「信じられないね、直哉」
「せやな、傑くん」
2人はスマホを見てほえー。当然五条は気になるわけで。
「さっきの誰?」
「自分らの世界で魔法使いのリーダーやっとった人」
「こっちの世界ではスカウトが行われてないからね。後、年齢が違った」
「伝説のロリエールさんもいるのかな」
「覇王鈴木おるかも!」
きゃっきゃっきゃっきゃ!
「つまりどういうこと?」
「ええとね。呪術師でもない、五条家も関係ない、呪力も術式も六眼もない並行世界の悟に会っちゃった! って感じかな」
「そんな凄いの?」
「話聞いてた? 教団のまとめ役で長老だよ。直哉がキュンキュンしてた」
「傑くんかて独身で若かったら口説いてた言うてた癖に!」
きゃっきゃっきゃっきゃ!
「非術師に見えたけど」
「ウニャ様が術式くれるんだからそこは関係ないんだよ」
「それもそうか……」
「でもそうだね、今もこれからも、ニーテストは普通の人だ。こっちでは勧誘してないし、彼女が私の知る傑物になる未来はないね。口説くのはないかな」
「いうたな? じゃあ自分アタックするけど邪魔せんといてな」
「ええっ!?」
「ニーテストって天涯孤独やったし、恋人も女神様経由で見つけたって事は今はフリーの可能性高いし、せやったらこっちの世界捨てて自分の事選んでくれる可能性高いやん。闇さえ選んで貰えばニーテストも子供も呪霊見えるし、ニーテストの長所って指揮系統で魔法操るのは元々あんまりやったし」
「な、なるほど……」
「……。僕、ネムネムさんの事、結構好きなんだよね。彼女も女神様がいなければ1人だって言ってたし」
「えっ!!!」
突然のカミングアウトに夏油はバッと五条の方を見る。
「傑は一番好感度高いのは?」
「ロリエールさん……あっ 違くて! 変な意味はなくて!!! 人間的に尊敬できるっていうか、もっと勉強させて欲しかったというか!!!」
五条と直哉はニヤニヤする。
「これも女神様のお導きかもね。ウニャ様にお願いして、合コン作戦行っちゃう?」
「傑くんの気になる先輩賢者って誰や? 女の子限定で」
「そ、それは……」
夏油はもじもじ。
「私、は……は、恥ずかしいよ」
「自分が話したんやから、傑くんもはなせや」
「そーだぞ、傑」
そうして、夏油は2人に連行されていく。
「えー! なんか楽しそうな話してる! ニーテストさんとかネムネムさんとかロリエールさんってどんな人!? 知りたい!」
「みんな個性的な人で、女神様の加護がなければ一般人の非術師やで!」
「あー……じゃあ、伏せた方が良くない?」
「あ、せやな……」
教祖夏油は、ニーテストと呼ばれた女の子をつける事にした。
「そこまで」
セキュリティマンションに入る、という所まで来て、教祖夏油は五条先生に呼び止められた。
「並行世界の僕たち、せっかく楽しそうにしてるから、楽しいままで帰らせてあげてくれないかな。どうせ事情は知ってるだろ」
「女神に帰依した私達、だっけ。非術師と結ばれようだなんて、しかも君まで巻き込んで、穢らわしい」
「女神に帰依さえすれば同じ術師だろ。遺伝もするらしいし。むしろ、女神に帰依してない俺達の方があの傑にとっては非術師なのかも」
「っ! 君はそれでいいのか!?」
「いいんだろ。少なくとも向こうの俺は、すっごく幸せそうだよ。お前も」
そして、五条は眩しそうにマンションを見た。
「僕達も、ああなりたかった。でも、僕達に女神の加護はない。呪わなくて済むよう、手を差し伸べてくれる女神はいなかった。僕達はひとりぼっちだ」
羨ましい、と五条は言った。
「少し、向こうの公園まで話さないか? 傑」
「っ……」
歩く。
夏油も仕方なく歩いた。
五条は話し出す。並行世界の自分達のことを。
話を聞いて、夏油はパラレル自分達のあまりの幸せっぷりにイライラしてきた。
「今の中学3年生。来年の一年生になるかな。虎杖悠仁って子供がいるんだけど。その子、宿儺の器でね。宿儺の復活を目論む呪詛師がいるんだ」
「……」
「僕と傑。力を得て味方にもなってくれた非術師。一層強力になった呪術師みんなの力を結集して、それでも僕は一回真っ二つにされて、全力で蘇生魔法を使われて、もう一回戦って、ようやく倒せたって。どんな無理ゲーだよって話だよね」
「悟……」
「甘いって言われるかもだけど、俺は、虎杖悠仁を殺して解決はしたくないんだ。それに、その呪詛師、1000人同じようなのを作ってるから、その処理も考えると、どうしても宿儺に虎杖の体を使わせて虎杖に力の使い方を教えて育てないといけない。本物の女神様のお告げだと、僕、ひっどい死に方するらしいんだよね。真っ二つにされて死んで、脳みそくり抜かれて生徒が代わりにこの体使って戦って……。あ、お前も脳みそくり抜かれるから」
「は?」
「スッゲー惨めだと思う」
「悟……」
「俺、頑張ってるよな」
「もちろん、君は頑張っているよ。すごく頑張ってる。君ほど頑張ってる人はいないよ」
「じゃなんで俺は何も手に入らないんだよ」
「悟……」
公園で、2人は向き合った。
「向こうの傑、俺にこれくれたんだ。なんでもいうこと聞いて上げる券、3年分。で、それ、向こうの俺は簡単に譲ってくれるんだ。いつでも手に入るから。こんなのなくても、傑はいつでも一緒で何でも言うこと聞いてくれるから。あっ お互いに、だからな!」
出したのは、呪力を帯びたチケット。
「悟」
「傑。人生で一回だけ、悪い事させて」
「悟!」
「【傑。このチケット全部使う。戻ってきて】」
チケットが黒い炎で燃え上がり、夏油の腕に黒い紋様の焦げ跡を刻みつけた。
「悟……!」
「で、きた。うわ、いけるとは思ってたけどすご……2年11ヶ月経ったらどうするかはその時の俺に任せる事にして。あー。傑」
「ごめん、おかえり」
聖人五条悟だってドロドロする事はある。だって人間だもの。
マシュマロ
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