狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

1 / 39
第1話:純粋な欲望と白いエースの撃墜

自分が生まれた瞬間のことを覚えている人間なんていうのは存在しないだろう。

そりゃそうだ、人間記憶がはっきりしてくるのは数年経って物心ついた時になってからなのだから。

この世に生を受けたその日の記憶が鮮明に残っているなんていうのは普通じゃありえない。

 

「おお……どうやら問題なく成功したようだね、実に喜ばしいことだ」

「ではドクター、彼女が?」

「そうとも、私のために私自身が作り出した私の真の家族、そしてもう1人の適任者というわけだ」

 

……つまりその生まれた瞬間のことを今でもはっきり思い返せてしまう私は所謂『普通じゃなかった』ということであって。

視界と意識を得た私が最初に見て聞いていたのは歓喜に満ちた男の声とその隣にいた美人のお姉さん。

今更考えてみるとあんな狂気に満ちた顔で両手を掲げてにっこり笑いながらこっちを見つめているなんて、

普通に考えたらただの変態だと思う、もう何というか変態という名の何かを通り越したおぞましい何かと言うか。

 

「…………あー……う……」

「目覚めたばかりでは仕方ないね、だが必要な知識も思考も全てインプットしている。さあ、自分のことがわかるだろう? 愛しい私の妹よ」

 

確認するように適当に喉を震わせてみればきちんと声も出すことができる。

視線を上にあげてみれば目の前の兄と自称する男と同じ色の髪がぼさぼさになっているのが見える。

視線を下に下げて見てみれば私は一糸纏わぬ姿で体中が培養液でビシャビシャ。

一応生物学的には女だというのに、何というか体に感じる筈の双丘の重さが全く感じられないというね。

もう絶壁、つるぺたすとーんもいいところな見事なスレンダーボディだった。

別に悲しくなんかない、女性の価値は胸の大きさなんかで決まらない、決まらないったら決まらないのだ、ぐすん。

 

「……カティーナ、カティーナ・ベルリネッタ。開発コードネーム、innocent desire(イノセント・デザイア)

 

それでもって全く抑揚のない機械みたいな声で言ったのがこの世界に生まれ落ちた私の第一声。

自分の兄と呼称する天才科学者にして私の製作者でもあるジェイル・スカリエッティとその副官とでも言う存在、ウーノとの初体面の記憶だ。

 

 

 

*

 

 

 

「うーん……昔の人間が考えてたことはよくわからないよ、コスト度外視もいいところじゃん、性能良ければそれで済むってもんでも無し」

 

でまあ、時間の流れなんてあっという間なわけで、私が生まれたのが新暦60年、それからもう6年程経過していたりする。

元から記憶や思考、感情、その他諸々は生まれる前から色々インプットされた状態だったわけだけど、やっぱり生まれたばかりだと色々実感がわかないわけで。

その辺りの違和感も6年もすれば十分に払拭できていたし、自分の置かれた立場や周りを取り巻く環境なんかもわかってきている。

私の名前はカティーナ・ベルリネッタ、私の兄であるジェイル・スカリエッティと同じアルハザード時代の科学者のデータを基に生み出された人造生命体。

あの時、ジェイルこと兄さんは自分の家族だなんて御大層なことを言ってはいたが別に言葉通りのものではない。

私達のクライアントである脳みそトリオこと管理局最高評議会が送ったデータによって用意された兄さんのサポート役とかバックアップとかそんな感じの役割。

 

「元からある奴修理して使う分には問題ないけど、本格的に量産して戦力にするにはちょっとなー」

 

で、生まれてから数カ月くらいは基礎知識の確認とか最低限の生活力とか身に付けるのに費やしていたけど

それが終わってからやってることと言えば大概モニターとにらめっこか機械弄りしているかのどっちか。

今もこうやって兄さんが評議会からの指示で保管してる聖王の……ゆりかごだったかな?

