知り合いに「ギロチンマスター」の異名を持つ人物がいて、与太話で「じゃあ本当にギロチンマスター書いてみるか!」みたいな勢いだけの話が何故か実現してしまったお話。楽しんでいただけると幸いです。
※追記:いちげきひっさつ!の演出を追加しました
「ここまで来たぞ、チャンピオン ワタル !」
カントー・ジョウト地方の頂、セキエイ高原ポケモンリーグ。他の地方と異なり、カントー・ジョウト地方の計16人のジムリーダーのうち8人を倒してバッジを手に入れれば挑戦できる、最もメジャーなポケモンリーグ。そこに、一人の少年が挑み、チャンピオンへの挑戦権を手に入れていた。七三分けのメガネをかけた理知的な少年だった。チャンピオンであるワタルはマントをバサッと広げて歓迎の意を示すが、すぐに態度を困惑に改める。
「よく来たね!と言いたいところだけど……待った、待ってほしい。まずチャレンジャー、名前は?」
「シーザーです」
「よし。ここからが一番重要な質問だ……手持ちは何匹?」
「相棒一匹!カイロスだけです!」
「縛りプレイという奴かな?他の手持ちはボックスに預けて来たんだね?」
「いえ、サファリゾーンで会ったカイロス以外捕まえたことありません!」
「いやおかしいよね?」
前代未聞、と言うべきだろう。かのレジェンド、レッドですら手持ちはちゃんと六匹揃えてきたのだ。なのに、決して強いポケモンとも言えないカイロス一匹でここまで来たのだという。
「まさか、四天王戦で見せた神業をこれまでずっと…?」
「確率論でこれが最適解だと計算しました!」
「うん、それは計算と言わない……必然というんだ。【ギロチンマスター】は伊達じゃないという事か…!」
目指せ! ギ ロ チ ン マ ス タ ー
「カイリュー!“ドラゴンクロー”!」
「カイロス!“てっぺき”!」
先発で出した相棒の自慢の一撃を、鋼の様に光った肉体で受け止めるカイロスを見ながらワタルは考える。今回、万が一にも負けてはならない。何故なら、カイロス一匹に負けたとあってはセキエイリーグの名折れにもほどがある。決してカイロスを侮っているわけではない。他地方には蟲ポケモンだけで成り上がった少女もいるのだから。しかし、問題はその技構成にある。それはもう事態を聞いたポケモンリーグの会長から、絶対負けるなとお達しを受けた。
故に、ボーマンダ、ガブリアス、チルタリス、ギャラドス、リザードン、カイリューという他地方のチャンピオンも苦笑いするレベルの本気の手持ちを用意し、それをあらかじめチャレンジャーであるシーザーに伝えのだが、あっさり了承された。負けるはずがない、とばかりに笑顔で。
「“かえんほうしゃ”!」
「“ないしょばなし”だ!」
「なんだって?」
ならばと防御力は関係ない特殊攻撃である“かえんほうしゃ”で攻めるも、一瞬でカイロスがそっと手を添えて吹き込んだ言霊としか言えない言葉に威力が落ちる。まさかの採用率の低い技である“ないしょばなし”でとくこうを下げられたことで耐えられてしまったのだ。
「“ないしょばなし”だなんて、四天王やチャンピオン相手で採用する人間がいるなんてね……」
「俺のカイロスはおだやかな性格で負けず嫌いな、サファリゾーンに君臨し続けた絶対王者。特殊攻撃にはめっぽう強いが、チャンピオン相手に油断もない!“かげぶんしん”!」
「じゃあ堅実な手で来るべきじゃないかな!“しんそく”!」
“かげぶんしん”を展開しようとするシーザーとカイロス。しかし、そうはさせんとばかりにワタルが指示した超高速……否、神速の一撃がカイロスを捉えて“かげぶんしん”を展開する前に殴り飛ばす。もくもくと粉塵が充満するフィールド。
「……最初から打たないのは、なにか考えでも?」
「先鋒相手に使っていて勝てるとは思わなかったので。……ただ確信した。そのカイリューは、三匹持っているうちの、ワタルさんの相棒とも言うべき一匹だってことを。なので切りました、切札」
そう言って懐から取り出したメガリングを掲げるシーザー。レッドとグリーンという少年二人に超えられて以降、今は再編を図ってこそいるものの、四天王を張るのはこおり使いのカンナ、かくとうつかいのシバ、最近ジムリーダーから再編されたうちの一人であるどくつかいのキョウ、そして最年長のゴーストつかいのキクコだ。そうだ、本来キクコで完全に詰むはずだったのだ。しかしそれを覆して見せた手段。敵のとくせいを無視する“かたやぶり”から“スカイスキン”ノーマルタイプの技をひこうタイプに変えるとくせいに変える、合理的な奥の手。
「メガシンカ。行くぞ、カイロス!」
カロス地方かアローラ、ホウエンにしか普及しておらず、他地方では一部のトレーナーが採用しているかどうかという進化を超えた進化、メガシンカ。翅が生え、タイプもむし単体からむし・ひこうに変わった凶悪な姿。メガカイロス。ならばと、ワタルも懐からメガペンダントを取り出して、掲げる。
