復讐の果て   作:マトリヵ

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黒トリガー争奪戦2

ーダー本部司令室

 

司令室は重苦しい空気に包まれていた、ただでさえ太刀川達城戸派の黒トリガー奪取の任務を強硬しその対応に迅悠一と忍田派の嵐山隊が向かい対峙しているという事実上の内部分裂状態になっているだけでも非常に複雑な意思のぶつかり合いが起きていることでも厄介なのに…

 

「一体どういうことだ!鬼怒田さん!どうして彼があの場にいる!」

 

「ワシに言われても知らないものは知らん!夕方までは大人しく引きこもっていたのにふらっといなくなったと思えばあの場に割り込のんだのだ!」

 

「どうして彼を監視していなかったのですか!彼の思想に付いては入隊時から危険視していたのを我々は知っていたはずだ!」

 

忍田が怒るのも無理はない、ボーダー再編初期に隊員の面接をしていた忍田からすれば危険思想を持っている事を知っていた、そんなストライダーが今抗争の真っ只中にいてその彼らに武器の矛先を向けている…鬼怒田を除く全員はそんなストライダーの危険性を十分理解していた、一方で鬼怒田の方も忍田に鋭く返す。

 

「ワシは4年も奴を見てきたが奴は我々に害を及ぼすことはしなかったではないか!それ以上に奴の今までの戦果は想定していた以上の物を我々ボーダーに与え、技術も奴が居なければできなかったものが多いのだ!そんな我々に従順に従い尽くしてくれた部下の監視などもう必要ないと思ったのだ!」

 

「…それは」

 

鬼怒田の返しは忍田の心に深く鋭く刺さった、ストライダーがエンジニアに入ってから4年間彼のボーダーに対する実直な姿勢やこの三門市を想う態度、そして彼が育み理解を深めてきたエンジニアとしての技術の成長を間近かで見てきた鬼怒田にとって彼は直属の弟子に他ならない、そんな愛弟子に監視等いらないだろうと鬼怒田は思っていた。

 

忍田としてもエンジニアという名目でストライダーを研究室に送りはしたが彼の思想故に何度も様子を見に言ったが会うたびに彼の成長過程やトリガー開発時の意見交換などを頻繫にしてきた忍田にとっても警戒心で言えば少しづつ薄れて行ったことは忍田も自覚しているのであまり強くは言えなかった。

 

「しかし、いま彼が我々に武器を向けているのは事実ですぞ!しかも我らにとって知りえないトリガーを使っているではないか!?」

 

「そんなことはわかっとる!奴の作ったトリガーについてはまだ実験段階の物でその件については次の会議で発表する予定だったのだ!それを奴はワシの知らぬ所で完成まで仕上げているとは…」

 

根付の指摘に鬼怒田は頭を抱えながら歯嚙みして返す、ストライダーからこのトリガーの提案をされたときには鬼怒田も耳を疑い何度も辞めんか?と話していたのだが、ストライダーは頑なに未来のボーダーに必要になると言って押切り企画書を通し実験段階まで出来ているものを鬼怒田に見せたのがつい二日前…しかも彼の実費で作成した物だということを踏まえて発表まであと数日というところでこの事態に発展し、それに加えて三輪を拘束しその効果の実証までをやってしまったのだ。

 

「とにかくだ」

 

ピリピリとした空気が流れる中城戸がその空気をぴしゃりと締める。

 

「彼の対処は彼らに任せるとしよう…この状況なら迅も太刀川隊員に協力せざるを得ない、彼も通信を遮断しているのだろう…」

 

城戸の言う通り今この場でストライダーに対して上層部の人間が出来ることは何も無い、ストライダーが彼らの通信を遮断している現状、増援を送ろうにもこの任務はそもそも機密任務で内容もボーダー隊員がボーダー隊員を襲うと言う隊務規定を真っ向から否定するものであるためそんなことはさせられない、だが…ストライダーの目的は迅にとっても非常に危機感を煽り、城戸派にとっても邪魔する存在は切り捨てると公言してるため争いは避けられない、不本意な形でストライダーと言う『共通の敵』が現れた為彼らは意図せずとも共闘を選ばざるを得ない状況であるのは明白であった。