その内部にいっぱいあった自律機動型機械のスペック調査やら復元修理やらでパネル操作の繰り返し。

クモみたいなフォルムにコウモリっぽい翼っていうちぐはぐな外見は私的にはグーだったりするんだな、うん。

 

「作業は順調に進んでいますか? カティ」

「ああお疲れウーノ、順調って言えば順調だと思うよー、ただ前にも言ったけどやっぱりこれそのまんまゼロから作るのはめっちゃ非効率だとしか言えないよ」

「やはり古代ベルカの技術ともなると内部構造的に一筋縄ではいかないと?」

「ノンノン、別にこれくらいなら100だろうが1000だろうが問題なく作れるっての、問題は金と時間がかかりすぎるってことよ。いくらヒゲオヤジや脳みそトリオから資材は潤沢に取り揃えて貰えるからって絶対的に無駄が多すぎるんだ」

「流石はドクターと同じ存在なだけのことはありますね」

「その呼び方やめてって、それに兄さんと私じゃ好みが違うんだよ好みが」

 

作業中にラボに誰か入ってきても別に私は振り向いたりしないで背を向けたまま会話をするのが常だ。

因みに稼働年数的には目上の人に当たるけどウーノとはお互いに呼び捨てで呼び合う仲だ。

そのことはウーノ含めて他の戦闘機人のみんなもわかっているから別に変にギスギスしたりもしない。

兄さん自体があらゆる分野に対して天才且つスペシャリストな腕前を発揮しているから、ぶっちゃけると私がいなくても作業自体は問題なく進むのだ。

といっても基本兄さん1人だけ体制ってのも効率が悪いからその補助で私がいるようなもんなのである。

それ以来、私が無人兵器を主とした機械技術関係の製作を担当、その空いた手で兄さんは人造魔導師や戦闘機人とかの生命操作技術に熱を入れている。

最初はウーノくらいしか目にしなかった戦闘機人も今ではそこそこの数稼働している、3年ほど前にも確か早回しで10番目の……ディエチって子も完成したらしいし。

でも何でみんなナイスバディでピッチピチのボディスーツが基本装備なんだ。

別に気にしてないけどつるぺたすとーんに対する私への嫌がらせか? 今更だけど本当に変態かあのマッド兄は。ちくしょう。

 

「魔力探知のシャットアウト含めた超光学ステルスに魔力干渉を遮る特殊フィールドの展開、飛行能力も備わってるとか量産の防衛兵器としては高級なんて代物じゃないよコレ」

「ではその過剰装備故にコストが高騰してしまうと」

「そそ、ぶっちゃけ凡百魔導師相手ならここまでのもんはいらないしね。魔力干渉遮断フィールドだけ残して後全部オミットしても数が揃えば問題ないし」

 

そんでもって今議題に挙がっているのが件のゆりかごにあった大量の防衛兵器。

自分で説明したようにこれホントに過剰戦力、単機だと少々不安だが10機前後もあればそんじょそこらの魔導師じゃ相手にならないって断言しちゃう。

しかも最大の目玉がそのステルス性能。高ランクの探知魔法も余裕ですり抜けて攻撃可能というシミュレート結果が出た時は我が目を疑ったよ。

何せ上手く運用すればAAAランクとかSランクとかの魔導師も余裕で後ろからブッスーって行けちゃうからね。

こんなもんを100機以上も量産して防衛に当たらせるとか古代ベルカ時代はどんだけ物騒だったのよとツッコみたくなるくらいだね。

 

「でもってデチューン用のプランはもう粗方完成してるのよ、後で兄さんにも見せに行くけどまあ問題は無いと思うな」

「これは……成る程、確かに最低限の機能を残しコストも10分の1以下、プラン的に問題点は見受けられないでしょう」

「でしょ? 第一こんなもんは私らの研究資材とデータ収集用の捨て駒であって真面目に取り組む必要も無しなんだし」

 

とまあ、一山いくらの掃いて捨てる程必要になるデコイ人形たちにそこまでの過剰戦力を求める意味も理由もありませんということで

手っ取り早く魔力遮断用のフィールド……略称でAMFというのだが、それだけ残した簡易量産用の設計図も出来上がっているのだ。

武装は最低限になるしステルスも使えなくなるけど別にその辺は大量の数を用意してしまえばさしたる問題も無い。

高ランク魔導師にはハエみたいに叩き落とされるだろうけど、それ以下なら余裕で攻撃を遮断できる塩梅になってるんだし。

基本魔力頼みの管理局戦力相手ならこれで十分回せると踏んでいるのだよこっちは。

 

