狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第13話:激化する市街地戦、集い始める悪意達

機動六課新人たちの休日は唐突なタイミングで中断されていた。

和やかムードで市街地の一画を並んで歩いていたエリオとキャロが僅かに感じた異音と違和感。

それを辿るように進んでいった先に発見したビル街の隙間の薄暗い路地に倒れていたボロボロの女の子と、彼女が抱えてきたであろうレリックケース。

緊急通信を入れたキャロの報告を受けて数分もしない内にすぐさま六課の主要メンバーがその場所に集結していた。

 

「バイタルは安定、危険な反応も無し……とりあえずは心配ないと思うわ」

 

簡易的な医療器具でとりあえずの診断を終えたシャマルの報告を聞いてその場にいる全員が安堵の吐息を漏らしている。

事情がどうであれ、目の前にいる年幼い女の子が生死の境を彷徨う様な目に遭うのを見たがる人間など普通ならまずいるまい。

 

「それにしても、どうしてこんな小さな女の子が……」

「きっと、地下水道をかなり長い距離歩いてきたんだと思います……」

 

スバルの疑問に答えるように発言するキャロもまた女の子の様子を心配そうに見つめるばかり。

身に纏っているのはこれまたボロボロになった布きれ一枚だけ、体中は所々が汚れや擦り傷に塗れている。

それもエリオやキャロよりも年齢的に更に下であろう女の子が、である。

 

「ケースの封印処理はキャロがしてくれたのよねエリオ?」

「はい、ですがさっきも言ったように……」

「鎖に繋がれたケース、となるともう一つは地下水道のどこか……」

 

エリオの視線の先にあるケースについた鎖を前にして顎に手を当て考え込む仕草を見せるフェイト。

こんな小さな女の子が地下水道から這い出てくるというだけでも普通じゃない事態だというのに、

その少女は機動六課が最も優先して追っているロストロギアであるレリックのケースを2つも抱えて運んできていたということ。

ティアナが尋ねたように中身の入っていた方の封印処理は完了しているので、こちらに向かってガジェットが群がってくる心配は取りあえず無いのだが。

 

『ガジェットの反応です! 地下水路から数機ずつのグループで総数は20!』

『海上方面にも空戦型の反応、12機編隊で5グループ!!』

 

が、ロングアーチからの通信によってその辺りをのんびり考えている暇も無いということが告げられる。

このタイミングでガジェットの大群が出現するということは狙いは間違いなく地下水道のレリックケース。

しかもそれだけならともかく海上からも空戦型が大挙して押し寄せていることも合わせると市街地戦になる可能性も高い。

その場にいた六課メンバーの間に緊張が走る。

 

『こちらスターズ02、海上で演習中だったんだがナカジマ三佐が許可をくれた、今、現場に急行中』

『陸士108部隊、ギンガ・ナカジマです。別件捜査の途中だったのですがそちらの案件とも関連がありそうなんです、参加してもよろしいでしょうか?』

 

続け様に入ってくるのは上空を高速移動中のヴィータと市街地の別のポイントにいた陸士108部隊の一員、ギンガ・ナカジマ陸曹。

事態が事態なだけに現場には多くのメンバーが集いつつあった。

 

『ほんならなのは隊長とフェイト隊長は海上北西方向を、リインはヴィータと合流後に南西方向を、レリックと女の子はシャマルとヴァイス君に任せる形でええかな?』

「うん、それじゃあみんなはギンガと合流しながら地下水道のレリックの探索ね」

「「「「はい!!」」」」

 

ロングアーチからのはやての通達とそれに続く形でなのはの指示が出され、いつものように気合十分に新人たちが頷いて答える。

束の間の休みから一転、機動六課はこの緊急事態の解決へ向けてそれぞれの現場へと赴いていった。

 

 

 

*

 

 

 

市街地のメインストリートから遠く離れた廃棄都市群。

都市開発計画の失敗やら大規模災害やらで撤去もされないまま崩れ去った廃墟の山々。

その一画に陣取りながら私は簡易的な周辺状況のサーチモニター群を展開しながら周りの状況を確認していた。

 