 

 

 

 

 

 

三輪が緊急離脱した後、迅と太刀川達は膠着状態となっていた。

 

『どうします太刀川さん?俺達ストライダーと共闘できる道筋は少なからずあると思いますけど?』

 

『そんなの無理に決まってるだろ、アイツの目的は少なくとも玉狛の近界民の持ってる情報だ、対して俺達は近界民の始末と黒トリガーの奪取、アイツの言う冠トリガー?の情報は分からんが少なくとも玉狛支部と直接的に対峙するのは避けたいはず…俺たちの利害は一致しない』

 

内部通信越しの出水の質問を真っ向から否定する太刀川、そして太刀川を援護するように風間も口を開く。

 

『それに加えて俺達どころか迅達も奴の情報は全く皆無と言ってもいい、今本部から奴の使ったトリガーの情報が来たが奴の言っていた情報とほとんど同じ内容だった、現状俺達は未知の敵を相手にすると言っても過言ではない』

 

『だが奴は違う、奴は俺たちの情報を知っている、ランク戦のログやらで俺たちの戦法や強さなどはすぐに知ることができるからな、それに加えて風間隊の戦法を一緒に作ったと言ってもいい位に俺達の戦法を熟知している』

 

風間の言う事に部隊全員が息を吞む、風間の言う通り城戸派の情報は殆ど丸裸と言っても差し支えはない、それどころか風間隊は戦闘スタイルから戦法までの全てを知られている、いくら風間隊の戦法が分かっていてもそんなに意味がない戦い方をしているが彼らは実戦形式での戦い方も見られている上菊地原のサイドエフェクトに関しても彼の耳の大部分の相談、調整をしたのもストライダーであるため菊地原の耳の領域も熟知している、この現状情報がストライダーに抜けていない人物をしいて言うとすれは…

 

『どうする迅?俺達はどうしたらいい?』

 

『…ごめん少し待って欲しい…今アイツの未来を見分けてるから…』

 

この迅悠一だろう…迅は嵐山の通信を聞いてからストライダーを見ながら未来を見分けるために少し集中したいといったん話を切る。迅は冷や汗をさらに流しながら風刃を握る力をさらに籠めた。

 

『…やばいな…』

 

『っ!!どうやばいんだ迅!』

 

『アイツ相当強い…太刀川さん達がまとめてかかっても真っ向から跳ね除けれるくらいだ…太刀川さん達が挑んでも勝率は1割も無い…』

 

『はぁ!?太刀川さん達がですか!?』

 

迅の通信越しの発言に嵐山隊がどよめいた、遠征部隊+半端の三輪隊をもってしてもその勝率はほぼ0と迅は言っている、ランク戦で太刀川たちの強さは十分理解している、目の前の白衣に面と言うふざけた格好の奴の強さに戦慄している。

固まっている嵐山隊に迅から通信が入った。

 

『…嵐山たちはいったん待機してくれ』

 

『!?…どうしてだ?』

 

『第一に嵐山たちはアイツと戦う理由がない、いくら玉狛(うち)の後輩に恩を返すって理由があっても俺たちが頼んだのは”遠征部隊の撃退”だ。』

 

いったんは取り乱した嵐山だが迅の言う事は合っていた、あくまでも忍田派との同盟の内容は『ボーダー内でのいざこざを収めること』だ。その争いを起こそうとしている遠征部隊は今はストライダーと睨み合っているため嵐山たちは今やれることは無い。

迅はそれにと続ける。

 

『その遠征部隊もほぼ確実にアイツが蹴散らす、アイツの目的はあくまで玉狛の後輩である”遊真”の情報だ、しかも話し合いを前提にしているからアイツが玉狛で暴れる可能性は0に近い、だからよっぽどの理由がない限り嵐山たちがアイツと戦うことはお前たちにとっては害しかない』

