狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き 作:LR-8717-FA
月日は流れて地上本部での公開意見陳述会の当日。
本局にとっても地上にとっても重要な日であることも踏まえ、地上本部施設を取り囲む警備はこれまでにないほどに厳重に敷かれている。
当然、カリムの予言のこともあり機動六課メンバーもこの警備に参加している。
が、ここでも本局戦力を毛嫌いするレジアスを中心とした地上本部強硬派の反発が大きかったことがあり、
内部警備に参加できるのははやてを含めた隊長陣3人だけ、後のフォワードメンバーは外部での警備に当たるという形に。
しかも地上側の指定により、内部警備の人員は各々のデバイスを持ち込めない。
とはいえ、予言に記されていた地上本部の壊滅、これを防ぐことさえできれば事態は一気に好転すると見ていいだろう。
3人だけとはいえ機動六課隊長陣の実力は単独で見ても相当なものであることは周知の事実。
外での守りを固める副隊長2名もそれは同様であるし、新人4人についても日々の過酷な訓練によってその力を更に上げており、デバイスリミッターももう一段階解除されている。
安易に楽観視ができる状況でも無いが、それでもはやてとしては機動六課としてできることは最大限やってきたと自負している。
地上本部だけでなく、機動六課にもこの陳述会を無事に乗り切るというのは一つの区切りであり正念場でもあった。
「あ、始まったみたいですよ」
「一応、何かが起こりそうな気配ではなさどうですけど……」
多くの武装局員が守りを固める中で、外部モニターに映し出されている陳述会の様子を見ながら歩いているのはエリオとキャロの2人。
周囲を見回すエリオが言うように、曇天の空の下には現状ガジェットの1機も確認できないくらいに静まり返っている。
が、勿論それで安心するわけではなく、周りの多くの局員と同じようにこれは嵐の前の静けさという物なのだろうとも感じていた。
「油断すんなよ、何が起こってもすぐに応戦できるようにしっかり警戒しておけ」
「「はい」」
そういったことを敢えて確認するかのように言葉を投げかけるのは2人の前を歩いているヴィータ。
不気味なほど静まり返っているこの場の空気に対する警戒心は他の局員以上に顕著であり、その顔に張り付いている表情も厳格な物だ。
(……予言通りに事が起こるとして……それが内部の反乱って線は薄いって話だったよな?)
(うん、アコース査察官が今日まで纏めてくれた情報を参照するなら、だけど)
(となると……やっぱアイツらが直接殴り込んでくるってのが正解か)
黙ったままエリオとキャロを引き連れて念話を飛ばすその先にいる相手は内部警備に当たっているなのはである。
機動六課の個人的な協力者として独自に調査を進めていたヴェロッサであるが、
彼からの報告を見る限りではやはり局内部からは地上本部を狙う様な人員がいるという類の報告は見られなかった。
となれば、なのはもヴィータも考えることはこれまで幾度となく対峙してきたスカリエッティとベルリネッタの2人。
以前から六課内で話しているように、あの狂気の科学者たちならそのような凶行も平然と行ってくるであろうというのが彼女たちの共通認識であった。
(管理局本部を直接壊滅できるような兵器……そんなものがあるとするなら欲しがる人はいくらでもいるだろうし……その為の威力証明をしたいってのもあるんだろうけど)
(連中がそこまで考えてるとはあたしは思えねーんだよな……特にあのベルリネッタは……また前みたいに遊び感覚で何かを送り込んでくる、そんな気がしてんだ)
(でも今までと違って地上本部が相手じゃリスクも高い……そこまでの危険を冒してまでやろうとすることなのかな……)
(前の白い兵器のことも考えればやってくるだろうさ……予言にも出てるくらいだ、今度だって今まで以上にヤベーのが出てきてもおかしくない)
しかし、その認識がある上で浮かび上がるのはなのはも思っているそのリスクの高さ。
スカリエッティ達の保有する戦力が尋常では無い物とはいえ、今度の相手となるのは機動六課人員も含めた地上本部戦力である。
本局施設を取り囲む堅牢な魔力防壁、周辺に展開されているチギャーレなどを始めとする拠点防衛用の最新兵器の数々。
それに加えて内部、外部問わずに多数の武装局員が目を光らせてもいる。
これだけの守りを正面から打ち砕くとなれば、それこそ以前にフェイトやシグナムが相手をしたあの白い人型兵器。
それに匹敵する質もしくは莫大な数の兵力が必要となる。
敵側には優秀な転送の使い手や召喚士がいることも確認されているが、それでもそれだけの戦力を用意することは並大抵のことではない。
が、逆を言えばそれだけのことをしようとしているのだから今までとは比較にならない敵が出てくるのだからより警戒を強めなくてはいけないということ。
(……ま、あんまりウダウダ考えてもしょーがねーよな。やることはいつもと変わらねーんだから)
(そう、信頼できる上司が命令をくれる……私たちはその通りに動くだけ)
(そして全部を守りきる、それだけだ)
念話なので表情はうかがい知れないが、それでもヴィータは今のなのはが自分と同じような顔をしているのだろうなと想像していた。
どの道、自分たちがするべきことはこれからやってくるであろう敵の脅威からこの場を守り通すということその一点。
その為の準備は万全に整えてきたのだし、それに対して全力を尽くすだけだとなのはもヴィータも同じように考えている。
陳述会が順調に進行していくその最中、なのはとヴィータはその会話を通しながら気合を入れ直していた。
(……ティアナ、そっちの様子はどうだ?)
