狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第17話:完成していく戦力、待ち遠しいその気持ち

管理局地上本部の公開意見陳述会も間近に控え、ミッド地上での管理局の動きは益々慌ただしくなっていく一方だった。

機動六課もその例外ではなく、地上本部からの臨時査察も含めて色々と忙しい日々を送ることに。

それでも普段の業務を怠らなければいけない程でも無く、今日もまた隊長陣による新人たちの始動が始まろうとしていた。

が、そのいつも通りの光景にいつもとは違う顔ぶれが2、3人程。

 

「……そういうわけで改まって言うほどのことでも無いかなーとは思ったんだけど、今後しばらくは私がヴィヴィオの保護者ってことになるから」

「それで、私が後見人って感じで」

 

新人たちに向けてにこやかに話すなのはとフェイトに、なのはの足にガッシリしがみ付いている少女が1人。

例の市街地戦の際に保護したヴィヴィオである。

聖王医療院での出会いから数日、ヴィヴィオはすっかりなのはに懐いてしまい、時間があればいつでも一緒にいるのが六課内でも多く見かけられている。

なのはもなのはでそんなヴィヴィオの無垢な気持ちを無碍にするわけにもいくまいと思い立って、

ちゃんとした引き取り先が見つかるまでは自分が面倒を見ていけばいい、と決意を固めていたのだ。

それは幼少期の家庭内事情で自分が親に甘えることのできない辛さを知っているなのはだから余計にそう思えていたということもある。

 

「成る程……でも僕もとってもお似合いだと思いますよ」

「そうですよ、ヴィヴィオ、なのはさんのこと凄い大好きみたいなんですし」

「まあ、私もスバルに同意見って感じですね。いっそ本当の親になっちゃうのもいいかもしれません」

「あれれ……? 何かみんな意外とアッサリだね?」

 

きょとんとした表情のなのはを見て新人たちは満場一致で何を今さらと思うばかり。

初対面の時もそうだったが、いくら自分たちが必死にあやそうとしてもなのはに泣きつくばかりで少しも懐こうとしなかったのを今でも覚えている。

現在は六課の人々との触れ合いによって、明るくまじめで素直ないい子としてみんなから愛されているヴィヴィオであるが、

それでもなのはにだけ向けられるとびきりの純粋無垢な笑顔を知っていると、そういう流れも必然だろうとそう感じていたのだ。

 

「ね? ヴィヴィオもなのはさんとずーっと一緒にいたいもんね?」

「うん!! ヴィヴィオ、なのはママだいすき!」

「あ、あははは……そう言われちゃうと私も困っちゃうな」

「ん?」

 

当然、今の間は自分がちゃんとヴィヴィオを守ってあげるという責任感に満ち溢れてはいるが、

それでもなのははいずれヴィヴィオの面倒をきちんと見てくれる受け入れ先を探してあげる考えでいる。

スバルの言葉を受けてニッコリ笑顔で自分に大好きと言ってくれるヴィヴィオの笑顔はなのはにとっても眩しい物で、

ついその決心が揺らいでしまいそうになるくらいの破壊力を秘めていた。

 

「いやいや……初めて会った時は私もびっくりしちゃいましたよ、まさかなのはちゃんにもう春が来てたかと思うと」

「いくらなんでもそれは早計だと思いますけどマリーさん……」

「ギン姉の言う通りですよ、いくらなのはさんが美人で引く手数多でもそこまで手の早い人なんて選びませんって」

「は、恥ずかしいからスバルもギンガもやめてってば……」

 

顔を真っ赤にして縮こまるなのはの姿にその場にいた他の全員が笑ってしまう程である。

この日、六課フォワードメンバーの訓練風景の中にいたのはヴィヴィオ以外にももう2人。

108部隊から出向してきたギンガと、本局技術部のマリー。

戦闘機人関連のことも含めてより密接な態勢を敷く為に、この2人が機動六課に滞在する運びとなっていた。

 

「こほん……改めまして、108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」

「マリエル・アテンザです、デバイス整備とかも担当するから気軽に声をかけてね」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

