踏み台転生者は死にたくない   作:富竹14号

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 一週間ぶり、書かないでいるとエンジンが掛かってくれないよね。

追伸:サブタイトル入力し忘れた、恥ずかしいンゴ


前遊び

 

 

───『白虎』

 

 

 呟かれたその名と共に有坂悟が雷を纏う、バチリッバチリッと激しく帯電する雷はまるで生命そのものが激しく吠えているように思えた。

 

 

 

───出してきたなっ…!!

 

 

 そんなことを内心で思う、雨が降りしきる中で一際強く光る雷の光、獣が吠えるような力強さを持ったそれが嫌に懐かしく感じる。

 

 身体が変わったせいだろうか? 目の前で発動した異能を前にまず感じるのが恐ろしさや恐怖ではなく懐かしさな時点で俺は大分頭のネジが可笑しくなっている気がした。

 

 

「───行くぞ」

 

 合図のつもりかはたまた単なる宣戦布告なのか、一言と共に踏み出した有坂が俺へと斬りかかる。

 

 尋常じゃない速度だった…瞬きもしてないのに気が付いたらもう目の前にいる、とっくに刀が振られている。

 

「チィッ…!!」

 

 舌打ち…自分でも意図せず行ってしまったソレと共に俺は振り抜かれた斬撃を躱した、服の布一切れを持っていった帯電する刀がようやく俺の頭に恐怖を認識させる。

 

 

 

 

 有坂悟の異能『四神顕現』…四神を源流とした四つの力を扱う如何にも主人公が持っていそうな類の異能だ。

 

 炎の朱雀、自然の青龍に雷の白虎、そして最後に水の玄武と…まぁ、聞いてて分かると思うがサブカル設定と原典とを微妙に混ぜ合わせたような能力設定をしている。

 

 何故こうなったのかは作者からは語られていないが…作者のところのスタッフ曰く、下手に忠実にするとそこに縛られそうで怖いから微妙にズラした…らしい……まぁ、だから何だという話ではあるのだが。

 

 

 バチリッと嘶く雷の音、振り抜かれかけた上段からの振り下ろしを振り抜かれる前の手に腕をぶつけて止める…瞬間、全身に奔る痺れに動きが止まる。

 

 マズった…そう思うと共に突き刺さる有坂の膝、腹に思い切り突き刺さったその一撃が俺の身体を引き離すと共にまたもや痺れを俺に与える。

 

 振るわれる刀、反応が遅れて間に合わない…そう思考するその前に俺の身体は本能のままにその選択を行っていた。

 

 

 

───『炎羅』

 

 

 身体から炎が吹き出す、瞬間的に大量に吹き出したその炎に有坂は咄嗟に後ろへと飛び退いた。

 

 

「───『玄武』」

 

 呟かれるその言葉、雷が収まり変わりに出てくるのは大量の水、生物のようにゆらゆらと揺れ動くそれが…炎という物体に対してのあからさまな天敵を前に俺は思わずうげっ…と声を漏らした。

 

 刀を振り下ろす…その行動と共に俺目掛けて飛び出してくる質量の塊、通路全体を満たしてなお足りないと言わざるを得ない程の大量の水の濁流、押し流すというより押し潰すという言葉がハッキリ似合う程の質量が俺へと一気に襲いかかってくる。

 

 

───こんな所で使っていいもんじゃないでしょそれ!?

 

 普段…以前までの八坂徹であったのなら寧ろ有坂側が言ってそうな台詞、周囲に配慮するだろうその思考をよりにもよって俺がしてしまっている…キレたら周りが見えなくなるのは原作初期時点でも同じだったが、果たしてここまでであったろうか…なんて思ってみたりする。

 

 これには堪らないと走り出す俺、通路の側にあった窓へと身体全体を突っ込ませ、ガラスをぶち破りながら外へと逃げ出す…ガラスの壊れる音の直ぐ後に響いてくる水害さながらの音に俺は冷や汗を流した。

 

 転がるように地面に着地する、ある程度離れたそこからですら聞こえてくる大量の水の音、今頃中は大変なことになっているのだろうなぁ…なんて呑気なことを考える俺ははてさてどうしようかと思考を巡らせた。

 

 

 認識は既に充分だ…彼処まで本気で殺しに来ているのだ、有坂悟が俺を八坂徹以外の何かと考えることはもう無いだろう、後はどうにかこうにかアイツから逃げ延びるなりなんなりするだけだ。

 

 そう…俺の目的はあくまで有坂悟という人間に八坂徹が変わっていないことを認識させることだ…こいつは何も変わっていない、クズな人間のままなのだと改めて認識させることだ。

 

 普通なら難しいと思うかもしれないが…何度でも言うが、何分八坂徹は嫌われ者である…ほんの少し煽るような言動と謝罪する意思を見せないだけで元の悪感情が幸いして勝手に変わってないと判断してくれるのだこれが…少なくとも、今の主人公相手にはこれが通用する。

 

 とは言っても、割と行き当たりばったりなことが多かったし、俺自身原作の八坂を真似しようにも登場回数が少ないからちゃんと出来てるか不安ではあったのだが…あの感じだ、多分出来てたんだろう。

 

 後はどうにか逃げ遂せるだけ…これが大変なのだこれが。

 

