銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜 作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)
「前々から思っていたが人間離れした戦闘能力を持っているな。……どこで身に着けたものなんだ?」
一番を目指す、と決めた後に一泊して朝のシャワーを浴びた後に朝ご飯のトーストをぱくりと頬張っているとクズハちゃんがこちらの事をじーと見つめてきた。
……若干目の奥にこちらに対して引いてる感情が見えるような気がする! メスゴリラ呼ばわれされたけど私、そんなんじゃないからね!?
「えーと……それは、ちょっと昔に色々あって……」
「グーイの奴、戦闘後にノースから『その装備に頼りすぎる癖、直したほうがいいよ』って言われて凄く落ち込んでいたぞ。……その戦闘経験、10歳そこらで身に付くものなのか?」
ぐっ……!? 調子に乗り過ぎたかな? 家族でのんびり過ごすという夢が少し遠のいた気がする……いやまぁ、ここで一番を目指せば私以外の子たちにも活躍の場が開けるかもしれないし仕方ないことなんだよ。うん、本当に。
今回は血のインクで私の人生を書くようなことはしたくないのに……もうちょっと自重した方がいいかな?
「えーと……それは、うーん……」
「その、私も気になるんです。魔法って習得するのに物凄く時間かかるものじゃないですか? そのせいで技術で代替可能な魔法は駆逐されていきましたし。現在でも伝わる魔法は4種のみとされております」
まずいな、これは……どうする? 私が偉人とされている男の転生体であると明かすべきか? いやでも、仲良くなったこの子たちに嫌われたくない……! 誠実さとは無縁かもしれないけど……。
「それはわたくしと幼少期から特訓をしてきたからですわ。戦闘経験もわたくしと共に積んでいったんですのよ」
「ふぅん? まぁそう言う事にしておこう」「な、なるほど……?」
「それに、魔法については彼女は特別な才能がありましてね。わたくしも知らないような魔法の数々も使えるんですのよ。その首の価値は計り知れませんわね」
「あはは……う、うん……ヌーザとはずーっと小さい頃からの関係だからね。うん、だから私も魔法を沢山使えるし、戦闘も得意なんだよ」
嘘だ。昔は息を吐くかのように嘘を吐けたけど今はそうじゃない。……嘘をついていくと心がずきん、と痛む。
いずれは本当の事を言わないといけないかもしれない。私が本当は、魔法帝国の皇帝を討ち取り、今では偉人となぜか崇められているブラハ・レールであるという事を。そして、前世では大勢の人を手に掛けた大悪人であるという事も。
その人生は虚飾に包まれていたという事も言わないといけないかもしれない。
でも、今はヌーザにフォローして貰ったお礼を言いつつ、味のしなくなった食事を私は食べ進めることにした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
次の試験会場はホルン内に作られた屋外会場だった。その横に作られたセキュリティーフレーム格納施設に私たちは案内されて、支給品の機体なら好きなものを選んでいいと説明された。次の試験の内容はセキュリティーフレームを使っての模擬戦だ。
学園が保有する機体である事を示すかのように黄色のペイントが施されてるのが特徴だね。私はあんまりこういうハイテクな装備はよくわかんないけど多分しっかり整備されてるんじゃないかなと思う。
……それにしてもシオンちゃん、熱心にゴンを見てるなぁ。そんなに珍しいものなのかな?
「で、問題はこのセキュリティーフレームを使っての試験ですわね。シンプルに機体への練度と持ち込んだフレームの性能がモノを言う試験ですわ。さて、聞きたいのですけど皆様、フレームの扱いには手慣れていらっしゃるのかしら?」
「父親に習った事はあるし筋もいいと言われたぞ」
「私は全然……この手のハイテク装備はちょっと得意じゃなくて……」
フレームの操縦には全く自信がない。はっきりいって専門外と言っていい。使わないといけないスイッチも沢山あるし、操縦桿を使っての操縦もあんまり得意じゃない。それでいて微妙な力加減を間違えると機体が転倒したりしてどうにも慣れない。
こればかりは本当に前世の記憶も役立たないし、適正もあるとは言い難いから他の子に任せるしかない分野なんだよね。
「わたくしはまぁ、実家の稼業の都合上ある程度操縦はできますわね。ですのでノースにはわたくしが乗る予定の複座型仕様のゴンの後ろに乗ってくださいまし。火器管制担当ですけど最悪、貴女には期待しておりませんので適当に魔法を使ってくれるだけで構いませんわ」
「あ、はい……」
はっきり使えないと言われるとちょっとショックかもしれない。さ、最悪セキュリティーフレームは魔法使って撃墜すればいいから……。
まぁ今回はフレーム使っての戦いの適正を見るという目的の試験だし、その方法は使えないのが悩みどころ。
「で、私が乗るのはこの電子戦機か」
「ええ、クズハの情報処理能力の高さを評価しての事ですの。偵察能力も高いですので的確に情報を教えてくださいまし」
「えーと、シオンちゃん? シオンちゃんはどうするの?」
作戦会議中も熱心に並べられたゴンを、心なしか上機嫌な様子でスキップするかのように足取り軽く眺めている彼女に声をかける。そう言えばシオンちゃんはフレームを動かしたことはあるんだろうか?