 

迅の言う通り、空閑遊真との話し合いを前提としているストライダーは話し合いに邪魔な遠征部隊と対峙するのは避けられないしかし、迅達は穏便に済ませてくれるストライダーと戦うことは無いと言ってもいい。

しかし嵐山はどこか様子のおかしい迅を横目で見ながら話しかける。

 

『…お前は如何するんだ迅?アイツの目的が空閑君の情報ならお前も戦う理由がないはずだが?』

 

『?嵐山さん、どういうことですか?』

 

『…迅は俺たちに”戦わない理由”提案してくれているがそれは迅にも言えることだ。穏便に済ませられる相手が目の前にそれもほぼ確実に遠征部隊()を倒してくれる相手がだ、だが迅は矛を収めるどころか今も風刃を収める気配はない』

 

嵐山は冷静に状況を分析して隊員たちに説明する。

睨み合ってる城戸派とストライダーは間違いなく勝手につぶし合ってあってくれるそのことが分かっているにもかかわらず、迅は風刃を鞘に納める事無くむしろ何時でも風刃の能力を使えるように帯まで出している。

 

『迅、お前はアイツと”戦う理由”があるんだな?』

 

『…あぁ』

 

少し言いづらそうにする迅に嵐山は優しく問いかけた。

 

『理由は?』

 

『言えない…』

 

『そうか…』

 

迅の申し訳なさそうな声に嵐山は仕方ないと呟いた。

 

『俺達は待機する、遠征部隊の一部が途中で抜け出した場合その対処を担当する』

 

『なっ!隊長!いいんですか!』

 

『これでいいんだ木虎。俺達はあくまでも任務を優先する』

 

不満げな木虎をいさめながら嵐山隊は後退した、下がっていく嵐山たちを横目に見ながら迅は風刃を構えて歩み寄る。

 

『アイツの目的が遊真だけだったら話し合いで終わったんだけど。陽太郎…雷神丸(冠トリガー)が目的なら話は別だ』

 

迅の戦う理由は陽太郎だった、さっきまで話してた遊真の情報だけなら話はそこまで複雑にはならなかったがストライダーの目的に冠トリガーの解析であることが話をややこしくした、冠トリガーの事を知っていることを追求したいがそれ以上にボーダー上層部の人間以外が冠トリガーを解析するということが危ない行為に他ならない。

迅は平静を装いストライダーの横へと並び立つ。

 

「迅隊員は私に加勢してくれると思っていいんですか?」

 

「そう思ってくれてかまわないよ」

 

「おいおい、てっきり迅は俺たちの誰かが抜けだしたときの詰め役だと思ったんだが…」

 

「ごめん太刀川さん、アンタたちに帰ってもらわないとこっちも話しが出来無いんだ」

 

迅はそう言って風刃を構える、ストライダーは横にいる迅を一瞥した後右手側にトリオンキューブを出すと16分割してから前に弾き出した。

 

「…それでは、先ずは彼らには本部に帰ってもらわないといけませんね…」

 

「バイパー」

 

ストライダーが出したバイパーは真っ直ぐに太刀川達を捉えようと前に飛んでいく…はずだった。

放たれたバイパーの一部は急に方向を変えて迅の方へと一直線に向かっていく、迅はそのバイパーを横へとステップして避けた。

 

「はぁ!?何でアイツ迅さん狙ってんの!?」

 

「今はそんなことはいい!構えろ!」

 

太刀川達はストライダーの急な裏切りに驚くが残りのバイパーが飛んできているため風間の一喝で正気に戻り構えなおす、だが向かってきたバイパーは前衛を避けて後ろに飛んでいく、バイパーの飛んでいく方向には移動し始めのスナイパーがいた。

 

『!!スナイパー、そっちに向かって弾が飛んでいる警戒しろ』

 

