古城は、店の前で待っていた四人と拠点に戻る途中である。
「古城さん、白夜叉様と何を話してたんですか?」
「えっと…そ、そうだ速く拠点に戻らないとな。」
古城は、ばれては困るので話題を変えてみる。しかし、問題児たちは聞く気満々である。
「何で話を逸らすの?」
「暁君あなた何か隠しているでしょう。『教えなさい!』」
「ッ!…何すんだよ!強引に聞き出そうとするなよ。こっちにだって事情があんだよ。」
「「えッ」」
全員が古城に”威光”が聞かなかったことに驚く。
「……何であなたには私のギフトが通じないの!?」
「そんなもん俺が知るか。まあ、どうせすぐにわかると思うぜ。」
そのあと古城は質問攻めにあい、『腹が立った』という理由で四人にボコボコにされてしまったのだった…
☆
「何よこれ…」
「…ひどい有様。」
四人が見たものとは、それは一言で言い表すなら廃墟。建物らしきものは見る影もない。十六夜はその辺の残骸を拾おうとするも軽く力を入れただけで、崩れてしまう。
「…魔王とのゲームはそれほど未知の戦いだったのでございます。彼らがこの地を取り上げなかったのは、おそらく一種の見せしめだったのでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間たちも心を折られ…コミュニティからも、箱庭からも去って行きました。」
皆がこの光景を見て複雑そうな表情をしている中、十六夜はこの状況を楽しみ古城は、一人ひっそりと怒りをみなぎらせていた。
(……ぜってぇ潰してやる!)
それから五人は廃墟を抜け、徐々に外見が整った家々が立ち並ぶ場所に出できていた。
この居住区で暮らしている子供たちに少し、自己紹介と挨拶をした。こんなところで生活している子供たちを見て、結瞳のことを思い出す。
(こいつらも、何もしてないのにこんな目にあってんだな……)
「それではみなさん!さっそく水樹を植えましょう!」
そう言うと黒ウサギが台座に根を張らせる。するとそこから大量の水が噴き出した。そして流れ出した水が激流になり、貯水池や、水路を満たしていく。
「こんなに水が…」
「すごいわ!」
「へえ、大したもんだな。」
これで子供たちが水を汲みに行かなくて済み、他のことにも余力を向けることが出来るとジンも子供たちも大喜びだった。
「これで少しは生活が楽になるな。」
「はい!十六夜さんのおかげです!」
☆
あれから数時間たって夜である。古城は吸血鬼だからということもあるが、明日のギフトゲームのこともあり、なかなか寝付けないでいた。
「明日か……うわっ!!」
急に外から爆音がして急いで起き上がる。そして音のあった場所に行くと、十六夜とジンの前に頭を下げている黒服の男たちがいた。
「恥を忍んで頼む!ガルドのコミュニティ、”フォレス・ガロ”を完膚なきまでに叩き潰してくれ!」
「はっ、嫌だね。」
十六夜が言うにはこの侵入者は”フォレス・ガロ”に人質を取られ無理やり言うことを聞かされていたそうだ。
「その人質、もうこの世にいねぇから。はいこの話題終了。」
「何!?……」
「十六夜さん!?」
「十六夜てめえ、そんな言い方はねえだろ!」
「気を使えってか、冗談きついぞてめえら。」
十六夜は冷たく返答する。
「人質を攫ってきたのはどこの誰だ?ほかでもないコイツらだろうが。」
その言葉に古城は言葉を詰まらせる。人質を攫ってきたのは紛れもない、この男たちだ。だが、許せないのはそんな行いをした”フォレス・ガロ”だ。
「で、では人質はもう……」
「…はい。ガルドは人質を攫ったその日に殺していたそうです……」
「そ、そんな…」
彼らの心中は言うまでもない。そんな彼らを見て十六夜は、ニヤリと笑った。
「お前らの気持ちはよ~く分かった。」
十六夜はさっきの冷徹な態度を一変させて、まるでおもしろい悪戯を思いついたように笑い、侵入者の肩をたたく。
「ガルドが、そして奴の後ろにいる魔王が憎いか?安心しろ。お前らのそして人質の敵は、コイツがとってくれる!」
そう言うとジンの肩を抱き寄せ、