「まあこんなガラクタなんて私としてはどうでもいいのよ。せっかくだしウーノにも見せておこうかな?」

「と言いますと……また何か新しい兵器を開発されたのですか?」

「うんうん、機械弄り大好きだしねー、やっぱり時代はメタルなボディ! 一々魔導師を育ててあーだこーたってのは肌に合わないのよ」

 

ウーノがいたのも丁度良かったし、そんな感じで別のモニターを出して得意げに胸を張ってみる、張る胸無いとか言うな。

映し出されているのは2年前くらいから開発を進めている私のオリジナル兵器……何号だったかな、20を超えたくらいから数えてない。

ともあれ、機械技術専門の私は脳みそトリオの依頼とかとは別に自前のメカを色々作ってみたりもしている。

自分が生きている一番の理由はこれに尽きる、自分の発想で好きにメカを作って好きに暴れる、この快感は本当にやめられないのだ。

 

「進攻段階は8割強ってところかなー、後は飛行ユニットの調整をちょちょいのちょいすればテストに持っていけるかなーって感じ」

「データスペックだけ見れば確かに十全だと思われますが、しかし回避運動は度外視していると言っていいですねこれは」

「それはまあ、こんだけデカいのが無人で空飛ぶんだしそれくらいはね、それに避けなくても全部防げば問題ないんだし」

 

管理局本局の次元航行艦とかも十分すぎるくらいにオーバースペックだし、あんな連中のオーバースペック振りと比べれば劣るんだろうなあとは思っている。

だがしかし、別に私の好みで勝手に作ってるメカなんだからその辺のことは全然気にしてない。

大体私が想定しているのは基本的に人間、つまり魔導師相手なんだからそこまですんごいのは必要ないのだし。

居住空間だの医療設備だのといったのは必要ない、注ぎ込むべきは兵器としての機能と火力なのだ。

 

「そんでまあ、近い内にそこの自律機械とその簡易量産機と纏めてテストをしてくる予定だね、評議会の連中もそろそろあれこれ言ってくる時期なんだろうし」

 

モニターに映っている新作である両端に円柱型のユニットを2つずつに中央部分にぽっかり穴の開いたラグビーボールっぽい形の黒い巨大な何か。

試作型飛行要塞、チェロクアの完成に思いを馳せながらウーノに今後のことを報告したりもしていた。

 

 

 

*

 

 

 

で、時間が更にそこそこ過ぎて新暦67年のある日のこと、完成した自律機械の簡易量産型と修理の終わったオリジナル。

それに加えて目玉である飛行要塞チェロクアも含めた稼働実験を行う手筈になった。

無人の管理外世界に兵器の諸々を送り込んで自分はチェロクアや自律機械のリンク用カメラモニターを通してアジトのラボで一部始終を記録中である。

しんしんと雪の降り積もる銀世界だったというのに辺りはもう凄いことになっているのよコレが。

至る所から煙が上がっているし元から廃墟だった建造物は色々な意味で酷いことになっている。

それを引き起こした張本人が私であってモニター越しに映っている機械群なわけだけど、別にそんなの私の知ったことじゃない。

 

「いやあ、飛行ユニットの調整にちょーっと手間取ったけどまあ問題は無さそうかな、デコイ連中も問題なく動いてるみたいだし」

 

今の自分の顔を表現するなら正にほくほく顔といった感じに緩みまくっているのかも。

でもいいじゃない、ガラクタはともかく自分の作ったメカが問題なく動いてくれているんだから嬉しくもなる。

一技術者としてこれ以上に喜ばしい事なんて他にあるものかというね。

完成したこの子もまた詳細なデータを取りながら、次の作品を作るための大切な糧を生み出してくれるのだもの。

その辺の先のことを考えるだけで、ああもうますます表情筋がだらしなくなっていくようだ。

 

「それにしても急ごしらえで積んでみたけどいや予想以上ねえ、外部魔力のシャットアウト機能が半端じゃあないわ」

 

