緑谷出久は無個性だった。
だが、それは仕方のない事だった。
デクが無個性なのは、世界を救う為だったのだから。
個性を受け継ぎ、傷つきながらも仲間の力を借りて巨悪を討伐。
そして、引退。
まだ幼いデクには言語化できないが、世界を救う為に選ばれ、その為だけに生まれた運命的なものを感じた。
オールマイトの動画を思い返す。
「……」
この傑物が破れる相手をぶっ倒す事を、デクは求められている。世界に。
デクは重圧に押しつぶされそうだった。
〈デク:それって死んじゃわない?〉
[読太:漫画ではデクの為に他のヒーローが死んでくれたから大丈夫だったよ]
「け、賢者様……」
「デクさん、頑張れー! 頑張れー! ワフも、強くなれば応援出来るんだよ!」
訂正しよう。
ぷちっと潰れていた。
デクは偉大なるヒーローに憧れていた。
だが、偉大なるヒーローとはどういうことか理解しているとはとても言えない。
だってまだ5歳だもの。
それでもデクは、頑張って話を聞いた。
初手の試練、かっちゃんをヴィランから救うという行動から既に出来る気はしなかった。
その後も、基本ムーブ一回骨折一回のペースである。
後遺症だってそうそうに残る怪我を初っ端から受けていく。
ボロボロの体で、限界を何度もプラスウルトラして乗り越えていくのだ。
たとえ、死ぬような目にあっても。大切な人が傷ついても。
それでも、やらねばならぬのである。
なんなら、頑張ってやり遂げた自分以上のプラスウルトラで世界を救う必要があるのだ。
出来るの?
やらねばならぬのである!
デクの体が人間だったら、涙が溢れていた。
何故自分? と思うが、個性を譲られるにあたり、無個性である事は外せぬ要素らしい。強力すぎる個性ゆえに、個性持ちが受け継ぐと死んでしまうのだ。
それに、巨悪を倒した時、個性は役目を終えて消えるらしい。
成果に対して、リターンは尊い平和のみという結果。ヒーローは辛い。
秘密も守らねばならない。でなくば周囲まで巻き込むだろう。
だが、仲間は作らねばならない。信頼できる仲間を。
試練を手助けしてくれるワフ様の為に。
世界を救う。
ワフ様にも仕える。
両方をやらねばならぬのだ。
〈デク:お話、聞かせてください……〉
[読太:いいとも、どのみち今日は主人様達を守るために寝ずの番をしないとだからね。交代要因と、宿る人形も早急に用意しないと……。人形は使用時間に制限があるらしいからね。明日は朝から忙しくなる]
デクは、一生懸命、お話を聞きながら起きていた。
そして、朝。
デクは寝ずの番を頑張り、朝に夏油傑ヴィランになる予定だったおにーさん、いやゲドーが交代要因を連れてきたので、ひとまず帰った。
朝、公園に忽然と現れた緑谷は、突如かっちゃんに指を差される。
「あー! デクいた!! どこ行ってたんだよ!!!」
「かっちゃーーーーーーーん!!!」
デクは命綱に飛びついた。こいつだ、こいつしかない。
デクという頼りない最終兵器を恐るべきヴィランに着弾させてくれるウルトラスーパーヒーローはかっちゃんしかない。かっちゃんなしにAFO討伐はできない。
「かっちゃーーーーーーーん!!! お願い、僕、僕、助けてよ、かっちゃん!!!」
わあわあとデクは泣きじゃくった。
お前だ。お前が必要なのだ。世界を救えるのは君だけだ!!!
絶対に逃さん!!!!!