「このジン=ラッセルが、すべての魔王を倒すコミュニティを作ってくれる!」
「えっ!?」
十六夜の発言に全員いっせいに驚く。十六夜の手によって『名と旗をとった魔王討伐』という目標が『全魔王討伐』にすり替えられようとしていた。
「そ、それはいったい?」
「言葉どうりの意味だ。俺たちは魔王の脅威にさらされたコミュニティを守る。守られたコミュニティは口をそろえてこう言ってくれ『押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルのもとへ問い合わせください』ってな。」
「じょ―――」
ジンは冗談でしょう!?と、言おうとしたところで十六夜に口を塞がれる。
古城は快楽主義者と言っていたが彼とてさすがに非人道的な行為を許すはずがないと思い、口を噤む。
「ガルドを倒した後のことも心配するな!なぜなら、俺たちのジン=ラッセルが魔王を倒すため立ち上がったのだから!!」
十六夜の言葉に希望を見出し、顔を輝かせる侵入者たち。ジンはすでに青ざめている。
「さあコミュニティに帰って仲間に言いふらせ!俺たちのジン=ラッセルが魔王を倒してくれると!」
「わ、わかりました!明日は頑張って下さいね!」
そう言うと侵入者達は急ぎ足に去って行った。
☆
今、三人がいるのは大広間。そこでジンが大声で叫ぶ。
「ど、どういうつもりですか!」
「どういうつもり?行ったとおりだ。魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください―――キャッチフレーズはこんなところか。」
「ちょっと落ち着けってジン。」
「これが落ち着いていられますか!魔王の力はもう理解できているはずです!僕らの敵だけでも脅威なのに、魔王を倒すコミュニティなんて流布されたら他の魔王にまで……」
「おいおい、あんな面白そうな力を持った連中が押し寄せてくる?ワクワクするじゃねぇか。」
「俺もよかったと思うぞ。押し寄せてくるのは嫌だけど。」
「ちょっと、古城さんまで…」
古城が十六夜の見方をしたのを見てジンは呆れている。
「だって、ここみたいに困っている奴らを助けることが出来るんだ。しかも、コミュニティを象徴するものもないんだ。これを期にどんどん人が集まれば魔王だって倒せるはずだ。」
「わかってるじゃねーか古城。」
「コイツはとんでもないハンデだ。こんな状況を抱えたまま、お前は先代を越えなきゃなならねぇんだぜ。」
「先代を…超える!?」
その言葉を聞いたジンは戦慄していた。それが彼が魔王からすべてを取り戻すために絶対に必要なことで、彼らが目を逸らし続けていた事実だ。
だから十六夜はジンの名前とともに『打倒魔王』を宣伝したのだ。
そしてこの御旗は同じく『打倒魔王』を心に秘めた者たちを呼び寄せるであろう。魔王の被害は、このコミュニティだけではないのだから。
「今このコミュニティに必要なのは人材だ。俺並みとは贅沢言わないが、俺の足元並みの奴らはほしい。それくらいの奴らなら、どっかに消えちまった昔のお仲間よりは役に立つだろうぜ。」
十六夜の策は筋が通っている。しかし危険なことには変わりない。
「その件を受ける代わりに一つ条件があります。今度開かれる”サウザントアイズ”のゲームに昔の仲間が出品されます。」
「へぇ、そいつを取り返せってことか?」
「そのとおりです。しかもただの仲間ではなく、元魔王なんです。」
ジンの言葉に十六夜の瞳が輝く。
つまりこの”ノーネーム”は以前に魔王を倒し隷属させていたということになる。今、その元魔王を隷属させているコミュニティを倒せば仲間は戻ってくる上、コミュニティの名をあげる絶好のチャンスなのだ。
「それと黒ウサギに心配をかけたくないので内緒にしておいてください。」
「わかったよ。」
古城はもう眠くなり、話の途中で自分の部屋で寝てしまった。それからどういう話をしていたかは、また次の機会に……
出来るだけ一週間以内に新しいのを書こうと思っております。
次回はギフトゲームですが、古城はあんまり活躍はしないと思います。