銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜   作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)

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銀河メスゴリラ初陣。橋がないなら作ればいいじゃない

「それでは、こちらにどうぞっ! 床が散らばってますので足元に気を付けてくださいね」

 

 考えを切り替えて、プワンが保管されている格納庫へと向かう。工具やタイヤが転がっている散らかった室内。その開けた場所。牽引式のトレーラーの上で横に寝かされた二足歩行式のフレームが窓から差し込んできた光に照らされる。剥げていた塗装も塗りなおされて艶を取り戻した機体がきらり、と輝いてるように見えた。

 

「おお、剥げていた塗装も直してくれたんだね」

 

「こちら、サービスとなります! お得意様には感謝と誠意を、ですっ! 因みに塗装は私もお手伝いしたんですよっ」

 

 我ながら会心の出来だ。まだまだメカニックとしての腕は半人前。でも、何時かは母の跡を継いで様々な人の役に立てる人間になりたい。ローイおじさんが機嫌が良さそうな合成音声を発声させているのを聞いて、私も自然と頬が緩んでしまうのだった。

 

「ノース、帰ったぞ~。ちゃんと店番できてたようで偉いぞ」

 

「あ、ママ、お帰りなさい! 今日は早かったね?」

 

 昼過ぎ。温めた冷凍イカ墨パスタを頬張りながら、普段と比べて早めに帰ってきた母へと視線を向けた。母の機嫌は良いみたいだし、どうやら今日は勝ったらしい。何よりな事だ。

 

「今日は万馬券を当てたからな! 夜は久々に街に行ってセタナで何か食べないか? 好きな物食べていいぞ」

 

「本当!? えへへ、じゃあセタナでイカ墨パスタ食べる~」

 

「お、おう。お前の食べたい物がそれなら構わないんだけど。わざわざどこにでもある外食チェーン店でも食べたい物か? それ」

 

「美味しいからね」

 

 実際イカ墨パスタは美味しい。どこで食べても。大好物だ。

 

 今日の夕食を心待ちにしながら昼食を食べ終えた頃。ドアが開いて誰かが入ってきた。

 

 メイド服と呼ばれる物に身を包んだ、女性たち。胸には黒いリボン。そしてリボンタイには星空へと飛び上がろうとしている蝙蝠の羽を生やした男のシルエット。何より目を引くのは、ショルダーホルスターに収められた特徴的な形状の銃。確か、ブルームハンドルと言う拳銃だっただろうか。大昔に地球で人気だった火薬銃を現代に蘇らせたモデル、らしい。そのような記事をプラ・ネットで見た気がする。

 

 明らかに様子がおかしい連中だ。

 

「ディア・ケヒさんですね? 私は夜鬼組のルン・バーツと申します」

 

 入ってきた連中のまとめ役はバーツと言うらしい。犬耳と犬の尻尾。所謂ワードッグと呼ばれている種族か。初めて見る。

 

 夜鬼組、とバーツが名乗ったその瞬間に、私の手は握り締められて行って思いっきり引っ張られることになった。私の手を引きながらママは裏口を目指してるようだ。

 

「何処から嗅ぎつけられた!? ノース、逃げるぞっ」

 

「え、に、逃げるって何処に!? と言うかあの人たちは!?」

 

 裏口のドアノブを母が開こうとしたその瞬間、母のすぐ横にあった空になり放置され、錆だらけになったオイル缶に風穴が開く。一発の銃声。

 

「ディアさん、私達も出来れば穏便に済ませたいんですよ。ちょっと話をして貰えませんか?」

 

「サムター星系のヤクザ者共が! 火薬銃をいきなりぶっ放して来る相手に大人しく話なんてする訳ないだろっ」

 

 私の手を引きながらママはドアをタックルで開いてゆき、そのまま家の裏に停車させていた車の方へと駆け出す。しかし、こちらの移動手段を放置するほど、メイド連中は馬鹿では無かったようだ。既に車の周囲には銃声を聞きつけて火薬銃をホルスターから抜いて臨戦状態となっている構成員。数は二人。

 

 一人はこちらが逃げようとしてる事に気が付いた様子で、箒の柄に似たグリップを握りこんでゆきながら引き金へと指をかける。狙いは、銃口の向きから察するにママの足。

 

「『矢傘ァ!』」

 

