ようこそバカ派手モテ至上主義の教室へ   作:綾(あや)

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ちょっと遅れてすみません!


神楽移の女難

 

 

中間テストと期末試験を無事に乗り越えた俺たちCクラスは、豪華客船での無人島旅行に行くことになった。この船は全額学校のもので、施設や設備も使い放題らしい。期末前にはいしざっきーやこみやん達がDクラスと一悶着あったらしいが、詳しいことは何も知らないし関わってもない。てか興味がない

 

え?テストの結果を教えろだって?…野暮なことは聞くものじゃないんだよバーカバーカ

 

船に乗り込んだ時他のクラスの人たちをチラッと見たが、どうやらこの学校には美人しかいないのか?っていうくらい顔面偏差値が高かった。そこで早速ナンパをしようと試みたが、かけるんくんとひよりちゃんが連携して俺を捕まえてきた。正直すぐに抜け出すことはできたため抜け出そうともしたが、ひよりちゃんがすごい形相で詰め寄ってきたから大人しくしといた…

 

結局ナンパができなかった俺は、ひよりちゃんに一緒にプールで遊ばないかと連絡をした。そしたらすぐに返ってきた。今は時間30分前と余裕を持って端の椅子に座っている。気遣いができる男はモテるんだ

 

「神楽くん、お待たせしました」

 

現れたひよりちゃんは、普段の制服姿ではなく清楚な白い布地に繊細なレースのフリルがあしらわれた、オフショルダータイプのビキニを着ていた。派手な装飾はないが、それが逆に透き通るような白い肌と、隠しきれない気品をこれ以上ないほどに際立たせている。

 

「あの、神楽くん? 何か、おかしなところがありましたか? 私、こういう場所はあまり慣れていなくて、これでも一生懸命選んだのですが…やはり、私には不釣り合いだったでしょうか」

 

ひよりは少し不安そうに、着ていた水着をぎゅっと握りしめて小首を傾げる。

 

「……ひよりちゃん。一言だけ言わせてくれ」

 

俺は彼女に歩み寄った。周囲の男子生徒たちの視線が刺すように痛いが、そんなことはどうだっていい。俺はひよりちゃんの耳元で囁いた。

 

「この世の全ての『美』という概念が、今この瞬間にひよりちゃん一点に集約されたと言っても過言じゃない。その水着、ひよりちゃんの清純さをこれ以上ないくらい強調してる。正直、直視するのが辛いくらいに綺麗だ。世界中の宝石をかき集めても、今の君の輝きには、到底及ばないよ」

 

「え…あ、あの…そ、そんなに…ですか?」

 

ひよりの白い頬がみるみるうちに夕焼けのような色に染まっていく。彼女は照れ隠しに手で顔の半分を隠したが、その隙間から覗く瞳は確かに喜びで潤んでいた。

 

「ありがとうございます。神楽くんにそう言っていただけると、勇気を出して着てみた甲斐がありました。…とっても、嬉しいです」

 

「逆に今まで褒められてなかったの?ってくらい美しいよ。さ、遊ぼうぜ」

 

そう言って俺はひよりちゃんの腕を優しく掴んでプールに向かった…あとお前らはいつまで視線を向けてんだよ!?そこの見るからにバカそうで変態そうなやつと、イケメン死ね!とでも言いたげなヤツ、お前らのことだからな!?

 

 

 

--

 

 

 

神楽くんにプールに誘われた時、私はとても迷いました。彼と行くことには全く抵抗はありませんが、幼い頃から本の中に閉じこもっていた私にとっては、どんな服装で行けばいいのかわからなかったのです。

 

本の中に出てくるプールや海は、いつもキラキラしていて楽しそうですが、自分が行くとなると、それは全く別のお話のように思えました。でも、神楽くんが私のために…いえ、クラスのために、あんなに苦手な勉強を頑張ってくれた。そのご褒美に、私ができることなら何でもしてあげたいと思ったのも、本当の気持ちでした。

 

 

