銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜   作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)

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試験開始と新たな出会い。――ハーフゴブリンの少女を添えて

 横薙ぎに振われた工具で作られた大鎌が盛大に空を切る。手ごたえは当然の事ながら無し『当千(トウセン)』による身体能力の強化精度は昔と同じように感覚を掴んだおかげで飛躍的に上昇した。が、それと同じように今模擬戦をしている彼女も腕を磨いたようだ。

 

「ふふん、わたくしも強くなったでしょう? 当然ですわよ、貴女たちが遊んでいる間わたくしは組織の敵対者を始末してきましたもの」

 

「それ誇るべきことなのかな!?」

 

 最初に会った時よりも背丈と、それと同じぐらい胸が大きくなった彼女の手に握られた剣が横薙ぎに振われる。どたぷん、と乳房が揺れて放たれた一閃を宇宙船内の地面を蹴って後ろに跳躍して回避。仕切りなおす。

 冒険者になることが運命づけられて3年間修業もしてきたし、クズハちゃんと一緒に遊んだり勉強会もしてきた。今日が試験会場に向かう日だ。新しい人生が始まる門出であるというのに、試験会場に向かう船の中で彼女と模擬戦するハメになるとは思いもしなかった。

 

「今日という今日はわたくしが勝たせて貰いますわよ……!」

 

「本当にしつこい……! 筆記試験やることになるんだから体力は温存したいんだけどっ」

 

 実は昨日、クズハちゃんと一緒に勉強会して寝不足なんだけどね。……ちょっとは空気読んでほしいなぁ。

 

 剣を構えなおして、ヌーザがもう1度こちらに切りかかろうとした所でトレーニングルームの扉が開く。

 

「っとと……性が出るのは感心だが、そろそろ目的地の星系だ。トレーニングはそこまでにしておいた方がいいぞ」

 

「クズハ……むぅ、残念でしたわね。58回目の模擬戦でノースの首を取るつもりでしたのに」

 

「模擬戦で相手を殺すのはダメでしょ常識的に考えて」

 

 出会う度に模擬戦を吹っかけて来る戦闘狂と共に部屋を出て、冷やしておいたスポーツドリンクを飲む。最新の重力制御装置のお陰で宇宙船内でも重力があるのはありがたい限りだ。

 

「このシミター星系が属するエウロスセクターにおいては殺人罪は死刑になる可能性がある。……それと、パパの船の中で本気で暴れるのだけはやめてくれ」

 

 自由星系連盟には13のセクター、および数千の星系、更には1000近い有人惑星が属している。巨大すぎる連盟においては各セクターごとに法律が定められており、星系によっては独自の法が定められている事も多い。

 私は地球の文化に影響を受けたドラマが好きなので、かつて存在したアメリカという国で例えるならば連盟が合衆国という国、セクターが州、星系が市町村、有人惑星が街と例えればいいだろうか。

 連盟の理念においては各星系は平等であるはずなのだが、実際の所は各セクターごとの経済格差は激しく、辺境と中央セクター間では決定的な差がある。搾取される辺境、裕福になる中央という構図ができてしまっている。

 

「わたくし無法者ですので」

 

「お嬢様口調で自分の事を無法者だと堂々と言う奴は初めてみたかもしれんな」

 

 この3年間で交流し、仲良くなった様子の2人の会話聞きながら窓の外を眺める。このシミター星系が辺境に比べて裕福である事を示すかのように存在している。星全体が都市(エキュメノポリス)となった有人惑星が見えた。

 あそこが第1の試験である筆記試験の会場がある惑星だ。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冒険者になる者は3つのタイプに分けられますわ。わたくしのように特殊な事情がある者。シンプルに冒険者稼業で稼ぎたい者。ロマン追いかけてる者」

 

 筆記試験で受かってるかどうか心配な私には構わず、ヌーザは私たちと同じように結果を確認しに電光掲示板の前に集まった面々を見ながら朱色の唇を動かして呟く。何しても絵になるなこいつ。

 

「ただ3つに共通してる事が1つありますわ。基本的に冒険者として大成するには金とコネが必要であるという事ですの」

 