「地下水道に魔力反応が4……いや、5、空中を高速移動中の大きめの奴が4か……まあ、向こうさんの戦力を考えれば妥当な判断かなあ」

「でも上の方はクア姉が色々と弄っておくって言ってたし、その辺は心配ないと思うけど?」

「地下水道にだってルーお嬢様が向かってるっス、新人たちだけだと荷が重いんじゃないッスか?」

「いんや、今回は陸士108部隊のゼロファーストの反応もある、場合によってはこっちから助け舟を出す必要性もあるかもだよウェンディ」

 

モニターに映る機動六課の面々に目を見やる私の両サイドに立っているのは戦闘機人のセインとウェンディ。

ウェンディは未だテスト段階とはいえほぼ完成済みのボード型兵装を持ってきているし、セインもセインで以前使った私お手製のガトリングランチャーを持参。

いざとなれば転送使って逃げるだけでいいのも確かだけど、この2人がいるならある程度のドンパチもまあ大丈夫かなと。

 

「ホントはノーヴェもついてきたがってたんっスけど、武装のメンテが終わってないとかで来れなかったんっスよねー」

「あれまそれはバッドタイミング、せっかくこんな面白そうなミッションに参加できないなんてねー」

 

恐らくはドクターやウーノ辺りに言い包められたんだろうけど、不満そうに渋々引き下がるあの子の顔が目に浮かぶようだよ、うん。

そもそもノーヴェは前々から今回の最優先捕獲対象であるマテリアル、器に対してやたらと興味を示している節があったしね。

ノーヴェ曰く、いずれは自分たちの王様になる存在なのだからそれに相応しいかどうかを自分の目で見極めておきたいだとか何とか?

こっちから言わせてもらえば所詮は私たちの夢の楽園を動かすための起動装置兼防衛戦力でしかないアレにそこまで高尚な期待をするのも馬鹿らしい気もするんだけど。

兄さんにとっては生態研究の一つの到達点でもあり興味対象としては十二分に魅力ある存在だろうが

生憎機械専門の私にとってはその辺のことはあまり関係ないから、捉え方も色々と変わってくるとかそんな感じ。

 

「でもいいのかなカティ、私達だけこんな後ろでのんびりやっちゃってて、クア姉やディエチがお仕事してるのに」

「そもそも今回のメインはディエチが担当するんだからそんな心配もする必要はないでしょ、可能ならこのまま何も起きずにミッションコンプリートなのが理想形ではあるんだからさ」

「それもそれで味気無い気もするっスけどねー、私も表に出てくるのは久しぶりだし少しくらいは暴れてみたいし」

「くふふ、貴方も貴方でノーヴェと同じくらいで戦いたがりだねえウェンディ? ま、機動六課相手にそこまで順調に事が運ぶなんてのは本当に希望的観測みたいなものだし? 何もないってことも無いとは思うけど」

 

何だかんだ戦闘機人の実戦データは私にとっても兄さんにとっても貴重なのだからそれが取れる機会に恵まれるに越したことは無い。

特にウェンディのような後期ナンバーの子達はそれだけデータの絶対量も少ないのだからそれだけ価値も上がるというもの。

新人かあるいは空にいる隊長陣か、どっちに転ぶかはわからないが、事が全て丸く収まるのが早いかこっちにいる私達に気付くのが先か。

そもそもの主役はさっき私が自分で言ったようにディエチであるし、万一に備えてトーレが待機していたりもするので戦力的には万全でもあるし。

 

「でもこの子とこの子……私達戦闘機人の先行型、みたいなものだったんだっけ?」

「そ、ゼロファーストとゼロセカンド、8年前くらいに私がぷちっとぶっ潰したノーヴェのオリジナルが拾って育ててた、って感じだったかな?」

「その話は私も聞いたことあるッス。確か突入してきた地上部隊の連中をリノチェキロンでドカーンと吹っ飛ばしたとか何とか!」

 

あの年代の時点ではウェンディは誕生していなかったが、是非ともあの時の光景を生で見てもらいたかったものだよ。

何の因果かは知らないがこうしてその部隊のメンバーと親子"ごっこ"をしていた関係で、しかもセインやウェンディ含めた戦闘機人全員の祖とも言えるのが

例のファーストとセカンド、ナカジマ姉妹だって言うんだから作為的な物すら感じてしまうくらいだよホント。

機会があればこいつらもボコボコに伸してからとっ捕まえて兄さんの研究材料として役立ってもらいたいものだ、うふふ。

ああ、そう言えば4年前の空港火災の生き残りだとか何とかクアットロが言ってたような気もしたような。

 