選んだ水着を褒めてもらえるか、お店で鏡を見るたびに不安でした。でも、今日の彼は、いつにも増して熱い視線を私にくれました。

 

「…ふふ」

 

顔もスタイルも良く、本人は常にモテたいと豪語していますが、1年生の中でもイケメンランキングというものにはダントツでナンバーワン。しかしたまに見せるその無邪気な行動や言動。それはまるで物語に出てくる王子様みたいです。そのいつも掛けてくれる真っ直ぐな称賛が、私の胸の奥を跳ねさせました。引っ込み思案な私にも、誰とも変わらず態度で接してくれます。

 

私は神楽くんが差し出してくれた手を取ると、その温かさが指先から冷えていた私の心にじんわりと伝わってきました。

 

「行こうぜ、ひよりちゃん」

 

「はい、神楽くん」

 

彼に導かれて入る水の中は、太陽の光でキラキラと輝いていて、まるで魔法の泉に飛び込んだような気分でした。神楽くんが隣にいてくれる。それだけで慣れないプールの喧騒も、少しだけ優しく聞こえるような気がしました。

 

 

 

--

 

 

 

俺はひよりちゃんを連れ立ってプールへと入った。水温はちょうどよく、太陽に熱せられた肌に心地いい。ひよりちゃんは最初水に浸かるのを少し怖がっていたが、俺が手を引いて導くと、徐々に慣れて笑顔が戻ってきた。

 

「見てください、神楽くん。水がこんなに透き通っています。プールの底まではっきり見えますね」

 

「そうだね。でも、ひよりちゃんの笑顔の方が、この水よりもずっと澄んでいて綺麗だよ」

 

「ふふ、またそんなことを。素直に受け取っておきますね」

 

俺たちは水をかけ合ったり、ビーチボールを軽くパスし合ったりして過ごした。ひよりちゃんは水をかけられるたびに「冷たいですっ」と言って笑いながら逃げる姿はめちゃくちゃ可愛かった。

 

そんなこんなでしばらく遊んだ後、俺たちはプールサイドのデッキチェアに並んで座り、冷たいトロピカルジュースを飲んだ。

 

「テストやクラスは本当に大変でしたけど、頑張ってよかったです。神楽くんと一緒に、こうして笑っていられるんですから」

 

ひよりがストローをくわえながら不意にそう呟いた。

 

「ああ。俺もだよ。ひよりちゃんのおかげで俺は退学せずにすんだもん。君と過ごせるのがこれほど充実感のあるものだとはね」

 

幸福感。このまま時間が止まればいいと、本気で思った。だが、神楽移という男のモテへの渇望はこの幸せだけでは満足できなかった。

 

「日焼け止めを少し塗り直してきますね」

 

ひよりはそう言った席を立った。神楽は手を振りながらプールサイドをぼーっと眺めていた。様々な髪型や髪色、異なるスタイルの女の子達はいつ見ても飽きない。つくづく自分がこの学校に入学してよかった、と感じる神楽。しばらく眺めている神楽だったが、唐突に腰を動かし1人の生徒に近づいた。

 

「なぁ、そこのマイエンジェル」

 

唐突に声をかけられ、一之瀬は驚いたように丸い瞳をさらに大きくした。

 

「えっ?あ、ええと、私に何か用かな?」

 

「用も何も、君みたいな美人が一人でいるのを見過ごしたら、男として一生後悔すると思ってさ。俺はCクラスの神楽移。君の名前を教えてくれない?」

 

初対面とは思えない神楽の距離感に一之瀬は困惑しつつも、持ち前の人の良さからか、笑顔を浮かべて応じてくれた。

 

「あはは、面白い挨拶だね。私はBクラスの一之瀬帆波。神楽くん、よろしくね」

 

「一之瀬帆波か。うん、名前まで可愛いな。なあ帆波ちゃん、その水着反則級に似合ってるぞ。一目見て俺の心臓は期末試験より激しくバクバク言ってるんだ」

 

「にゃっっ!? そ、そんなにストレートに言われると、どう答えていいか……」

 

