銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜   作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)

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メスゴリラ、あるいは戦場を駆ける死神

 3日間のサバイバルは快適に過ごすことができた。初日に大物を仕留めたお陰で食料に余裕ができて、それを元に他のパーティーとトレードできたのも大きい。

 やっぱり『氷王(ヒョウオウ)』の魔法は凄く便利で食材を冷凍保存して長持ちさせることができるのはサバイバルにおいては圧倒的なアドバンテージだった。これのおかげで新鮮な食材という交渉において物凄く有用な手札を使えたからね。

 

 サバイバル終了後、私たちは惑星ホルンに設置された冒険者養成学校の施設で暖かいお湯で体の汚れを洗い流すという文明の利器の偉大さを学んだ後に、次の試験についての作戦会議をすることになった。

 

「えーと、次の試験は地上戦だよね?」

 

「ええ、そうですわよ。10回の総当たり戦で勝利した回数が一番多いパーティーが陸戦最強ですわ」

 

 紅茶を一口。芳醇な茶葉の香りがつーん、と鼻を抜けていく。お茶菓子として用意されたクッキーもぱくりと一口。うん、甘くて美味しいね。

 紅茶を淹れてくれたシオンちゃんには後でお礼を言っておかないとね。

 

「冒険者において必要なのは戦闘能力。これは昔からの伝統ですわね。元は先の大戦で行き場を失った軍人たちの受け皿として用意されたのが冒険者としての地位でしたもの」

 

 ……大戦の後に退役軍人の扱いをどうするかについて悩むのは何時の時代、どの世界においても同じという事か。

 私が前世で元帥を務めていた魔法帝国においては常に戦争をし続けるという斜め上の方法で解決していたけど、まともな国ならそうもいかないよね。

 

「で、その強いだけのバカと言って差し支えない荒くれ者達の中から政府に忠実で、それでいて多少マシな連中を選抜し、世の為人の為に働かせるために作られたのが冒険者養成学校だった、かな。……パパもそう言ってたよ」

 

 猫舌なクズハちゃんはふーふーと紅茶を冷やしていってゆっくりと飲んでいった。でも少し暑かったようでちょっと顔をしかめる。

 

「……荒くれ者達の中から多少マシな連中を選抜する……。……ですか」

 

「あー……確かに説明会の後にシオンちゃんに絡んでた子たちは荒くれ者と言って差し支えない子たちだよね」

 

 思い出すのは見るからにガラの悪そうな連中。それでも結構あの子たち戦い慣れてそうだったよね。誰かから戦闘指導を受けているのか、はたまた経験を積まざるをえない環境にいたのか……。

 

「地上戦のルールはシンプル。支給品の装備か、あるいは持ち込んだ装備を使ってパーティー同士で遮蔽物が点在してる会場で、戦闘開始を告げるアラームが鳴ると同時に戦闘開始。対戦相手を全員降参させるか戦闘不能に追い込めば勝利ですわ」

 

 ……装備の持ち込みオーケーか、なら私が持ち込むべき装備は……。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グーイ・スィーは侮っていた。自らの前に立ちふさがってきたパーティーを。彼女達のパーティー名は『蒼星(ブルースター)』と言うらしい。もっともその名前を彼は記憶するつもりは一切なかったが。

 根拠も無しに彼女達を侮っていた訳ではない。グーイは自らの戦闘能力に自信があった。

 商人だった自らの親を目の前で殺したゴブリンの海賊を追い詰めて仕留めるために、治安当局よりもフットワークの軽い冒険者を志したのだ。

 スラムで暮らしながらコネを作り、仲間たちを集め、その上一流の冒険者である一等星からも目をかけられている。自分たちが今着ている高価なパワードスーツもスラムの非合法スレスレの仕事をこなして入手したものだ。

 

 いわば自分たちはエリートだ。冒険者として戦い、敵となる連中を叩き潰すための。特にグーイは相手のパーティーにハーフゴブリンの牝がいるのが気に入らなかったし、自らを侮辱した金髪の少女に対して恨みも抱いてた。逆恨みである。

 

