狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き 作:LR-8717-FA
結論から述べればその後の訓練の空気は最悪の一言に尽きると言っていいものだった。
リスクの高いスバル、ティアナの模擬戦時での行動とそれに対するなのはの制裁、それを止めるべく乱入したヴィータ。
スバルが意識を失ったティアナを連れて訓練場を後にしても、平手打ちをしたまま泣き崩れたヴィータとそれを何も言えずに受け止めるしかできなかったなのはの2人が下がった後も。
フェイトによるエリオ、キャロ両名の模擬戦の際も3人全員がどこか心ここにあらずといった様相であまり身の入った物にならなかったことも。
機動六課設立以来、今まで順調に進んでいた筈の何かが一瞬にして大きなヒビを入れてしまったのである。
「ん……ぅう…………」
その争いの渦中にいたティアナが目覚めたのは六課隊舎の医務室のベッドの上、
なのはのクロスファイアによる一撃や今まで蓄積してきた疲労もあってまだ体の怠さが抜けきらない。
そんな状況の中で重い瞼をゆっくり開きながら上半身だけを起こす。
「目、覚めたか?」
「あっ……ヴィータ……副隊長」
その体勢で真っ先に視界に入ってきたのが自分のすぐ側で腕を組みながら立っていたヴィータの姿。
殆ど朦朧とした意識ではあったがティアナもその瞬間の言雄ははっきりと頭に残っている。
初弾命中後のなのはの追撃から自分を守っていたヴィータの後ろ姿を。
そのことを考えると意識が瞬時にクリアになり、加えてヴィータに対する様々な感情が綯交ぜになって表情を俯かせてしまう。
「起きたみたいね、昼間の模擬戦で撃墜されかけてからずっと眠っていたのよ」
「シャマル先生も……ずっと……って、あれ……?」
丁度そのタイミングで入ってくるのは六課の主任医務官も担当しているシャマル。
そのシャマルの言葉を聞いてふとティアナは窓の外の様子を見て、そして首を傾げてしまう。
辺りはすっかり闇に包まれている、要するに夜だ。だがティアナが模擬戦を行っていたのは昼過ぎだった筈。
「もう9時過ぎだ、スバルが運んできた後に長いことベッドでぶっ倒れてたみてーだからな」
「えっ……嘘!? 私、そんなに眠っていたんですか?」
「溜まってた疲れがまとめてきたのよ、もう死んでるんじゃないかってくらいに熟睡してたんだから」
ヴィータの指摘と時計に表示された時刻を見て、続くシャマルの声なんて右から左というくらいにティアナは驚愕していた。
ここのところずっとハードスケジュールだったというのは紛れもない事実だが、まさか昼から夜の数時間も眠りっぱなしとなれば驚くのも無理は無い。
「……すまなかった、ティアナ。これはあたしらのミスだ」
「え、ええっ!? ヴィ、ヴィータ副隊長、いきなり何を……!」
が、ティアナにとってその熟睡のことなんて軽くどうでもいいことになるような更なる驚愕が直後に起こる。
何かと言えば側にいたヴィータがティアナの真っ書面に立つなりいきなり深々と頭を下げて謝罪の言葉を述べてきたのだから。
状況の整理が追い付かない上に自分の無茶の所為でこのように周りに迷惑をかけていると感じているティアナからすればもう何が何やらである。
「模擬戦でお前やスバルがヘマやったのはお前ら自身のミスなのは間違いない……けど、あんなになるまで追い込まれてたのに気付いてやれなかったのはあたしらの不足だ……」
「そ、そんな……ヴィータ副隊長が謝る事なんかじゃ……私が勝手して勝手に撃墜されて……副隊長にまでこうして迷惑かけて……」
「身体的な面だけじゃなくて精神面での話をしてんだ。いつもは真面目なお前がああでもしないといけないくらいに思いつめてたのならちゃんと話をしてやるべきだったんだ……なのになのはもあたしもそれを怠ってた……教官失格って言われても仕方ねえ」
「し、失格だなんて……それに私はただ……」
このまま放っておけば謝罪のループが続いてしまうんじゃないかというくらいにヴィータもティアナもお互い自分のことを責めていた。
でもそれ以上にティアナとしてはこんな風に自分のような人間に頭を下げ続けるヴィータの姿に対する戸惑いの方が勝っている。
追い込まれるも何も、自分が意地を張って相棒まで巻き込んでその果てに訓練中に撃墜されたというだけの話なのである。