 電光掲示板に私の試験番号が表示される。クズハちゃんのも、ヌーザのもある。ちょっと一安心。実を言えば筆記試験は連盟公用語が私はあまり得意じゃないせいで苦手なのだ。前世と全く文法が違う。

 

「何故ならば装備がいい冒険者は依頼の達成率も高いですし、家のコネクション経由で依頼も入ってきますし、そして金持ちたちでパーティーを組むことが可能だからですの」

 

「……つまり? 何が言いたいんだ?」

 

「ここに集まっている方々から現地調達で4人目を集めようとするとあまり有力ではない方と組むことになりそうであるという事ですわね」

 

 筆記試験以降は4人でパーティーを組んで各試験を攻略することになる。これは推奨条件であって3人でも攻略することは可能であるが、冒険者のパーティーにおいて1人いるかどうかの差は非常に大きい。

 私達はパーティーの4人目をこの筆記試験会場で見つけて、これから始まる冒険者試験に臨むことになる。……いい人いるのかな?

 

「まぁいなかったら最悪わたくしとノースが居ますので何とでもなりそうですけど……人数合わせでいいですので1人は適当に調達したいですわねぇ」

 

 周囲を見回すと、試験以前から親交のある人たち同士でパーティーを組んでいる様子をうかがう事ができる。冒険者においても金持ちとコネがある人が有利なのは変わらないのは世知辛いものだ。

 ……落ちた人もいる。元々パーティーを組む予定だった人が筆記試験に落ちたらどうなるんだろう? そんな疑問が脳裏をよぎるが、筆記試験不合格となった人たちは係員さんの誘導に従ってこの場を去っていった。

 

「調達って……人を物みたいに言う必要ないだろう?」

 

「クズハちゃんの言うとおりだよ。ヌーザ悪いところ出てない?」

 

 そんな会話をしてると、巨大な電光掲示板の置かれた部屋へと誰かが入ってくる。冒険者養成学校の教官と思われる背の高い男性だ。でもあの人の実力は中々だね。前世で培った対強敵センサーが反応している。

 

「諸君、まずは筆記試験の合格おめでとう。私はウンスー分校のトカチだ。君達は銀河冒険者になるための一歩を踏み出した訳だ。今回の試験は筆記試験の他にこの惑星の衛星上に存在してるホルンにおいて3日間のサバイバル、地上戦の模擬戦、フレームを使っての模擬戦、シルバーキー級宇宙船を使っての模擬戦を行って貰う」

 

「……模擬戦多くないか?」

 

「銀河冒険者は人探しなどの雑務もこなしますけど、一番冒険者として需要がある仕事は辺境セクターにおける商船の護衛。つまり海賊退治ですので戦闘に重点が置かれるのも仕方ないと思いますわよ」

 

「……だから辺境セクターへの出入りが容易なんだね、冒険者って」

 

「7日目は成績が一番優秀なパーティーに機密情報の運搬を任務として与え、他のチームが合同でそのチームの任務を阻止して貰う。どのように任務を達成するか、そしてどのように任務を阻止するのか、その手法も評価ポイントなので意識するように。何故ならば試験は筆記試験以外はネットで公開される上に、試験にどのような姿勢で挑んだのかを各冒険者養成学校が見て、ドラフト制で登用する形になるからだ」

 

「つまり、この試験の場も冒険者としての名を挙げるための場であるという訳ですわね。裏では誰が試験で活躍するかを賭けてたりするんですのよ」

 

「……もしかして今回も賭けてる?」「ご名答、その通りですわ」

 

 彼は説明を終えると壇上を降りていき、後は自由解散となった。

 その後、私たちは一旦あと一人を手分けして探すことになったんだけど――

 

「へへ、テメェみたいなハーフゴブリン薄汚ねぇ芋娘、この場所には不釣り合いだぜ?」「ケガしないうちに帰りな、お嬢ちゃん」「というかお前1人なの? どうやって冒険者になるつもりなんだ? あぁん?」

 

 見るからにガラが悪い連中に小さい女の子が絡まれていた。腰にまで届きそうな黒髪の合間から小さな角を覗かせてるのでハーフゴブリンと言った所だろうか?