 それに相手の装備もこちらよりも大幅に劣っている。非殺傷モードに設定したとはいえ凄まじい連射力を誇る重ブラスターを全員が装備し、サイドアームとして振動剣を鞘に納めて吊るしている、防具もパワードスーツで固めているこちらに対して相手は支給品の装備。

 ブラスターは拳銃型であるし、防具も急所を守るためのプロテクターだけ。

 その上あの金髪のメスガキは拳銃すら装備せず工具で作られた大鎌のみ。こちらを侮ってるとしか言いようがない。

 

 試験会場の至る所には遮蔽物となるコンクリートの壁が設置され、シールドで仕切られた場所には他のパーティーメンバーが観客たちとして見受けられる。ここは1つ、圧倒的な実力差というやつを見せつけて名を売るとしよう。そう、グーイは考えた。

 

 ――その考えが浅はかであるという事に戦闘開始を告げるアラームが鳴ると同時に理解させられることになる。

 

「『当千(トウセン)』」

 

 戦闘が始まると同時にあの金髪の少女は文字通り目の前から消えた。

 いや、消えたようにしか見えなかった。動きが目でとらえることができない。

 

「……! 怯むな、弾幕を張れ! 畜生、魔法使えたのかあいつっ」

 

 対戦相手の1人の姿が消えたことで動揺しそうになるが、すぐに声を張り上げて仲間に指示を飛ばす。自分もMG42を模して造られたと噂される重ブラスターを構えて引き金を引く。

 弾幕が宙を彩るが彼女を捉える事はできない。

 

「ん、この程度なら『矢傘(ヤカサ)』を展開するほどでもないかな。遅いよ?」

 

「な……あの弾幕の中を突っ切ってきたのか……!? うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ジャン!? うそだろ、ジャンがやられたのか!?」

 

 死神を思わせる大鎌が唸り、鎧に叩きつけられる。パワードスーツを着込んだパーティーの中で一番の大男が鎧越しに伝わる強烈な衝撃で悶絶しその場に崩れ落ちる。……最新鋭のパワードスーツには当然の事ながら耐衝撃装甲も存在してるが、それさえも貫通する一撃が最初の犠牲者となった彼の意識を刈り取ったのだ。

 

「ち、畜生! 怯むな、接近戦用意! 『当千(トウセン)』」

 

 グーイもスラム時代に習得した魔法を使用し、魔力を全て注ぎ込んで自らの身体能力を一気に強化する。急激な魔力の消費に視界が歪みそうになるし、次の模擬戦では魔法を使えないという不利を被る事になるが、なりふり構う事はできない。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「畜生、チェンもやられたのか!?」

 

 魔法を使っている間にも重ブラスターの弾幕を金色の一陣の風が通り抜ける。その風は死神。

 大鎌が今度は横薙ぎに振われてパワードスーツに身を包んだチェンが軽々と吹き飛ばされて10mは距離が離れていたであろうコンクリートの壁めがけて一直線。大砲が直撃するかのような着弾音を響かせてそのまま崩れ落ちる。

 

「残ったのは俺とピースだけかよ! ち、畜生……お前なんか怖かねぇ……! 野郎ぶっ飛ばしてやらぁ!」

 

「落ち着け! ピース! ここは体勢を立て直すべきだ!」

 

 1分も経たないうちに2人が戦闘不能に追い込まれて恐慌状態に陥ったピースが振動剣を構える。一気に駆け出す。そのまま剣を正面から死神に突き出す。

 突き出された剣の切っ先は死神を捉える事はできない。ひらりと金髪を宙に舞わせていきながら最小限の動作で回避。そのまま腕を捻りあげる。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「降参する?」

 

「します、します! 命だけは許してください!」

 

 パワードスーツの関節部を折り曲げんばかりの勢いで腕を捻りあげられた彼は即座に降伏。解放されるとその場に崩れ落ちた。

 

「……凄い怪力、メスゴリラかな?」

 

 ここまで一方的な蹂躙となると逆にグーイは冷静になった。しかしその何気ない一言が彼女の逆鱗に触れる。

 

「……女の子に対してメスゴリラ呼ばわりは躾がなってないようだね? 坊や」

 