(あ、はい。今の所は特に変わりありません)
次いでヴィータが念話を入れるのは別のポイントをスバルと共に警護しているティアナである。
それに返答するティアナの言うように彼女たちのいる場所にも大勢の武装局員がおり、周辺に敵反応も見られない。
(油断だけはすんなよ、今回に限っては事が事だ。いつどのタイミングでどんな敵が現れるかもわかんねーからな)
(了解です)
簡易的に報告を受け取っただけで念話でのやり取りはそれで終わる。
今し方やり取りをしたティアナやスバルもそうであるし、ヴィータと共にいるエリオとキャロにしたってそう。
ヴィータにしてみれば自分の身の安全以上に新人たちの動向を特に気にかけている。
ティアナへの確認作業も副隊長としての任であること以上に、そういったヴィータ個人の感情によるところが大きい。
敵も本腰を入れてくるであろう以上、自分たちも一時たりとも気を抜くことは許されない。
(……来るなら来てみやがれ、地上本部もあたしの大切な仲間たちも……もう誰1人だってお前らの好きにはさせねーからな……!)
同じ悲劇を繰り返さないという誓い、仲間たちに対する強い想い。
そういった感情からヴィータは自然と両手の拳を強く握りしめていた。
*
「ナンバー3トーレから、ナンバー12ディード、全て配置完了です」
『お嬢とゼスト殿も所定のポイントへと到達している』
『攻撃準備は万全、こっちはもうスタートサインを待つだけって感じです~』
「うんうん、私の作品の最終調整も全部完了……後は送り込むだけって感じだねー」
いつものモニタールーム、パネルを操作するウーノと後ろに座っている兄さん。
私は私でウーノと一緒に秒読み段階に入っている今日のお祭りの為の確認やら微調整やらで同じようにモニターに映し出されている各種データに目を通すばかり。
夕暮れ空に染まるクラナガンの街々、天を穿つように聳え立つ地上本部の建物、その周囲に大勢配置されている武装局員やら防衛兵器やら……
そして狙いを定めているのはそれだけでなくもう一つ、今の私や兄さんにとって最高の実験動物として貢献してきてくれている機動六課の拠点であるその施設。
その全てがこれから、私と兄さんの作品たちによる狂奏曲の下、数多の悲鳴と共に獄炎に包まれ虚しく焼け落ちていくのだろう。
……うわあ、自分で言っておいて何て厨二臭い発言なんだろうってね。
「ククククク…………ハッハッハッハハハハ……!!」
「くふふふ…………ふふふふふふ……」
「楽しそうですね、ドクター、カティ」
「ふふ、ふふふ……これから起こることを想像するだけでこれだもの……楽しくないって言う方が無理があるよウーノ」
でも今日は特にしょうがない、椅子に座っている兄さんもウーノの隣で作業を進める私も笑いで震えが止まらないくらいなんだから。
これから起こるお祭りは飽くまでも前夜祭のようなものでしかない、私達にとっての本番はもっと先の領域に存在していること。
だが……だがそれでもだ……この前夜祭が私たちにとっての一つの区切りであり、一種のスタートであることもまた事実である。
積み重ねてきた全てを、何も知らずにのうのうと過ごしている表の世界の連中に見せつけてやるこの一瞬。
兄さんと共に進めてきた二十数年間の集大成、それが今日これから始めることなのだ。
やるなら全て徹底的に、妥協は許さず盛大に、何もかもを焼き尽くし完膚なきまでに蹂躙してやろうではないか。
その為に表の世界のゴミどもが何人犠牲になろうが知ったことか、その悲鳴で精々私たちを昂らせてくれてねと。
後はそう……同じように参加している機動六課の連中にもそろそろ見せてやらなくちゃいけないしね。
私と兄さんの本気、正確に言えばその一端、それがお前たちの予測では遥かに甘々だったということをさ……!!