自律機械に付いてたAMF、あれを突貫工事でチェロクアにも搭載してみたのだけどそれがまた物凄い。

元から色々改造した特殊合金製のボディだから質量兵器はおろか魔力によるダメージも余裕で防ぐ頑強さがウリになってる。

大型でスペースに余裕があったので比例するようにAMFの機能も高出力化してみたらそれはもう凄いことに。

本来なら簡易量産タイプの自律機械数十機単位で発生させるAMFが要塞1つで発生しているんだもの。

加えて周りには同じ機能を持った大量の自律機械もいるのだから、要塞周辺のAMFの濃度と範囲については推して知るべし。

平凡な魔導師なら立っているだけでも具合が悪くなるんじゃないかとか思ってしまう程のそれだ。

他の離れた場所にも自律機械の集団がいくらか飛んでいるが、それとも比較にならないレベルの数値なんだから。

我ながら恐ろしいとかそんなことを思ってしまうよ、うん。

 

「管理局にとっては厄介極まりないっていうのは正にこのことだよねー……っと、もしや糸にかかったお魚さんの登場かな」

 

自画自賛に耽っている私の意識を呼び戻したのはセンサーに反応した魔導師の反応。

それと同時にセンサーが捉える複数の魔力反応に次々と消滅していく自律機械簡易型の反応信号。

私がこの世界に兵器群を送り込む少し前に、管理局の武装隊が離れた場所で演習をしているという情報は手中にあったけど、

まあこれだけ派手に暴れてればバレない方が無理があるってものか、こっちとしては寧ろバレるように暴れていた節もあるけどね。

 

「どーれどれ……うわあ、釣れた魚は大物中の大物って感じだねコリャ♪」

 

そんで離れた位置を映しているモニターを表示してみれば鉄クズに変わった自律機械群にその中央に立つ白い女の子の魔導師さん。

データが揃っていない以上確定はできないが、少なく見積もってもAAAランクくらいは見込める魔力量。

思った通り、いくらガラクタ機械群がAMFを展開してみたところで、流石にAAAランクくらいにもなると正に羽虫を落とす如し。

挙がってくるデータを見てもデタラメにも程がある笑える数値ばかりだ。

あんな小さい子がここまでの魔力量を有しているとか、管理局も末恐ろしい人材を引き抜いたものである。

 

「……だからこそ、こっちとしても試し甲斐があるんだけどね、高町なのはちゃん」

 

なんてことをぶつくさ呟きながらニヤリと笑って見せる。うん、今の私絶対に気持ち悪いな。

このタイミングでウーノとかクアットロに入られてきたら絶対1ヶ月以上は馬鹿にされる、良かった誰も入ってこなくて。

まあ、そんな茶番はさておき私は要塞の軌道修正をしながら件の魔導師、高町なのはと丁度かち合うように手筈を整えていく。

で、何秒かじっくり待てばあっという間にターゲットが私の新作、チェロクアを目視できるエリアまで到達するわけで。

 

『これは……!! な、何なの、この変な、大きい機械!?』

「変なのとは失礼だなー、私のすんばらしい新作に向かって」

 

ううん、どうやらこのなのはちゃんには私とは感性が合わないようで実に残念である。

まあ齢11歳程の女の子にこのロマンを理解しろっていう方が難しいか。といっても私の稼働年数は7年だったりするんだけどさ。

でもいいのだ、人間時間よりも蓄積してきた中身だ、それに外見年齢は10代後半なんだし気にしてもしょうがない。

 

『こ、こちら時空管理局武装隊、高町なのはです! この自律機械による破壊活動はあなたの仕業ですか!』

「うんうん如何にもその通り、正確に言うと破壊っていうよりテストって感じだけどねー」

 

モニター越しに見える表情と聞こえてくる声色は正に真剣そのものだ。

やれやれ管理局に入ってまだそれほど経ってないっていう情報だけど、何ともまあ凛々しくて可愛い子だ。

敵じゃなかったら思いっきり猫可愛がりしたくなるそんな純な魅力に溢れていると言いますか。

……何せウチにいる女性陣は性格的にロクなのいないしね、私も含めて。

 

「そして好都合、そのテストの実験台が自分からやってきてくれて私としても大感謝だよー、というわけでさようなら」

『ッ!? レイジングハート!!』

 