自分に落ち度があれど副隊長であるヴィータにここまで真剣に謝られないといけない理由などない筈だとそう思っていた。
「ヴィータちゃん、訓練が終わってからずっとティアナに付きっきりだったからね」
「……それくらい上官としての務めだろ、あたしらの監督不行き届きでこうなっちまったんだからな」
別に慌てるようなそぶりを見せるわけでも無く、沈んだ声色で返してくるヴィータの姿を見ると、シャマルからしても今回の一件について本当に悩んでいることが見て取れていた。
10年近い、もっと言えば夜天の書の守護騎士としての時代からの付き合い故、こんなことを言えば普段なら顔を真っ赤にして慌てふためく筈だということを知っているからである。
管理局員として、ティアナの上官として、それだけ真剣にこの一件について深く考えているという意思の表れでもある。
「……本当にすみませんでしたヴィータ副隊長……お手を煩わせたばかりか、こうして本来の仕事を放ってまで私なんかの為に」
「言うな、さっきも言ったがこれはあたしらのミス。こんなボロボロになっちまったお前の側にいてやるくらいはしねーとあたしの気も済まなかったんだ」
ティアナがそうであるようにヴィータもヴィータで只管に自分の失態を恥じるばかり。
今の自分は機動六課スターズ分隊の副隊長、上官として直属の部下であるスバルとティアナの面倒を見るのは当然の役目。
それは単に訓練などの身体的なことだけでなく、精神面、メンタル面についてもきちんと気を配らなくてはいけない。
そもそもティアナの度を越した自主練に関して最初に隊長陣に切り出したのはヴィータ本人であった筈。
そこからなのはやフェイトの話によって知ったティアナの過去、兄であるティーダの殉職、強くなろうとする理由。
その全てを聞き知ってなのはとも話し合って、とりあえずはティアナ自身の問題として静観することを決めた。
その後は特に何の問題も起こらなかったことも加えてそれで正しかったんだと思っていたのだ。
だが結果はこれだ。直接話し合って事情を聞くことすらせずに甘えていた先に起きたのが今日の模擬戦での出来事だった。
「あの……なのは隊長はあの後……」
「その辺についてはあたしの方からも色々言っといた、けどやっぱりお前ともちゃんと話し合って解決しろって流れになった」
「そう、ですか……でもあの時隊長は……」
「勝手やった相手に痛い目見せるってのは強引ではあるけどやり方の1つだ、けど2発目はどう考えたってあいつの暴走だ……あたしは……もう……」
言い淀むヴィータの脳裏に過るのはその時の冷酷な表情をしたなのはと、今も忘れえぬ悲劇の記憶。
あの模擬戦が終わった後もなのはは何度もヴィータと話をしたいと詰め寄ってきていたが、それに対するヴィータの返答はティアナが目を覚ましてから3人で話せの一点張り。
ヴィータからしてみれば自分と同じようにティアナとちゃんと向き合ってこなかったなのはにも落ち度があると考えていたし、
そんななのはにいつの間にか任せきりにしてしまっていた自分のミスを更に恥じているという面もある。
副隊長であるなら部下の面倒を見るだけでなく、隊長であるなのはのことをしっかりサポートし、時には待ったをかけなくてはいけなかったのだと。
ヴィータからすれば当事者であるティアナが目覚めていないというのに、自分となのはだけで話し合って何になるのかというそんな思いだった。
「…………もう1つ謝んなきゃいけねえ。なのはたちから聞いた、お前の兄貴のこととか……アグスタに出てきた正体不明機とのこととか」
「!?……そう……ですか……」
言い淀みながら続けて切り出されたその言葉の内容がヴィータとティアナとの間にある空気を益々重苦しい物にしていく。
ヴィータからすれば知らなくては行けなかったとはいえ、不要にティアナの重大な過去のことを本人に知らずの内に探ってしまったこと。
ティアナもティアナでその過去のことや正体不明機への個人的な感情が今日の悲劇を招いたことに対する申し訳なさがある。
「とにかく、ヴィータちゃんとティアナがいつまでもこうしててもしょうがないでしょう? まずはスバルやなのはちゃんときちんと話し合ってこないと、ね?」
重苦しくなる一方の空気に耐えきれずというのもあるが、それでも見ていられなくなったシャマルがそのように切り出す。
ヴィータとティアナが互いの落ち度を謝るのもいいが、ここにはまだ当事者全員が揃っているというわけではない。