「この手で歴史を変えるその瞬間……準備はすべて整った……だからこそ、我々のスポンサー諸氏に見せてやろうじゃないか、これまでの研究の成果を……」
「はい、ドクター……」
興奮が抑えきれないその容貌で兄さんがゆらりと椅子から立ち上がる、振り向きながら答えるウーノもいつになく嬉しそうだ。
兄さんの言うように全ては万事オッケー、準備は全完了、あとはその一振り意思一つで全てが開始される。
「さあッッッ!! 始めようじゃないかッッッッ!!!!」
「はい…………IS発動、『フローレス・セクレタリー』」
そして感極まったように腕を振り上げ叫ぶ兄さんの声に応える様に足下にテンプレートを出現させてウーノがその固有技能を発動。
兄さんの最初の作品としてその傍らで秘書を務めてきたウーノの力、常人には決して到達できない超高度な知能加速、情報処理能力向上チューン、フローレス・セクレタリー。
パネルを操作するその手の動きは今までの倍以上となり、戦場全体を見渡す頭脳としての役割を開始した。
「始まったね始まった、始まったとも……じゃ、見せてやろうじゃないの、私たちの力ってヤツを……さッッッ!!!!」
特に意味も無いのにデバイスを装着した私の左腕も無駄なオーバーリアクションと共に高く高く振り上げられる。
開幕の狼煙は上げられた、後はここから全てを楽しませてもらおうじゃないか。
*
「ミッション……スタートッ!!」
スカリエッティの言葉に呼応するかのように下された現場にいるクアットロからの開始の合図。
スカリエッティの最も近いとさえ言われている彼女もまた、この祭りの開始を心待ちにしていた人物の1人である。
「アスクレピオス……限定解除……」
それを皮切りにすぐ側にいたルーテシアは自身のデバイスのリミッターを解除。
足下に浮かび上がる魔法陣と共に彼女の周囲に膨大な魔力と共に紫紺の魔力光が浮かび上がる。
その質量、今までの物を遥かに凌駕しており、単純なデータで見ればSランクにも届かん程である。
「さてとそれじゃあ、こっちもお仕事お仕事~」
テンプレートを展開しながら複数のモニターに目を通し、パネルを操作して作業を進めていくクアットロ。
その自身の固有技能によって地上本部の通信管制システムが次々と彼女の手中に落ちていく。
ナンバー4、クアットロの持つ固有技能シルバーカーテン、ウーノと同様に後方支援、情報処理能力に特化した彼女の本気。
事前の下準備も込みとはいえ、その力の前では地上本部のシステムすら軽く上回るほどの力を見せていた。
「うっふふのふ~、クアットロさんのIS、シルバーカーテン……電子が織り成す嘘と幻、幻惑の中で踊り狂いなさい、管理局員の皆さん♪」
*
「通信システムへの侵入進行……!! ダメです、速すぎて止められません!!」
「緊急防壁を展開しろ!! 予備システムの立ち上げを急げ!!」
「無謀な奴らめ……まさか本当に本部を狙ってくるとはな……!!」
地上本部の管制室は混乱の極みにあった。
クアットロのシルバーカーテンによって次々と掌握されていくシステムの下でこれといった対策を講じれずにいた。
無論、その場にいた彼らも公開意見陳述会でいつも以上に警戒を強めていたのは確かであるが、
それでも心の奥底では鉄壁を誇る地上本部に直接攻撃を仕掛けてくるなどありえないという考えが浮かんでいた。
その油断が生んだ一瞬の隙、それを突く形で地上本部の管制システムは一瞬で奪われてしまったのである。
ドォオオオン!!!
