ガンダムU.C. Altered Line   作:シャノワール

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なかなか難しいですね……とにかく、第二話を投稿します!



動き出す運命の歯車

白い医務室の空気が、わずかに張り詰めた。

 

足音。赤い軍服。

その姿を認識した瞬間、マリアの身体は反射的に強張った。

 

「目を覚ましたようだな、オーエンス中尉」

 

低く抑えた声。

仮面越しの視線が、まっすぐ刺さる。

 

上体を起こそうとした瞬間、伸ばされた手が制した。

 

「無理をするな。まだ安静が必要だ」

 

淡々とした声音なのに、拒絶を許さない強さがある。

 

「……救助、ありがとうございました」

 

かすれた声に、シャアはわずかに首を傾けた。

 

「救助は義務だ。それに――君の家名を考えれば、なおさらだ」

 

その一言で、マリアの背筋が冷えた。

政治的価値。利用価値。

“死なせるわけにはいかない”という冷徹な判断。

 

シャアは視線を落とし、静かに続けた。

 

「本来なら休ませたいところだが……状況が状況でね。

 経緯を聞かせてもらおう」

 

拒めない声音だった。

 

マリアは喉を震わせ、ゆっくり息を吸う。

 

「……ゲリラ掃討中でした。敵の補給艦を追跡し、デブリ帯で見失いました。

 索敵に出た直後、味方の一機が突然爆発して……」

 

記憶が胸を締めつける。

 

「通信はノイズばかりで……粒子濃度が異常で……

 戻ろうとした時には、もう艦が被弾していて……」

 

胸が軋む。

あの閃光、衝撃、血の味。

 

「母艦に近づいた瞬間、ミサイルが来ました。避けきれず……機体は大破して……

 その直後、艦のエンジンが撃ち抜かれて……爆発の衝撃で吹き飛ばされて……

 崩れていく艦を見て……そこで意識が……」

 

沈黙が落ちた。

 

シャアは腕を組み、短く言う。

 

「……なるほど。誘い込まれたな」

 

仮面の奥の視線が鋭く細められる。

 

「君が生き残った理由――それが“偶然”だけであればいいのだが」

 

静かで、冷たく、重い一言だった。

 

シャアは踵を返し、ドアへ向かう。

 

「軍医の許可が出るまで、しばらく休め。中尉」

 

それだけ告げて、彼は去っていった。

 

ドアが閉まると、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。

 

マリアは震える息を吐き、胸に手を当てた。

 

――終わりではない。

――ここからが始まりだ。

 

その予感だけが、確かに胸の奥で脈打っていた。

 

◇ ◇ ◇

 

ブリッジの扉が開くと、ドレンがすぐに姿勢を正した。

 

「少佐、お戻りでしたか。……中尉の容体は?」

 

「命に別状はない。軍医の判断では、しばらく安静が必要だ」

 

「それは何よりで」

 

安堵の息を吐くドレンに、シャアが問い返す。

 

「そちらはどうだ?」

 

ドレンは航路データを映し出した。

 

「どうやら――木馬はサイド7の方へ向かっているようです」

 

シャアの足が止まる。

仮面の奥で視線が細められた。

 

「……匂うな」

 

「と、言いますと?」

 

シャアはゆっくりと歩きながら言う。

 

「新造艦なら、通常はルナツーへ向かうはずだ。

 補給も整備も揃っている。だが木馬は――サイド7へ向かっている」

 

ドレンは眉をひそめる。

 

「サイド7……新造コロニーでしたな?」

 

「ああ。軍事的価値が低いと判断され、放置されてきた。

 だが――その放置が仇になった」

 

ドレンの表情が強張る。

 

「それは……どういうことで?」

 

シャアは短く頷いた。

 

「私の考えに間違いなければ、あそこに“何か”がある」

 

ドレンは息を呑む。

 

「……本当に、そんなものが?」

 

「可能性はある。木馬の動きは不自然すぎる。

 連邦の“例のモノ”が隠されているとすれば、辻褄が合う」

 

ドレンは喉を鳴らした。

 

「……では、このまま木馬を追跡するのですな?」

 

シャアは静かに頷いた。

 

「ああ。サイド7へ向かう。

 木馬の目的を――確かめる」

 

その声音は、冷たく、確信に満ちていた。

 

◇ ◇ ◇

 

ファルメルは静かに航行していた。

外の宇宙は暗く、星々の光だけがかすかに艦体を照らしている。

 

医務室のベッドに横たわるマリアは、薄い毛布を握りしめたまま、眠れずに天井を見つめていた。

 

――サイド7。

 

その名前だけで胸がざわつく。

原作を知る“もう一人の自分”が、警鐘を鳴らしている。

 

(……あそこには、ガンダムがある)

 

だが、それを誰にも言えない。

信じてもらえるはずがないし、

自分が“異物”であることを知られるわけにはいかない。

 

(関わりたくない……はずなのに)

 

胸の奥が妙にざわつく。

 

――あの赤い仮面の男が、サイド7へ向かっている。

 

原作では、ここから多くの死が生まれる。

そしてシャア自身もまた、あの場所で“運命の出会い”を果たす。

 

(私は……どうすればいい?)

 

逃げたい。

後方に回りたい。

静かに終戦を迎えたい。

 

その願いは、シャアの登場によってすでに崩れ始めている。

 

艦がわずかに揺れた。

航路を微調整したのだろう。

 

――サイド7が近づいている。

 

マリアは毛布を強く握りしめた。

 

◇ ◇ ◇

 

ブリッジでは、シャアが静かに命じた。

 

「全艦、準備に入れ。

 サイド7に何があるか――確かめる」

 

その声音は、冷たく、確信に満ちていた。

 

そして、運命の時が静かに幕を開けた。




いよいよ、あの"白いやつ"が登場します。
そして、マリアも遂に動きます、果たして彼女が取った選択とは…?
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