ガンダムU.C. Altered Line   作:シャノワール

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更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
構成自体は決まっていたのですが、どのようなシーンに落とし込むか悩んでしまい、思った以上に時間がかかってしまいました。
ようやく形にできたので、読んでいただけたら嬉しいです。


交錯する進路

第十二話 包囲網

 

大気圏突入後、ジオンの重要拠点であるキャリフォルニアベースを避けながら移動するホワイトベース。

破損した部分を補い、推力を確保できないかとアムロたちが話している。

 

ブライトはモニターを見つめながら呟いた。

 

「妙だな……ジオンの追撃が弱い。どういうことだ?」

 

リード中尉が眉をひそめる。

 

「妙だと言うが、ブライト少尉。

 君が過剰に警戒しているだけじゃないのか?

 ジオン側も補給や再編が必要なのかもしれん。

 深追いしてこないのは、そのためだろう」

 

ブライトは首を横に振った。

 

「それはありえません、中尉。

 この近くにはキャリフォルニアベースがあります。

 ジオンが補給で手を抜くはずがないでしょう」

 

リードは不満げに口を開く。

 

「しかし、これは好都合だ。

 民間人を抱えたまま地上を進むのは無謀だ。

 避難民を降ろすべきでは?」

 

ブライトは即座に反論した。

 

「そんなことはできません。

 我々は軍人です。民間人を守る義務があります」

 

リードはたどたどしく言葉を続ける。

 

「だからこそだよ……。

 避難民をホワイトベースから降ろしてだな、我々は衛星軌道へ戻って体制を――」

 

ブライトは内心で溜息をつきながら、強い口調で遮った。

 

「ここはジオンが占領している地域なんですよ?

 子供や老人たちを置き去りにするなんて……!」

 

「避難民を降ろすの……?」

 

ちょうどブリッジに上がってきたフラウが、ブライトの言葉を聞いてしまい、不安げに問いかける。

 

そこへカイが肩をすくめながら口を挟んだ。

 

「ブライトさんは、いつまでも逃げるんだってさ」

 

「――そんなことは言っていない!」

 

ブライトは思わず強い声で返す。

カイは悪びれずに続けた。

 

「へぇー、悪かったな。

 でもよ、食糧はどうすんだい?

 戦えない奴らが百人もいるんだぜ」

 

その空気を断ち切るように、オペレーターが静かに口を開いた。

 

「山脈を東に行ったところに大きめの都市部があります。

 そこでなら物資の調達は可能かと」

 

ブライトは頬に手を当て、少し考え込む。

 

「……都市部か。確かに補給の可能性はあるな」

 

短く息を吐き、決断する。

 

「……よし、東へ向かう。

 その都市で補給を試みる」

 

◇ ◇ ◇

 

ブライトが「東へ向かう」と決断した直後。

アムロはブリッジへ歩み寄り、真剣な表情で声をかけた。

 

「ブライトさん……ちょっと、いいですか」

 

ブライトは振り向き、アムロの様子にわずかに眉を上げる。

 

「アムロ? どうした」

 

アムロは一度息を整え、意志の宿った眼差しで言った。

 

「少し……提案があります」

 

その声音に、ブリッジの空気がわずかに張りつめる。

 

「ホワイトベースのエネルギーを一時的にコア・ファイターへ回せば……

 弾道軌道に乗れるはずです」

 

出された内容に、ブライトは思わず聞き返した。

 

「ホワイトベースのエネルギーを利用して……コア・ファイターに回して発進させる?」

 

アムロは力強く頷く。

 

「はい。

 弾道軌道に乗れば、ジャブローまで行けるはずです。

 ホワイトベースが包囲される前に、連邦本部へ状況を伝えられます」

 

ミライが息を呑みながら質問する。

 

「そんなこと……可能なの?」

 

アムロはミライの方を向き、迷いなく答えた。

 

「理論上はできます。

 ホワイトベースのメインエンジンをコア・ファイターに繋げば、軌道まで押し上げられるはずです」

 

「しかし……」

 

ブライトは言い淀んだ。

ジオンの包囲網から抜け出し、連邦本部から援軍を取り付けられるなら最も適している。

だが同時に、危険性もあまりに大きい。

 

ブライトは苦悩を滲ませながら、アムロを見つめた。

 

その時、内線を知らせる音が鳴り、カイが通話ボタンを押した。

 

「すまん、E通路の避難民達が騒いでいる。

 ハヤトとフラウをこちらに向かわせてくれ」

 

ブライドはハヤトとフラウの方へ視線を向けると二人は頷き、ブリッジから出ていく。

その様子を眺めていたカイは、頭の後ろに組んでいた手を挙げおどけたように口にする。

 

「このままってという訳にはいかんでしょ?