今回の件はなのはもそうであるし、ティアナと一緒に行動していたスバルにも無関係の話ではない。
その点についてはヴィータもティアナも十分に分かっていることであったので、一先ずは医務室での話を切り上げてちゃんとした話し合いをしなくてはと気持ちを切り替えたのだが、
『緊急です!! 東部海上に複数の敵反応を確認しました!!』
ヴィータ達の考えていたことを嘲笑うかのように現れた突如の敵群、その察知を確認したロングアーチからの緊急通信だった。
*
『ごきげんよう、ドクター』
「おや、君の方から通信を入れてくれるなんて珍しいじゃないか。ゼストとアギトはどうしたんだい?」
『別行動中』
スカリエッティのアジト、そのモニタールーム。そこで通信越しに会話をするのはルーテシアとスカリエッティの2名。
スカリエッティ自身が言うようにルーテシアの方から通信を入れてくることなど滅多にない事だったりする。
ではその滅多にないことが起きている理由は何なのかと言えば、海上道路沿いで単独行動中だったルーテシアが見つけた反応にある。
『カティの作った玩具が、遠くの空で飛んでいるみたいだけど』
「ああそれかい……少し待っていれば、そこからでも直に綺麗な花火が見られると思うよ」
綺麗な花火なんて表現をしている時点でその機体は落とされること前提だと宣言しているような物である。
仮にもスカリエッティにとって大切な妹が作り出した作品相手にあんまりな言い草であったが、それはベルリネッタ本人にもわかっていることだ。
しかし、ルーテシアが通信を入れてきた理由はそんなどうでもいいことではなく他にある。
『レリックが見つかったの?』
「だったら、真っ先に君に連絡しない筈がないだろう?」
ルーテシアにとっては母親を蘇生するのに必要と、そう思い込まされている重要物資であるレリック。
ガジェットドローンはそのレリックを求めて行動をしているのなら今回もそうではないのかと問うのは必然。
だがスカリエッティは何の悪気も無しに、今回はそうではないからそうしなかっただけだと伝えるのみ。
「妹が作ったガラクタの動作テストをしているんだよ。破壊されるまでのデータも含めてガジェットの性能をある程度底上げしたいとね」
『あれみんな、壊されちゃうの?』
「私もカティーナもあんなガラクタに直接戦力などはなから期待はしていないさ。それに、今回のテストはそれだけじゃないらしいからね……何でも遂に最高傑作の為の足掛かり、その第一歩となる作品を投入すると言っていたから私も気になってね」
スカリエッティも時たま協力しているベルリネッタの兵器群のテスト観測。特に今回の主題はスカリエッティ自身が語るようにガジェットではなくその後にあるとのこと。
彼にとっても愛しい妹が作り出した作品がどのように活躍するかということに興味があるし、それが見れるということで進んでモニターでの観測を行っているということだった。
『レリックじゃないなら私には関係ないけど……カティにも伝えておいて、頑張ってねって』
「ありがとう優しいルーテシア……その言葉を聞けば妹もきっと喜ぶと思うよ」
『じゃあ、ごきげんよう』
尤も、スカリエッティにとって多大な興味を引くことでもあっても、ルーテシアの心を動かす程の物ではなかったようだ。
儀礼的な応援の言葉を伝えるだけ伝えて、ルーテシアは自分の目的を再開するためにさっさと通信を切るのだった。
*
とある海上に突如として出現した複数の敵反応、飛行型のガジェットⅡ型が計20機程。
だが妙なのはその状況、付近にはレリックはおろかロスト・ロギアやそれに準ずる魔力反応は一切見受けられない。
管理局やその他公的機関が保有する重要施設なども無い、本当に何も存在しない海上で旋回飛行を続けているだけ。
何よりそのガジェットⅡ型の飛行速度が従来に出現した機体を遥かに上回る速度だということ。
不可解極まりない、目的が不鮮明すぎる、等々様々な意見が飛び交っていたが、そこにカティーナ・ベルリネッタという一要因が加わることで新たな予想が生まれてくる。
そっちの戦力調査と機能テストをしたいから撃ち落としに来い、要は捨て駒として誘っているのだと部隊長であるはやてはそう結論付けていた。
故に六課側としても余計な手の内を晒す必要は無く、今まで通りに処理していくという方向で話が纏まっていた。
