銀河メスゴリラは平和に暮らしたい 〜中身が死神と呼ばれた最強元帥の私は、転生先で宿敵のお嬢様に拾われて銀河冒険者になる〜   作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)

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狐耳の少女と船の墓標。お宝探しはトラブルの予感?

―― 銀河冒険者の地位を得られれば、一般人渡航禁止の辺境セクターに合法に渡ることができますの。

 

 スクラップで作られた山を越えて、使えそうな部品を探す。先日の来訪者の言葉を脳裏に思い浮かべる。

 

――夜鬼組は大きな組織ですが、辺境セクターへの影響力は無いんですのよね。『クロウ・ソラス』を取り戻す上では冒険者の地位は非常に役に立つんですの。

 

 錆びた鉄の匂いが鼻をつき、その独特な匂いに顔をしかめながらスクラップ山の中を進む。焼けたオイルの跡が残る部品の合間からひょこ、と小さな小動物が顔を出す。愛玩用のリスドロイド。特殊なプラスチックによって作られた本物とほぼ変わらない毛並みは薄汚れているのを見る感じ、この惑星に不法投棄されたゴミの中に混じってしまっていたようだ。

 

――このままだと少なくとも貴女の母は始末するしかありませんわ。ですが、家宝さえ回収できればわたくしの夜鬼組の若頭としての権限で、不問といたしましょう。

 

 心なしか、心細そうにしているリスに近づき、手を差し伸べる。小さく首をかしげるような仕草をした後に、私の手の方へと乗ってきた。察するに、電源が切られて放置されていたのが、何かの拍子に電源が入って動き出した、と言った所だろう。

 

――わたくしと一緒に冒険者学校に入学して、卒業し冒険者になり。家宝を探すことに協力してくださまいし。そうしてくれるなら、わたくしがお父様達を説得しますわよ? どうします?

 

 そこらへんに落ちていた、朽ちたドロイド洗浄機へと腰かけてゆき、小さく溜息を吐く。心配そうに愛玩ドロイドがこちらを見上げているのに気が付いた。

 

――わたくしが冒険者になる理由? 表向きの社会的地位を得られる、各方面とのコネも作れる、まぁ色々ありますが、一番は――

 

――貴女と一緒に学び、経験を積むことができるからでしょうか。貴女の首を取るために徹底的に学び、そして貴女の事を研究しますわよ、おーっほっほっほっほっ!!

 

「あの人やっぱり、狂ってるよね」

 

 リスの頭を人指し指で撫でながら、思ったことを口に出す。リスは何言ってんだこいつと言いたげに首を傾げて、その仕草を見て私は苦笑いしてしまった。

 

 銀河冒険者。元々はニューボルドー大戦の終結によって大量に削減することになった軍人たちの受け皿として国によって産み出された職業。主な業務は高速哨戒船を使っての艦隊が出るまでもない小規模船団の護衛。セクター防衛軍の指揮下に入っての海賊退治。各地の警察組織に協力しての犯罪者の逮捕。銀河の未探索領域の探検。ヴァタール帝国の遺跡の発掘と探索。その他諸々。

 

 銀河で宇宙海賊に次ぐ自由度を誇る人気のある職種にして海賊の次ぐらいに嫌われている職種だ。ついた仇名が公営マフィア。法律に守られている無法者。合法テロリスト。犯罪者予備軍。蔑称だけで打線? と言う物が組めるほどあるそうな。

 

 荒事に巻き込まれるとも多く、軍の特殊部隊以上に魔法を使える素質がある者が多く所属してる、と言う話もヌーザと名乗った仮面の少女から貰ったパンフレットに書いてあった。

 

 冒険者は誰でもなれるわけではなくて、冒険者学校と呼ばれる学校で卒業した者に資格が与えられる。受験資格は十五歳~二十一歳までの一定の学力を有する者。十人受験して一人しか受からない高倍率の学校だ。

 

 まぁ銀河中から冒険者になりたい人が入学試験に集まるから仕方ないかもしれないけど。

 

 入学試験の方法もまた独特で、プラ・ネットで配信される。同時接続数も多い人気配信だそうな。

 