ギンガとマリーの挨拶に新人たちもはきはきと返事を返す。

特にスバルは姉であるギンガと個人的な付き合いも多いマリーの2人と一緒に居られるということもあっていつも以上に気合が入っているようだった。

 

「それじゃあヴィヴィオ、なのはママこれからお仕事だから、いい子にして待ってるんだよ」

「うん、頑張ってねママ」

「はい、ヴィヴィオ」

「えへへ~♪」

 

挨拶もすんだところで早速訓練開始、というその前になのははしゃがみこんで視線を合わせてからヴィヴィオに言葉をかける。

にっこりと微笑むなのはに対してヴィヴィオもまた明るい笑顔できちんとその言葉を了承する姿勢を示す。

そんなヴィヴィオがつい可愛らしくてなのはがその小さな頭を撫でてやれば、ヴィヴィオは更に気持ちよさそうにされるがまま。

周りの人間全員が微笑ましさを感じる、正に本物の仲睦まじい親子のような光景がそこにはあった。

 

 

 

*

 

 

 

時空管理局本局のとある一室にて茶を酌み交わしながら話に興ずる若者が2人。

クロノの前にいるのはヴェロッサ・アコース査察官という男性。

聖王教会のカリムと共にはやてが管理局入局以来からよく面倒を見てきた人物であり、

素行に少々問題はあれど、本局内でもやり手の若手査察官として名が知れている。

 

「君の依頼通りに捜査を進めてはいるけど、叩けば叩くほど埃が舞い散る人物だとしか言いようがないよ」

「その埃について言及する隙を全く与えないというのもレジアス中将が優秀である所以でもある。黒い噂は多いがそれでも彼の功績で地上の防衛力が盤石な物になっていったのも事実だからな」

 

ヴェロッサの報告書に目を通しながらクロノがそう評しているのは地上本部トップのレジアスについて。

はやてを通じてヴェロッサとも個人的に仲の良いクロノはレジアス個人についての調査を依頼しており、

今日はその経過報告を聞きながらのんびり世間話でも、とそんな感じの流れになっていたのである。

 

「政界や大手企業群のバックホーンも相当、加えて管理局最高評議会からの覚えもめでたい、確かに本局としては扱いが難しくて当然だろうね」

「迂闊な介入が出来ないからこそ問題でもあるんだ。例の予言も含めて地上と本局の関係の改善は急務であると言うのに……それだけ根深い問題だということだろうね」

「僕たちみたいな若手が数人動いたくらいでどうにかなるくらいなら、もっと昔にどうにかなっていた筈でもあるんだろうさ」

「わかっている、だからといって手をこまねいて何もせずに静観してるだけなんていうのは僕の主義に合わない。少しずつでも内から変えていく必要があるんだ」

 

紅茶のカップを片手に持ちながらも話す、クロノの瞳に宿る意志は誰の目から見ても真剣そのもの。

数日前になのはやフェイト達に明かした管理局崩壊のことを記したカリムの予言も合わせて、それに対する備えはまだまだ足りないくらいなのである。

しかし、それについての戦力不足は地上本部も同様どころか本局以上に深刻な問題として長年悩まされていることでもある。

本局と地上の戦力格差からなる軋轢、それを最も身近で感じながら過ごしてきたレジアスが地上のトップになってからはそれが益々顕著になっていっている。

その現状を少しでも良くしていきたいという一心で、クロのは地上だけでなく本局も含めてその問題の解決策を常に模索している。

 

「それと以前にも話したけど、やはり今回のデータも合わせて疑惑は更に深まったという感じだね」

「地上防衛兵器チギャーレに建造中のアインへリアル……そのデータ実績と過去の違法兵器のデータの照らし合わせが……」

「スペックに相当の差があるし、よくある疑惑レベルでしかないけど、それでも僕の勘は言っているんだ。この両者には繋がりがあるってね」

「地上の守護者として名高いレジアス中将が、まさか彼女と手を組んでいるとは考えたくないが……」

 