「まさか!?下調べはしてきたんだ……ワタルさんは、メガシンカを使わないはず……」
「それは古い情報だ。最近カロスに行って、マスタータワーで伝授してきた。僕の手持ちはみんなメガシンカできるが、させるならやはり相棒だった。そちらのここまで来たその運の強さに敬意を表して、見せよう。カイリュー、メガシンカ!」
カイリューもメガシンカ。新たな姿となって着地、空を飛ぶメガカイロスに向けて咆哮を上げる。
「“しんそく”!」
「“かげぶんしん”!」
瞬間、神風が駆け抜け、風圧だけで壁に大穴が開く。空を高速で舞いながら“かげぶんしん”するメガカイロスの分身が数体纏めて消し飛ばされた。その威力に冷や汗を流すシーザー。
「“てっぺき”!」
「防戦一方じゃ勝てないぞ!“かえんほうしゃ”!」
影分身を展開しながら“しんそく”を警戒して防御力を高めるメガカイロスだが、それを読んでいたワタルの指示で“かえんほうしゃ”が放たれ、分身がまとめて薙ぎ払われる。そして炎が燃え残ったフィールドにぽつんと残った最後のメガカイロスに、ワタルは切札を使う瞬間だと確信する。
「カイリュー!“はかいこうせん”!!」
「カイロス!避けろ!」
「無駄だ!」
息をめいっぱい吸いこんだメガカイリューから、ワタルの代名詞とも知られている極太の光線が放たれる。素早い動きのメガカイロスは容易く避けようとするも、ワタルが掲げた手をメガカイロスに向けると、なんと直角に光線が曲がってメガカイロスを追従。フィールド内を高速で駆け巡って逃げるメガカイロスだったが、直角に折れ曲がり続ける“はかいこうせん”はまるで檻の様にメガカイロスを取り囲み、直撃した。
「“はかいこうせん”は反動がでかい大技だ。その隙をカバーするために、俺達は修行をしてその軌道を操る術を手に入れた。メガシンカしている間だけだけどね。さて、君は一匹だけでここまで来た。目の前がまっくらになっているだろう。これからは、運に頼った勝ち方に頼らず堅実に……」
「何勝った気でいるんだ、チャンピオン ワタル」
「なに?だが、メガシンカした上での“はかいこうせん”の直撃を受けたんだ。耐えきれるはずが………!?」
シーザーに言われて、粉塵が晴れて徐々に見えてきた戦闘不能になったはずのカイロスを確認する。しかし、そこにはいない。まるで、跡形もなく消えた様に。
「待て、消えた……?それはまさか、“かげぶんしん”だった……?じゃあ、本物は……カイリュー!」
「残念、もう遅い。“ハサミギロチン”」
注意を促すワタルだったがシーザーが不敵に笑んでそう告げた瞬間。いつの間にか、天井にしがみついていたメガカイロスが頭頂部を下に向けて急降下。
▼カイロスの“ハサミギロチン”
▼いちげきひっさつ!!
カイリューの首を頭の鋏で捉えると、鋏を閉じながらガクンと勢いづけて首から床に叩きつけた。
「知ってるか。本来“ギロチン”というものは、上から下に振り下ろされる断頭台の刃のことを言うのだと。先ほどの“かえんほうしゃ”の炎に紛れて隠れさせてもらった。強力な技はエフェクトも派手だ、いい隠れ蓑になった」
油断させるためだったのか被っていた物腰低い青年の皮はどこへやら。傲岸不遜な物言いで邪悪に嗤うシーザー。
「貴方は一つだけ間違えている。運任せなどでは断じてない。命中率が低い?だからどうした。当てれば関係ない。一撃で決めてこその、“一撃必殺”。故に最強」
チャンピオンにも通じたことで確信を得たのか、笑いが止まらないシーザー。その前に降り立ったメガカイロスは、処刑執行人の様なポケモンをポケモンとも思ってない視線を戦闘不能になったカイリューに向ける。
「さあ次のポケモンを出せ、チャンピオン。全ての強者をギロチンを持って処す―――【ギロチンマスター】に、俺はなる!!!!」
ワタルは、自分たちの認識を改める。目の前で両手を掲げ悪意に満ちた笑みを浮かべている男は、運だけでここまで登ってきたわけではなく。まぎれもない、強者だと。
これは、一撃必殺に脳を焼かれた男が、ギロチンマスターになるまでの物語。
続かないったら続かないよ!………多分!
※追記。続編書くとして。ヒント:かわいい顔してやばいやつ
・シーザー
サファリゾーンで偶然カイロスのハサミギロチンする現場に出くわして、いちげきひっさつに魅入られた男。そのまま勢いで捕まえて、勢いでジム8つ突破してここまできたやべーやつ。
・カイロス♂
とくせい:かたやぶり
わざ:ハサミギロチン
てっぺき
かげぶんしん
ないしょばなし
もちもの:カイロスナイト
備考:おだやかな性格。負けず嫌い。ハサミギロチンだけでサファリゾーンの王者になってたやばいやつ。
よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。
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