パネルのボタンをポチッと押せば周りにいる自律機械が一斉にレーザーを発射し始める。

それに弾かれるようにしてなのはちゃんも魔力を爆発的に高めて縦横無尽に飛び回り始める。

いやはや、チェロクアも含めてAMF濃度がこれだけ濃い中で動き回れるとか本当に天才だ。

 

『ディバインシューター!!』

 

そうやって高速で飛び回りながらだというのに、誘導魔力弾の発射までしてる始末。

しかもそれらは高濃度AMF環境下にありながら1発たりとも撃ち漏らすことなく自律機械の大半を撃破していく。

その後も次々と魔力弾が撃ち出されていき、自律機械がどんどん数を減らしていく。

普通に考えればたまったものではないが、自律機械がいくらやられたところで別に痛くも痒くもないか。

 

『くぅ……さっきよりも動きの違和感が強い……! やっぱりあの機械が発している機能が原因……?』

 

でもやっぱりなのはちゃん的にも普段と同じく万全とはいかないようである。

そうは言ってもこっちの攻撃を今の所全部回避しきってるのだから言葉とは裏腹にこっちとしては形無しなんだけど。

 

「それなら……行くよ、レイジングハート!!」

 

埒が明かないと感じたのかなのはちゃんが桜色の魔法陣を展開して行っているのは恐らくカートリッジシステムによる魔力のブースト。

最近になってインテリジェンス式のデバイスにも組み込めるようになったとは聞いていたけどこの子も実装しているとは。

……敵の私が言うのもなんだけどあれって結構負担のかかるシステムだったよね? この年齢で平然と使うっていうのはどうなんだろう。

まあ私の知ったことではないが。

 

「んー、そっちがその気なら受けてたとう、チェロクア、主砲エネルギー充填開始」

 

向こうの推定ランクはAAA、であるならガラクタ共が束になったところで敵う相手じゃないだろう。

となればまともに相手できるのは私の作品であるチェロクアくらいのものか。

そう考えた私が起こした次の行動が、チェロクアが持つ唯一の攻撃行動、それの準備合図。

機体中央部にぽっかり空いた穴、つまり主砲砲門部分にエネルギーが溜まって眩い光を放ち始める。

うん、正直言うとAMFの制御と飛行ユニットのバランス、緊急脱出ユニットの搭載に加えて主砲にエネルギーを割きすぎた所為で、

他の攻撃手段を積む余裕が無かった、要約すると超脳筋、ロマンもいいところなんだよね。

 

「充填完了、主砲プラズマキャノン発射」

『ディバインバスターーーーーッッ!!』

 

チェロクアの砲門から膨大なエネルギーの奔流が溢れ出すのと、なのはちゃんが桜色の魔力砲を発射したのはほぼ同時。

真正面からぶつかりあったそれは互いに拮抗してじりじり押し合う形になる。

言ってしまえば単純な直射型の魔法だというのにこっちの唯一の攻撃手段と拮抗するとか何というバカ魔力か。

カートリッジによる上昇とAMFによるマイナスなどを加味しても、やっぱりこの娘とんでもない。

 

『くうぅ……! きゃああああああ!!!』

 

でも残念なことにこっちは無人機械であっちは人間、つまりその後の結果には差が出てくる。

拮抗した互いの攻撃はそのまま中心で強い光と共に大爆発。

チェロクアは頑丈な飛行要塞故にほとんど無傷同然だったけど、なのはちゃんの方はその衝撃に吹き飛ばされて地面に落下する形に。

 

『痛た……ディ、ディバインバスターを真正面から止める力だなんて……』

 

すぐさま起き上ったなのはちゃんもまたこの結果は想定外だったみたいだ。

寧ろ想定外なのはこっちなんだけど、まさか魔導師1人の直射魔法で止められてしまうとは……内心結構ショックよ?

