大規模侵攻から数か月
隆樹はボーダー本部に足を運んでいた、ボーダーは今結成したてであり人手不足で隊員を集めている時期だ、隆樹はボーダーに入るために入隊試験を受けている。
ボーダーの入隊試験は、基礎体力試験、基礎学力試験、面接試験となっており、今は最後の面接試験となっていた。
「失礼します」
隆樹はボーダー内の面接室にいる、目の前には三人の男がいる、左にメディア対策室長「
「では、今から面接試験を行う」
「よろしくお願いします」
面接試験が始まった。
「では、次の質問だが、君はなぜボーダーに入りたいんだ?」
忍田の質問に隆樹は迷わずに答えた。
「近界を破壊するためです」
”近界を破壊する”この理由に忍田は眉を顰め、根付は目を見開いて隆樹を見据え、城戸は口をピクリと動かしたが直ぐに表情を直し静かにだが気迫のある視線を隆樹に送る、言いよどむ忍田を他所に根付が質問をする。
「何故、近界を破壊したいのかね?」
「俺は、目の前で姉を殺されました」
「!!」
目の前で姉を殺された、その発言に三人が反応した、あの侵攻で身内を殺された人は多く復讐や家族を守るため等、戦争の被害を受け止め近界民を倒そうや守りたい人を守りたいと言う理由で入隊を希望する少年少女が多い。
隆樹もその一人なのだと三人は理解した。
「俺はあの近界民が憎いっ!でも、俺にはどうしてもあのバケモノが生き物には見えなかったんです」
「「「!!!」」」
隆樹の発言に城戸は眉をひそめ、忍田と根付は驚く。
「俺はあの日見ました、あのバケモノどもが黒い穴から這い出てきたのをそして俺はあのバケモノと対峙して分かりました、アイツらに意思なんてものは存在しないもしあのバケモノが機械の兵器だとしたら、もしあのバケモノどもを生み出したのがあの穴の奥にいる人間なのなら俺はそいつらのすべてを破壊しつくす!!」
城戸たちは今目の前にいる少年のことを見くびっていた、所詮は近界民に恨みを持つだけのただの子供…その復讐心を利用すればボーダーにとって頼もしい存在になりできたばかりのこの組織を支えてくれる人材になってくれるかも知れない…そう思っていたが実際はその想像以上の考えを持っていた…改めて目の前の少年に彼らは目を向けて再認識する。自分たちの目の前にいる少年は―本当の復讐鬼だ。
そして隆樹は手を挙げて彼らへ質問する。
「それと質問なのですが?」
「なんだね?」
「近界には今確認するだけでどれほどの国があるのですか?」
「!!それを知ってどうするのかね?」
根付は隆樹の質問に焦りを含みながら質問し返す、近界の情報などまだ入ってもいない少年が求めてくるとは思ってもみなかったからだ。
質問の意図を聞かれた隆樹はニヘラと笑いながらさも当たり前のこと言うように答えた。
「いや、ただ知りたかっただけですよ…だって―
―大きかろうが小さかろうがその星に住む人を丸ごと吹っ飛ばすんだから情報は必要でしょう?
根付は絶句した、この少年はもうそこまでのことを考え行動に移そうとする狂気に震えた。
「き、君は近界を破壊するって言ったけどどうやって破壊するのかね?」
この質問に隆樹は指を折り親指を立てて手首を返し地面を親指で刺しながら光の灯らない黒く深い瞳をさせて答える。
「地球にも核があるように近界の核を探して爆弾で吹っ飛ばします」
「だから、近界を破壊するための兵器を開発するエンジニアを志望します」
「エンジニアだって!?」
隆樹の志望理由に忍田が驚いたボーダーに恨みを持って入隊した隆樹が戦闘員ではなくエンジニアを志望する…実戦で戦うのではなく隊員を支援する側に回る…いやこの場合は『近界を滅ぼす為に』と言う方が正しいのだろう…
隆樹の答えにここまで沈黙を貫いていた城戸が言葉を返した。
「君は近界を破壊すると言っているが本当に出来ると思っているのか?」
「出来ると思うじゃなくやるんです」
この城戸の質問に隆樹はノータイムで答える、出来ると思うではなく『やるんです』と言ってのける、思うのではなくやるこの言葉の差は大きい、隆樹は近界の破壊という目的を一点の曇りなくやってのけると言葉にして見せた。
覚悟と決意の乗った隆樹の答えを聞き城戸は最後の質問をした。
「では最後の質問としよう、君は戦争に対してどの様な考えを持っている?君の復讐はどの様な物なんだ?」
隆樹はこの質問に
「……俺は~
この質問の後に面接試験は終了した。
入隊試験終了の後ボーダーの会議室では。
「あの少年は危険すぎます!!」