 

 突如として上から鳴り響く雷鳴、ピカッと光ったと認識したその視点で俺はその場から飛び退いていた…次いでやってくる雷を纏った有坂悟、鬼を思わせるような顔付きをした我等が主人公は突き刺した刀を地面ごと上へと振り抜いてくる。

 

 ズガガガッと音を立てて迫る刀、地面を抉り削り取りながらやってくるその斬撃を俺は振り抜かれる前の段階のそれに蹴りを叩き込んで勢いを止める。

 

 グッと刀へと籠る力、足を通して伝わってくる有坂の力の発露に俺は刀を足場に僅かに跳躍、そこから勢いを乗せた蹴りを有坂悟の横面へと叩きつける。

 

 横へとよろめく有坂と手を地面へ付けて器用に着地する俺、間合いを外れてたから膠着状態…なんてこともなく、直ぐ様殺意の籠った瞳で俺を睨みつけた有坂は地面を砕きながら俺へと迫る。

 

 そんな有坂へと…そんな頭に血が昇った有坂のがら空きの懐へと潜り込んだ俺は、踏み出した足と共に拳を突き出した。

 

 交差する身体に入り込む拳、すれ違うように身体を間合いを更に内側へと入れ込んだ末の腹部への一撃、直撃した拳から肉を打つ感覚とズドンッとした衝撃が拳から感じ取れた。

 

 殴り飛ばす、拳を振り抜いて人間一人を思い切り殴り飛ばして地面を転げさせる…現実で人が殴られて飛ぶ光景なんて初めて見たと、俺は浮かれたようにそんなことを思った。

 

 

 

 ……話は変わるが、今の一連の攻防で少し分かったことがある。

 

 それは…恐らく俺は、八坂徹と同じ戦い方が出来ない…ということだった。

 

 俺の記憶にあるかぎり、八坂徹の得意とする戦闘スタイルは炎を操っての近・中距離戦闘だ…これは、俺の原作に関する記憶と八坂徹自身の記憶を照らし合わせた結果としては、ほぼ間違いないと言っていいだろう。

 

 炎の球を生み出し発射する、熱線のようなモノを放つ、炎を振りまき辺りを一面火の海にする、炎を身体に纏う…これらを駆使し、相手を焼き殺す…それが八坂徹のやり方だった……そして分かる通り、俺はそんな使い方の中でも一番最後のやり方しか出来ていない。

 

 これに関しての理由は存外簡単だ…中身が俺だから、咄嗟の判断に異能を使うという選択肢が無いのだ。

 

 学生の時分に喧嘩ばかりしていたからだろうか、それとも単に俺が異能があるという現状に慣れていないだけなのか…恐らく両方なのだろうが、それでも中身が俺であるということの影響は思きの外大きかったらしい。

 

 先程から行っている霊力による強化に加えての殴る蹴る、とりあえず近づいて殴る真っ直ぐ行ってぶん殴ると言ったあからさまに違う戦闘スタイルに多分有坂自身びっくりしていたのだろう…だからこうも攻撃が刺さるし直撃するのだ、だって八坂徹と戦闘スタイルが別人レベルで違うから。

 

 先程の全身から炎を捻出させたことにしてもそうだ…アレは半ば反射的なものであったがやった事と言えばただ吹き出させただけだ、ぶっちゃけ防御的な効果も攻撃的な効果もあまり無いと思う。

 

 それでも有坂悟が引いたのは、そこから炎を使っての反撃が飛んでくると思ったからだろう、以前までの八坂徹ならばそうしただろう行動を警戒してのことだろう…まぁ、中身が俺だからそんなことにはならなかったのだが。

 

 

 有坂が腹を抑えて起き上がってくる…思いの外腹への打撃は重かったらしい、苦悶の表情を浮かべながら有坂は刀を手に立ち上がっていた。

 

 八坂徹は幼少の頃から武術を叩き込まれている…異能に頼るだけでは三流、基礎もしっかり押さえて二流、それら全てを十全に扱いこなせて初めて一流…原作に登場する八坂徹の父の言葉だが、まぁそんな教えを受けているだけあって八坂徹の近接能力はそれなりに高いのだ。

 

 なんでこんな事を急に言い出すのかと言うとだ…さっきから俺は、八坂徹の学んだ武術…それに合わせた動きを一欠片もしていない、というか出来ない。

 

 当たり前のことだが、異能が同じように使えないんだから武術だって同じように使える訳が無い、だからどうしようかとさっきは悩んでいたんだが……さっきの攻防で俺は思ってしまった。

 

 

 アレ? …もしかして俺、近接戦闘なら八坂本人よりも強いのでは? …と。

 

 こんな命の掛かった場で思いついてしまったことだが、一回思いつくと確かめてみたくなるのが人間の性と言うもので、というかそもそもちゃんと自分の出来ることを確かめておかないと俺自身も危ないわけで。

 

 目の前にいるのは主人公、自分を試す相手としてはまぁ危ないというか割に合わない相手ではあるが…今の所、試せそうな相手がこいつしかいない時点でご愁傷様というやつである。

 

 

「…うし……やってみるか」

 

 そんなことを呟きながら、俺は拳を握りしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




 ちかれて。
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