 かつての戦闘経験が思い浮かぶ。そして脳に無理やり刻み込まれた記憶を呼び起こす。イメージする。敵の実体弾、あるいは光線を自らが弾く姿を。

 魔法による現実世界の事象を捻じ曲げる行為は木彫りのスプーンで石像を作るかのような難易度だ。本来ならば。だが、前世で禁術によって古の賢者の記憶が刻み込まれた私ならば、この魔法を実現するためのイメージは簡単にできる。

 咄嗟に、私は、前世で一番使ったかもしれない魔法を使ってしまった。だが、着弾の衝撃は、空中に現れた幾何学模様の「壁」に阻まれ、火花を散らして虚空に落ちた。

 

「なっ、シールド展開装置でもあるのか……!?」「それか魔法使えるのか、こいつ」「馬鹿な、魔法使いだと!?」

 

銃撃した方も、攻撃された側も驚愕の表情を浮かべている。でも、気にする暇は無い。ママと逃げるための最適解を導き出す。

 

 考えろ、私、何度も前世で人を殺めて来ただろうっ! その力を大切な人を守る為に使え!

 

 魔力を練り上げて、イメージする。少女の体ながらも、敵をねじ伏せて叩き潰す自らの力を。塞がれた道を抉じ開ける怪力を。敵よりも早く動く脚力を。

 

「『当千』」

 

 魔法と言うのは習得するのは時間がかかる。が、一度習得してしまえば体が感覚を覚える。その言葉が正しいという事を私は身を持って実感することになる。転生してから初めて魔法を使う事になった。だが、多少魔法の強度は落ちてはいるが、体に力が漲る。これならば負けない。

 

「おい、魔法使いがいるとは聞いてな……うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「リーン!? うっそぉ、リーンを片手で投げ飛ばして……きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 一人は地面を蹴った反動で加速して突っ込んで、袖口を掴んで片手で思いっきり茂みの方めがけて投げ飛ばす。十メートルほどの距離があっただろうが狙い通り茂みの中へと彼女の事を投げ入れることができた。もう一人の方は相方が投げ飛ばされて呆気に取られてる隙をついて腹部に頭突きを一発。鳩尾に綺麗に入って唾液を口から飛ばしてゆきながら蹲って悶絶。

 

「え、は? ……の、ノース?」

 

「ママ、説明は後、すぐに逃げようっ!」

 

 困惑するママを急かして私も車に飛び乗る。スイッチが押し込まれてゆくと、生体認証によってエンジンが起動し、アクセルを踏み込んでゆくと一気に加速して、今まで住み慣れた家が遠ざかってゆく。多分、もう戻ることが無いのだろうと思うと寂しくなった。

 

「……色々と言いたい事があるが、まぁその、あたしから先に話そうか。あいつ等は夜鬼組。サムター星系って言う自由星系連盟の首都星系に拠点を置いてる組織だ。……銀河規模のマフィアだな。そいつ等の組長家の家宝を。ブルボン家の家宝を、昔盗んでな。……当時、所属していた組織から足抜けするのに必要な事だったんだ」

 

「……ママが理由も無く誰かから盗むことなんてしないって私は信じてるよ。それで、夜鬼組の連中は家宝を取り返しに来た感じかな。……でも察するにもう家宝はママの手元に無いんだよね?」

 

「……当時所属していた組織、辺境セクターのテロ組織だな。名は『荒野の夜明け』……の末端の末端。あたしと……お前の母アイリは工作員だった。で、当時上の連中が求めていたのがブルボン家の家宝だったって訳だ。足抜けするために盗んで……それを上に届ける途中に、お前の母はお前を産んだ後に死んじまった。届けた後家宝がどうなったかは知らん」

 

 産まれた時、何を言ってるか当時の私に全く理解できなかったけど、そんなやり取りがあったのか……。

 

 と言うか本当に私、疫病神だな。母は私のせいで命を落とした。

 

 表情に出ていたのか、助手席に座った私の頬をハンドルから片手を離して撫でて。

 

「アイリが死んだのは、お前のせいじゃない。そうだな、強いて言うなら運が悪かっただけだ。それと、お前の事情については……覚悟が決まってから話してくれたらそれでいい」

 

「……ありがと、ママ」

 

「宇宙港に泊めている船は使わない。とある場所に隠しておいた脱出用の宇宙船を使って逃げる。あの船はお前が産まれた場所でも――」

 