肩を竦めて見せながらヴェロッサが話題に挙げているのは地上本部が運用している魔力防衛兵器群についての話。

ある年度を境にして画期的な防衛用兵器が次々と稼働を始め、実際に地上の治安維持にも貢献しているというデータが出ている。

その運用を決行したのもまたレジアスなのであるが、その肝心の兵器の出所に色々と不鮮明な部分も多い。

情報の整備も不完全故に現段階でそんなことを言ったところで、兵器開発部門の努力を馬鹿にするのかなどと怒鳴られるのは目に見えている。

だが、そんな曖昧な状態でもヴェロッサは査察官としてその防衛兵器群と、機動六課とも因縁のある違法兵器群。

この2つに何か共通性があるような気がしてならなかったのだ。

仮にその勘が当たっているのだとしたら、それは地上にとっても本局にとっても大問題となるのは明白であろう。

 

「……そういう政治的な側面にはやてを巻き込みたくは無かったんだがな……それでも公開陳述会も合わせて避けれ得ぬというのが現状か」

「相変わらず何もかもを自分が背負うって信念を曲げるつもりは無いみたいだからね……何度も言ってるようにはやては少し生き急いでいるくらいだ」

 

悩みの種が尽きない先にクロノとヴェロッサの2人の頭に同時に浮かぶのははやての姿。

機動六課の創設も含めて2人も、自分たちでも出来る限りのサポートはしてきているつもりだが、それでも裏方と矢面に立つ人間とではその苦労の度合いは大きく異なる。

闇の書事件の混乱とその終息、その罪滅ぼしの為に奔走している姿を間近で見ているクロノだからこそ、彼女の力になってやりたいと真摯に考えている。

その点についてはヴェロッサも同様であり、元孤児でありカリムに引き取られた時にはやてとも出会い、彼女のことを同じように見守ってきた。

2人もまたはやてが強く思っている自分を支えてくれている大勢の人たちの中の大切な人間の1人なのである。

 

「ま、本局の人間が表だって動くのはそれこそ面倒なことになるからね。基本は僕に任せてくれていいさ。査察官っていうのは隠密行動にも向いてるんだしね」

「……すまないな、苦労を掛けて」

「いいよこのくらいなら。はやての助けになりたいって気持ちは同じだからね」

 

本局で高い地位を得たからこそできることがあり、同時にできないことも多くなる。

そういった柵にあるクロノをサポートするためにヴェロッサという人物もいる。

その心遣いにクロノは純粋に感謝しながら礼を述べていた。

 

 

 

*

 

 

 

「機動六課を叩ける材料は、残念ながら特に見受けられませんでした……」

「そうか……ご苦労だった。公開陳述会も近いからな、こちらの有利となる材料も纏めていかなければならん」

「引き続き、こちらの査察部を動かしての調査を進めていきます」

 

地上本部の私室にて対談をしているのはレジアスとオーリスの2人。

オーリス直々に出向いた機動六課への臨時査察であったが、事前に話もとおっていたということもあって六課側の準備も万全。

オーリスも毛の一本ほどであろうと何か如何わしい情報があれば即座に追及してやろうというくらいの気概で臨んでいたのだが、

残念ながら彼女やその上官であるレジアスの求めている物はこれといって見つけ出すことができず終いとなっていた。

 

「奴らから供給されている兵器群の実績についてはどうだ?」

「殆どが順調です、先日の違法魔導師襲撃の際にもチギャーレによる迎撃で早急な鎮圧を完了しています」

「ふん、それは結構なことだがあの女も最近は殆ど直接連絡を寄こそうとしない……一体何をしているというのだ」

「3日ほど前に定時報告が挙がっていました、アインへリアルの建造状況も含め、近々新しい作品をお見せしたいと」

「本局の連中にわからせるにはまだまだ足りぬくらいなのだ、どうであろうと奴にも一層役立ってもらわなくてはな」

 