『奈良坂了解』

 

奈良坂達は飛んできたバイパーをシールドで防ぎ事なきを得てからまた移動を始める、バイパーを避けた迅は大きく跳びあがり太刀川たちの少し前に着地する、そして入れ替わるように太刀川と米屋がストライダーに突っ込み弧月と槍弧月振るう、ストライダーはその攻撃を弧月と弧月の納められていた鞘で受け止める。

 

「!」

 

「うっそ!何で鞘で受けれるんだ!?」

 

「自分で考える事ですねっ!」

 

米屋は鞘で弧月を受け止められた事に驚くがストライダーは軽口を言った後、二人の弧月を弾き飛ばし鞘で米屋の殴り飛ばし、太刀川を足で蹴り飛ばす、太刀川は後ろに跳び避けたが米屋は鞘の攻撃を弧月で受け止め後ろに弾き飛ばされる。

 

「うぉぉ…結構力あるな次は気をつけねぇと…!?」

 

「出水!米屋のカバーだっ!」

 

「下がれ!槍馬鹿!」

 

ストライダーの攻撃の威力に感嘆している米谷が顔を上げると米屋の眼前にはくるくると回転しながら飛んでくる弧月が見えその後ろにストライダーが肉薄してくる、風間は出水に指示を飛ばしながらスコーピオンを出した。

 

キンッ!

 

風間は弧月を上に弾き飛ばすと無手のストライダーを警戒する。ストライダーは鞘を風間に投げるが風間は鞘を弾いてそのまま切りかかるのだが…

 

「待って風間さん!下がるんだ!」

 

「!?」

 

未来の予測が確定した迅が風間に声を張り上げる、風間は迅の警戒に身構えるが目の前には無手のストライダーのみだが、迅の未来があるため後ろに跳んだ。

 

キンッ!キンッ!キンッ!

 

「グラスホッパー?!」

 

すると米屋に向かっていた弧月がグラスホッパーにより方向を変えてストライダーの方向へと飛んで行く、ストライダーは飛んでくる弧月に向かって勢い良く右手を下から振り上げキャッチしそのまま切りかかる。

 

「二人目」

 

「っ…!!」

 

すかっ…

 

「アステロイド!!」

 

だがストライダーの振り上げた弧月は空振りに終わった、そしてこのタイミングで出水のアステロイドが放たれる、ストライダーは分散シールドを三重にして出水のアステロイドを防ぎながら避けて前進する。だがっ…

 

「風間さん!!避けてください!!」

 

「風間さん!?」

 

何故か弧月を避けたはずの風間がアステロイドを避けようとせず立ち尽くし、そのまま出水のアステロイドに貫かれて穴だらけになり一瞬太刀川たちの方を向いた後緊急脱出した。

 

「風間さんっ!!」

 

「今は後にしろ!来るぞ!」

 

無抵抗に緊急脱出した風間に数人が動揺したが太刀川の一喝で立ち直る、出水のアステロイドを凌いだストライダーは弧月を再構築し抜き放ちながら肉薄するが急ブレーキして後ろに飛び退きトリオンキューブを二つ生成する、そこに迅の風刃が三線切り込んで行き風のように伸びたブレードが飛び退き様の白衣の背びれを切り裂く。

 

風刃を避けたストライダーは生成したキューブを瞬時に組み合わせる、その間わずか一秒そして合成したトリオンキューブを24分割の弾速重視にしてから高台の方向に放った。

 

「太刀川さん!スナイパーに爆撃注意!」

 

「了解!『爆撃注意』」

 

変化炸裂弾(トマホーク)

 

ストライダーから放たれたトマホークが2方向に分かれて飛んで行く。

 

「撃ち落とします」

 

「オーケーこんなの楽勝だぜ」

 

高台の奈良坂達は飛んでくるトリガーキューブをイーグレットですべて撃ち落とした。

 

「ふ~こんなもんか…最初に弾飛んで来た時はやるなと思ったけど結局俺たちに対しては薄いな」

 

