ガンダムU.C. Altered Line 作:シャノワール
シーン構成に時間がかかり、今回は会話中心の展開となりました。
戦闘描写は次回以降で自然に組み込めるよう調整しています。
大気圏突入を終えたコムサイは、船体に残る赤い余熱を散らしながら、滑空するように降下を始めていた。
地上が見える高度を維持しつつ航行するその視界に、巨大な影がゆっくりと姿を現す。
北米方面軍司令、ガルマ・ザビの旗艦――ガウ級攻撃空母。
後部ハッチが重々しい音を立てて開き、
内部の照明がコムサイを照らし出す。
≪こちら、地球方面軍司令旗艦ガウ。
コムサイ、回収態勢に入る。
そのままの速度を保ってくれ≫
≪了解≫
≪コムサイ、アプローチ。
ガウとの相対速度コンマ78……誘導レーザー・ロック、レンジ内に固定≫
光のラインがコムサイの船体の要所を正確に捉え、
交差する光が位置を固定していく。
≪キャッチを確認。そのまま誘導に沿って着艦してくれ≫
コムサイはレーザーラインに沿って後部ハッチへ進入し、
格納庫へと吸い込まれるように着艦した。
金属が軋む重い音が格納庫内に響く。
「少佐、着艦が完了しました。ハッチを開きます」
ドレンの声とともにハッチが開き、
シャアとマリアはタラップを降り、ガウ艦内の通路を進む。
二人の足音だけが、静かな艦内に響いていた。
◇ ◇ ◇
ブリッジの扉が開くと、
モニターを見つめていた青年がこちらに気づき、ぱっと表情を明るくした。
「やぁ、シャア。
君らしくないな、連邦の船一隻に手こずって」
シャアは苦笑しながら歩み寄り、差し出された手を握り返す。
「言うなよ、ガルマ……いや。
地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐と呼ぶべきかな?」
「昔と同じようにガルマでいいさ」
ガルマが軽く笑うと、
シャアは頷き、その視線を後ろに控えていたマリアへ向けた。
ガルマも気づき、柔らかい笑みを浮かべる。
「久しぶりだね、マリア。
最後に会ったのは……まだ僕らが子どもだった頃か」
マリアは姿勢を正し、敬礼しながら答える。
「はい、ガルマ様。お久しぶりです」
ガルマは少し照れたように肩をすくめた。
「そんなに堅くならなくていいよ。
昔みたいに、普通に話してくれた方が僕は嬉しい」
マリアは一瞬だけ視線を伏せ、
ほんのわずかに頬を緩めてから答える。
「……そう言っていただけるのは嬉しいです。
ですが、今の私はジオンの軍人ですから。
昔みたいに“ガルマ”と呼ぶわけにはいきません」
言葉は丁寧で距離がある。
けれど、その声音には確かな懐かしさが滲んでいた。
ガルマはその微妙な“線引き”を理解し、
少しだけ寂しそうに、しかし嬉しそうに微笑む。
シャアは横で、
(……随分と親しいじゃないか)
と心の中で呟きながら二人を観察していた。
ガルマはシャアへ向き直り、声を低くする。
「あれが木馬だな?