会議室内で根付が叫ぶ、あの面接の後上層部では隆樹の話題でいっぱいだった、あの短い時間で忍田、根付、城戸はあの少年の狂気を知った、あの少年目を見た、その狂気に堕ちた答えを聞いた、そして彼らは理解した…あの少年は本気だ。
そして隆樹をボーダーに入れることの危険性も同時に理解した。
「確かに、あの少年は危険だが今の我々の状況は非常に厳しい」
そう今のボーダーの現状は人員不足に資金不足に戦力不足の現状だ、そして数か月前の侵攻と同時にボーダー本部設立に伴う近隣住民の立ち退き問題により信用も0はおろかマイナス状態からのスタートだ、入隊希望者は貴重な存在だと言える。
「た、確かに今の我々の現状は厳しい正直に言ってどこの部署にも人手は足りないがあの少年の思想は危険すぎる!!」
根付の言う事も最もである、戦闘員志望ならば百歩譲って良しとしよう、だが彼の志望はエンジニアだ、それが意味することは隆樹に『世界を壊す兵器を開発させてください』と言れているようなものだ。
「確かに彼をエンジニアにするのは危険だ、戦闘員に配置転換する方が良いか」
忍田は内心戦闘員にしたいと思っている、面接をする前に体力試験や戦闘試験を行ったが隆樹はその試験を
「私は彼をエンジニアにしてもいいんじゃないかと思っている」
「「!?」」
城戸のおかしな意見に忍田と根付が反応する。
忍田はテーブルをダンっっ!と叩き身を乗り出して城戸に説明を求める。
「城戸さん!本気ですか!!」
「ああ本気だ」
「「!!」」
「ハハハハッ!!」
「林道さん!笑い事じゃない!城戸さん!なんでですか!」
のんきに笑う
「確かに彼の復讐心は本物だ、彼は本気で世界を破壊する気だ」
「だと言うなら何故!」
「彼は戦争のへの考え方を聞いたからだ」
「戦争への考え方ですか?」
「私の最後の質問に彼は何と答えた?」
「「!!」」
「?」
忍田と根付は城戸の言う最後の質問を思い出し顔を降ろす、何も知らない林道は首を傾げるが城戸はゆっくり説明するように口を開いた。
数時間前の最期の質問の事を―
『では最後の質問としよう、君は戦争に対してどの様な考えを持っている?君の復讐はどの様な物なんだ?』
『…俺は戦争というか数か月前の侵攻のようなことをもう起こしたく有りませんっ…』
『……』
感情の籠った隆樹の顔を城戸はしっかりと見据える。
『もうあんな思いをしたくないし、ネイバーのことも根絶やしにしたいと思ってます…俺の見た漫画に戦争で敵を倒した時のセリフがあります』
『貸しがあろうが借りがあろうが戦争なんて始めた瞬間からどっちも悪だ』
『……』
そして隆樹は顔をゆっくりと上げてしっかりと面接官である三人を複雑な面持ちで見る。
『今、俺はボーダー本部にいます…悪く言えば三門市という街を戦地に変える組織の面接に来ています、だから俺は戦争をするつもりで此処にいます、悪になるつもりで此処にいます、だから俺がいるからには向こう100年手出しできないように徹底的に近界を破壊します、そして俺は憎しみを生み出さないようにその世界の住民のすべてを皆殺しにします』
『『『!!』』』
隆樹のイカレ狂った発言に三人は息を吞む。
隆樹は重ねるように口を開く。
『この世界を攻められないように恐怖を与えます』
『……』
『俺は全ての憎しみと罪を背負って近界に恐怖を与える破壊者になります』
―これが俺の復讐です
城戸の話を聞いて林道は咥えていた煙草を落とした…やれ危険やら、やれ頭が可笑しいやら、忍田と根付の話を聞いていたがそんなに慌てることは無いだろうと高をくくっていた林道だったが城戸の話を聞いてから2人が慌てている理由がよく分かった、まだ城戸と方向性が違うと分かったばかりの玉狛だが彼らの言う烈禍隆樹という少年のイカレ狂った思想を再認識した。
目を伏せていた城戸が目を開き三人を見据える。
「彼の復讐に賭けてみたいと私は思っている。」
「「「……」」」
「何か質問は有るかね?」
城戸の隆樹の可能性に賭けると言い三人は首をひねって考え…忍田がはぁ…と溜息を吐いて渋々口を開いた。
「城戸さんがそこまで言うならもう止められないですよ。」
「し、忍田本部長!?本気かね!」
「根付さん、こうなったらもう止められないよ、付き合い長いんだからそれくらい分かる」
反対する根付だが以外にも林道の援護が入る。
「林道支部長!」
「ただし、本当に危険と感じたら戦闘員にする事を条件にしてもらいたい!」
「良かろう、これにて会議を終了とする。」
この会議を持って隆樹のエンジニアでの入隊が決まった。