「警戒してください当麻さん、あの迅さんが俺たちに爆撃注意って言ったんですよ、まだ何かあります」

 

「へぇへぇ、奈良坂は真面目だな~なぁ古寺?」

 

「え、ええっと…」

 

スナイパーたちは軽口を言い合いながら煙が晴れた戦場をスコープ越しに見る、戦場は出水がアステロイドを放ちストライダーを牽制しその合間を米屋と太刀川と迅が代わる代わり切り込んでいる。

 

「アイツイカレてる…あの三人の攻撃を無傷で捌いてる」

 

「風間さんが落ちたって聞きましたけどほかの風間隊の人はどうしたんですかね?」

 

「多分カメレオンで隠れてるんだろう?俺達もあの人たちの援護をするぞ」

 

「「了解」」

 

三人がイーグレットを構えて打ち出そうとした瞬間太刀川から慌てた声で通信が飛んできた。

 

『爆撃注意だ!』

 

『?どういうこと太刀川さん?』

 

『迅が言うには下だ!下から爆撃が来る!!』

 

「下…ですか?」

 

古寺が呟き下をレーダーで確認すると下からトリオン反応が迫って来ていた。

 

「退避っ!!?」

 

奈良坂の警告も虚しくトマホークは着弾し、二人が緊急脱出した。

 

「五人目…」

 

キンッ!

 

「余裕だなっ!人でなし白衣マン!!」

 

「風刃もそんなに頻繫に飛んで来ていないですからね、六人くらいならまだまだです、私を苦戦させたいのなら二倍で掛かってきなさい」

 

「クソッタレ!!」

 

三人の連携攻撃をストライダーは楽々弾き、鞘で三人を飛ばした、三人は出水の横に踏ん張りながら留まる、三人を弾いたタイミングで左右から菊地原と歌川のクロスアタックが炸裂するがストライダーは弧月と鞘で受け止め歌川を弧月で吹き飛ばし、菊地原のスコーピオンを鞘で上に弾きすぐさま鞘を首に向かって突き刺す。

 

「シールド!」

 

『菊地原避けろ』

 

「っ!!」

 

菊地原はシールドを展開するが、風間から来た通信を瞬時に理解して横に飛び退きストライダーの死角からスコーピオンを投擲する、菊地原も仕留めたと内心思ったが。

 

キンッ!

 

「肩からスコーピオン!?」

 

ストライダーが菊地原を見いた瞬間に肩からスコーピオンを生やして投げられたスコーピオンを相殺する、渾身の一撃を防がれた菊地原は太刀川たちの方へ駆け寄る。

 

「ふ…もうおしまいですか?」

 

「やべぇな!流石に強すぎだわアンタ!」

 

「興奮してる場合じゃないよ太刀川さん!俺達こんだけやってアイツに一撃も入れてないんだよ?」

 

「そうですよ!スナイパーたちもやられちゃいましたし、なぜか知らないけど迅さんこっちの味方してるし、風間さんは俺の弾避けずに死んじゃうし!俺何が何だか…」

 

『出水、俺は奴の振りかぶり様に投げられたスコーピオン(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)にやられたんだ』

 

「噓でしょ!?風間さんがそんな手でやられたんですか!?」

 

風間の衝撃的なやられ方に出水が声を上げて驚いた、風間はグラスホッパーで帰って来た弧月をキャッチするときに振り上げられた左手から放たれた小さなスコーピオン(・・・・・・・・・)がトリオン供給器官に突き刺さり風間のトリオンが急激に吹き出し動けなくなり出水のアステロイドをまともに受けるしかなかったのだ。

 

『普段はそんな暗器なんぞには引っかからないが飛んでくる弧月と角度よく飛んでくる様に仕込まれたグラスホッパー、そして既に空中にいた俺はリーチの長い弧月に視線を引き寄せられた、恐らく迅の未来にも俺が斬られる未来が見えていたのも本当だろう…』