 冒険者になろうという提案。私に拒否権は無かった。ママの泣きそうな顔が印象的だった。一番きつかったのはヌーザ帰った後、ママからごめんね、ごめんね、と泣きながら何度も謝られた事だ。

 

「……まぁ、仕方ないよね。ママに今まで育てて貰ったんだし。私が今度はママに恩返しする番だよ」

 

 はっきり言って、気は進まない。銀河冒険者と言う荒事に巻き込まれる事が多い職業に就くと言う事は。殺し、殺されの業界に飛び込むという事なのだ。母も心配させることになる。自分も傷つくし、誰かも傷つけてしまうかもしれない。だとしても、だ。

 

「ママは、私が守る。絶対にっ!」

 

 リスの頭を撫でつつ、一つ頷き決心する。そんな私の姿を、愛玩ドロイドの大きな目が見つめていた。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ何処だろ?」

 

 プワンの修理に使えそうなスクラップを探していくうちに、何時の間にか来たことがない場所に来てしまった。言い訳になるが、惑星ナキンの地形は不定期に不法投棄されるスクラップによって変動する。

 

 自宅があるエリアは比較的治安が良くて、犯罪率も高くないエリアだ。でも、他のエリアはそうではない、通報しても警察が来るまで数時間かかる場所もある。

 

 あまり遠くに行きすぎたら、また母を心配させてしまう。そう考えて、来た道を探そうとする。が、それよりも先に何処からか聞こえてきた声の方へと思わず視線を向けてしまった。

 

「た……け………て」

 

 もふもふとした狐の尻尾が廃材の隙間から見える。誰かが挟まっているようだ。その光景を見て、思わず私はそちらの方へと駆け出してしまっていた。

 

「『当千』」

 

 身体能力を魔法によって強化。そして、その辺に落ちていた鉄骨を掴んで、宇宙船のエンジンと海底作業用の二足歩行フレームの部品によって胴体部が挟まれてしまっている少女を救出するべく、鉄骨を隙間へと挟み込む。そしててこの原理でこじ開けるように、上方向から鉄骨に全力で力を込めてゆく。

 

 少女を挟み込んでいた二足歩行フレームの海底での作業用にずんぐりむっくりしてるように見える腕部品が押し上げられてゆく。僅かに隙間が空く。すかさず少女が隙間から抜け出してゆく。

 

「ふぇ……ふぇ、ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 命の危険を感じていたのだろう。実際、私が通らなかったら挟まれたまま助けも得られず、衰弱死することになっていたかもしれない。少女は凄まじい声量で泣き始めた。申し訳ないけど……う、うるさい……。

 

「びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!」

 

「……あ、あの、これ使う?」

 

「あり、が、とぉぉぉぉ……」

 

「……そのハンカチ、あ、あげますね? あはは……」

 

 結局、彼女が泣き止むまで少しの時間を要することになった。

 

「……取り乱してしまった、すまない」

 

 暫くして、落ち着きを取り戻した狐耳ともふもふの尻尾が特徴的な少女はこほん、と一つ咳払い。こちらにペコリと頭を下げて謝ってきた。青髪を後ろで纏めてポニーテールにしている。クールな印象を感じた。

 

「いえいえっ、廃材に挟まれてしまったら取り乱しちゃうのしかたないですし……。お怪我はありませんか?」

 

「うん、怪我は無いぞ、えーと……」

 

「あ、私。ノース・トラムって言います!」

 

「ノース、だな。私の名前は……えー、クズハ・アーガス。見ての通りワーフォックスの血を受け継いでいる」

 

 獣と人の特性を併せ持った新種族。かつて狂った科学者によって戦争用の生物兵器として生み出された彼らは、長い時を経て銀河各地に居住するようになった。昔は偏見と差別に晒されていたらしいけど、今ではすっかり世界に溶け込んでいる。確か、ナキン政府のトップもワーキャットの人だった筈だ。

 

「クズハちゃんですねっ、良いお名前ですっ! よろしくお願いしますっ」

 

「ああ、うむ……よろしく頼む」

 

 と、じー、とこちらの顔を見てゆく。そして狐耳をぴこぴこ、と逡巡してる事を示すかのように動かした後に、意を決した様子で口を開いて。

 

