暁古城が”
「あちぃ~死ぬ~。」
『古城くーん、深森ちゃんのところいってくるから!』
古城が今日の暑さで参っていると、凪沙は深森のところに出かけて行った。
「しっかし、暑くて何もやる気が出ねーな。ん?何だこれ、手紙?」
水を飲もうと部屋から出て、リビングに行くと、机の上に手紙が置いてあった。裏をめくっても名前が書いてない。
(凪沙が置いっていったのか?)
そう思いながら手紙の中身を見てみると。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界のすべてを捨て、我らの”箱庭”に来られたし』
「はぁ。もしかしてまたヴァトラーの奴からか?」
また何か企んでいるのかと思い、ため息をついていると、急にまばゆい光に包まれた。
☆
「何だったんだ今のは?ってうわーーーーーー!?落ちるーーーーー!!」
そう叫び下を見ると青い湖が広がっていた。
(これ…やばくね?)
周りを見ると他にも三人の少年少女が空に投げ出されていた。
バッシャーーーン!!!
四人は、湖から這い上がった。
古城は、雪菜に泳ぎを教わっていたので溺れずに済んだ。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場で即ゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ。」
「服がびしょびしょになったじゃねーか。」
そう言って古城は、三人に目を向けると二人の少女の服が水で体に張り付いて実に艶めかしかった。
「あ…鼻血。」
「あなた、どこ見てるのよ!変態!」
「おっ、ここにきて即発情か?」
「違うわ!変態じゃねー!こういう体質なんだよ。」
それから少しの間、女性二人から軽蔑のまなざしを向けられていた。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずその『オマエ』って呼び方を訂正して頂戴。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。」
「…春日部耀。以下同文。」
「そう。よろしく春日部さん。それで、見るからに野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様。」
(結構危なそうな奴だな~)
「で、そこの変態さんは?」
「だから体質だって!はぁ、俺は暁古城だ。よろしく。」
ため息交じりに言うと、久遠に睨まれた。
(チョー帰りたいんだけど)
「で、呼び出されたのはいいんだけどよ、何で誰もいねぇんだよ。この状況だと招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」
「ええ、そうね。何の説明もないままでは、動きようがないもの。」
「じゃああの茂みの中の奴に来いてみればいいんじゃねぇのか?」
古城が尋ねると、十六夜が驚いたふうに言った。
「おお、お前も気づいてたのか。」
「まあ…いろいろあってな。」
(色々ありすぎて神経質になっちゃったかな?)
「ほかの二人も気づいてたんだろ?」
「当然よ。」
「風上に立たれたら嫌でもわかる。」
茂みの中のウサ耳がびくっと動いた。
「ようし、出てこないんじゃ仕方ねぇ。」
そのウサ耳が出てこようとした瞬間、逆廻十六夜が明らかに普通ではない脚力で跳躍した。そしてウサ耳の女性のすぐ近くの地面が彼の飛び蹴りによって思いっきり抉れる。
「なにあれ。」
「コスプレ?」
「どんな脚力だよ。」
「「驚くとこそっち!?」」
「普通そう驚くだろ!!」
「違います、黒ウサギはコスプレなどでは―――」
黒ウサギと名乗った少女が抗弁しようとするも十六夜がまたも人並み外れた威力の蹴りをお見舞いし、それをバック転で回避する。どちらも超人レベルの技の応酬だ。
そこに春日部耀が加わり猫のような動きで周りをピョンピョン跳びまわる黒ウサギを追跡。この中で一番まともだろうと思っていたがやはりこの子も十分異常だった。
(うわぁ、これじゃあ絃神島にいたときと一緒じゃねーか。)
そんなことを考えていると、久遠飛鳥も動き出した。
「鳥たちよ、
彼女の命令に従うかのように無数の鳥たちが黒ウサギを取り囲み動くのを阻止。跳んでいた黒ウサギはいつまでも滞空していることはできずに地面に尻もちをついた。
そして三人にあえなく囲まれてしまう。
☆
「―――あ、あり得ないのですよ、学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに間違いないのデス。」
「いいからさっさと話せ」
(なんだよこの悪魔みたいなやつは!)
黒ウサギは三人に寄ってたかって虐められている。ウサギ耳を引っ張られて半泣き状態の黒ウサギ。それでも何とか気を取り直したのか咳払いをして高らかに宣言した。
「コホン。ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は貴方がたにギフトを与えられた者だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと思いまして、この世界にご招待いたしました。」
「ギフトゲーム?」
「そうです!すでにお気づきかもしれませんが、あなた方は皆、普通の人間ではありません!」
(まあ、俺は吸血鬼なんだけどな?)
「どうされましたか?」
「いや…この世界には人間以外もいるのか?」
「Yes!この世界には吸血鬼やら精霊やらいろんな種がいるんです。」
「まあそのことはさておき、皆様の持つその特異な力は様々な修羅神仏や、悪魔や、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を駆使して、あるいは賭けて競い合うゲームのこと。この箱庭の世界はその為のステージとして創られたものなのですよ!」
(恩恵ってアヴローラからもらったこの力のことか?)
「恩恵―――つまり自分の力を賭けなければいけないの?」
「そうとは限りません。ゲームのチップは様々です。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる商品の価値も高くなるというものです。ですが当然、商品を手に入れるためには”
「……”
今度は耀が黒ウサギへと質問した。
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏から、商店街のご主人まで。それに合わせてゲームのレベルも、命がけで凶悪、難解なものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ!」
(何でもありだな…)
「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?」
『ゲーム?』と首をひねると黒ウサギは、どこからともなくトランプを取り出した。
「この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに属さなければなりません。いえ、属さなければ生きていくことさえ困難といっても過言ではないのです!」
力説する黒ウサギがパチンと指を鳴らすと、宙に突然カードテーブルが現れ、ドサリと地面に着地する。
「皆さんを黒ウサギの属するコミュニティに入れて差し上げても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです。むしろお荷物・邪魔もの・足手まといなのです。」
「じゃあ、俺帰るわ。」
「え゛!?」
帰るといわれると思ってもみなかったのか、その言葉に黒ウサギは変な声が出てしまった。
(え、ちょ!計算外です。ここで怖気づく方がこの問題児の中にいらっしゃるとは!しかも一応強いギフト保持者の方々に手紙を出したからあの方も強い……筈です。だらしない人のようにしか見えませんが。でもここで帰してしまったら黒ウサギの計画がパーに……うーん。)
変な声を出してしまった以外は冷静を装っている黒ウサギも内心は冷や汗だらだらで心臓がバクバクなっている。ギフト保持者のほとんどはプライド高そうな奴ら多いから煽っておけば乗ってくるだろうと考えていたから古城の帰宅希望は予想外だった。
「いや、でもここは素晴らしいところですよ。もうちょっと考えてみては?」
「?お前なんか焦ってないか。」
「い、いえそんなことは……」
「何か理由があるなら話してくれ。だまされて入っても面白くないだろ?」
さっきとは変わった優しい目で聞いてくる古城。古城は、結構なお人好しである。そんな彼の目を見て、仕方なく話し始める。