クワトロ玩具箱   作:かりん2022

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【怪】メスガキコル参上!

怪獣8号は普通に活躍していた。

そもそも日本は、怪獣がホイホイ出る地域柄。

9号が特別厄介と言うだけで、9号がいなければ全て解決というわけではない。

ということで、訓練と出撃の毎日を送っていた。

 

「ざぁーこ♡ ざぁーこ♡」

「コォラ、キコル! ハルイチ虐めんなよ!」

「またやってんのか……」

「今日という今日はゆるさねぇーぞ! ハルイチに謝れ!」

「ええい♡ お兄ちゃん召喚♡」

「キーコール。もう就職して社会人になったんだから、いい加減に……」

「えっ お兄ちゃん、庇ってくれないの……?」

 

 キコルは途端にうるうるしだす。

 

「お兄ちゃんに任せろ!」

「キノォ! 絶対キコルのためになんねぇぞ、それ!」

「わかってる、わかってるけど……! 兄は妹には勝てないものなんだよ!」

「お兄ちゃん♡ 大好き♡」

「コラ、キコル! あんたいい加減にしなさい!」

 

 ヒカリが出てきて、キコルはゲッと声を上げた。

 

「キコル、本来の運命の世界に飛ばされる事故が起こってるって注意報が出てるわ。あなたは特に心配だから、しばらく防衛隊を休んでSPと一緒にいなさい」

「えーヤダァ! じゃあパパと一緒にいる! それに私天才だから、大丈夫だもん♡」

 

 キコルが走り……黒い影を踏み抜いた。

 

「キコル!」

「キコル!!」

 

 そして、キコルは。

 

「え……?」

 

 落下する。

 

「キコル!?」

「パパァ!」

「キコル!」

 

 真下に居た功に受け止められたキコルは、父に抱きついた。

 

「パパァ! ママが虐めるの!!」

「何を言っている……? 怪獣の作戦か? まさかキコルを……!!」

 

「キコルが2人……? まあいい。怪獣に戻ろう。2号」

「逃げなさい、キコル!」

「あれ、パパ怪我してる……?」

 

 疑う心もあるが、まずは逃す方向に動いた功。

 

「9号? ママがやっつけたのに、まだ懲りないんだぁ♡ 見逃してあげるから、さっさと尻尾巻いて帰りなよ♡」

 

 9号の攻撃。

 咄嗟に功が庇う。

 

 着弾。

 

「長官!!!!」

 

 だがその瞬間、キコルの影が広がり、キコルと功を飲み込んでいたのだ。

 

 影が盛り上がり、キコルと長官が出てくる。

 

「パパ、見てて。私、スーパークールで天才でつよーい美少女なんだから。ママがやったみたいに、私、ちゃんと出来るよ」

 

 キコルが手を差し伸べると、闇が渦巻いて斧を形作った。

 

「なんだそれは……? 君はキコルではないね」

「私はキコル。予言されたヒロインのキコルちゃんだよ!」

 

 斧を振りかぶる。

 9号の攻撃とぶつかり合う。

 

 だが悲しいかな、闇属性の攻撃力はさほどでもない。

 あっさりと力負けした。

 

「ファッ……お兄ちゃーん!!  助けて〜! 私とパパがピンチだよー!」

 

 バタバタするキコル。

 

「なんだ、見掛け倒しか」

 

 9号は改めて功に向き合う。

 

「ダメェっ」

 

 キコルは空を飛んで、功を持ち上げた。キコルは両親から光と闇の属性を遺伝しているが、自身が選んだのは空を飛べる風属性だ。飛ぶ事だったら誰にも負けない。

 

「君は……何者だ?」

「は? 私はキコル! 四ノ宮キコル! パパのかわいーい娘ですぅー! いつもみたいに毎秒可愛いって言って!」

 

 9号の攻撃を風を操り、あるいは盾でそらし、あるいは回避する。

 

「功さん!」

「鳴海お兄ちゃん!」

「は!?」

「私の偽物!?」

「9号、よくも! 長官を離せ!」

 

 次々と防衛隊員が集まってくる。

 

「カフカ! 私の怪獣ちゃん! 鳴海お兄ちゃん! 私!」

「へ!?」

「ああ? なんだ偽物」

「何よ!」

「私がパパを避難させるから、そいつやっつけちゃって! 私は来栖さんをお願い!」

「お、おう」

「くっ 今は信じる!」

「逃がさないよ」

「ざぁこ♡ ざぁこ♡ 私は誰にも捕まらないんだから!」

 

 影が二人を覆い、トプンと消えた。

 

「つまらない。作戦は失敗か……。じゃあ、僕は帰るよ」

「させるか!」

「ここで倒すぞ8号!」

 

 

