ガンダムU.C. Altered Line 作:シャノワール
少し遅れてしまいましたが何とか投稿できました。
今回は少し長めです。
戦闘描写とか入れたりしたら長文になってしまいました。
暗い宇宙の闇を裂くように、白い巨影が迫ってくる。
その姿は、ただそこに“存在する”だけで空気を変えるほどの圧を放っていた。
(……来た。
ガンダム)
マリアの喉が、無意識に鳴った。
記憶の中に焼き付いた“白い悪魔”の姿が、重く胸にのしかかる。
(私は……勝てるのか?
でも――やらなきゃ、生き残れない)
震えを押し殺し、操縦桿を強く握り直した。
その横で、シャアの赤いザクが姿勢を低くし、
ガンダムへ向けて加速する。
≪マリア、ついて来い。
奴の動きは常識では測れん。気を抜くな≫
≪了解……!≫
二機のザクが散開し、ガンダムを挟み込むように軌道を描く。
アムロの視界に、赤い光点が高速で迫った。
「うっ……シャ、シャア!?
なんでこんな……速いんだ!」
アムロはミサイルを発射するが、赤い残光は容易くそれを躱し、
弾頭は虚しく宙へ消えた。
「なっ……くっ!」
次の瞬間、シャアのザクがガンダムの懐へ滑り込み、
鋼鉄同士がぶつかる鈍い衝撃音が宇宙に響く。
ガンダムの巨体がわずかに揺れた。
アムロは照準を合わせようとするが、
すでにシャアの姿は視界から消えている。
「MSの性能の違いが、戦力の決定的な差でないという事を――教えてやる!」
ガンダムの背後へ回り込んだシャアがマシンガンを連射する。
だが火花が散るだけで、ガンダムの装甲は傷一つつかない。
「――シャアめ!」
アムロは怒りに任せてミサイルを放つ。
シャアは予測していたかのように横へ跳び、弾頭は空を切った。
続けざまに頭部バルカンが火を噴き、
シャアのザクは肩アーマーで受け止めるが、衝撃でよろめく。
「いける……!」
アムロが追撃に移ろうとした、その瞬間――
マリアは大きく弧を描くように後方へ回り込み、
シャアの動きに合わせて射線を探っていた。
(少佐が正面を押さえてくれている……
なら、私は――)
だが今撃てばシャアを巻き込む。
マリアは息を殺し、わずかな隙を待つ。
そして――
シャアのザクがバルカンを受けてよろめいた。
「少佐!」
マリアはバズーカを放つ。
だがガンダムは最小限の動きでシールドを構え、爆炎を受け止めた。
(そんな……!)
爆炎の向こうに白い影が揺らめく。
その刹那――ガンダムの視線が鋭くマリアへ向いた。
(……私を狙ってる!?)
白い巨影が腕を振り上げ、
ミサイルランチャーの照準がマリアへ向けられる。
「やらせるか!」
赤い残光が閃光のように割り込んだ。
シャアのザクが、マリアとガンダムの間へ飛び込む。
「シャア!? くっ……邪魔を!」
ガンダムはシールドを振り下ろすように叩きつけてくる。
シャアは肩シールドを突き上げて受け止め、火花が散った。
≪マリア、距離を取れ!≫
「了解……!」
マリアは推進剤を噴かし、ガンダムの射線から外れる。
(少佐……! ここは少佐に任せて――
私は、私に出来ることをするだけ)
シャアはガンダムの懐へ潜り込み、
至近距離でマシンガンを叩き込む。
だが――
火花が散るだけで、ガンダムの装甲はびくともしない。
アムロは歯を食いしばり、
シールドでシャアのザクを押し返す。
「どけぇっ!」
白い巨体が力任せに押し込んでくる。
シャアは後退しながらも姿勢を崩さず、距離を取った。
その時――
ファルメルから緊迫した通信が割り込む。
≪少佐! 木馬がこちらへ向けて砲撃準備をしています!
ファルメルの防衛が……!≫
シャアは一瞬だけガンダムを見据え、
次にマリアへ視線を向ける。
≪マリア、ファルメルへ戻って補給艦を守れ。
あれが落ちれば作戦続行は不可能だ。
私が戻るまで任せた≫
「……了解!」
マリアは即座に反転し、ファルメル方向へ加速する。
ガンダムがその動きを追おうとした瞬間――
「そっちへ行かせるか!」
赤い残光が閃光のように割り込み、
シャアのザクがガンダムの進路を断ち切った。
(少佐……どうか無事で……!)