 

『迅の事も俺達にはわからない奴と戦わなければいけない理由があるのだろう』

 

「ふ~ん…あいつと戦わなきゃいけない理由ってなんだ迅?」

 

「うわ~直接聞いたよあの人」

 

「菊地原!」

 

「内緒だよ。でも…今はアイツを倒さなきゃいけないって理由は一致してる」

 

迅はそう言って帯の無くなった風刃をリロードした、そしてストライダーに話しかける。

 

「さて、何で俺が裏切るって分かったの?」

 

「気配と嵐山隊が援護に来なかった時点である程度察せましたよ、それに迅隊員は私を何が何でも倒さなきゃいけない…玉狛支部にいる厄ネタを守るためにも」

 

「…玉狛の家族を厄ネタ呼ばわりは辞めてもらえないかな?」

 

「実際厄ネタではないですか?あんな他所の世界の子供なんぞをそんな小さな支部で抱えることを厄ネタと言わずに何と言うんですか?」

 

「…迅さんアイツの目的ってもしかして陽太郎も入ってます?」

 

『…勘良すぎだよ米屋』

 

以外に勘のいい米屋に冷や汗を流しながら迅はどう答えようか悩んでいるとストライダーが口を開く。

 

「まぁ、私はもう近界民の研究何て当の昔からやってますからお宅の厄ネタ君には一切手を付けないと約束しますよ、私が欲しいのはあくまでも近界の航海軌道の情報ですので冠トリガーの解析はまた後日でもいいですよ」

 

「そういう問題じゃないんだよっ!!」

 

太刀川でさえ見たことがないほど激昂する迅は風刃を乱暴にストライダーに八線切り伸ばした、ストライダーは自分を囲む風刃を真上に避けて避けるとそこに出水のハウンドが打ち抜こうとする、そのハウンドをシールドで防ぎながら弧月を鞘に納めて旋空弧月を放とうとするその時…

 

パンッ!

 

「狙撃!?」

 

高台から狙撃が飛んできた、ストライダーは予期せぬ狙撃を異常な判断能力と反射速度でグラスホッパーを起動して上に避けた。

 

「積みだエンジニア」

 

「太刀川!?」

 

ストライダーのグラスホッパーを野生とも言える勘で反応した太刀川が二刀流の弧月で切りかかる、ストライダーは切りかかられた双線を弧月で受け流そうとするが両腕を斬り飛ばされた、斬られた両腕からトリオンが噴出しストライダーの仮面にヒビが入る。

 

「決めろ!米屋!」

 

「何っ!」

 

「うちの隊長にずいぶんなこと言ってくれたじゃねぇかクソッタレ!」

 

太刀川の双線を喰らい空中をふらりと落ちるストライダーに米屋の槍がストライダーの胸を貫こうとする。

 

『取ったっ!!』

 

米屋も心の中でそう唱える、だがストライダーの顔は死んではいなかった、ストライダーは両肘を体の中心で合わせて鞭のように長いスコーピオンを米屋に向かって伸ばした。

 

「アイツ!あの状況でも反撃するのかっ!つうかアイツトリガー何個使ってんだよ!!」

 

出水の嘆きを聴きながら米屋が抵抗むなしくストライダーから繰り出されたマンティスを喰らいかけたその時…

 

「シールド!!」

 

「シールドを足場に!?」

 

米屋は空中にシールドを足場にしてマンティスを避けてから槍の切っ先を向けてストライダーに突撃する、ストライダーはシールドをピンポイントで3重に貼るが。

 

「シールド!」

 

「っと思うじゃん…!」

 

「積みか…」

 

グサッ!

 

米屋は幻踊弧月で切っ先を曲げてトリオン供給器官を貫いた…貫かれたストライダーはトリオン体を破壊され緊急脱出するはずだ…そう全員が思っていたのだが…

 

バンッ!