「さてまあ会敵と同時にガジェットの数も減少と……お、来た来た、始めたようだねクアットロ」

「うわあ凄い反応数……相変わらず派手にやるなあクア姉は」

「そりゃそうっスよ、嘘と幻で全てを騙して躍らせるってのがクア姉の『シルバーカーテン』の真骨頂なんっスから」

 

地下水道のガジェットを蹴散らしながら進行する5つの魔力反応、その反対側から迫っていくルーテシア。

時を同じくしてⅡ型ガジェットと戦っている六課隊長陣と急速にその数を爆発的に増加させていくガジェット。

離れた空域にいるクアットロが行動を開始したことも踏まえて、私は更なる戦いの激化に胸を躍らせていた。

 

 

 

*

 

 

 

海上から接近していた空戦型ガジェットの迎撃はなのは、フェイト、ヴィータ、リインの4人によって順調に進行。

60機もいたガジェットの大群はあっという間にその大半が蹴散らされていった。

が、あと少しで終わりという段階になって突如としてその状況が覆ったのが空戦型ガジェットの増援を確認したこと。

それもただの増援ではない。

 

『航空反応増大! 空戦型ガジェット多数確認、でもこれって……!』

『じょ、冗談でしょ、何なのこの数は……!』

 

シャーリーを始めとするロングアーチの管制担当人員がモニターを前に目を丸くするのも無理からぬことであろう。

単なる敵の増援だけならいつものことだが違ったのはその数。追加の敵反応は三桁を軽く上回る数だったのだから。

市街地周辺の海上が敵反応を示す赤いマーカーで埋め尽くされるなど今までになかった異常事態だ。

機材のトラブルや誤認やら様々な原因を探ってはみるものの、叩き出される結果は増援マーカーが全て本物だということだけ。

 

「この反応は……」

「うん……レイジングハート!!」

 

ではその正体が何なのかというのは実際に相対しているなのはやフェイトにはすぐに判断がついた。

レイジングハートから発射される複数の誘導弾がガジェットに直撃する際、いつも通りに爆散する物に加えてすり抜けるようにしてその姿が掻き消える物も複数。

 

「実機に紛れさせての幻影、その混成編隊……だからこれだけの数を」

「だからって目視でもロングアーチでのサーチも全部が実機反応……並の幻影使いじゃこうはできないよ、フェイトちゃん」

 

敵の攻撃から回避と防御を繰り返しながらすぐさま2人が辿り着く結論は、敵の増援の大半が幻影であるということ。

それも、なのはが言ったようにこれだけの大群を全て実機と誤認できるレベルで複数同時展開が可能というだけで使い手のレベルの高さは推して知るべし。

まして幻影だけならまだしもそれに紛れさせるように本物も交じっている以上、無視するわけにもいかないだろう。

 

「防衛ラインの維持には問題ないけど、これがこのまま続いたんじゃちょっとキリが無いかも」

「でもわざわざ幻影でここまで目立つ引き付けをしてるってことは……地下かヘリの方に敵の主戦力が行く可能性が高い。それがもし、前に私やシグナムが戦った時のようなのが相手だったら……」

「……このままいつまでもダラダラと幻影の相手をしている暇は無いってことだね」

 

自然とそれぞれのデバイスを握る両の手に力が込められる。

防衛ラインに到達する前に敵の足止めをする分には何ら問題ないとはいえ、敵の出方を考えるなら寧ろ逆にここで自分たちを足止めするのが目的なのだと見ていいと踏んでいる。

となれば、自分たちがいる海上ではない別のポイントに敵の主力が送り込まれると予想を立てるのも当然のこと。

そしてフェイトの脳裏に過るのは以前自分とシグナムが相対した例の白い人型無人兵器の姿。

単体で自分たちを追い込めるほどの強力な兵器が敵の手中にあることを既に知っている分、内心で生まれる焦りもより強い物になっていた。

無論、地下水道の新人たちやヘリの方にいるシャマルやヴァイスがそう簡単にやられるとも思ってはいないが、それでも戦線の維持は相当に厳しい物になるだろう。

 

「ここは私が抑える、なのははヴィータやリインと一緒に他の場所の増援に」

「フェイトちゃん? でも1人じゃ流石に無茶じゃ……」

「敵の目的がこっちのひきつけである可能性が高い以上、コンビでの空戦は寧ろ相手の思う壺でしかない。それにリミッターの解除申請をすればこれくらいの数なら……」

 

