クワトロ玩具箱   作:かりん2022

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【読】最悪闇医者になります

鬼灯 蜜の人生は、幼稚園で終わった。

小学校入学して早々に病気を発症して、以来ずっと病院にいた。

どうして。悪いことしてないのに。神様はいじわる。

運命を、全てを恨んでいた。

 

友達の柊 火乃香ちゃんは、クリスマスが峠らしい。

やっぱり神様はいじわるだ。

火乃香ちゃんのパパもママも、来てくれてなくて、私が1人きり。

お姉ちゃんは去年のクリスマスにはいてくれたのに、今年はいない。私も1人。

お姉ちゃんは、私の病気を治すからってお医者様になる勉強をしてるけど、そんなの絶対間に合いっこない。大体、最近、おねぇちゃん太りすぎなんだよね。

私はこんなにほっそりしてるのにさ。

勉強サボって、アニメ見て人形集めてるの知ってるよ。

 

……。火乃香ちゃんが死んだら、私も死んじゃおうか。

 

火乃香ちゃんの手を握る。

 

その時。

 

何かが動いた。

 

影から、真っ黒なトナカイのコスチュームの人が、影からズルズルと踊りながら出てくる。

私達を囲むように、たくさんの人が影から踊りながら出てきた。

 

うそ、うそだ。

 

神様を嫌いだなんて思ってたから、悪魔が迎えに来たの?

 

「ほ、火乃香ちゃん……」

 

 踊る妖精は囁く。踊るお医者様は囁く。そして、天使様が祈る。

 その時ばかりは、全員が頭を下げて、お祈りをした。

 わけがわからない。

 そして、サンタが火乃香ちゃんに、終わりましたとでもいうように人形を枕元に置いた。

 彼らは踊り出して、カバンから栄養ゼリーを取り出して踊りながら飲み出した。

 そしてその状態のまま、影に沈んでいく。

 

「やだ、火乃香ちゃん、死んじゃったの? やだ、火乃香ちゃん!」

「蜜、ちゃん……? 蜜ちゃん、ここは天国なの、きゃああ! 蜜ちゃん、あれ!」

 

 今度は私の影から、トナカイが踊りながら出てきた。さっきとは違う人。

 そして、全く同じようにした。

 祈られた瞬間、体が楽になった。

 息ができる。息ができる!! 驚く私に、人形が渡された。

 

 トナカイは、踊りながら影に潜っていく。

 

 あれはなんだったの?

 

 他の子の所に行く。

 トナカイさん達に囲まれた子は元気になっていく。

 

 お医者さんや看護婦さんや警備員の人がいて、隠れてみた。

 

 皆、目を丸くして驚いていた。

 

 翌日は一斉検査と保護者の呼び出し。テレビ局の人も来た。

 

 病気がなくなったんだって。

 私達、また学校に通えるんだって!

 

 勉強大変だけど、いくらでも頑張れる。

 だって私達、学校にまた通えるんだもん!!

 

 人形は怖い人達に取られちゃったけど……。

 

 でも、健康な体になれた。

 

 今日は社会科見学で、東京タワー。

 

 そう思ってたんだけど、悪い魔法使いさんが東京タワーを占拠しちゃった。

 

 先生やクラスメイト達と小さくなりながら、思う。

 

 なんでこんな事になっちゃうんだろうって。幸せになれないのかなって。

 

 爆破の魔法が使えるって本当なのかな。怖いよ。

 そんな時に、音楽があちこちで、大音量で鳴った。

 聞いた事のない、ノリのいい曲。

 

 そして、踊りながら影から現れるサンタさん達。

 

「サンタさん!!!」

 

 火乃香ちゃんが叫ぶ。

 

 サンタさん達が、手をかざすと色とりどりの光が現れた。

 それは犯人を吹き飛ばしていく。

 

 そうしている間に、ブラックトナカイさんが「静かに」のポーズで影から現れて、皆の手を順番に引いていく。きっと逃がしてくれているんだ。

 

 最後に残った私の手を引こうとトナカイさんが手を伸ばした時、何かに抱きしめられて体が熱くなった。

 爆弾が爆発したんだと分かったのは一拍後だった。

 

「蜜! 蜜!! 意識を保って!!!」

 

 必死に語りかけるのは、ふっくらとしたサンタさんコスの人。お姉ちゃんの声だった。お姉ちゃんだった。凄い怪我してる。

 私の周りにも、お姉ちゃんの周りにも、トナカイさんの周りにも。跪いて祈る人がいる。

 

 

「ああ、女神様、お願いです。私は餓死してもいい。蜜を治して!」

 

 私の体が暖かくなっていく。

 お姉ちゃんはみるみるほっそりしていった。

 健康的を通り越して、ガリガリの域まで。おねぇちゃんが消えちゃう。

 

 なんだ。

 

 やっぱり、私を助けてくれたの、悪魔なんじゃん。

 

 私の目からポロリと涙がこぼれ落ちた。

 お姉ちゃんが死んじゃう。

 

 そこに、天使コスの人が歩いてきて、お姉ちゃんの口に炭酸飲料の王者の真っ黒なペットボトルを突っ込んだ。

 

「イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!!」

「「「イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!!」」」

 

 運ばれてくる、ファーストフードの王者。

 

 お姉ちゃんは豚のように飲み食いする。

 

「ふっかーつ!」

「警察来たし、撤収するぞー」

 

 そうして、私は今度こそトナカイさんに手を引かれて影へと潜った。

 暗いところを潜り抜けると外だった。皆が待っていて、待ち構えていたお医者さんが私を保護した。

 

 テロリスト事件は終わった。

 

 犯人は、石の手錠をされた状態で捕まったらしい。

 

 姉は、突如として一週間家出を敢行し、お母さんにめちゃくちゃ怒られてた。

 帰った時には体重は元に戻ってた。

 

 

 私は、お姉ちゃんの部屋に行った。

 

「太ったり痩せたり、体に悪いんじゃない?」

「女神様のお恵みを食べれば大丈夫、多分、きっと、メイビー……」

「なにそれ」

「おひたし。食べる?」

「食べる」

 

 美味しいおひたしを2人で食べる。

 

「女神様って、悪魔なの? 天使なの?」

「女神様は女神様だよ。悪魔なんて言っちゃダメ。天使もだめ。神様なんだから。気に入らない奴はマグマにぶち込み、可哀想な子がいると悲しくなっちゃう、子供の幸せを願う最強の女神様」

「お姉ちゃん、信徒なの?」

「そうだよ、内緒にできる?」

「できる」

 

 私は、お姉ちゃんに抱きついた。

 

「ありがとう、お姉ちゃん。サンタさんのお人形、知らない大人に取られちゃってごめんね」

「なにそれ知らない。腹立つわー。また作ってあげるから。何体でもね」

 

 お姉ちゃん、大好き。

 でも、ダンジョンや異世界に入り浸ってて、医者になる試験大丈夫?




マシュマロ
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