「というわけで今回は空戦だから、みんなはロビーで出動待機、よろしくね」
「「「はい!!」」」
「はい……」
機動六課隊舎内のヘリポートでなのはからの指示を受けて新人たちが返答を返すも、やはりティアナだけはどこか覇気が無い。
そもそも指示内容を説明していたなのはやその様子をすぐ近くで見守っていたヴィータにしてみても同様である。
特にヴィータからすればティアナの意識も回復してようやくという段階で、まるでこちらを挑発するような目的で送り込まれてきたガジェットに対する苛立ちすらも見え始めていたくらいなのだ。
「……ティアナは出動待機から、外れておこうか? まだ体調も魔力も万全じゃないだろうし」
咄嗟になのはの口から出たのはそんな一言で、それによって新人たちの間にどよめきが起こる。
なのはからすればヴィータとのことも含めて未だにわだかまりが残ったままのティアナに対しての純粋な気遣いからの言葉だった。
がしかし、昼間の模擬戦での一幕を眼前で見届けていたティアナも含めた新人たちにとってその言葉の意味は違う捉え方になってしまう。
その張本人であるティアナの内に生じてくるのは本来意図していない筈のドス黒い感情。
「…………言うことを聞かない奴は邪魔になるだけだから……引っ込んでろってことですか?」
俯きながらのティアナの口から静かに紡がれるのはまるで恨み言でも言っているかのようなそんな言葉。
ティアナにしたってなのはやヴィータに対する申し訳なさを初めとするその他の感情でいっぱいになっていた筈なのに、
それでも尚、自分が貫き通したかった意地と誇りが今のなのはの一言によってティアナ自身でも止めることができない歪んだ情念を作り出していたのだ。
「……自分で言っててわからないの? 組織では当たり前のことだよ」
こうなったらなったでなのはもまたその心を硬く閉ざして上官としてティアナに苦言を呈するだけになってしまう。
元より高町なのはという人間もまた自分の意思を貫き通すために幼少時からどんな無茶でも平気で行うとするそんな人種だった。
だが悪く言うと意固地になりやすいといことでもあり、これと決めた自分の意見をなかなか曲げようともしないということでもある。
その裏にある意図が相手にきちんと伝えられているのならそれもまたプラスに作用することも多かったが、
少なくとも今この時のように互いにすれ違ったままの状態では逆効果にしかならなかったのである。
「教導での指示だって現場での命令だって私はちゃんとこなしています! なのに、それ以外の場所の努力にまで細かく従えってそう言うんですか!!」
そしてなのはの方がそのような態度を取ってしまった以上、ティアナの方も自分で自分を抑えられなくなってしまう。
医務室でのヴィータとの謝罪と会話で一旦は落ち着いたはずの自分の中での譲れない物、強くなりたいという意地。
それがまた何の気無しに踏みにじられたような気がしてティアナの中での感情の暴走を加速させていく。
「私はなのはさんたちのようなエリートでも無い! スバルやエリオのような才能も無い! キャロみたいなレアスキルだって持っていない! だったら、少しくらい無茶でもしないと追いつけないのは……!!」
「ッ…………? ヴィータお前……?」
「さっきから聞いてりゃお前らは……!!」
遂には呪詛のように飛び出してくる他の隊長陣や新人たちへの嫉妬心。
そこまで行った段階で遂に手を出そうとした者が1人……だが、その1人であるシグナムが動く前に行動を開始した者。
白熱する口論を真っ二つにするかのごとく、なのはとティアナの間にヴィータが割って入っていた。
「ヴィータ、ちゃん……?」
「ヴィータ副隊長……」
なのはもティアナも自然と黙ることしかできなくなってしまう。
何故ならその場にいた誰もが容易に感じ取れたこと、今のヴィータが纏う怒りはあの模擬戦での乱入の時に見せたソレと全く同一の物だったからだ。
「フェイト、シグナム、迎撃はお前らで行って来い。こっちはあたしで何とかする」
「え、ヴィータ……そんな勝手に……」
「どの道こんな状態を放っとくわけにはいかねーだろうが、それにこれはあたしとなのはのミスの問題だ。こんな状態で出たってそれこそ足手まといになるだけだ」
「で、でも……」
「……諦めろテスタロッサ、ああなったヴィータには何を言っても無駄だ、アイツの言うように任せるしかあるまい」