そうである以上、フェイトが言うように単独でこの場を抑える方が得策だろうということはなのはも考えていたことだ。

以前の戦いでは躊躇ったまま敵の撤退という形で切られることの無かったリミッター解除という選択肢。

だが、今回はその敵の毒牙が自分たちではない新人たちやバックスタッフに向けられることになるかもしれないなら出し惜しみなどしている暇も無い。

同じ結論に達していたからこそ、なのはも戸惑い気味な声でフェイトに対して返答していたのだが、

 

「悪いんやけど、単独戦もリミッター解除も却下。ここは私に任せてくれへんかな?」

「えっ……って、はやてちゃん!?」

「どうして騎士甲冑を……」

 

が、そんなタイミングで割り込むような形で2人の考えを一蹴する声が1つ。

目を見開いた先にいるのは機動六課部隊長の八神はやての姿、それも騎士甲冑を纏っての臨戦モード。

部隊長という立場柄、普段は滅多に前線に出ることの無いはやての突然の参戦とあっては流石のなのはとフェイトも驚きを隠せないでいた。

 

「前の交戦記録での敵戦力の予想を考えれば私も嫌な予感はする、そういうわけでクロノ君から私の限定解除許可を貰うことにしたんや」

「はやてのって……でも、はやてのリミッター解除は私たち以上に申請が厳しいのにそんな簡単に……」

「使えん時に使えない力なんて意味無いやろ? 後でできずに後悔するくらいなら、やれることを全力でやるべきや」

 

誇らしげに胸を張って答えるはやてであるが、実際の所魔力リミッターの解除申請というのはそう易々と許可が下りる物ではない。

そもそも部隊ごとの戦力配分を明確に線引きするという厳格な決まりをすり抜ける裏ワザが魔力リミッターという物なのである。

それを好きなタイミングでポンポン外すことができるとあっては何のためのリミッターなのかわからなくなる。

まして、部隊長である八神はやての保有ランクは管理局全体でも数えるほどしか存在しないSSランクという最高クラス。

解除許可を持つのも後見人であるクロノ・ハラオウン提督と聖王教会のカリム・グラシアの2名のみ。

切れる回数は2回だけ、追加の申請を行うにしても地上本部との擦り合わせもあって相当に時間がかかる、正に文字通りの切り札。

それでもはやてはそんな切り札を仲間の為に、何の躊躇いも無く切ると宣言して見せているのだ。

 

「そういうわけやからなのはちゃんとフェイトちゃんは地上に降りてヘリの護衛、ヴィータとリインはフォワード陣と合流して手伝いを頼むな」

『『了解!!』』

「うん、了解だよはやてちゃん」

「はやて、気を付けて」

 

その裏にある覚悟がどれだけの物かをわかったからこそ、別の空域にいたヴィータとリインも、そしてなのはもフェイトもすぐにその意志を汲んで見せる。

命令を聞いてすぐさまそれぞれの位置へと向かっていった隊長陣を見送った後、はやてはすぐさま上空高くへと飛び上がって高々度で停止。

自身のデバイスであるシュベルトクロイツを抱えながら目を閉じて意識を集中していく。

 

「リミット……リリース!!」

 

足下に展開されているベルカ式の白色の魔法陣が一層輝きを増し、その周辺に溢れ出るような形で莫大な魔力が流れていく。

スリーランクの限定解除によるランクS相当、制限時間は120分という限られた物ではあるが、それでも機動六課部隊長として十二分に相応しい力を持ってはやてはその場に立っていた。

 

「よし、それじゃ久しぶりの遠距離広域魔法、いってみよか!!」

 

気合十分な声と共にはやての左手に現出するのは1冊の魔導書。

4人の守護騎士たちを従える主、嘗て闇の書と呼ばれたそれを模したもう1つのデバイスにしてはやての宝でもある、夜天の魔導書である。

 

『ロングアーチから01からロングアーチ00へ、シュベルトクロイツとのシンクロ誤差調整終了、長距離サイティングの準備完了です』

「ごめんな、長距離サイティングとか精密コントロールはリインと一緒やないと上手くいかへんことが多いから」

『その辺はお任せください、部隊長が全力で戦えるようにサポートするのも私達の役目ですから』

「うん、おおきにな」

 