そしてその混乱が全く収まっていなかったことから、その場にいた誰もが新たな侵入者からの攻撃に気付けなかった。
突如起こった管制室内での大爆発、天井から投下された数個のスタングレネード。
「よっと、便利なのは間違いないけどやっぱり私には少し重いかなあ」
直後、固有技能ディープダイバーによる透過能力で天井をすり抜けながら姿を現すのはナンバー6、セイン。
無機物内部を自由自在に動き回れるセインからしてみれば、一度中に入りさえしてしまえば警備など全く無意味に等しい。
表に出ないように進みながらこうして管制室に姿を現すことくらい、彼女にとっては朝飯前というもの。
「き、貴様何者だ!! すぐに武装を解除して投降――――」
「まだいたんだ……それっ!! ダイバードラゴン!!」
「なっ――あぐぁッ!!」
直前の爆撃から運よく逃れていた2人程の武装局員に杖を向けられてもセインは全く慌てることは無い。
以前までのセインならすぐにでもディープダイバーを使ってその場を離脱していたろうがこの日はいつもと違う。
放たれるのは両腕に装着された巨大なクロー、セインの新たな固有武装であるダイバードラゴン。
セインの掛け声とともに右腕のそれが文字通り竜の如く高速で伸び、先端のカギ爪が展開されて局員の1人を掴み上げる。
「おのれッ!!」
「よっと、甘い甘い、カティの作ってくれた武器がそんな簡単な攻撃で破れるわけないじゃんか!!」
「うおおおおおおっ!!!?」
「がぐぁああああああっ!!」
残ったもう1人の局員が慌てながらもデバイスから魔力弾をセインに向けて発射する。
がしかし、その攻撃はもう片方の左腕のクローの表面によって容易く防御される。
更に次の瞬間、右腕のクローで拘束された局員ごと、セインは目の前のもう1人の局員にそれを勢いよく叩きつける。
成す術無く生き残りである2人の武装局員も互いに激突したその勢いで床を転げまわり、動くか無くなる。
意表をついての攻撃や咄嗟の防御にも使用可能なセインの新たな武装、ダイバードラゴンの初実戦投入でああった。
「さて、第一段階は問題なくクリアだね、後はチンク姉が上手くやってくれれば……」
*
地上本部地下深くに存在する動力室、防壁展開や管制システムなど本部施設のエネルギーを一挙に制御するその空間。
警護の為にいた局員を無力化し、1人その場に立っていたのは事前に侵入を完了していたナンバー5のチンク。
「IS発動、ランブルデトネイター……」
固有の武装である複数個のスローイングナイフを投擲、動力炉のいくつかに突き刺したうえで発動させるのは自身の固有技能。
テンプレートの浮かび上がったナイフはチンクが指を弾くのと同時に大爆発、動力室を一瞬の内に火の海へと変える。
自信が接触した金属物にエネルギーを投与し、爆発部として扱う能力であるランブルデトネイター。
自身の持つスローイングナイフ含め、ありとあらゆる金属体を己の武器へと変えるその攻撃力は甚大な物。
嘗て、単独でSランク魔導師を撃破できたのもこの能力があればこそであった。
「エネルギー出力減少確認……後はクアットロ達に任せておけばいいだろう。こっちは内部の敵を片付けておかなくてはな」
*
「防壁出力減少……それじゃ、ルーお嬢様にカティちゃん、お願いしますね~」
『待ってました……私の作品……とくと味あわせてやろうじゃないッッ!!』
「遠隔召喚、開始」
クアットロによるクラッキング、セインによる管制室掌握、チンクによる本部施設動力炉の攻撃。
次々と敢行される攻撃によって内部システムがガタガタになったそのタイミングで下される更なる指令。
興奮状態のままモニターの向こうで己のデバイスを振りかざすベルリネッタに、いつもと変わらぬ調子で召喚魔法陣を繰り出すルーテシア。
地上本部を周囲にいくつも現れる2種の魔法陣から這い出る様に出現するのは数多のガジェットドローンにベルリネッタの作った兵器群。