 彼女の目つきが鋭くなり、底知れない威圧感を感じる。さながら蛇に睨まれたカエルのような心境をグーイは堪能することになり、その次の瞬間――

 

 ――来る。スラムで磨かれた数多の戦闘経験から彼にサイドアームの振動剣による横薙ぎの一撃を選ばせた。その読み通り金色の弾丸となって飛び込んできた彼女の一撃を何とか受け止めることに成功する。

 が、特殊合金製の振動剣が、まるで暴走重機関車の前に置かれた丸太のようにあっさりと甲高い音を立てて弾け飛んだ。

 

「嘘だろ……!?」

 

「残念だけどこれが本当。これで終わりだよ」

 

 特殊合金と最新鋭のテクノロジーで作られているはずの振動剣がへし折られて折れた切っ先が宙を舞う。少し気の抜けるような音を響かせて地面へと突き刺さった。

 

「降参する?」

 

 首筋に押し当てられた死神の鎌を見て、もはや彼に抵抗するだけの力はなかった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会場……静まり返ってたな。ノース、少しは手加減してやったらどうだ?」

 

「10戦10勝、しかも貴女1人で対戦相手を全員ぶちのめしましたものね。……少しはわたくしにも残してくれればよかったのに」

 

「7戦目から対戦相手が戦う前から降参するようになってくれたから楽だったけど……。ノースちゃん強いんだね」

 

 戦闘というよりも蹂躙という言葉の方が近いかもしれない。まぁ戦闘経験も少ないだろう若者たちにまだ負けるわけにはいかない。それに、今回、私が頑張ったのにはちゃんと幾つか理由がある。

 

「私が1人で突っ込んだ理由には理由があって、ヌーザの手の内を晒したくなかったのと、クズハちゃんとシオンちゃんは陸戦はあんまり得意じゃなさそうだったから頑張ろうと思ったんだ」

 

「おやおや、手の内を隠す、ですか。その理由を聞いても?」

 

「……最終試験は試験で一番いい成績のパーティーは他のパーティーからターゲットにされるでしょう? その時の隠し玉としてヌーザの手札は温存したいなって」

 

 あらあら、とこちらの意図を察したようでくすくすとヌーザは笑みを浮かべる。クズハちゃんも、シオンちゃんもヌーザに少し遅れたけど私が何をしたいのか理解したようだ。

 

「えーと……。一番の成績で最終試験まで突破するつもりという事ですか?」

 

 うん、シオンちゃんご明察。君が名前を付けた『蒼星(ブルースター)』に箔が付くでしょう?

 

「……最終試験でターゲットにされるパーティーが任務を達成することは困難と聞く。当然だ。他のパーティー全てから狙われる訳だからな。……だが、その無理を通そうという訳か」

 

「そう、その通り! 最終試験までトップの成績で駆け抜けて、その上で困難とされる任務を達成するなんて凄い事だと思わない? 私達の名が多いに売れるよ? 冒険者というのは名を売るのが重要だからね」

 

 そう、名を売る! これはとても大切な事。前世でも私が意識していたことで、大鎌なんていう戦闘には向いてない武器を使う理由の一つだった。まさか今生でも大鎌を使って名を売ることになるとは思わなかったけどね。

 まぁ今回は私だけが名を売ることになってしまったのは少し申し訳ない事をしてしまったけど、今後は皆の活躍する場は絶対にあるだろうしそこは納得して貰いたいかも。

 

「あは、あはは……。私もノースちゃんに負けないように名を売れるように頑張るよ」

 

「……まぁ、冒険者として活躍するうえでは名を売っておいた方が得か。分かった、次の試験では私も活躍してみせよう。頼りにしてくれ」

 

「ふふん、面白いこと考えますわね。ええ、そうですわね。そう来なくては。目指すからには一番を目指したいですわねぇ。分かりますわよその気持ち」

 

 今回ばかりはヌーザと気持ちが一緒になったかもしれない。どうせなら目指すなら一番だよね。

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お待ちしております。それと感想と評価を貰えたら作者が泣いて喜びます。
第16話は1/15に投稿予定です。
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