地上の平和の為に貢献しているという評価の裏、過剰な戦力として本局から問題視されている最新の防衛兵器群。

大半がベルリネッタから供給された作品とはいえ、そのどれもがオーリスの報告通りに確かな戦果を挙げ続けている。

特に移動砲台であるチギャーレは開発からそれなりの年数が経過しているが、未だに衰えを見せない程である。

地上の戦力不足に悩み続けるレジアスにとって、ベルリネッタから供給される兵器群は今となっては相当に重要な位置を占める様になっている。

だからこそ、現状ではまだ足りない、地上を確実に守れるようにもっと大きな力が欲しいという欲が出てきているのである。

 

「そのアインへリアルについてはどうなっている?」

「3号機の最終確認に少々遅れが出ていますが、それ以外は順調に進行しています」

「遅らせるな、陳述会前に済ませる様にあの女にもそう伝えておけ」

 

次いで話題に挙がるアインへリアルという兵器、これもまたベルリネッタから提供された技術を主として開発中の物。

地上防衛の要という触れ込みの三連装の超大型魔力砲台であり、これが完成した暁には地上防衛の戦力としてより華々しい戦果を挙げるだろうと考えられている。

故に、その運用を巡って本局との議論の対立が激化する一方でもあり、公開陳述会の主題としても取り上げられている程の代物だ。

レジアスにとってはそれだけの価値ある存在であり、だからこそ少しの遅れも見過ごすことはできない。

 

「あのアインへリアルも含め現状の兵器群は地上防衛の要であり希望だ。それに異を唱える本局の連中にはどんな手段であれ、それをわからせなければならない」

「……はい、それが中将の選んだ道であるならば、私に異存は何もありません」

 

優秀な能力を持つ魔導師はその大半が自身の上昇志向や上からの引き抜きによってその大半が本局へと移ってしまう。

だからこそ地上本部は本局以上に戦力不足が顕著であり、その埋め合わせに奔走しなければならない日々を過ごしていると言っていい。

その為にレジアスが高じている策が、チギャーレやアインへリアル含めた兵器群の開発や、いずれ実行されることになるスカリエッティの持つ戦力――すなわち戦闘機人の引き込み。

管理局最高評議会の通達もあって例え外法に触れようとも、いずれは自分の手で地上の平和を守らんためという確かな決意は少しも揺らいだことは無い。

だからこそ、部下であり娘でもあるオーリスはほんの僅かにだが、その強固な姿勢に不安を覚えることもある。

 

(……そう、その為のサポートとしてこの方を……父さんを支え続けると誓ったのだから)

 

しかし、そのレジアスについていくと決めたオーリスの決意もまた相当に強固な物であり、

すぐにその迷いを振り切って表情を正し、レジアスへ更なる報告を進めていった。

 

 

 

*

 

 

 

「くふふ~……ふふふーのふふー」

 

下卑た笑いが止まらないっていうのは今の自分のことを言うんだろうとか至極どうでもいいことを思い浮かべてもみたり。

でも本当、目の前の叩き出したこの結果を前にすれば笑いも止まらなくなって仕方がないという感じなのだから。

何というか、我ながらここまで凄い物が完成するとは思ってもいなかったという自惚れを抱いたりもしている。

これでもまだ、最高傑作製作の為の前段階でしかないというのに縦横無尽に飛び回り、敵を圧倒するその姿は本当に……本当に美しくて素晴らしい物だ。

 

『ぜえ……ぜえ…………』

『はあ……はあ…………』

『…………ぐっ……』

 

三者三様、モニターの先で地面に膝を吐いたりお尻から倒れ込んでいたりと様々ながらみんな揃って荒く呼吸を繰り返している戦闘機人たち。

ナンバー3のトーレを筆頭に、最近稼働を始めたばかりのナンバー7セッテとナンバー12ディードも含めた計3人。

トーレについては知っての通り、セッテとディードも近接戦を主とした直接戦闘能力が高められている非常に完成度の高い最新の機人。

データだけ見てもスペックは相当な物で戦闘経験と稼働歴を考慮してもトーレに匹敵する実力を持っていると言ってもいいくらい。

 

『データシュトクカンリョウ、トーレ、セッテ、ディード、トノセントウヲキロク……サンタイイチデ、コノケッカハ、ショウショウヒョウシヌケダッタガナ』

「こらこらそんなこと言うんじゃないのリナス、相手の半分はまだ戦闘慣れしてない新人なんだし、貴方だって相当なオーバースペックなんだから」

 