アムロの提案をやってみたら?」

 

「カタパルトを手直しできるかどうかの問題もある。

 それに……やれたとしても、発射時のショックに誰が耐えられるか……」

 

ブライトの言葉に、アムロは一歩踏み出した。

その表情には、迷いのない覚悟が宿っている。

 

「言い出したのは僕です。

 失敗しても犠牲者は一人です。

 それに……失敗するとは決まったわけじゃないでしょう?」

 

静かながら強い声だった。

その決意に、ブライトは言葉を失う。

 

「アムロ……」

 

ブライトは苦しげに目を伏せ、しばし沈黙した。

民間人を抱えた艦を守る責任と、少年を危険に晒すことへの抵抗が胸の中でせめぎ合う。

やがて、ブライトはゆっくりと顔を上げた。

 

「……分かった。

 リード中尉、よろしいですね?」

 

それまで黙っていたリード中尉は、腕を組んだまま短く答える。

 

「認める。

 何よりもまずは参謀本部に連絡を取るべきだからな」

 

その声には、実務的な判断と、どこか“他人事”のような冷静さが混じっていた。

リード中尉の承認を得たものの、ブライトの表情は晴れなかった。

彼は短く息を吐き、現実的な問題へと視線を向ける。

 

「……だが、すぐにというわけにはいかない。

 カタパルトの修理に、まだ少し時間がかかる。

 それに補給もしなければならない。

 この状態で発進準備を進めるのは危険すぎる」

 

アムロはその言葉を静かに受け止めた。

覚悟は揺らがない。

 

「わかりました。

 準備が整うまでに、コア・ファイターの点検をしておきます」

 

ブライトはアムロの真剣な眼差しを見つめ、

ほんのわずかに表情を緩めた。

 

「……頼む。

 無理はするなよ、アムロ」

 

アムロは小さく頷き、ブリッジを後にした。

 

◇ ◇ ◇

 

ガウのブリッジ。

大型スクリーンには、ホワイトベースのこれまでの航跡が映し出されていた。

 

オペレーターが報告を続ける。

 

「木馬の航跡、ここまで確認。

 速度は一定、進路はやや東寄りに偏っています」

 

ガルマは腕を組み、眉を寄せた。

 

「東……?

 山脈を越えるつもりなのか?」

 

マリアはすぐに首を振る。

 

「それは考えにくいです。

 あの艦の損傷では、山岳地帯を越える推力はありません」

 

ガルマはさらに首を傾げる。

 

「では、なぜ東へ?」

 

シャアが静かに口を開いた。

 

「……東に“何か”があるということだろう。

 木馬が向かう理由がある場所だ」

 

シャアはマリアへ視線を向ける。

 

「中尉、東側の地形を再確認してくれ」

 

マリアは端末を操作し、地図を拡大する。

 

「このあたりです。

 山脈の麓に、かつての大都市圏が存在します。

 物流拠点としても機能していた地域で……補給が可能です」

 

シャアはわずかに口元を緩めた。

 

「……なるほど。都市圏なら補給が可能だ。

 木馬はそこで物資を確保するつもりか」

 

ガルマも納得したように頷く。

 

「補給が必要なのは、どの軍でも同じということか。

 緩くなった警戒網を掻い潜り、そこへ向かったわけだ」

 

マリアが続ける。

 

「偵察隊を東側へ回していましたが……そろそろ報告が来る頃です」

 

その言葉と同時に、オペレーターが声を上げた。

 

「偵察隊より入電!

 東部の都市圏外縁部に、木馬らしき艦影を確認!

 周囲に散発的な熱源反応……補給活動中と思われます!」

 

ガルマは勢いよく立ち上がった。

 

「やはり東か!

 補給中なら動きは鈍い……好機だ!」

 

シャアは静かに頷きながらも、どこか冷めた目をしていた。

 

その様子を横目で見ながら、マリアは進言する。

 

「包囲網を敷くなら、今が最適でしょう。

 ガルマ様の武勇を示すには、うってつけの状況です」

 

ガルマは満足げに笑い、指揮官席へ向かう。

 

「全軍に通達!

 東部都市圏へ向かう!

 木馬を逃がすな、ここで叩く!」

 

ブリッジが一気に慌ただしく動き始める。

 

シャアはその様子を静かに眺め、貼り付けた笑みを崩さない。

 

その少し後ろで、マリアは端末を握りしめたまま、ほんの一瞬だけ目を伏せた。

 

(……誤算だった。

 まさか、東に向かうなんて)

 

彼女の予測は、未来の“記憶”に基づいていた。

だが、ホワイトベースは東へ向かった。

本来とはわずかに違う動き――その微妙なズレが、胸の奥をざわつかせる。

 

(補給の必要性が進路を変えた……?

 それとも、私の介入で流れが変わり始めている……?)

 

焦りが喉元まで込み上げるが、

マリアは表情を変えない。

軍人として、ガルマの前で動揺を見せるわけにはいかない。

 

マリアは呼吸を整え、

何事もなかったかのように端末へ視線を戻した。

 

(落ち着いて……まだ、流れは変えられる)

 

そう心の中で自分に言い聞かせる。

 

ガルマの声が再び響く。

 

「包囲陣形を取らせろ!

 木馬を逃がすな!」

 

マリアはその背中を見つめながら、

胸の奥に広がる不安を必死に押し込めた。




今回はホワイトベース側の状況も挟み込みました。
白いMSに関する情報とマリアの進言が加わることで、原作よりもガルマ様が慎重に判断する流れになっています。
その影響で、ホワイトベース側にもわずかながら余裕が生まれる展開となりました。
誤字報告がありましたので修正しました。
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