タルーガ、リノチェキロン、チェロクア等々、今までにいくつかの量産を行ってきた火力偏重型兵器。
その大半をこの攻撃の為にベルリネッタは送り込んだのである。
「準備完了、それじゃあどうぞ~」
『攻撃開始ッッ!! 焼き尽くせッッ!!』
狂気に染まりきった笑みと声、下されるのは無慈悲な宣告。
一斉に散らばっていったガジェットと火力偏重型兵器による一斉攻撃。
応戦しようにもその圧倒的なまでの数と火力の暴力に地上の武装局員が成す術無く蹂躙されていく。
『アハハハッ!! クハハハハハハッ!! 踊れ踊れ踊りなさいッ!! お祭りはまだ始まったばかりなのだからッ!! もっと私と兄さんを楽しませるのよッッ!!』
2種のタルーガの実弾式キャノンと多連装レーザーが地上本部施設敷地内の地面を抉る。
リノチェキロンの長距離狙撃用主砲の一撃が周囲に展開された防衛用兵器を一撃の下撃ち貫いていく。
上空に浮かび上がったチェロクアの主砲の一撃が眼下の武装局員を薙ぎ払っていく。
ベルリネッタの歓喜の笑みが響き渡る中、地上本部は警護に当たっていた局員共々散り散りバラバラとなっていった。
「外の方はカティちゃんの兵器で十分ですね~、後は中の方を囲んで無力化しちゃえば♪」
瞬く間に瓦礫と人間の山を築いていく混乱に乗じる形でガジェットドローンが地上本部施設へと進行していく。
周辺に展開された魔力防壁によって阻まれるも、内部侵入組の手回しでその出力は著しく低下している。
複数のガジェットによるAMFの機能によってその防壁もまた容易く突破されてしまった。
敷地内へと侵入していくガジェットもその全てがAMFを全出力で発動して内部の魔力結合を乱していく。
その結果起こるのは地上施設の機能の大半の無力化。
魔力エネルギーによって成り立っているそれらは膨大な数のガジェットが放つAMFによって完全に無力化されていく。
次々と落ちる照明に閉じていく防壁シャッター、内部人員は敵を迎え撃つはずが逆にまんまと鳥かごの中の鳥状態になってしまったのである。
「IS……ヘヴィバレル……バレットイメージ、エアゾルシェル」
その篭に向けて自らの砲を構えているのはナンバー10のディエチ。
長距離砲撃を専門とする彼女から放たれる力は単なる破壊だけに留まらない。
必要に応じてその弾頭を変化させ、ある程度幅の広い戦術に対応することができるのである。
「発射……」
無常の一言共に発射されたその一撃は地上本部施設に直撃した後、内部に膨大な量のガスを撒き散らす。
エアゾルシェルと呼称されたそれは敵人員の無力化に趣が置かれており、撒き散らされた麻痺性のガスによって内部の局員たちもまた次々と倒れていった。
「本部施設の方は上手くやっているようだが……準備は完了しているなセッテ?」
「心配ご無用、カティ様の兵器と比べたら、あの程度の敵など準備運動のような物です」
更にそこから少し離れた空域、応援に駆け付けた空戦魔導師部隊を捉えるのはナンバー3トーレとナンバー7セッテ。
近接戦では戦闘機人の中では最強クラスであるこの2人は空戦戦力の迎撃を担当していた。
「IS発動……スローターアームズ」
「ライドインパルス……」
「「アクション!!」」
そしてそれぞれのISを発動させながら超高速で突っ込んでいくのは迫ってきていた魔導師部隊の真っ只中。
直後に起こった爆発と悲鳴、トーレとセッテの実力の前に抵抗すら叶わず応援の魔導師たちも撃破されていく。
「うふふふふ~、まるでお話になりませんね~、これならすぐに終わっちゃうかもしれません~」
『まだまだ……まだまだよクアットロ…………中の連中に用意したのも含めて、私の兵器はまだまだ用意してあるんだからさッッ!!』
現状では相手の懐を突いての圧倒的な優勢、その様にクアットロからも余裕の笑みが零れる。
だが、モニターの向こうにいるベルリネッタはまだまだ手を緩めるつもりなど毛頭無く、この日の為に作り続けた自分の作品を送り込み続ける。
