踏み台転生者は死にたくない   作:富竹14号

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 眠くなりながら書いた、内容が明後日の方向に向かっているかもしれない。


八坂徹とは?

 

 

 イノチガミ…という漫画作品がある。

 

 ジャンルは現代異能系バトル漫画…この世に無数の災いを撒き散らす妖魔とそれに対抗する異能を宿した人間達の激しい戦いを描いたバトル物の鉄板とも言える内容の物語である。

 

 高い作画力に魅力的なキャラクター達、手に汗握る戦闘描写と分かり易いストーリーが幸いして人気を博した作品で、かく言う俺もそういった所に惹かれてハマった口である。

 

 あらすじはこうだ…一般的な家系出身である主人公はある日、妖魔と呼ばれる人外の怪物と遭遇する。

 

 突如として現れた怪物に成す術も無く嬲られる主人公…そこに現れる謎の少女、彼女の助けもあって無事にその場から逃げ遂せた主人公はしかし、自身の匂いを辿って来た妖魔に再び襲われてしまう。

 

 今度は謎の少女も助けに来ない、万事休す…そんな時に傍目に映る自身の妹の姿、怪物に怯え涙を浮かべる守るべき妹の存在に主人公は奮い立つ…その瞬間に目覚める主人公の異能、突如として目覚めた力に戸惑いながらも主人公は何とか妖魔を撃滅することに成功する。

 

 そこにやってくる謎の少女…彼女は言う、その力を使うのならば自分に付いて来い、使い方を教えてやる…と。

 

 そこからほんの少しの問答を挟み込み、最後の一言を主人公は放つ…この力を上手く使えるようになれば、あいつらに襲われる誰かを助けられるのか?…その言葉に少女は頷いた。

 

 画してそこから主人公は過酷な世界へと足を踏み入れていく…妖魔という人外を相手にして行われる、殺し合いの世界に。

 

 

 ……と、言うのが『イノチガミ』という作品の大体のあらすじである…まぁ、ありきたりとか何処かで見たような展開だとか、言いたいことはあると思うが…それを作画の暴力とカッコ良さでねじ伏せるのが『イノチガミ』という作品なのである。

 

 

 そして…そんな俺の大好きな作品の中で踏み台を担っていたキャラクターこそが、今現在の俺こと八坂徹というわけである。

 

 因みにもう言っておくがこの八坂徹、特に説明することが無い…というか説明出来るほど登場してない、強いて言うなら名家の坊っちゃんキャラクターに良くいる高慢で傲慢な弱いだけのクズである。

 

 初登場以降、あの手この手で主人公やヒロインにちょっかい掛けるなり突っかかるなりし、最終的に超えちゃいけない一線を踏み越えた結果、主人公に首チョンパされる…そんな感じのキャラクターである。

 

 そして…そんな感じのキャラクターだからとにかく影が薄い、登場期間も短けりゃ特にキャラが濃かった訳でもなく、しかも結構な長期連載だったということあってか、忘れていたという読者も多かったように思う。

 

 …まぁ、そんなかませ役の手本のようなキャラクターに俺はなってしまったわけだ…どうだろう、中々に辛いと思うのだが。

 

 

 

 

「───辛いどころの話じゃないだろぉ」

 

 

 そんな俺の思考に対して、俺は誰にも対してでもなくツッコミを入れていた。

 

 思考が現実にようやく追いついてきた…そう認識したと同時に思い知らされる現在の状況、八坂徹という嫌いか好きかで言えば最早どうでもいいという無関心に突入していたキャラクターに転生…いや、憑依? してしまったという事実が俺を苛んでいた。

 

 何が辛いって、八坂徹の記憶がインストールされたことで判明した現在の状況が、もうどうにもならないような所にまで行ってしまっているという現実である。

 

 先程も言ったが、八坂徹が主人公に首チョンパされる原因は八坂徹が踏み越えてはいけない一線を踏み越えたからである…では、そな踏み越えてはいけない一線とは何だったのか……簡単な話が、度を越した八つ当たりである。

 

 ヒロインや主人公にちょっかいを掛けた結果、思い切りボコボコにされた八坂徹…それによって見当違いな殺意を抱いた八坂徹はその殺意を妖魔の存在なんて欠片も知らない一般人に向けた。

 

 アイツには実力では勝てない、不意打ちしようが数で攻めようが決して勝てない…その程度のことは流石に分かっていた八坂徹は考えた…考えた結果として…その心を傷つけてやろうと考えた。

 

 結果…ある方法を利用して八坂徹は何も知らない幸せな三人家族を妖魔に襲わせ、その現場を主人公とヒロイン双方に見せつけた…そしてこう言うのである。

 

 