「ちょ、ちょっとシグナム……!?」
振り向きながらでヴィータが吐き捨てる様に言い放った言葉は後ろにいたフェイトを更に戸惑わせるばかり。
だがシグナムは呆れる様にして言いながらフェイトの肩を掴んでヘリの中に乗り込み、さっさと奥へと行ってしまった。
ヘリの開閉口が閉じ、あっという間に見えない位置まで飛び立ってしまった後に残されるのは気まずい空気に包まれたなのはとヴィータ、そして新人たちの6人。
「ヴィータちゃん……」
「もう見てられねえんだよ、お前もティアナも……今のあたしだって同じだ。こんな風に馬鹿みてーに意地の張り合いして……それでまたあんなことになったらどうするってんだ……!!」
もう今のなのはにはまともにヴィータに言葉を返す余力は残されていなかった。
当然なのは自身にもスバルやティアナのことをちゃんと見てやることが出来なかったという反省が無いわけなどない。
だが、それを踏まえたとしても先のティアナの言葉は目に余る物であったし、それに対して上官として毅然とした態度で振る舞っただけだ。
その諸々を踏まえてもなのはは、こんなにまで怒りに震えているヴィータのことを段々と理解できなくなってきていたのだ。
「ッ……! ヴィータ副隊長!!」
そんな気まずさを打ち破るようにヴィータ達の前に堂々と歩み出てきたのがスバル。
ティアナを庇うような位置に立った彼女の両瞳にもまた確かな意志が宿っていた。
「確かに命令違反は許されないことですし……さっきのティアの物言いとか、今日までの無茶を止めようとしなかった……私にだって責任はあると思います」
俯き加減のスバルから静かに語られるのは自分の責任も含めたこと。
自分もまたスターズ分隊の一員であり、前線ではティアナのと共に肩を並べて戦うパートナー。
なら、そのパートナーの失態、暴走を見てみぬフリして事前に察知できなかった自分の所為でもあるというそんな告白。
「だけど……!! きつい中でも自分なりの努力で強くなろうとするって、そんなにいけないことなんですか!! 自分の実力を伸ばすために、他のみんなに追いつこうとしてもがくような、そんな努力もしちゃいけないって言うんですか!!」
続けて目に涙さえ浮かべて叫ぶのはティアナ・ランスターの相棒だった自分だからこそわかること。
陸士訓練校時代から肩を並べ任務でも訓練でもプライベートでも、あらゆる場面で寝食を共にしてきたのがスバルとティアナだ。
スバルにはティアナの全てがわかっている、今回のようにあんな無茶をした理由もその奥底にある夢や誇りも何もかもを。
だからこそ言わずにはいられない、憧れであるなのはや上官であるヴィータの思惑がどうであれ、ティアナが何の考えも無しにただ我武者羅に無茶をしているわけなどない。
そのティアナの全てを否定するかのような今日までの出来事にスバルも我慢が出来なくなっていたのだ。
「…………そうだな、オメーならティアナのことはあたしらよりよく知ってて当然だ……けど、なのはのことはあたしらの方がよく知ってるんだ……」
暫くの静寂の後、ヴィータが口を開いて言ったのはそんな内容。
ティアナを庇うスバルの必死の告白も、それを聞いて呆然としているティアナも、その側で戸惑う一方のエリオとキャロも、自分の側で立ち尽くすだけのなのはも、
その場にいる人間全員の想い全てをまっすぐに受け止め、そしてある1つの決意をしての発言。
「だからついてこい、これからお前らに全部話してやる、8年前の事件のこと、あたしやなのはがどんな想いでお前たちの教導をしていたのか……」
「ヴィータちゃん、それは……!!」
「うるっせえっ!! 本当はこんなになる前に全部ちゃんと言葉で伝えなくちゃいけなかったんだよ!! いい加減お前もそれをわかれ!!」
突然の様に慌てる素振りを見せるなのはだったがそれもまたヴィータの放った一言でピシャリと止められてしまう。
その光景にただならぬ気配を感じながらも、なのはと同じように新人4人はヴィータに黙ってついていくのであった。
*
海上でのフェイト、シグナム両名による改良型ガジェットドローンⅡ型の編隊との戦闘は順調に進んでいた。
いくら格段に速度が上昇していると言っても、それでも尚六課隊長陣にとって追いきれない速度というわけではない。
まして、今回の戦闘に参加しているのは六課内でもスピードと近接戦闘能力に特に優れたライトニングの2名。
