ガンダムU.C. Altered Line   作:シャノワール

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書けたので投稿します。
今回は少し短めです。


昇格辞令と動き出す影

司令室の扉が閉まる音が、マリアの耳にまだ残っていた。

司令室の片隅で報告書を整理しながら、ガルマが通信室へ向かった時の張り詰めた空気を思い返す。

 

(……中将との通信。本来ならあり得ないはずの事。

 私が介入したことで、未来が変わってしまった)

 

指先がわずかに震えていることに気づき、マリアは深く息を吸った。

胸の奥に広がるのは、戦場の緊張ではなく――

未来が変わってしまったことへの不安だった。

 

死ぬはずだったガルマが生きている。

木馬の情報がジオンに渡った。

原作とは違う流れが、どこへ向かうのか分からない。

 

(……どうなるんだろう。

 この先、何が変わるんだろう)

 

ふと、原作でアムロが提案した“コアファイターでジャブローへ直行する案”が頭をよぎる。

深く考えたわけではない。ただ、記憶の断片が浮かんだだけだった。

 

その“ふとした思い出し”が、不安をさらに刺激した。

 

「木馬の追跡はどうなっていますか?」

 

マリアの声に、オペレーターが顔を向ける。

 

「捜索は続けておりますが、未だ発見されていません」

 

「そうですか……。

 些細な事でも構いません、何かあればすぐに報告を」

 

「了解しました」

 

オペレーターが再び作業へ戻り、マリアも報告書へ視線を落とす。

 

しばらくして、司令室の扉が開く音がした。

マリアは反射的に顔を上げる。

 

ガルマがゆっくりと戻ってくる。

その歩みは重いが、先ほどまでの迷いは完全に消えていた。

 

マリアは自然と背筋を伸ばし、姿勢を正す。

 

ガルマは司令室の中央まで歩き、マリアへ視線を向けた。

その瞳は、いつもより深く、静かだった。

 

「中尉。

 本国より、正式な辞令が下った」

 

ガルマは端末を操作し、画面に辞令文を表示させた。

 

「これが本国から届いた正式な辞令だ。

 君の昇進はすでに承認されている」

 

マリアの心臓が一度だけ強く跳ねる。

 

「……辞令、ですか?」

 

ガルマは短く頷いた。

 

「ああ。君を――中尉から少佐へ。二階級昇進だ」

 

その瞬間、マリアの呼吸が止まった。

 

(少佐……私が……?)

 

あまりにも突然の昇級に、言葉が出ない。

ガルマはその反応に思わず苦笑した。

 

「まったく、自覚してなかったのか?

 これまで君が挙げた功績を考えれば当然だろう」

 

「いえ……私は必死だったので」

 

「だとしても、それは君が成した事だ。誇るべきだ」

 

ガルマは近づき、軽く肩を叩いた。

その仕草は、指揮官としての評価であり、仲間としての信頼でもあった。

 

「その上で君は――私の副官として任命される予定だ。

 一度、本国に戻り叙任補職式を受けてもらう。

 その後は正式に私の部隊へ副官として配属される。

 ……頼りにしている」

 

マリアは胸の奥が熱くなるのを感じながら、敬礼した。

 

「……ガルマ様。

 必ず、お役に立ってみせます」

 

その声は震えていなかった。

未来を知る者としての覚悟が、確かな響きとなっていた。

 

ガルマは満足げに頷き、司令室の空気がわずかに引き締まる。

ガルマは満足げに頷き、司令室の空気がわずかに引き締まる。

 

「……さて、中尉――いや、少佐。

 本国への出発についてだが、繋ぎの隊員が到着してからになる」

 

マリアは姿勢を正し、静かに頷いた。

 

「繋ぎの隊員は、明後日には到着する予定だ。

 兄さんが直々に選んだ者だ。

 君が不在の間、部隊の指揮を任せられる人物だろう」

 

ガルマは端末を操作し、予定表を開く。

 

「本国までは片道で二日から三日。

 叙任補職式で一日は滞在する必要がある。

 戻りも同じだけ時間がかかる。

 ……合計で一週間ほど、君はこの部隊を離れることになる」

 

マリアは静かに息を整えた。

その一週間――ガルマの側を離れる。

その事実が胸の奥にわずかな不安を落とす。

 

「……了解しました。

 準備を進めておきます」

 

ガルマは満足げに頷き、司令室の空気がさらに引き締まった。

 

その瞬間――

司令室の外、廊下の影で静かに佇むシャアの存在に、誰も気づいていなかった。

 

 

司令室の扉が閉まる音が、廊下に静かに響いた。

シャアはその少し離れた場所で、壁にもたれながら腕を組んでいた。

 

ガルマとマリアの声が扉越しにわずかに聞こえる。

内容までは分からないが――

ガルマの声色で、何が起きたかは察せられた。

 

(……二階級昇進に、副官任命。

 ドズル中将は本気でガルマを支えるつもりらしい)

 

マリアが本国へ戻る。

その事実は、一瞬だけシャアの胸に“好機”として浮かんだ。

 

(彼女がいない間なら、ガルマを動かしやすい。

 だが……)

 

シャアは目を細め、ゆっくりと息を吐いた。

 

(繋ぎの隊員を送ると言っていたな。

 ドズルが選ぶ人材だ……忠誠心が強く、警戒心も高い。

 ガルマの護衛としては申し分ないだろう)

 

つまり――

ガルマ謀殺の難易度は今以上に跳ね上がる。

 

(彼女がいない分、私の動きは逆に怪しまれる。

 繋ぎの隊員を欺くのは……不可能ではないが、成功率は低い)

 

シャアは軽く笑った。

その笑みは、皮肉でも余裕でもなく、

“計算結果を受け入れた者の笑み”だった。

 

(……今、ガルマを殺すのは悪手だな)

 

シャアは司令室の扉を一度だけ見つめた。

 

(殺すよりも、使うべきだな。

 私の目的を達成する為に)

 

ガルマはザビ家の末弟。

彼を利用すれば、ザビ家の内部に“隙”を作ることができる。

その隙は、いずれ自分の目的を果たすための道となる。

 

そして、マリアは――

 

彼女の存在が、シャアの計画を狂わせている。

だが同時に、新しい可能性を生んでいる。

 

(彼女には……何かが見えている。

 未来を知っているかのような、あの目)

 

最初は優秀な軍人だと感じた。

だが、彼女の判断は時として軍人の範疇を越えている。

 

(まるでこれから起きる事が分かっているように見える。

 まさか……ニュータイプか?)

 

確証はない。

だが、そうとも見える行動をしているのも事実だ。

 

シャアはゆっくりと踵を返し、廊下の奥へ歩き出した。

 

(確証がない以上は様子見だな。

 ガルマも、マリアも……利用できる。

 状況がどう転ぶか、しばらく観察するとしよう)

 

赤い軍服の裾が揺れ、シャアは静かに影へと消えていった。




読んでいただきありがとうごさいます。
繋ぎの部隊がくるまで少し間がありますのでその間の話を書きたいと思います。
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