 後方から猛スピードで迫ってくる黒塗りの車。メイドが助手席から身を乗り出す。風圧によってホワイトブリムはどこかへ飛んでゆく。しかし構うことなく、狙撃仕様の重ブラスターを構え、スコープを覗き込んでいた。その姿をフロントミラー越しに私が確認する。そしてワンテンポ遅れてママも気が付く。

 

 眩い光線がブラスターから放たれて、予め展開しておいた『矢傘』によって守られている車に叩きつけられる。幸いな事に、前世で投石器の一斉斉射を受けても壊れる事が無かった私の『矢傘』は、雨を弾くようにブラスターの光線も弾いてくれた。が、後方からは黒塗りの水素エンジン四輪車が六台。大型の六輪二十トントラックが一台は迫ってきてるだろうか。少な目に見積もってメイドヤクザだけで三十人は居るかもしれない。訂正。今サイドミラーを確認したら執事服も着た奴らも居たからメイドと執事の混成部隊が三十人だろうか。

 

「ねぇ、ママ、一つ聞きたいんだけど! なんであの人達、メイド服や執事服着てるのっ!?」

 

「ブルボン家への忠誠の印らしいぞっ!」

 

「あんな服着ながら戦うなんて非効率的すぎない!?」「あたしもそう思う!」「気が合うね、ママっ! それと、右から来てるよ!」「しっかり捕まってろよぉ、ノースっ」

 

 投射武器では埒が明かないと判断したのか、執事が運転している車が急加速し、こちらの車のすぐ横に付いてくる。咄嗟にハンドルを切って機先を制し、左方向に移動し、勢いをつけてからこちらの車に横から衝撃を加えようとしていた夜鬼組の車と衝突する。衝撃でフロントバンパー損傷する音! 勢いをつけるため左方向へと移動しようとしていた事が仇となり、そのまま三回ぐらい横に回転しながら茂みの中へと突っ込んでいった。爆発炎上してないから死人は出てないだろう。多分……。

 

「アイリと一緒に八足戦車盗んだ時の事を思い出すなっ」「ママそんな事してたの!?」「因みに発案はお前の母ちゃんだぞ」「何やってるのお母さん!?」「若い頃の記憶だ! でもお前には殺し殺されの世界には関わらせたく無かった! 今回の件は本当にごめんっ」「謝ってる場合じゃないよ、後ろ、後ろ! ロケットランチャー構えてるっ」

 

 茂みの中へと突っ込んだ仲間の車を心配して離脱した車が一台。残りはトラック含めて五台。車線を変更し、こちらの左斜めに移動した車の助手席からロケットランチャーを担いだメイドが身を乗り出してゆく! 狙いは……進行方向上に存在している橋!

 

 敵の狙いに気が付いても遅い。引き金が引かれて放たれたロケット弾は独特の飛翔音を響かせてゆきながら橋に着弾。当たり所が悪かったのか崩落し始めた。またビワン政府の連中がインフラ代を中抜きして懐に入れたらしい。

 

「あいつら正気かよ!? ロケランなんて使うか普通!?」「ママ、飛ばして!」「正気か、川の中に突っ込むことになるぞ!?」「私を信じてっ!」「……分かった、信じるぞ、加速する、捕まってろっ」

 

 アクセルが一気に踏み込まれて更に加速する。タイミングを計る。イメージしろ。傾斜した壁を。傾斜角度を。

 

 ――よし、見えた。傾斜角度45度の壁!

 

「『城壁ッ!』」

 

 橋が崩落している少し手前に地面が隆起し、四十五度傾斜された石の壁が作られてゆく。加速したこちらの車はジャンプ台に突っ込んでゆき、加速した勢いそのままに飛翔! その次に衝撃! お尻が痛い!

 

「い、今のは肝が冷えたな……」「ね、何とかなったでしょ?」「出来ればもう二度とこんな事しなくて済むことを祈るよ」「また気が合ったねママ」

 

 魔力によって隆起させられた壁は流し込んだ魔力量が少なかったせいか、まるで最初から存在しなかったかのように消えてゆく。崩落した橋の手前でこちらを追いかけていた車は次々と停車していた。こちらがママに声をかけるよりも先に、既にママはアクセルを踏み込んでいて、対岸で停車している追手からどんどん距離を離してゆく。一先ずは、山場は超えられたようだ。




書き溜めがあるので明日の朝か21時には投稿できると思います。
もし面白いと感じたら評価やお気に入り登録、感想などがあれば作者が泣いて喜びます。
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