 

 鳴海とカフカの奮闘虚しく、取り逃すこととなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長官は!」

 

 カフカが声を上げるが、鳴海は指を口の前に置いて静かにさせた。

 本物キコルが心配そうに少し離れた場所で見守っている。

 横たわった四ノ宮功の前で、跪いて祈る偽物のキコルは発光していた。

 その傷が、静かに癒えていく。

 

「ここは……」

 

 凄まじいお腹の音がする。

 

「お腹減ったー! お腹と背中がくっついちゃう♡ 餓死しちゃうよぅ♡」

「……事情を話すならカツ丼くらい食わせてやる」

 

 

 

 

 

「「「並行世界のキコル(私)ー!?」」」

「そう! 私の名前は四ノ宮キコル!! 強くて♡ 天才で♡ 美少女の♡ スーパーヒロインなんだから!!」

 

 胸を張るキコル。

 

「どっから来るんだその自信」

「事実だよ♡ だって防衛隊にもちゃんと一発で合格出来たんだから♡ 私ってとってもすごいんだぞ♡」

「長官を癒したり、影に潜ったのはなんだ」

 

 人間のできることではないと、鳴海は詰問する。

 

「鳴海お兄ちゃんも俺こそは雷の王とか言ってるじゃない」

「言ってない!」

「妹といつも仲良くしてるロリコンだし」

「ロリコンじゃない!」

 

 なお、鳴海とキララは同属性、雷の使い手である。

 それゆえに、仲はいい。

 キノは炎。

 

「並行世界の技術かなんかか……? 俺達もできる?」

「ちょっと待ってね♡ 無理みたい♡」

 

 空中に視線を滑らせて、何かを読む動作をしてから言うメスガキコル。

 

「とにかく、パパを助けてくれてありがとう。帰還までの生活は私に任せて」

「ああ、責任もって四ノ宮が面倒をみよう」

 

 キコルと功が保護を申し出る。

 

「ありがとう♡ いっぱいご飯くれるなら、怪我人治療していいよ♡」

「助かる。何が出来るんだ? さっきの魔法みたいなの」

「私は、パパから闇を、ママから光を受け継いでいるんだよ♡ あと風も使えるよ♡ 影に潜ったり、属性盾を作ったり、傷を癒したり、照らしたり、空を飛んだり、かまいたちで攻撃したりできるよ♡ あと、恐怖を増幅させることもできるよ♡」

「多彩だな……。そうか、ヒカリが光を操るのか……」

「私、とってもできるんだから♡ 褒めて♡ 褒めて♡」

「そっちの私にはお兄ちゃんと妹がいるの?」

「そう♡ キノお兄ちゃんと妹のキララがいるよ♡ みんな私の事大好きなの♡」

「ママも生きてるの?」

「そうだよ♡ でもママは厳しいからキラーイ⭐︎」

「っ」

 

 甘ったれたメスガキコルに、キコルは思わず唇を噛む。

 功はため息をついた。

 

「ヒカリと約束をしたのだ」

「パパ?」

「キコルの為に、ヒカリは厳しくする。私は甘やかす。キコルが生き延びられるように」

「パパ……」

「そうだよ♡ お兄ちゃんもパパも、すっごく甘やかしてくれるよ♡ 私愛されてるの♡」

「教育方針間違ったかもね? 長官?」

「そうとは決まったわけではないだろう、鳴海」

 

 ニヤニヤと笑う鳴海になんでもないように言う。

 

「さて、ここは今、大変な事になっている。君も防衛隊になったと言うのなら、手伝ってもらえないか。ついでにしっかり鍛えよう」

「パパが訓練見てくれるの? 初めて! 楽しみ!」

「あ、ああ……」

 

 四ノ宮功が並行世界の教育方針を後悔するまで2日と掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ざぁこ♡ ざぁこ♡ ほーら♡ 走れ私の怪獣ちゃん♡」

「ぬおおおおおお!」

 

 乗り物にされた8号が鳴海から逃げる。

 

「待ちやがれ、甘ったれた方のキコル!!」

「キーちゃん! 待ちなさい!! なんとか言ってよパパ!」

 

 遊んでいる場合ではないのだ。ないのだが。

 

 一度雷を落としたら大変な事になって功は大いに戸惑った。

 本当に防衛隊に合格したのか。裏口入隊ではないか。

 

 キコルがどれだけいい子なのか、なんて真っ直ぐに育ってくれたのか、骨身に染みる功だった。

 

 甘ったれたメスガキコルを見るにつけ、どんどん頑張るキコルを守ってあげたいと言う思いが募る防衛隊だった。




メスガキコルの家族の自慢話を優しい笑顔で聞く真ヒロインキコルちゃん。切ない……。


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