シャーリーからの報告に心からの感謝を述べつつ、はやてはシュベルトクロイツを天高く掲げて複数の魔法陣を展開。

同時に突き出した左手の上で夜天の魔導書のページが一気に捲れていき、目的のページで停止した後はやての行使する魔法のサポートへと移行する。

 

「来よ、白銀の風……天よりそそぐ矢羽となれ!!」

 

詠唱と共に魔法陣の先に生み出される複数個の白い光球、それらは今にも飛び出さんといった感じに光り輝いている。

夜天の魔導書の最後の主にしてSSランクという膨大な魔力ランクを保有する魔導師であるはやて。

その主とする役割はその膨大な魔力からなる大規模魔法の行使による後方からの攻性支援。

なのはやフェイト、その他隊長陣のように高速で動き回りながらの単独制圧能力については一歩二歩劣ってしまうも、

その分の全てを火力に回したと言ってもいい彼女の魔法は時になのはの全力砲撃すらも軽く上回る制圧力を誇っている。

 

「フレース……ヴェルグッッ!!!」

 

第97管理外世界のある神話に登場する、死者を飲み込む者を指す鷲の姿の巨人の名を冠した大規模魔法。

その名に違わぬ莫大な白色の魔力の奔流が複数同時にそれぞれ幻影の混じるガジェットの編隊へと激突。

ロングアーチのサポートも合わせて直撃したそれは周辺を巻き込む大爆発を起こしながら、幻影ごと多数のガジェット殲滅していった。

 

 

 

*

 

 

 

地下水道のケースを探して進行していく六課新人フォワードメンバーとその途中で合流した108部隊のギンガ・ナカジマ。

迫りくる多数のガジェットの大群を撃破しながら順調に目的のポイントへと向かっていっていた。

 

「大型、来ます!!」

 

キャロのケリュケイオンが示した方向から迫っていたのは大型タイプのⅢ型ガジェット。

進行方向を塞ぐように現れたそれの迎撃に当たるのはスバルとギンガの両名。

 

「行くよ、相棒!!」

『Load cartridge』

 

右腕のリボルバーナックルのカートリッジロードを行いながらスバルは前を行くギンガの後に続くように突撃していく。

ギンガはⅢ型ガジェットのレーザー攻撃を防壁で防ぎながら突き進み、スバルと同じ左腕のリボルバーナックルによる打撃を叩き込んでⅢ型ガジェットのベルトアームと拮抗する。

 

「ディバイン……」

 

その隙を突いてスバルがギンガの頭上を飛び越える様にしてⅢ型ガジェットの眼前で拳を突きだす。

収束する球状の魔力と共に繰出されるのはスバルの憧れであるなのはが最も得意とする砲撃の名を冠した彼女にとっての一撃必殺。

 

「バスタァアアアアアアッッ!!!!」

 

地下水道全域に響き渡るかのような咆哮と共に突き出された右腕と眼前の魔力球がⅢ型ガジェットの機体を貫通して叩き込まれる。

その衝撃によって内部を完膚なきまでに破壊されたガジェットは呆気なく機能を停止し、爆発した。

 

「やるじゃない、腕を上げたみたいねスバル」

「え、えへへ……ギン姉のサポートがあったからだよ」

 

得意げにウインクをするギンガに照れくさそうに笑うスバル、その様子を見ていた他3人の新人たちも感心する一方。

スバルと同じくシューティングアーツの使い手にして師匠でもあるのが姉であるギンガ・ナカジマ。

その腕前は機動六課のメンバーと比較しても十分に通用する程の実力であり、108部隊でも中枢を成す実力者だ。

長年妹であるスバルと共に修行を積んできたということもあってそのコンビネーション、意思疎通の練度の高さも相当な物で、

強敵とされるⅢ型のガジェットをこうして瞬殺できることからもそれを証明していると言っていいだろう。

機動六課の新人たちにとっては正に頼れる頼もしい味方がギンガであった。

 

「それにしても、ギン姉が追ってた事件って?」

「うん、こっちに合流する前に私が見てきたのが壊れたガジェットの残骸と何かケースのような物を引きずった後……その最初の点にあったのが壊れた生体ポッドだったの」

「生体ポッドって……もしかして……」

「うん、さっき保護したあの女の子……たぶんだけど人造魔導師の素体として生み出された可能性が高いの……」

 