 

「――あ、ごめん。待たせちゃったね? 君も合格してたみたいで私も嬉しいなっ」

 

 見過ごすわけにはいかない。母から教えられた通り、困った人に手を差し伸べる。絡まれてる彼女の方へと駆け寄って、その小さな手を取る。震えていた少女の手を優しく自らの手で包み込んで、前髪の合間から覗く赤い目と自らの目を合わせる。

 

「ヒーロー気取りが? 田舎もんが」「へへへ、俺たちは一等星冒険者から目をかけられてて最新鋭のフレームを貰ってるんだぜ。お前みたいな田舎もんと格が違うんだよ格が」「お前もこの場に不釣り合いだ、失せろよ雑魚」

 

 ここで暴力に訴えかけるのは簡単だが、そんな事するわけにはいかない。何せ彼らはまだ15歳ほどの子どもで、私の、少なくとも中身は80歳近いジジイなのだ。……最近は見た目の方に精神年齢が引っ張られてる気もするが。

 

「随分と都会の人は品があるんだね? 私は田舎出身なもので、都会らしいそんな品のある言葉遣いはできないよ」

 

「……んだと?」

 

 どうやら私の皮肉を理解できるだけの知能はあるらしい。顔を真っ赤にしながら鬼のような形相でこちらを睨みつけてきた。ハーフゴブリンの子が小さく震えあがる。

 

「いやぁ、随分と品があるようで……私はとても都会の人の品性に感動しておりますよ」

 

「……模擬戦中で事故死が起こる事も稀にあるそうだ、気を付けるこったな」

 

 ここで事を起こすのは彼もまずいと判断したようで、そんな捨て台詞を吐いて去っていった。ふふん、こんな煽りに乗るとはまだ若いな少年。

 まぁ、威勢がもし地上戦の模擬戦で彼らと遭遇したら軽く捻ってやるとしようかな。

 

「あ、あの……ありがとうございます。私、シオン。シオン・ビショップって言います」

 

「ふふ、どういたしまして、シオンちゃん。私の名前はノース・トラムだよ! ……えーと、他にパーティーを組む子がいないなら一緒に組まない? 3人いるけど、1人空いててね」

 

「私でいいのなら、是非!」

 

 これで4人パーティー結成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「丁度足りない1人を調達して来るとは中々有能ですわね。評価しないでもないですわよ」「そこは素直に評価しとけよ」

 

 

 シオンちゃんを2人に紹介し、改めてこの4人でパーティーとして活動することになった。そしてまず最初に決めないといけないのはパーティーの名前だ。

 銀河冒険者においては冒険者ごとの名を売るのは勿論大切であるが、パーティー全体の名を売るのも重要だ。仕事が回ってくるかどうかに直結すると言っていい。まずは

 分かりやすく、覚えやすいパーティー名が重要になる。なるのだが……。

 

「じゃあパーティー名:銀翼鉄十字銃剣突撃連隊なんてどうですの?」

 

「長いし覚え辛いわ」

 

 難航していた。

 

「え、えーと……その、発言していいですか?」

 

「いいよ、シオンちゃん。いい案があるならどんどん出してね」

 

「地球という惑星に存在する日本という国には漢字というものがありまして……『蒼星』と書いて、『ブルースター』と呼ぶというのはどうでしょうか?」

 

「中々見どころがありますわね。気に入りましたわ」

 

 戦闘狂のお嬢様も好感触、クズハちゃんもうんうんと頷いている。勿論私も、この名前はいいかなと思った。格好いいし分かりやすいし。

 

「それじゃあ、私たちのパーティー名は『蒼星(ブルースター)』で決定、だねっ」

 

 後に、銀河の歴史にその名を刻むことになる冒険者パーティー、蒼星(ブルースター)の名が生まれた瞬間だった。

 

 

 




誤字脱字報告お待ちしております。感想と評価も貰えると作者が泣いて喜びます。
次回は1/13の18時に投稿予定です。
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