*
内部機能の大半が無力化した地上本部施設を進むのは機動六課新人の4人。
上空から接近中の戦力をヴィータとリインに任せ、4人はデバイスを中の隊長陣に届けるために合流地点へと急いでいた。
「!!……マッハキャリバー!!」
が、先行するその途中で急停止したスバルが感じ取ったのが魔力弾による敵からの攻撃。
咄嗟に展開したプロテクションによってそれを防ぎ、周辺を見回すも、
「うおりゃああああああ!!」
「ッ……うああああああ!!」
動きの止まったスバルのその瞬間を狙っていたかのごとく姿を現すのは赤い髪をなびかせながら突撃してくる1人の少女。
ナンバー9、ノーヴェによる蹴りの一撃がスバルに命中し施設の壁へと叩きつける。
「スバル―――ッ……これは……!!」
「残念、敵はノーヴェだけじゃないっスよー。それにノーヴェ、作業内容は忘れてないっスよね?」
「忘れてねーよ、旧式とはいえタイプゼロがあれくらいの攻撃で壊れてたまるかっつーの」
いきなりの攻撃に駆け寄ろうとしたティアナと、エリオとキャロも取り囲むように浮かび上がる複数のスフィア。
それを形成している張本人が巨大なボードを片手に姿を現したナンバー11、ウェンディ。
ぶっきらぼうに返答するノーヴェとは対照的に、ウェンディに浮かぶのは獲物を追い詰めたという余裕の表情。
「戦闘……機人……!!」
そしてノーヴェの言ったようによろよろと立ちあがりながらもダメージはそれほどでもないスバル。
いきなりの敵の攻撃には驚いたものの、合流地点まではまだ遠く、目の前の2人を倒さなければ先には進めない。
機動六課新人たちはこの場の状況を打開するためにそれぞれの役割を考え始めていた。
*
地上本部からやや距離の離れた上空を高速で飛行する2つの人影、
戦闘機人やルーテシアとは別行動を取っていたゼストとアギトの2人もまた、地上本部にいるある人物に会うために移動中であった。
『こちら管理局! あなた方の飛行許可と個人識別表が確認出来ません! 直ちに停止して下さい! それ以上進めば迎撃に入ります!』
「この声……!」
その最中で響き渡るのは管理局側からであろう人間からの警告。
だが、アギトにとってその声は忘れもしない因縁の相手によるものだとすぐに判断する。
そして次に向かってくるのは警告通りの迎撃――ゼストとアギトを狙う複数の魔力弾。
「この程度ッ……ブレネンクリューガー!!」
何ら慌てることなくアギトは両の手から火炎弾を形成し、自分たちに迫っていた魔力弾を全て叩き落とす。
が、その爆発の先から向かってくるのは魔力弾ではなく金属弾。
「なっ……こっちが撃ち落とすのも計算済みってことかよ!?」
「下がれ、アギト」
その金属弾による攻撃はゼストが展開した防壁によって弾かれたのでこれまたノーダメージ。
しかし、その時に既に2人の背後から迫ってきていた魔力弾を放った張本人。
「ギガントハンマーッッ!!」
ギガントフォルムのアイゼンを振り上げながら咆哮と共に姿を現したのは普段の紅ではなく、白い騎士甲冑を纏うヴィータ。
ユニゾンデバイスの真なる役割であるリインと融合した今のヴィータの力は今までの比ではない。
その爆発的に高められた一撃がゼストとアギトに向かって放たれ大爆発を起こす。
(……相殺と防御で防がれました!!)
「でもダメージは通したはずだ……とっとと片付けて新人連中の援護に戻るぞ!!」
ヴィータの中にいるリインが報告するように、眼前にはまだ無傷の敵の影が残っている。
だが、その爆煙の先に現れた人影は一つだけ。リインと同じようにアギトとの融合を果たしたのはゼスト。
髪と装甲の一部が黄金に輝き、纏う魔力はアギトの爆煙を象徴するかのようなオレンジ色。
(あんにゃろー!! 本気でぶん殴りやがったな!!)
「だが助かった、お前のおかげでダメージは抑えられた」
(何の何の、旦那の為ならこのくらいわけないさ!!)