“赤い彗星”と言われるほどの君が仕留められなかったとはね」
その声音には驚きと信じられないという感情が混じっていた。
シャアは肩をすくめ、軽く笑って返す。
「甘く見たつもりはなかったのだがな。
それより、わざわざ君が出てくることもなかったのでは?」
ガルマは首を振る。
「いや、君でも墜とせなかった船だ。
僕もこの目で確かめないとね」
司令官としての責任と、幼なじみとしての素直な興味が混ざった声だった。
「それでだ。
二人から見て、あの船の戦力について聞きたい」
シャアはすぐに口を開いた。
「まず、あの“木馬”だが――ただの戦艦ではない」
ガルマが眉をひそめる。
「どういう意味だい?」
シャアは淡々と続ける。
「連邦が極秘に進めていたV作戦。
その中核となるモビルスーツを運用できる“専用の母艦”だと私は見ている」
ガルマは腕を組み、真剣な表情で聞き入る。
「つまり、連邦はMSを実戦投入し、
それを運用する艦まで用意していた……というわけか」
シャアは頷き、わずかに目を細めた。
「問題は――そのモビルスーツだ。
白い機体。あれはザクとは“別物”だ」
「性能は、そこまでか?」
「装甲だが……通常兵装ではほとんど効果がなかった」
ガルマが息を呑む。
「何……?」
「それに――携行兵装とは思えない火力を持っている。
こちらの機体が、一撃で行動不能になるほどだ」
ガルマはしばし沈黙し、小さく息を吐いた。
「……なるほど。
君が手こずった理由が、少し分かってきたよ。
だが、そうなると――今ここで叩くべきではないのか?」
シャアが口を開こうとしたその瞬間、
マリアが一歩前に出た。
「ガルマ様。
確かに脅威ですが――だからこそ。
慎重に事を進めるべきだと思います」
「どういうことだい?」
マリアは落ち着いた声で続ける。
「まず木馬ですが――
あれはMS母艦であるにもかかわらず、戦艦としては異例の“大気圏突入能力”を備えています。
つまり、単にMSを運用するだけの艦ではなく、
“戦略機動艦”として設計されている可能性が高いのです」
ガルマが目を細める。
「戦艦で大気圏突入……?
そんな芸当、通常の艦では不可能だろう」
「はい。実際に目の当たりにしました。
それは、少佐も同様かと」
ガルマはシャアへ視線を向ける。
「それは本当なのかい? シャア」
「ああ、間違いない」
シャアは短く肯定した。
マリアは続ける。
「そして白いMSですが――
少佐の言う通り、装甲・火力に加え、反応速度のいずれもザクを凌駕しています。
正面から攻撃すれば、こちらも少なくない被害を受けるでしょう」
ガルマの表情が揺れる。
「……つまり、今攻撃すれば、こちらも痛手を負うと?」
「はい。
ですから、無策で追撃するのは危険です」
マリアの言葉が静かに落ちる。
ガルマはしばし沈黙し、視線を床へ落とした。
若い司令官としての焦りと、
ザビ家の名を背負う責任が胸の内でせめぎ合う。
やがて、ゆっくりと顔を上げた。
「……では、どうするべきだ?」
マリアは選ぶように言葉を紡いだ。
「ガルマ様。
木馬はジャブローへ向かうはずです。
その進路を把握し、こちらの有利な地点に“罠”を仕掛けるべきかと」
ガルマがわずかに目を見開く。
「罠を……?」
「はい。
正面からの追撃は危険です。
ならば、彼らが“必ず通る道”を押さえ、
そこへ誘導するのが最も確実かと」
ガルマは深く考え込み、
やがて決意を固めたように息を吐いた。
「……よし。
木馬の進路を割り出し、罠を張る。
こちらの有利な場所へ誘い込むんだ」
ガルマは振り返り、部下たちへ声を張った。
「――全艦、木馬の進路予測に移れ!
地形データを照合し、罠を仕掛けられる地点を割り出すんだ。急げ!」
「はっ!」
オペレーターたちが一斉に動き出し、
ブリッジに緊張感が走る。
ガルマはその様子を確認すると、
ふっと表情を緩め、シャアとマリアへ向き直った。
「君たちは……少し休んでくれ。
大気圏突入の後だ、疲れているだろう?」
シャアは軽く肩をすくめ、仮面のような微笑を浮かべる。
「お気遣い感謝するよ、ガルマ。
だが、私は大丈夫だ。
君の作戦がどう動くのか、興味もあるのでね」
ガルマは苦笑しつつも、
「君らしいな」と目で返す。
マリアは姿勢を正し、静かに頭を下げた。
「お気遣いありがとうございます、ガルマ様。
ですが、私も問題ありません」
言葉は丁寧で距離がある。
けれど、その声音にはどこか柔らかさがあった。
ガルマはその微妙な“線引き”を理解し、
少しだけ寂しそうに、しかし嬉しそうに微笑んだ。
※今回の話で、文章の編集時に冒頭部分が途中に混ざってしまうミスがありました。
修正済みですので、改めて読み直していただければ嬉しいです。
ご迷惑をおかけしました。
誤字報告があり、修正し直しました。