艦の傍に居た連中の方へと接近。落ちていた角材で殴りつけて気絶させる。
後衛が倒れて異変に気が付いた敵も『矢傘(ヤガサ)』で弾幕を弾きながら接敵、そのまま角材で殴り倒して無力化。
無力化する際に放った「め、メスゴリラ……」と言う言葉が引っかかるが、まぁクズハを巻き込むことなく全員無力化出来たからヨシとしよう。
全員武装を解除し、縛り上げて遠目から見たら長方形の箱のように見える軍艦から吊り下げてゆく。後で警察に突き出して終わりだ。
「まぁこれぐらいは余裕だよ」
吊り下げた後に、エンジンが大破し、艦橋も破壊されてしまった駆逐艦の残骸。破損孔に嵌め込まれるようにして隠されていたコンテナ。そのコンテナの電子ロックを解除しようと端末の端子を差し込んでハッキングしているクズハの方へと視線を向ける。どうやらハッキング技術はかなり高いようで、ぷしゅー、と音を響かせてゆきながら電子ロックが解除されたようで、コンテナの戸が開いてゆく。
今度クズハちゃんに、ハッキングについて教えて貰うのも悪くないかもしれない。そう思いながらコンテナの中を覗き込んでゆく。中には、百カッター札の札束の山や金塊が詰め込まれている訳ではなく、液体で満たされた筒が幾つか並んでいるだけだった。
「なにこれ」
「……多分、これは……クローン培養装置っ」
「なにそれ」
「クローンを作るための装置だ! 連盟の現行法ではクローンの製造は禁止されてる! こんなのがお宝……なのか!?」
「テロリストの人達にとっては、クローンで戦力を増強する事が出来るからお宝、なのかなぁ?」
凄い物かもしれないけど、私達にとってはとてもお宝と言えるものでは無かったので、正直ガッカリした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「何か言いたい事はあるか?」
「……もうしません」
その後、警察に通報して、数時間後にやってくるという重役出勤してきた彼らに犯罪者と、クローン制作装置を引き渡し、懸賞金を受け取った後に家に戻ってきた。警察からママに連絡がいったようで、初めて本気で怒られた。ついでに引っ叩かれて今アイアンクローを食らっている。痛い。
「将来、冒険者になるかもしれない。夜鬼組とのゴタゴタに巻き込んでしまったのは申し訳ないと思う。ノース、お前が強いのも分かる。でも、まだお前は初等教育が終わる前の子どもなんだ。子どもが危ない事をしたら叱るのは、当たり前だろう?」
「はい……」
「……でも、良くやった。犯罪者を捕獲したのも偉いぞ。ナキンにやってきて、初めて同世代の友達が出来たみたいだしな。あの子も、将来冒険者になるつもりらしい。大切にするんだぞ?」
こくり、と頷く。AINEの連絡先も交換した。家の近くには同世代の子も殆どいないから、初めての友達だ。
「……ん、反省もしてるようだな? ならよしっ! 今日は疲れただろう? お前の好きなイカ墨パスタを作ってやろう」
「本当!? ママ!?」
「うん、本当だ。それと、警察から貰った懸賞金はお前が好きに使え。お前の、自分で稼いだ初めての金だ」
一瞬このお金で高級パスタ料理店に行こうかなと思ったけど、やめておこう。冒険者学校への入学金にする。ヌーザは学費も出すとは言ってたけど、それぐらいは自分で確保しないといけないだろう。反社に借り作りたくないし。
そんな事を考えながら、ママのイカ墨パスタの味を想像して、自然と口角が緩んでしまう私。……だらしない表情を浮かべていたのか、こちらの方を見るママの笑みが印象的だった。
誤字脱字報告お待ちしております。それと感想と評価を貰えたら作者が泣いて喜びます。
第11話は1/10投稿予定です。