口ではそんな風に注意してみたりもするけど内心では前線タイプの機人複数を相手に圧倒したというデータの方が何よりも嬉しくて笑いが止まらないのだから。

その私に答えていたのが周囲にいくつかの小型ユニットを浮遊させながら悠然と空中で静止している淡い紅色の人型機体。

昨日改良と調整の終わったばかりのアンジェロシリーズの最新バージョンの機体。

そのテスト相手として選んだのがトーレたち3人の戦闘機人だったのだが、結果は先程から述べている通り。

Sランク魔導師ともやり合える戦力含めた相手にこれなんだから、私自身の想定すら遥かに超えた最高結果と言っていいくらいなんだよ、うん。

 

「いやいや、ご苦労様だったよトーレ。新人たちの教育も合わせていいデータが取れてホントに感謝感謝」

「それは結構なんだがな……初戦の相手にしては少々度が過ぎたのではないか?」

「なんのなんの、セッテもディードも現状の実力的には十分にハイレベルなんだから、最初に格上とやらせて慣らせておくのもいいっしょ? 何せ相手はあの機動六課なんだし?」

「それもそうだがな……」

 

テストルームのリナスを転送ポートに移動させて保管庫へと動かし、同時にトーレ達をこっち側に戻しておく。

ラボに戻ってきたトーレは普段の厳格な態度とは珍しく少々呆れ気味って感じ。

私の作品については何度も目を通してきたし、アンジェロシリーズ初期作品であるリジネのテスト相手を務めたことだってある。

そういう経験あってこそなのか今回の私が作った最新作の暴力的な力にはトーレですら辟易しているってところなんだと思う。

でもでもしょうがないじゃない、これでもまだ足りないくらいであり、同時に万々歳な結果でもあるのだからね。

 

「その点についてはカティ様のおっしゃる通りです。我々もとしても格上の相手を想定しての良い実戦訓練となりました」

「オットーの調整にも手を貸してくださっているそうで、感謝します」

「いいよいいよ、セッテもディードも兄さんの作品であるってことは私にとっても大事にすべき物だからねえ、これくらいの協力は当たり前だって……君らがオットーくらい慎ましやかならもっと良かったんだけど……さ」

「……? 誕生時の我々の体型に何かエラーでもあったのでしょうか」

「…………いやいやいやいや、ごめん。忘れて、出来るだけ速やかに、早急に忘れなさい」

「気にするなセッテ……この女の馬鹿な癖のような物だ」

 

うっさい黙れ、初期の傑作ナイスバディめ。何でよりにもよってこいつらは揃いも揃って長身ボインで作ったんだよ。

やっぱあれなのか、兄さんも1人の男なのか? ペタンコよりもボインが大好きなお年頃ってヤツなのか?

たゆんたゆんと実る計6つの豊満な果実に比べて白衣に包まれた私の両の手はスカッとすり抜け大草原……

何だろう、世の中の無常とかそういう色んな物を感じてしまう。

セッテもディードもクアットロの方針もあって感情が希薄且つ従順、そういったギャグや指摘も基本どこ吹く風。

それ故に余計に虚しくなったりもするんだけどさっ!!

 

「……カティ、アレスタルヴォーネの調整、君の言われた通り僕が全部済ませておいたから」

「おっと……傷心のカティさんにチンクと並ぶ同士が出現だよぉ……うん、貴方もご苦労様だよオットー、感謝感謝だね」

「……? 僕とチンクに何か共通点があるの?」

「お前も気にするなオットー……さっさと忘れろ」

 