 

破裂音と共に煙が展開されてストライダーと思わしき人物が空中(・・)に投げ出される。

 

「何で緊急脱出しないんだ!?」

 

「嵐山!」

 

「了解した!」

 

此処で待機していた嵐山が空中に投げ出されたストライダーを受け止めて地上に降り立つ、太刀川達は一足先に着地した後迅を問い詰める。

 

「何でアイツは緊急脱出しなかったんだ?」

 

「単純だよ、アイツ緊急脱出を切ってるんだよ」

 

「…アイツイカレてますね」

 

「そうだな、どんな未来を見てもアイツは緊急脱出はしなかった…」

 

そう言いながら迅達は落下した嵐山たちの様子を見に行く。

 

 

 

 

 

 

「嵐山~アイツは回収できたのか?」

 

迅達がいったん落下したストライダーを見に行くと既に嵐山たちはストライダーを離していた、ストライダーは仮面を外して汗を流しながら手元から薬を取り出し水と一緒に飲み込んでいる。

 

「…すごいのんきですねアイツ」

 

「はぁ…あったまいてぇ…あれ使うと脳味噌過労死レベルで使うからマジでやばい…やべっ鼻血出てきた」

 

「うおっい!?鼻血出てんじゃねぇか!?大丈夫か?」

 

「あぁ…大丈夫大丈夫ちょっと死にそうになるだけだから…」

 

「「「「「「誰だアンタ!?」」」」」」」

 

換装が解かれたストライダーは羽織っていた白衣からポケットティッシュを取り出して鼻に突っ込んで鼻血を止める、迅達はさっきまで戦っていた敵が鼻つっぺしながらフランクに話しかけてくるギャップに思わず突っ込んでしまう。

 

「誰だってストライダーですよ?さっきまで戦ってたじゃないですか?」

 

「いやっ!見えねぇよ!」

 

「そんな変なことしてます?」

 

「してるって言うか普通のことしてるのにギャップで面白く見えるだけだw」

 

「笑うのは辞めてほしいんですけど…まぁいいか…」

 

ストライダーは笑われることを許容しながら白衣から携帯食を取り出して封を開けて貪る、むしゃむしゃと乾燥した栄養食を食べるストライダーにさっきまで戦っていた面々はさらに吹き出した。

少しばかり笑いの起きている人たちを横目に迅が嵐山隊の方を見ると何やら嵐山の様子がおかしい、しゃがみ込み身体をワナワナと震わせている。

 

「隊長!どうしたんですか!?」

 

「どうしたんだ?」

 

「隊長の様子がおかしいんです!さっきあの人を助けてから様子がおかしくなって…」

 

迅が慌てて嵐山の様子を伺うと嵐山の顔は涙で埋め尽くされていた…

 

「嵐山!?どうしたんだ…!?」

 

「どうしたんですか!隊長!」

 

「嵐山さん…って迅さん?どうしたんですか顔青いですよ?」

 

隊員達が嵐山を心配していると時枝がふと迅の方を見ると迅の顔が真っ青になっている。

すると嵐山が突然立ち上がりストライダーの元へ歩いて行く。

 

「大丈夫なんですか!隊長!…隊長?」

 

普段は無視なんて絶対にしない嵐山が隊員の言葉を無視して一直線にストライダーの元へと歩いていき人波を分けながらストライダーの元へ立ち止まった。

 

「…何?」

 

「…隆樹なのか?」

 

「隆樹?」

 

嵐山がストライダーの顔を見ながら名前を尋ねた。

聞きなれない隆樹という名前に?を浮かべるが当のストライダーは…

 

「そうだよ、久しぶりだな…准。元気してたのは見てたよお前に隠れてな」

 

「…隆樹っ!!!!」

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

突然ストライダーに抱きつく嵐山に迅も含めた全員が絶叫した。

抱き着かれたストライダーは嵐山に押しつぶされながらやさし気にその頭を撫でるその姿は子供をあやす兄の様に映った。

 

 

 

 

 

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