ゼストの中で語りかけるアギトもまた多少の手傷は負ったとはいえ戦闘には何ら支障は無い。
咄嗟に攻撃を防いでくれたアギトに礼を述べながら、ゼストも眼前の敵へと向き直る。
「管理局機動六課スターズ分隊副隊長、ヴィータだ!」
「……ゼスト」
お互いにデバイスを構えながら名乗りを上げるヴィータとゼスト。
互いに譲れぬ事情がある以上、激突は避けられないことは明白であった。
*
地上本部から離れて機動六課施設から少し離れた上空。
そこにいるのは2つの人影と空を覆い尽くさんばかりの巨体を誇る1つの兵器。
「あれが私たちの目標……こっちの準備は完了しているわ、オットー」
「それは問題ない、カティから預かってきたこれも順調に稼働している」
巨大兵器の前に立つようにしてそれぞれ会話を行うのはナンバー8オットーとナンバー12ディード。
地上本部襲撃組とは違い、彼女たちはベルリネッタの製作した新型兵器と共に機動六課施設の近辺までやってきていたのである。
「でも敵の防衛戦力が手薄とはいえ、私達だけで良かったの?」
「……ミクビルナヨナンバー12、アノヨウナテツクズレンチュウナドイナクトモ、ワタシトオマエタチダケデ……イヤ、ホンライナラバワタシダケデモ、スベテヲハカイデキルノダカラナ、セイゼイアシヲヒッパラナイヨウニスルンダナ」
「コイツ自身が言ってるように、このアレスタルヴォーネのスペックはあらゆる意味で規格外だ。大半はコイツに任せて僕たちは援護に回っておけばいい」
「了解……私達がこなすべきは六課施設の襲撃と、聖王の器の確保」
低く唸るような機械音を発する新型兵器――――アレスタルヴォーネの外観は今までの兵器群とは比較にならない程に化け物染みた物。
巨大な翼を広げた白い横長のボディの中心部上に埋め込まれたかのような、人型の上半身。
左右の巨大な翼の各所に埋め込まれた目玉のような砲門と機体中心部に装備された巨大な主砲。
期待背部には各種兵装を内蔵した2つの巨大な黒いコンテナも積まれており、その総火力は今までの作品を軽く凌駕する。
火力偏重型兵器の最新作として作られたアレスタルヴォーネは、単機でも六課施設はおろか、地上の大半を瓦礫の山に変えれるであろうだけのスペックを持っているのである。
「……目標の視認可能距離に到達、じゃあ始めようか」
「リョウカイ、エネルギージュウテンカイシ」
そうこうしている間に辿り着いた機動六課の施設、外部には迎撃に出てきたであろう魔導師や守護獣の姿も見えている。
そんなことも構わずにオットーは足下にテンプレートを展開させながら右手を掲げ、その少し上を飛んでいたアレスタルヴォーネも各部の砲門にエネルギーを溜めこんでいく。
「IS……レイストーム」
「フルインパクト……クラウガイイ、オロカナマドウシドモ」
オットーが放つ複数の光の奔流とアレスタルヴォーネの砲門各所から発射されるいくつもの黒い光。
その全てが機動六課隊舎に向かって降り注ぎ、一瞬にして地獄絵図を生み出すのであった。
◆ダイバードラゴン
セインの新武装として製作された両腕装備型の伸縮式大型クロー。
先端はカギ爪状となっており、刺突や捕縛として使用可能な他、
中心部分の平面部にはシールド機能も備わっている攻防一体型の兵器。
セインの元々の固有武装であったペリスコープアイの機能も組み込まれており、
ディープダイバーで無機物に身を隠しながらクローだけを伸ばして攻撃するなどといった芸当も可能としている。
捕捉:見た目的にはアルトロンガンダム(EW版)のドラゴンハングを思い浮かべてくれれば良し。
◆アレスタルヴォーネ
今までの兵器のデータを基に作り出された火力偏重型兵器の最新作。
巨大な翼を広げた白い怪鳥のような機体の上部に人型の上半身が組み込まれている。
基本材質からしてかなりの高性能品を使用しており、装甲は極めて頑強。
加えて従来品以上の濃度のAMF発生装置も装備しているので防御能力は絶大。
武装も機体中心部の主砲プラズマキャノンや翼部に内蔵された複数のレーザー砲、
背部コンテナのミサイルやガトリング砲など質も量も圧倒的。
人型部の両腕に有線式クローも装備されており、近接戦闘にも対応可能。
更に、機動六課部隊長の広域空間攻撃を参考にした必殺兵器も内蔵されている。
アンジェロシリーズに搭載した自律型AIの発展系も内蔵しており、
具体的な指示を飛ばさなくてもある程度高度な判断、行動さえもできる。
単独での火力、防御力のスペックは相当な物であり、
その気になれば地上の大半を制圧できるという予測データも挙がっている。
(万全な状態での予測なので、敵の抵抗や機能低下などは考慮されていない)