「え、えーと……すいません。つい、画面越しじゃなくて本物のゴンを見ることができてはしゃいじゃって……。それにしてもゴンっていいですよね。プワンより大幅に装甲が増えたお陰で原型機よりも大幅にマッシブになって角ばった見た目ですし、何より強化されているのは原型機よりも大幅に上がった推力で――」
「ストップストップ。……え、えーと、シオンちゃんのゴンへの熱意は分かったから……。乗れる? フレーム」
普段はあまり喋るタイプの子じゃないのに突然、堰を切ったように言葉を浴びせられてちょっと驚いた。私に指摘されて少し間が空いた後に彼女の頬が真っ赤に染まる。ちょっと可愛いかも。
「え、ええ……その、シュミレーションですけど……沢山乗った事があります」
「ああ、ネットで銀河中の対戦相手と戦えるアレね。私の家にもあるし、今度一緒にやる?」
フレームの操縦系統をほぼ完璧に再現して操縦のやり方を学ぶシュミレーション装置がうちの家にもある。まぁ送ってきたのはヌーザだったけど。あの装置にはフレームの操縦を学ぶ以外にも原型の最新鋭機を使って銀河中の人達と模擬戦もできたんだったかな。ヌーザと何度か対戦した事があるけど何度も完膚なきまでにボコボコにされてしまった。
やっぱり私にはフレームは向いてないという事を改めて分からされることになってしまって密かに枕を濡らしたのは内緒だ。
「……! ええ、ぜひっ」
うん、シオンちゃんはやっぱりこの鉄の塊と言って良いフレームが好きなんだね。キラキラと輝く目を向けられてしまうとこちらも思わず笑みがこぼれてしまった。
「えーと、私が乗る機体は――」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『皆さん、数日ぶりですね。前回の地上戦、私たちも観客席で見てたんですよ。……大暴れでしたね、ノースさん』
『あはは……。ちょっと張り切りすぎちゃったかもね、うん』
パーティーの面々と共に機体に乗り込んで模擬戦の会場へと向かう。木々を切り開かれて作られた開けた場所には大型のコンテナなどの遮蔽物の数々設置されている。前回の模擬戦会場と同じ趣を感じるね。
通信機越しに相手の声を聞いて返答しつつ、彼我の戦力差を分析する。
相手の機体はゴンよりも多分最新の機体。装備は後衛を担当する2機が105mmライフルを両手に装備し、肩部にはスモーク・ディスチャージャー。前衛は両手に60mm対艦ショットガンを装備したのが1機、もう1機は両手にフレーム用大型振動剣を装備している。
対戦相手の魚人チームはセキュリティーフレームの数々を生産して販売しているルルエ社の重役のご子息たち。当然と言えば当然だけど、フレームを使っての戦い方は熟知してるはず。
となると今回の戦いはかなり厳しい戦いになるかな……? 魔法の使い所も見極めなきゃね。
戦闘開始を告げるアラームが会場に鳴り響き、それと同時に1機が空を駆けるかのようにスラスターを吹かせて飛び上がる。
『シオンちゃん!? 突出は危険だよ!?』
『――大丈夫です。こう見えても私、フレームの操縦には自信があるんですっ』
プワンよりも強化された推力をそのままに装甲を減らして高機動化を実現したシオンちゃんの駆るゴンが空中でスラスターを小刻みに吹かせて姿勢制御。空中で迎撃しようとした敵パーティーの弾幕を弄ぶように回避する。
支給品の機体を整備している整備士さんを珍しく熱心に説得してて何事だろうと思ったけど、その腕のペイントを描いてもらうためだったんだね。
腕に描かれたペイントは『リボンを首輪に巻いた番犬』。よっぽど自分の腕に自信があるみたいだね。
『あのペイント……!? まさかマリモセクターの金色の恒星か!?』『油断するな各員! 相手は賭けシュミレーターバトルで112戦無敗のトップエースだ!』『ちっ、なんで弾が当たらないの!?』『さすがは銀河ランク9位の猛者というべきでしょうかね……! 各員、弾幕を展開しながら隊列を組みなおしますよ!』
混線している無線から相手の混乱している声が聞こえてくる。傍から見てもびっくりするぐらいの弾幕が張られてるのにシオンちゃんの機体は軽々と前衛さえも乗り越えて後衛に吶喊。
両手に装備されている振動剣が後衛の内1機に横薙ぎに振われて激しい衝突音が響き、戦闘不能を知らせる耳を揺さぶる電子音が鳴る。
『あらあら……シオン、思った以上にできますわね』
105mmライフルがシオンちゃんの機体に突きつけられるけど遅い。振り向きざまに突き出された振動剣の一撃によってライフルがへし折られて、続けざまの一撃によって相手の機体は戦闘不能に追い込まれる。
戦闘不能に追い込まれた機体を踏み台にして跳躍。スラスターを吹かせて前衛の2機に飛びかかる。
――残りの2機が戦闘不能に追い込まれるまで30秒もかからなかった。
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