だからその憐れむような視線を辞めてほしいトーレ、私にとっては血涙物の重要問題なんだから。

なんて感じにあれやこれやの私たちの前に現れたのがセッテ、ディードと同じく完成したばかりの個体、ナンバー8のオットー。

ディードと同一の遺伝子を用いて製作されたこの子はパッと見た瞬間男の子かと思ったくらい、ズボン装備で一人称僕だったし。

いつも通り女の子とわかった時は何かこの、言いようがないくらいに嬉しかったね、チンクと初めて会った時と同じく。

とはいえその戦闘能力や完成度も折り紙付き、ディードと対になるように射撃戦、広域殲滅能力が高められているんだけど、

その火力は私の火力偏重型の作品にも匹敵する程の物なんだから恐ろしい上に素晴らしいって感じ。

兄さんも兄さんで、着実に戦闘機人の研究を進歩させていることがよくわかるのがこの子やセッテ、ディード達ということなのである。

 

「あら~カティちゃんたちも丁度終わった所なんですね~」

「おやおや、今日は人がよく集まるね……調整の方はどうよ、ウーノ?」

「万全です、妹たちの動作データがしっかり生きているのを感じます」

 

で、トーレ達4人とラボから出てきた矢先に鉢合わせになるのはウーノ、クアットロ、ディエチの3人。

そういえばウーノとモニター越しじゃなくて直接話すのも何だかんだ結構久しぶりになるのかな?

で、そのウーノ達はクアットロやディエチ達の下で最新タイプのボディへと置換するという大規模メンテナンスを丁度終えた所。

兄さんの作った戦闘機人の中ではその名称通りに最初の作品であり、最も長くその傍らにいたのがウーノ。

年数の経過とともにその肉体も調整やら何やらを重ねてもどうしても後発の子達に比べると劣ってしまう物になってしまうので、

こんな感じに定期的に最新のデータをフィードバックさせることがあったりするのだ。

大元の能力は補佐専門と言ってもこういうことは大事だからね、兄さんも兄さんでウーノのことは特にお気に入りでもあるし。

 

「セッテちゃんもオットーちゃんもディードちゃんも問題なく稼働、実に順調ですね~」

「ノーヴェとウェンディの固有武装、それにセインの新武装も無事に完成」

「2番ドゥーエと5番チンクはそれぞれ任務中……いいペースね」

 

ディエチの表情は相変わらずだったけど、その両隣りにいるウーノとクアットロは実にいい感じの悪い笑顔だ、見ているこっちも気持ちいいくらいに。

来たるべき日を前にして新型の機人も既存の子達の武装改良も滞りなく進んでおり、更にその一部は下準備の為に外へと出向いている。

ウーノの言う通りに何もかもが順調に進行していて、というか本当に順調すぎてもう……また興奮が抑えられなくなりそうなくらい。

 

「でもカティの方は大丈夫? ここ1週間くらいはぶっ通しでラボに篭もりっぱなしだったみたいだけど」

「くふふ、優しいねディエチは。でもでもそんな心配は全部ご無用なんだよねえ、これくらいの無茶なんて今の滾りに滾っている私には寧ろいい刺激にしかならないくらいなんだし」

「そうですわよディエチちゃん? カティちゃんがこうして頑張ったおかげでトーレ姉様たちを圧倒できるような凄い作品が出来上がったんですから~」

 

右隣を一緒に歩きながら私の顔を覗き込んでくるディエチの心配も、左隣からのクアットロの称賛も、どっちも私には実に心地いい物。

実際問題ディエチの言った通りにこの1週間くらいは殆ど徹夜が続いているような状態。たぶん鏡で見たら目の下クマだらけだったりもするんだろうね。

常人とはかけ離れた身体構造をしているからこそできることでもあるが、それでもこれを一生続けるのは流石に難しいとも思うさ。

でも自分で言うようにあの市街地戦からずっとこの興奮が抑えられないんだから研究を進める以外の選択肢が無いのも事実なんだし。

そうやって開発を急ピッチで進めたからこそ、アンジェロシリーズの最新作含めて準備が完了できたんだから。

この溢れ出る欲望を満たす為ならそれくらいの無理などどうってことない、いずれ完成させる最高傑作の勇姿を見る為なら尚のことだ。

それこそが今の私の全てであり……命と引き換えにしてもいいと断言できる目的なんだからね……くふふふ。

 

「さーてっと、やあやあ兄さんもセインもノーヴェもウェンディも、みんなお揃いみたいだねえ」

「ようこそカティーナ……彼女たちの準備もほぼ整いつつあるさ」

 