「君は、ここで暮らして長いのか?」

 

「えーと、ここに移り住んで二年ぐらい、ですね」

 

「なら、その……頼みがあるんだ」

 

「一緒にお宝を探してくれっ」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナキンでテロを起こそうとしていた連中が、連盟政府との戦争に備えて用意していた軍資金。それの隠し場所が示された地図をプラ・ネットの独自ルートで仕入れた」

 

 箱型端末。スマートフォンと呼ばれるものを取り出してこちらに地図を見せて来る狐耳の少女。因みにこの端末のモデルは古代に流通していた電子機器を現代の技術で蘇らせた物らしい。

 

 懐古趣味ここに極まりであるけど、デザインの流行と言うのは流行り廃りを繰り返して、過去の物が再評価されて再び流通する。その無限とも追われるループを繰り返して来た。なので次に流行るデザインはスマホの次に流行った●●型デバイスであると予言していたコメンテーターの言葉を思い出す。

 

「むむ? 聞いているのか?」

 

「あ、聞いてるよっ、クズハちゃん!」

 

「なら良い。そしてこの地図が正しく、軍資金が眠っているとするのならば、かなりの額になるはずだ。私はこの土地の地形に詳しくない。なので、君の力を借りたい。一人でお宝探しをする危険性は先ほど身を持って知った」

 

「手に入れたお宝は山分けだ。力を貸してくれるか?」

 

 ここで放置してもこの子一人で探索するだろうしなぁ……。ちょっと話してみて分かったけど、何か焦ってるみたい感じがするし。ちょっと危なっかしいかも。うん、これは放置できない。協力しよう。

 

「うん、一緒にお宝探し、しようか?」

 

「! ありがとう、これでノース、君と私は共犯者だ!」

 

 目をキラキラと輝かせて嬉しそうに笑みを浮かべる彼女の姿を見ると、思わず私も釣られて笑みが浮かんでしまう。この子の笑顔を曇らせない為にも、私も出来る限りの事はしよう。

 

「地図によれば、ここから南方に数キロほどの場所。ニューボルドー大戦時代に大破した軍艦が積み上げられている場所だな。そこの残骸の一つにお宝があるらしい」

 

「ああ、船の墓標って呼ばれてる場所だね。リサイクルするにも専門の機材を搭載したプワンがいるから、ずーっと放置されてるよ」

 

「うむ、何かを隠すにはぴったりの場所と言う事だ。私とノース、二人きりのパーティー。私も初めての冒険だ。成功させてお宝を見つけ出そうっ」

 

 多分この子も冒険者志望なんだろう。初めての冒険に胸を高鳴らせているようで手入れがよく行き届いている尻尾をフリフリと振っている。

 

 ……ふむ。

 

 金にとてもではないけど困ってるように見えない。身なりも良いし、毛並みもしっかり手入れされている、髪も艶があって綺麗だ。なんでこの子は、危険を冒してお宝を探そうとしてるんだろう? ちょっと引っかかるけど、色々あるだろうし聞くのは野暮ってものだよね。

 

 ついでに、少し話してみた感じ、他人と喋り慣れてない感じがした。多分、私と同じように通信教育で基礎学習を終わらせているタイプの子。身なりも良い事から察するに、銀河を旅する交易商の娘か、冒険者の娘かな。

 

 ……って、出会ってすぐの女の子がどんな子か探るのは良くないね。前世で人生の大半をスパイとして過ごしたせいで染みついた職業病と言う奴だろうか。他人を疑う事を知らない、キラキラとした眼でこちらを見て来るクズハちゃんの視線に、少しだけ私の心はずきりと痛んだ。

 

「うん、冒険、成功させようね? クズハちゃんっ」

 

 なので、その心の傷を隠すように。いい子で、礼儀正しく、誰とも仲良くできる『ノース』として笑みを浮かべる。上手く笑えていたようで、クズハちゃんも尻尾を元気にフリフリとしていた。

 

 その無垢な姿を見て、私の心は更にズキリ、と痛んでしまったのは誰にも言えない秘密だ。




誤字脱字報告お待ちしております。それと感想と評価も貰えると作者が泣いて喜びます。
1/9の18時に第10話を投稿予定です。
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