『お前が俺に大人しく従ってりゃこんなことにはならなかったんだ! お前が大人しく俺に踏まれてりゃ彼処にいる奴等は死なずに済んだんだ!!』

 

『可哀想になぁっ!! ぜ〜んぶお前のせいだぁぁぁっ!! アキャキャキャキャキャキャキャッ!!』

 

 

 と、言った具合の台詞を吐き散らかす、当然キレにキレた主人公によって次の一コマには首と胴は泣き別れ…何が起きたのかも分からないまま、人間としての八坂徹はここで死亡した。

 

 因みにこの三人家族、ヒロインが覚醒したことで何とか助かっていたりするので、実質八坂徹は何も出来ていないということになったりもする。

 

 幼い少女に助けてくれてありがとうと言われて、涙を流すヒロインのシーンはそのあまりの美しさから名シーンとして名高いが…重要なのはそこではない。

 

 重要なのは…そのある方法の部分を、八坂徹はとうに実行してしまっているということなのだ。

 

 何時実行したのかは定かではない、まだそこまで記憶が馴染みきっていないこともあって記憶を掘り出すのに時間がいる。

 

 …だがそれでも、実行したのが今日であるということと、そして訪れるであろう何も知らない幸せな家族を襲う絶望を見せつける為の連絡をとっくに主人公達に入れているという点が、どうしようもなく俺を苦しめた。

 

 記憶があるから良く分かる八坂徹の思考回路…徹頭徹尾自分は悪くない、言うことを聞かないアイツが悪いのだと宣う自分勝手にも程があるその性根。

 

 あの家族は八坂家の人間である俺の役に立てるんだ、光栄だろう等という傲慢なその思考、自分からしてみればまるで理解出来ない…理解したいとも思わない八坂徹という人間の心境。

 

 覗けば覗く程にどうしてこんな奴にと言う感情が湧き上がってくる、なんで名も明かされていないようなモブじゃなくてこんな中途半端に名前の残った…人間のクズのような奴の身体を俺を入れたのかと、沸々と煮えたぎるお湯のような感触に俺は陥っていた。

 

 

 

「…ムカつく」

 

 呟いた言葉が俺という人間の心情をこれでもかと表していた。

 

 そう、ムカつく…今や自分の身体ではあるが、その前の本人の姿を思い浮かべると、その記憶を覗き見ると次から次へと湧き上がってくるフラストレーション。

 

 そうだ、今にして思えばアイツのせいだ…頭が痛かったのもこうして頭を抱えることになっているのも全部全部八坂徹(アイツ)のせいだ。

 

 

「よし…潰そう」

 

 決断は一瞬だった…今や八坂徹とは自分のことを指しているのだ、だったら俺がこの身体を使って何をしようが俺の自由である、当然前任の立てた計画を潰す潰さないも俺の自由である。

 

 当然打算もある…というかここでやらかし食い止めとかないとマジで主人公に殺される、首をチョンパされる、人間を止めることになってしまう。

 

 それは嫌だ…俺はまだ死にたくない、人間止めたくない、少なくともそれなりに良い家を買ってゆっくりとゲームをしていたい、穏やかな平穏を手入れたいのだ。

 

 だったらもう俺が頑張るしかない、俺自身が妖魔を倒すしかない…自分で誘き出しといて何だがもうそれしかない、少なくとも主人公達に悪印象を与えない方法はこれしかない。

 

 ズキリッズキリッと頭が痛む…八坂徹の記憶が入り込んだことによる後遺症のようなものなのだろうか、それとも記憶を無理に引き出したことに対する痛みなのだろうか…どちらでも良い。

 

 あのシーンはどのタイミングでどの場所で、と言ったところが明記されていない…あくまでメールに記述があった住所にやってきたという風にしか描写されていないのだ。

 

 だから引っ張り出す…未だに俺の頭の奥で眠りこけているだろうその記憶を無理矢理にでも引っ張り出す、何が何でも引っ張り出す、殴ってでも引っ張り出す。

 

 寝転がっていたベットの上から立ち上がり、そのまま一気に駆け出す…今何を着ているかとか、そもそも靴を履いているのかとかそんなツッコミは無しだ…多分履いてるし、多分まともな服を着てる。

 

 部屋を飛び出して真っ直ぐ外へ、途中ですれ違った執事らしき人影に何やら呼び止められたような気がしたがそれはガン無視した…あぁ、因みにこいつの実家はデッカイ屋敷である、こいつの部屋だけ爆撃で吹き飛べば良い。

 

 ズキリズキリと痛む頭、段々と強まっていくその痛みを無視しながら、俺は未だ降り注ぐ雨天の中を全速力で駆け抜けていくのだった。

 

 

 




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