扉を何枚か開いた先にあるのは縦横双方が相当な広さの開けた空間と、それを一直線に貫くような細い通路。

その中心辺りに兄さんと、残りの機人であるセイン、ノーヴェ、ウェンディの3人が待機していた。

 

「まあ、私の武装も無事完成したし、またドカンと一発暴れたいってのが本音っスかねー」

「君たちの武装も能力も前線用のための物だ……望み通り存分に暴れられるとも」

「だってさ、いやー楽しみだねノーヴェ?」

「……そんなこと、私はどうでもいい。何度も言ってるように私は私たちの王様がそれに相応しい相手なのか確かめたいだけだ」

 

やる気満々なウェンディと比較して相変わらずノーヴェは投げやりさんだ。そこが可愛いところでもあるんだけど。

ともあれノーヴェの武装であるガンナックル、ジェットエッジ、ウェンディの武装のライディングボードも完成済み。

特にウェンディの方は私も協力してデータの蓄積に貢献していただけに喜びも一入という物。

兄さんの言っているように2人とも最前線で大暴れしてくれることだろう。うん、実に頼もしいことだ。

 

「いやーセインの方も気に入ってくれたかな? 私からの新しいプレゼント」

「ちょっと重くて慣れてないとこあるけど……うん、カティがくれた物だからすっごい役立ってるよ」

「くふふ……それは何より、私も一生懸命作った甲斐があるってもんだよ」

「何だかんだセインも前に出ることが多いっスからねー」

 

ニコニコ顔でお礼を言ってくれるセインのそんな表情もまた実にイイ。

そんな彼女に不釣り合いな装備なのが両腕に装着されている身の丈ほどもある2つのカギ爪付きクロー。

元々ディープダイバーを用いての支援タイプだとはいえ、ウーノやクアットロに比べると前に出るパターンも多いのがセイン。

というわけで私お手製の武器を一つ作ってあげてみたって感じなんだよコレが。

元々の固有武装だったペリスコープアイもその両腕のクローに内装してあるし、単純な戦闘能力はグッと上がったってヤツだね。

 

「まあまあそんなわけで兄さんの研究も私の作品も1つの区切りを迎えたわけだよ、その華々しい発表会はもうすぐ……くふ、くふふふ、本当に待ち焦がれちゃってしょうがないよ。ねえ兄さん?」

「そうともカティーナ……私の愛しい妹よ……ここまで我々が来れたのも君の協力あってこそだ……だからこそ1つ大きな花火を……打ち上げようじゃないかッッ!!!」

 

感極まったように声を張り上げて兄さんが手をかざすと、私たちのいる空間全体が光に照らされる。

兄さんの目の前に置かれているのはこの数年間の間に集め続けてきた50を軽く超えるであろうレリック。

眼下に広がるのは私の兵器保管庫、何段にも重ねて並べられているのは数百機単位で作り続けてきたガジェットの数々。

来たるべき日の為に作り続けた私の兵器群……タルーガやチェロクア、ディヴィアヴォルなどある程度の量産もした初期の作品から、

先のリナスも含めたアンジェロシリーズの最新作や、火力偏重型、機動力特化型の新型機などより取り見取り。

これらのほとんどをもうすぐ……兄さんの作品である戦闘機人と共に送り込んでその力を見せつけてやるのだ。

その時に巻き起こされる光景、私と兄さんの作品が織り成す最高の劇……それは、私という存在にどれだけの快楽を生み出し、心の中の欲望を満たしてくれることか!!

 

「くふは……ははははははっ!! 絶対に! 絶対に最高に楽しい時間になるんだろうねえっ!!」

「そうともっ!! そうだともッッ!! 間違いなく素晴らしく楽しい一時になるのさカティーナッ!! あはははははッ!!」

 

間近に控えたその祭りに対する期待と興奮がまたしても抑えきれなくて、私と兄さんは同じように高笑いを繰り返すのみ。

決行は間もなく…………私の兵器と兄さんの戦闘機人で全てを燃やし尽くすのだ。

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