それらが言語化できたかどうかは知らないが、とにかくデクはかっちゃんに泣きついた。
「緑谷出久くん! 見つけたワンよ! お手柄わん、爆豪くん!」
すぐに一緒に探していたヒーローが来てくれて、デクは無事保護された。
迷子探索ヒーロー、パトローワンだ。
「パトローワンだぁ!!!」
お子様向けの番組にも出てくるこのヒーローに、デクは絶大な信頼を寄せていた。
話を聞くに、かっちゃんも探しに来てくれていたのだと知り、デクは心を固めた。
元から鉄のような決心だったが、アダマンタイトぐらいになった。
かっちゃんは巻き込む。必ず巻き込む。あと助けに来てくれたヒーローのパトローワンも。だってワフ様に仕える事が決まった後にパトローワンが見つけてくれたのだ。きっとこれも女神様のお導きである。
「かっちゃん、パトローワン。お願い。僕を助けると思って、世界の為に神様に仕えてくれないかな」
「俺は誰の元にも跪かねー!!!!!」
反射的に大爆発するかっちゃん。
「でも、でも世界を救う為なんだ!!」
「なんで俺が誰かのドレーなんかすることで世界が救われんだよ!」
ドレーってのはわからないけど、でも。
「オールマイトの為なんだ!!!!」
「誰がそんな事を言ったんだい?」
優しくパトローワンが聞いてくれる。
「ドクタさん! 女神様の使徒様にお仕えする賢者様!」
「うん、洗脳系の個性ワンね! とりあえず話を聞こうかワン!」
「あ、個性か……」
「かっちゃんなら、かっちゃんなら僕を助けられるんだ。お願い、話を聞いて……」
「子分を救うのもヒーローの仕事だからな。話してみろよ」
秘密という事で、デクと爆豪のご両親に無事をお話した後、3人で個室でお話し合いである。
「僕は無個性なんだ」
「知ってる」
「そうなんだってねわん」
「10年後、強力な個性を譲渡されるんだって。あまりにも強力すぎて、空っぽの無個性にしか受け継げないんだって」
「それで?」
「オールマイトが破れし時、僕が代わりに悪いヴィランをやっつけないといけないんだって」
「オールマイトが負けるわけない!!」
「オールマイトの個性の対となる個性があって、すっごい悪くて強いヴィランなんだって」
「そんな奴にお前が勝てるわけない!」
「そうだよおおおおおお!!! だから将来、超強いヒーローになるかっちゃん助けてよーーーー!!! 僕、無理だよ! 頑張るけど、パンチ一発で骨が折れる個性なんだって! 強い個性だけど、使う度に体を壊すって!」
デクが泣きじゃくると、かっちゃんは引いて、お、おうと言った。
「まあ、俺は超強いヒーローになるからな……」
「かっちゃん、天才なんだって! 努力もする天才なんだって! 才能、個性、努力、全てを持つヒーロー!」
「俺は天才だからな! 個性だって、俺が貰っちゃってもいいんだぜ」
「あ、強力な個性だから、無個性以外が受け継ぐと爆発するって」
「そうか……」
胸を張っていたかっちゃんは、普通に戻った。
爆発するなら無理か、と続ける。
「じゃあ、デクはその個性で手伝えよ。俺が手伝うんじゃなく、デクが手伝え」
「うんっ!!! さすがかっちゃん!!! かっちゃん凄い!!!」
「うーん。証拠はあるのかい、わん?」
「えっと、デクはパトローワンを賢者様に推薦します」
デクが唱えると、紙がひらりと落ちた。
「ここにアクセスして、属性と名前を選んでください。三十分で戻ってきてね。あっ! 土か生産が欲しいって!」
デクの言葉に、戸惑いながらもパトローワンは従った。
パトローワンが消えた。
「デクの個性?」
「違う。賢者様とお仕えする使徒様がいる所に送ったの」
それから、パトローワンが戻ってきた。汗だくだくで。
「ちょ……っと考えようか。でも、まずは使徒様の保護だね。デクくん。ひとまず、僕に任せてくれないかな? デクくん、爆豪くん、絶対誰にも内緒だよ。それとデクくん。使徒様にもらった力は、絶対内緒にしないとダメだよ」
「うん」
「デク、もうそのすげー個性もらったのか?」
「ううん。使徒様がくれる力は、仕事道具だよ。でも、強くなったら自分の為にも支えるようになるって」
「力がもらえるなら話は別だ。話聞かせろ」
「えっと、属性は……」
かっちゃんは属性の話を聞いて、選んだ。
「俺は水属性を選ぶ」
「火属性じゃないの?」
「もう爆発があるわバーカ。咄嗟の時に消火できんだろ」
「凄いや、かっちゃん!」
こうして結成された「オールマイトを助け隊」は、証拠が集まり、成長して理解力が高まる毎に追い詰められていく事になる。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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