ガジェット群を蹴散らして更に先に進みながら話題に挙がるのはギンガが直前に担当していた事件について。

ミッドのあるトンネル内で発生したトラック事故、突然の謎の爆発に詳しいことを全く覚えていない運転手。

だがそれ以上に目を引いたのはⅠ型ガジェットの残骸が複数機と、そして5、6歳くらいの背丈の人間が入れるだろう生体ポッド。

その直後に発見されたレリックケースを抱えた謎の少女の発見、これらの事件が繋がっていることに気付かない管理局員などまずいるまい。

 

「人造魔導師っていうのは……」

「人工的に生み出した子供に投薬だの生体改造だのを施して、その名の通り優秀な魔導師を人工的に作り出すことを目的とした存在」

「尤も、倫理や道徳的な問題もそうだけど、現行の技術力じゃ素体の拒絶反応とか寿命とかコストとか、どうしたって色々問題があって……少なくとも今じゃまともな感性の人間なら絶対手を出さない技術になってるけど」

「……そんな計画にあの女の子が」

 

雰囲気的にあまりいい話ではないことを察しながらも恐る恐る尋ねたキャロに答えるのはスバルとティアナの2人。

管理局の主戦力となっている魔導師という存在が未だに誰もがその力を持てるものではなく、限られた一部の人間の才能に委ねる側面がどうしても強い以上、

安定した戦力を求めてその魔導師を人工的に生み出せないかと考えるのはある意味で当然の発想とも言える物である。

しかし、ティアナの言うようにコストパフォーマンスを始めとする技術面、何より人が人の命を弄ぶという観点から来る問題からすぐに停止させられた計画でもある。

その人造魔導師の素体である可能性が高いという情報はこの場にいる全員が、特にエリオにとっては気の重くなる話であった。

とはいえいつまでもそうは言ってられず、5人はレリック反応が特に強まっている開けた区域へと到達する。

 

「……あ、見つけました!!」

 

そして5人の目標物であったレリックケースもすぐにキャロがその存在に気付いてケースを拾い上げていた。

とりあえずの目的は達せられてフォワード陣の間に一安心という空気が生まれていたのだが、

 

 

 

―――ンッ、ダンッ、ダンッ!

 

 

 

「……? ちょっと待って、何この音?」

 

が、直後に水路内に響き渡るのは断続的な衝突音。

やがてそれはすぐに大きな物へと変わり、飛び跳ねる様にして接近してくる一つの影。

 

「……ッ!! キャロ危ないっ!!」

「きゃあっ!!」

 

それに真っ先に気付いたスバルがキャロを庇うようにして前に立ち拳を突きだしたと同時に衝突する謎の影。

反応が遅れたキャロはそれに驚いて手にしていたケースを取り落してしまう。

 

「見つけた……」

「えっ……? あっ! それは!!」

「邪魔……」

「!?――ぐあああっ!!」

 

スバルと衝突した謎の影が飛び上がるようにして後方へと下がった直後、水路内に響くのは更にもう一つの少女の声。

それに気付いたエリオが振り向いた時には既に遅く、レリックケースを拾い上げた少女が放った魔力弾によって弾き飛ばされてしまう。

後退した謎の影の姿がはっきりした先に浮かび上がったのは、全身を漆黒の鎧に包み込んだ4つ目人型の召喚蟲、ガリュー。

 

「ちょっとそこの女の子!! それは危ない物だからこっちに渡して!!」

「…………」

「失礼、乱暴なようだけど、これ本当に危ない物だから渡すわけにはいかないの」

「ッ…………」

 

スバルの警告を無視した直後に幻影を解いてクロスミラージュの刃を突きつけていたのはティアナ。

身動きが取れなくなった少女――ルーテシアは僅かに目を細めるも、すぐにその両目を強く閉じる。

 

 

 

ドォオオオン!!!