進行状況だけ見れば普段の作戦時と何ら変わらない勢いで次々とガジェットは撃破されていっていた。
「行くぞ、レヴァンティン!!」
『Schlangebeißenangriff』
カートリッジロードと共に放たれるのはシグナムの愛デバイス、レヴァンティンの第二形態、シュランゲフォルムによる魔力付与攻撃。
鞭のようにしなる連結刃はシグナム自身が上乗せした魔力によって圧倒的な攻撃力、速度を持っており、
それによる一撃がガジェットⅡ型の一群にAMFの魔力拡散を容易に撃ち破りながら直撃、機体を爆散させていく。
「プラズマスマッシャー!!」
そこから少し離れた空域ではフェイトがバルディッシュを前方に構えて魔法陣を展開、
フェイトが長い間多用している砲撃魔法、それによる圧倒的な魔力の奔流が魔法陣から解き放たれ、
高速旋回しているガジェットすらも容易く捉えて飲み込んでいく。
『ライトニング01、ガジェットⅡ型の4機編隊を撃破!』
『敵機体の全滅を確認しました!』
そしてその一撃で残っていたガジェットは全て撃破完了、終わってみれば何てことのない任務だったと言える。
そもそも相手の目的が戦力調査と機体テストであった可能性が高い以上、それも必然だったのかもしれないが。
「よし……無事完了、シグナムもご苦労様」
「ああ、相変わらず見事な手並だテスタロッサ、少しも腕は衰えていないようだな」
「ふふ、それはシグナムも同じだと思うよ」
余力を十二分に残せた戦闘だったからこそ、戦闘空域上空でフェイトとシグナムは笑顔でそんなことも言い合えていた。
元より2人ともその立場柄、個人的な職務も多く同じ戦場で同じ敵を相手に戦うという機会が非常に少ない。
ヴィータによって半ば無理やり気味だったとはいえ、今回のような共闘は結構久方ぶりだったりもしたのだ。
「残りの仕事は海上観測隊に任せればいいだろう、私たちはさっさと撤収するぞ」
「うん、なのはたちのこと、私達もきちんと確認しておかなきゃいけないとだし」
自他共に厳しく律するシグナムは当然のこと、フェイトも出撃前のいざこざが気になってたとはいえそれで仕事に手を抜いたりはしていない。
寧ろ、早く片付けて自分も新人たちのケアをしなければといつも以上に気合を入れていた程だ。
そんな逸る心もあってフェイトはシグナムと共に離れた位置に待機しているヘリへと戻ろうとしたのだが、
『……!! 待って、フェイトちゃん! シグナム! 新しい敵反応を確認や! 数は2!!』
「ッ……! このタイミングでということは……!!」
「恐らくは、な。機体のテストが目的ならば出てきてもおかしくはないだろう」
ロングアーチから響いてきたのは新たな敵の出現を確認したはやてからの通信。
和気あいあいとしていた帰還ムードが瞬時に反転、フェイトもシグナムも気を引き締め直す。
元より2人とも薄々とは思っていたことだが、機体のテストという名目ならあのカティーナ・ベルリネッタがガジェットのテストだけ済まさない可能性もあるということ。
ホテル・アグスタでの一幕の焼き直しの如く、狙い澄ましたかのようなタイミングでの増援出現の報、それに呼応するように現れた召喚魔法陣。
『待ってください……この反応は……!! 既存のガジェット反応とも、今までの違法兵器群よりもずっと大きい……!!』
「……シグナム!!」
「ああ!!」
後方からの通信を聞くまでも無く、現場にいるフェイトもシグナム直接肌で感じ取っていたこと。
それは直後に出てくるであろう敵が今までの比ではない相手だろうということ。
フェイトもシグナムもそれぞれ違う形で今まで違法兵器群との戦闘経験がある。
そのどれとも比較にならない何かを感じていたのだ。
「…………テキ、カクニン……キドウロッカライトニングブンタイショゾク、フェイト・テスタロッサ、シグナム」
その直感が告げる様に2人の前に現れた召喚魔法陣からゆっくり上ってきたのは2つの人型。
手にはライフルとシールドを持ち、両肩側部に大型のバインダー、それぞれ配色の違うラインのカラーリング
そして背部にまるで天使を思わせるような両翼を携えた白を基調とした二足歩行の兵器2機だった。
ヴァイス「俺の出番は?」
シャーリー「私の役目は……」
ユーノ「そもそも僕、アグスタで完全にはぶられてたような」
二次小説を書いていると、どうしても割を食うキャラが多くなってしまうというのが最近の悩みどころ。