マリアは振り返ることなく、ただ前へ――
自分の役目を果たすために。
◇ ◇ ◇
ファルメル内ブリッジ。
木馬の主砲が閃光を放ち、
ファルメルの外殻をかすめるようにビームが通り抜けた。
「くっ……直撃は避けたが、次は持たんぞ!」
ドレンは歯を食いしばり、即座に指示を飛ばす。
「高度を下げつつ――170度回頭!
主砲を敵艦に向けるんだ!」
ファルメルは大きく傾きながら下降し、
同時に艦体を回転させて木馬へ砲門を向ける。
(……かすり傷だ。だが続けば厄介だ)
次の瞬間――
木馬の砲撃が急に“緩く”なった。
(……どうした?
砲撃が弱まった?)
ドレンの表情が鋭く変わる。
(今なら……通る!)
「――撃て!
木馬の横腹を叩け!」
ファルメルの主砲が火を噴き、
木馬の横をかすめるように砲撃が走った。
「マリア中尉のザク、帰還します!」
「……助かった!」
マリアはファルメルの影から飛び出し、
パプアの方角へ視線を走らせた。
(……どこだ。パプアを攻撃したのは――)
遠方で土煙が上がり、
地表近くをゆっくり移動する巨大な砲塔が目に入った。
(あれは……ガンタンク!?)
胸が冷たくなる。
(まずい……!
もう一撃でも食らえば、パプアは――)
マリアはスラスターを全開にした。
「止める……! 今度こそ止める!」
だが距離が遠い。
弾丸は装甲をかすめるだけだった。
(くっ……届かない!)
ガンタンクは後退を開始する。
(逃げる……!
でも、もう遅い……!)
その瞬間――
パプアの後方部分が閃光に包まれた。
「……え?」
木馬のビーム砲が、
パプアのエンジンブロックに直撃したのだ。
次の瞬間、艦尾が膨らみ、
内部から爆発が連鎖する。
「パプアが……!」
巨大な補給艦は火柱を上げながら傾き、
アステロイドへ引き寄せられるように落下していく。
(……間に合わなかった……
私が……もっと早く戻っていれば……)
その時、通信が割り込んだ。
≪ファルメル! ザクを渡したぞ、受け取れ!≫
ドレンは即座に叫ぶ。
「マチュウ、フィックス!
外に出ているザクに乗り込め!」
◇ ◇ ◇
ガデムの旧ザクがガンダムへ肉薄する。
ビームサーベルの突きを紙一重で躱し、タックルを叩き込む。
(……すごい!)
だが――
ガンダムの反応が“異常”に変わった。
白い機体がわずかに身を捻っただけで、
ガデムの追撃は空を切る。
「なっ……!? 速い……!」
ビームサーベルが横薙ぎに閃いた。
旧ザクの横腹が光に裂かれ、爆炎が散る。
「ぐあっ……!」
「ガデム大尉――!!」
通信が割れた。
「れ……連邦軍は……
あれほどのモビルスーツを……か、開発したのか……!
うわああああーーっ!!」
爆炎が旧ザクを包み込む。
シャアは拳を握りしめ、短く呟いた。
「……ガデム」
ガンダムは二機を見据えたまま静止し――
やがてゆっくりと後退を始めた。
「……撤退する?」
≪いや、良い≫
シャアの声は冷静だったが、
その奥には深い思考が渦巻いていた。
(どういうことなのだ……
連中は戦法も未熟……
戦い方もまるで素人だというのに……)
通信が入る。
≪シャア少佐! マチュウ、フィックス、両名ともザクへの搭乗を完了しました!≫
≪よし。マリア中尉≫
「はい!」
≪二人と共に補給物資の積み込み作業を援護しろ≫
「はっ!」
通信が切れ、マリアは小さく息を吐いた。
(……止められなかった……
ガデム大尉を……)
(私がもっと早く戻っていれば……
もっと強ければ……
あの白いMSを止められたかもしれない……)
胸の奥が焼けるように痛む。
パプアの爆炎の残光が、まだ視界の端で揺れていた。