 

 

 

間髪入れずにその区域全体に響き渡る爆音と目を開ける事すら叶わない程の光。

連続しての異常事態に六課フォワード陣はまともに対抗する術も無くその場に倒れ込んでしまっていた。

 

「全く、勝手に1人で歩き回ってピンチになってんじゃ世話無いだろ、ルール―もガリューも」

「アギト……」

「ま、その心配ももういらないぜ!! 何せこのアギト様が一緒にいてやってんだからな!!」

 

その混乱に乗じてティアナから離れるように立っていたのは件の少女であるルーテシアとそれを守るようにして立つガリュー。

更にそのすぐ側にふわふわ浮いていたのはまるで小悪魔のような外見をしたリインと同じくらいの大きさの少女、アギトであった。

 

 

 

*

 

 

 

「ルーテシアはアギトと合流っと。うん、なかなかいい感じだと思うね」

「それにしてもさっきの砲撃凄かったねー、クア姉の幻影を纏めて吹っ飛ばすなんて力押しもいいところ、流石は機動六課の部隊長ってとこかな?」

「地下の新人連中も負けず劣らずっスよ、あの大型のガジェットをいとも簡単に粉砕とは」

 

目まぐるしく切り替わる戦況をモニターで感染しながら私もセインもウェンディもしきりに感心して頷きまくるばかりであった。

限定的とはいえ機動六課部隊長のまさかのリミッター解除に広域殲滅、ゼロファーストとゼロセカンドのコンビネーションによる快進撃。

つくづく興味の尽きない実験体たちだ、これを間近で見れただけでも今日は表に出てきた甲斐があるというものだよ、くふふふふ。

 

「というか、ポイント的にはほぼ真下なんだけど……行っといたほうがいいのかなカティ?」

「焦らない焦らない、こういうのはチャンスとタイミングだよセイン。どの道私達のお仕事はクアットロやディエチの役目が終わってから」

 

セインの提案をやんわり先送り。うん、彼女が言うようにルーテシアたちと六課新人たちがドンパチやってるのは私たちのいる真下の地下水道だったり。

デバイスのジャミングやら何やらで私達が先に発見される可能性は無いけど、それでも状況によっては連中が飛び出てくることもあるだろう。

それでもするべきはまず慌てず騒がず、主任務を担当しているディエチの成果次第という奴だ。

 

『は~い、こちらクアットロ、聞こえてますか?』

「うん、オッケーオッケー電波良好、お仕事ご苦労様だったよクアットロ、それにしても連中がまさかあんな形で乗り切ってくるとはねえ」

『んふふ~まあ、敵さんの貴重な切り札を一枚無駄遣いさせてやったと思えばお釣りが来るくらいよカティちゃん~』

 

と、新たに繋がったモニター通信の先にいるのは指定のポイントである廃ビルの屋上へと移動していたクアットロともう1人、自前の固有武装を抱えたディエチ。

自分の得意技をゴリ押しで破られたというのにクアットロは全く落ち込んでないどころか喜んでいる節すらあった。

流石にそこまでの詳しい内情は知らないが、それでも部隊長のリミッター解除となればそう易々と使える物では無い筈。

それをたかだがいくつかのガラクタとクアットロの幻影で浪費させることができたと考えれば確かに悪くない結果なんだろう。

 

「さて、今回は貴方が主役なわけだけど、どうディエチ? コンディションの方は」

『問題ない。イノーメスカノンの整備も上々、遮蔽物も無いし空気も良好、長距離砲撃には絶好の状態だよ』

 

相変わらずの平坦な口調であったが、ディエチがこうやって自信満々に言いきるのだからあっちの方も問題なしと見ていいね。

固有武装の長距離砲、イノーメスカノンとディエチの固有技能であるIS、ヘヴィバレル。

その2つが合わさってディエチは正に『狙撃する砲手』とでも呼ぶに相応しい実力者となる。

そして一点特化の大火力砲撃で一撃でどっかーん。私の好みにもドストライクで実に素晴らしい作戦だ。

成功した時の機動六課の慌て振りも考えるともう本当にたまらない……!!

 

「くふ、くふふふ……それじゃあ手筈通りに頼むよディエチ、クアットロ、何かあった時のサポートはお任せあれ♪」

『了解……』

『朗報を期待していてくださいね~』

 

また興奮が抑えられなくなって笑みが漏れ出す私に対していつも通りの返答をしてから通信を切るディエチとクアットロ。

それを見届けてから私はセインとウェンディと共に準備を進めながら改めて目の前の簡易モニターで戦況の見直しを始める。

決行時間までもう少し……さてさて、どういう感じに事態は転がってくれるのかな?




今更だけどオリ主の所属が敵側で、しかも基本前線には出ない科学者系だと間の話を書くのが難しいなとか思ったり。今回なんか半分以上が原作の流れに多少手を加えた程度だったし……


その分、次の話ははっちゃけられたらいいなとか。
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