チェロクアはそれ以上に防御力にも自信があるからまだ勝ち筋が消えたわけじゃないんだけどさて次はどうしようか……

ん、よーく見るとなのはちゃんの墜落したポイントの背後にもう一つ反応が。

 

「あー、後ろ気を付けて、後ろ」

『え―――は!? ―――ガッ』

 

間の抜けた声でなんとなーく警告してみたけど時既に遅し。

自分でも見逃してたオリジナルの自律機械がステルス張ってなのはちゃんの背後から迫っていたのだ。

それでもって墜落した隙を突いて後ろからザックリ、白い雪に覆われた地面がなのはちゃんの鮮血で赤く染まっている。

うわあ、とっても痛々しい。

 

『!!――――』

 

反射的に手に持ってるデバイスから魔力弾を発射してすぐさま自分を刺し貫いた自律機械を破壊するけどもう遅い。

その衝撃に成す術も無く吹っ飛ばされて赤い液体を撒き散らしながら地面を転がるなのはちゃん。

さっきまでの孤軍奮闘振りはどこへやら、一瞬の判断ミスがこうした致命的な状態を発生させるのだから恐ろしい、そして

 

「……フフ、面白いなあ。まさか不意打ちとはいえAAAランクの魔導師をああも簡単に刈り取れるだなんて、あのガラクタのオリジナルも意外と捨てたもんじゃないってことか」

 

面白い、私の感情に浮かんだのはその一点。

眼前に年幼い女の子が1人、致命傷を負って横たわっているというのに私の興味はそのなのはちゃんにダメージを与えた自律機械への興味でいっぱい。

成る程、シミュレート時点で大したステルス機能だとは思っていたけどこれは使えるかもしれない。

本格量産は無理でも拠点防衛用とかの為にいくつか複製しておくのも悪くないかもしれない。

 

「それにしても本チャンの方は意外とショックだったよー……いくらAAA級の砲撃とはいえ直射型で互角かあ……火力追及には限界があるのかもねえ」

 

尤も、私としては自作にして自慢の新作兵器、飛行要塞チェロクアの攻撃がたった1人の魔導師に防がれたという結果の方が重要だった。

趣味同然だったとはいえせっかく数年単位の時間をかけて飛行機能やら降下力の主砲やらを搭載したのに結果はこれ。

全く、イノセント・デザイアの名折れである、こんなザマであの変態兄さんことジェイル・スカリエッティの妹だなんておこがましいにも程がある。

 

「せっかく面白い物も見れたし、今日はこのくらいでいいかな。生き残れるかは運次第ってね」

 

主砲の威力の底が知れてしまったし、自律機械も今の生き残りを残して全滅。

つまりこれ以上ここで検証を行う理由は率直に言えばもう無い。

であるなら、さっさと生き残った要塞をこっちに戻してしまわないといけない。

うん、もう一発撃てば余裕でなのはちゃんを消し炭にできるけど、それじゃ面白くない。

結果はショックだったけどそれ以上にこの娘に興味が湧いた、貴重な実験サンプルとして、ね。

そんな貴重な実験相手を自分から可能性ゼロとして潰してしまうのは何というか私の趣味に合わない、もったいないもの。

このまま放っておかれても間違いなく死ぬだろうけど、周辺から別の魔導師反応も出てるし救助はすぐだろうね。

仮にもし次に会う機会があったら私のメカだけで正面からこの天才魔導師を打ち負かしてやるとも、無論無事に戦場復帰出来たらの話でもあるけどさ。

 

「じゃ、また会える日を楽しみにしておこうかな、高町なのはちゃん♪」

 

血の海に沈みピクリとも動かない白い魔導師の姿をしっかり収めながら私はチェロクアの使いきり緊急脱出用機能を作動させる。

チェロクアの周囲を鈍い光が包み、転移装置が作動してモニターを切る直前、私の視界の端に必死の形相の赤い魔導師が映った気もしたけどそのことは記憶からはすぐに消えた。




◆チェロクア

無人の試作型飛行要塞、ブラックカラーの機体は特殊合金で構成されており非常に頑丈。
特殊な飛行ユニットを搭載しており単独での飛行が可能な他、高濃度のAMF発生装置も搭載しており魔力攻撃に対する防御力は更に高まっている。
エネルギー効率の関係もあり、武装は機体正面の大型プラズマキャノン一門だけだがその火力は非常に高い。
AAAランクの魔力砲撃にも互角に渡り合える破壊力。
しかし、製作者としてはこの結果は不満が残るものだった模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。