神楽の言葉に一之瀬は頬を染め戸惑いながらも楽しそうに笑う。彼女の周囲には神楽とはまた別の、人を惹きつける温かさがあった。

 

「神楽くんって、平気でさらっとそういうこと言うの?本気にしちゃうかもよ?」

 

「まぁね。言っておくけど俺は本気だよ?帆波ちゃんみたいな美人とプールで出会えるなんて、俺、今日の運を…いや、一生分の運を全部使い果たしたかもな。もしよかったら、今度二人で――」

 

ぐいぐいと距離を詰め、口説き文句を放っていると背後から冷たい声が響いた。恐る恐る振り返ると、そこには浮き輪を抱えたまま、表情を一切消したひよりが立っていた。

 

「…ひよりちゃん?」

 

 

 

--

 

 

 

日焼け止めを塗り直し、神楽くんの元へ戻ろうとした私の目に映ったのは、信じられない光景でした。ほんの数分前まで、私を世界で一番のように褒めてくれた神楽くんが、他の方に向かって私に向けたのと同じような熱を込めて語り合っていたのです。

 

私以外の女の子にあんなに言葉を軽々と…胸の奥が、ちくっと痛みました。いえ、ちくっとどころではありません。何かが、私の心の中で静かに、しかし確実に沸騰していくのを感じました。

 

「神楽くん?私がいない間に…何をしていたのですか?」

 

「いや、これはその、迷子の案内というか……」

 

「あ、あの、椎名さんだよね? 神楽くんとはお友達かな? 私は別に何も…」

 

「一之瀬さん。初めまして。同じ学年として、貴女の素晴らしさは存じ上げております」

 

ひよりは一之瀬に対し、礼儀正しく頭を下げた。

 

「神楽くんは少し…いえ、かなり頭が緩いところがありますので。貴女のような光り輝く方に当てられると、自分が蛾にでもなったつもりで飛んでいってしまうのです。ご迷惑をおかけしました」

 

「あ、いや、迷惑だなんてそんな…」

 

「さあ、神楽くん。行きましょうか」

 

ひよりが俺の腕をギュッと掴んだ。その力は、アルベルトの握力にも匹敵するのではないかと思うほど強く、逃げることを許さない。

 

「待ってひよりちゃん!腕!腕が痛い! 帆波ちゃん!また今度ゆっくり―」

 

「神楽くん。……次はありませんよ?」

 

そう言って神楽の手を引いた。そして神楽が居心地が悪そうに目を逸らす。それを見ていた龍園はニヤニヤしながら、こっそりと特大サイズの水鉄砲をひよりに差し出した。龍園は何も言わなかったが、その目は「好きにしろ」と言っているようだ。

 

普段の彼女ならこんな暴力的なものは手に取らないが、今のひよりは手段を選ばないほどであった。

 

「神楽くん」

 

「ひよりちゃん、さっきは悪かっ」

 

神楽が振り返ろうとした、その瞬間だった。

 

バシャァァァァァァン!!!

 

視界が一瞬で真っ白になった。凄まじい勢いの水の塊が、神楽の顔面に、 一切の慈悲なく直撃したのだ。

 

「ぐはっ!? げほっ、ごほっ……!」

 

鼻に水が入り、激しくむせる。あまりの水圧に俺は足元を掬われそうになった。ようやく目を開けると、特大水鉄砲を持ったひよりちゃんが立っていた。

 

「あら。すみません。あまりにも神楽くんが『お熱く』語り合っていたので、少し冷やしてあげた方がいいかと思いまして」

 

ひよりの声は穏やかだったが、その背後には圧倒的なオーラが渦巻いている。

 

「ひ、ひよりちゃん…? 今、完全に狙い澄まして発射したよね? しかもその水圧、普通じゃないんだけど……」

 

「気のせいです。水鉄砲の重さで少しだけ指が滑ってしまっただけです。まだお顔が赤いようです。もう一度、必要でしょうか?」

 

そう言ってひよりが再び引き金に指をかけた。

 

「…すんませんでした」





神楽君の性格はこの先も治ることはありません

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