狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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書いている間に物凄い伸びてしまって、話数が1つ増えることに。
そして色んな意味で閲覧注意。


第20話:悪夢の前夜祭、後編

地上本部近辺の空域で行われているヴィータ、ゼストによる戦闘。

今は両者共に一旦距離を置いてそれぞれ次の一手を模索している。

 

「はぁ……はぁ……!!」

「………………」

 

グラーフアイゼンを構えるヴィータの呼吸は荒い。

ユニゾンデバイスの相性の差があれど、やはりゼストの実力はヴィータの上を行くものだった。

ゼストの方も一切のダメージも拾うも無いと言えば嘘になるが、それでも今のヴィータと比較したら未だに余裕は残っている。

 

(こんなところで……いつまでも戦ってる場合じゃねえってのに……!!)

 

ギリッと歯を噛み締めるヴィータの中に浮かぶのは疲労以上の焦りの感情。

敵の思惑が何であれ、スカリエッティ一味の協力者である疑いの強い目の前の魔導師を見過ごすことなどできはしない。

しかし、だからといって自分がいつまでもこの場で足止めを食らってしまうのもまた本意ではない。

地上本部含めて未だに各所で激戦が繰り広げられている以上、すぐにでも他の場所の援護に回らなくてはいけないのに、

いつまでもこう着状態、それどころか自分が押されているという今の現状にヴィータは焦っていたのだ。

 

(ヴィータちゃん!! シグナムがこっちに向かっているです!!)

「……どうやらSランク魔導師がもう1人来ているらしいな……到着されれば不利となるか」

(クソッ……!! あたしが不甲斐ないばっかりに……!!)

 

が、その段になってその場の全員が感じ取ったのは新たな魔導師の接近。

ヴィータの中のリインが言うようにシグナムが2人の戦っている空域に近づきつつあった。

それはヴィータにしてみれば吉報で、ゼストとアギトには凶報である。

ゼストからすれば今は自分の方が優勢とはいえ、残されたタイムリミットはそう長くは無い。

そのタイミングで更なる敵の出現となれば、これ以上の前進はほぼ不可能になったと言っていい。

そうである以上、自分たちに残された選択肢は一つしかない。

 

「ここまでだな……撤退するぞ!!」

(クソ……せめて、せめてあいつらだけは……!!)

 

アギトとのユニゾンを解除するゼスト。が、その直後表に出てきたアギトの取った行動は、

 

(上です!! ヴィータちゃん!!)

「ちぃ……!!」

「あたしが、ここで叩いておく!!」

 

リインの指示された方向に目を向ければその先にあったのは巨大な火球を形成していたアギトの姿。

ゼストの目的を阻んだヴィータ達の存在を許せず、せめて一撃だけでもという思いでの行動。

その単調な攻撃はヴィータが捉えるには難しくなく、攻撃に移る前にアギトを叩き落とそうとする。

そしてゼストもまたそのヴィータの行動に反応して一撃を与えようと動こうとする。

 

『待ーった待ったちょっと待った!! やめときなってゼスト!! ただでさえ少ない命をここで削るなんて勿体ないっての!!』

「んなっ……!!」

 

ヴィータでもリインでもゼストでもアギトでも無い、この場の誰とも違う第三者の声が響き渡る。

それによって各々が行動を中断し、辺りを見渡すも誰もいない。

次の瞬間、少し離れた場所に浮かび上がるようにして出現するのは半透明の1人の女性科学者。

 

(ヴィータちゃん、あれは!!)

「テメエは……どうして今になってこんな場所に……!!」

「な、なんでお前がここいいるんだよ!?」

「何の用だ……カティーナ」

『くふふふ……!! 私がどこに居ようと私の勝手だもの……! それに今日はちょっと面白い物見せてやろうと思ってねえ? そこのチビ騎士にさっ……!!』

 

狂人の如く歪んだ笑みを浮かべてその場にいた全員を見渡すように現れたのはベルリネッタ。

意外な人物の登場に全員が驚きを隠せず、直後にヴィータに浮かぶのは抑えきれない怒りとそれを自制しようとする理性。

 

「……ノコノコ出てきたってんなら好都合だ、今この場でテメエを――――」

『残念でしたぁ、ここにいるのはただのホログラム、実体はこっち側だからねえ……!!』

「ちぃ……!!」

 

しかし、前回の市街地戦と違っていたのは今回のベルリネッタは生身ではないということ。

ジジジと機械音を発しながらおどけた口調で話すベルリネッタは機会が投影した幻でしかない。

その挑発にヴィータは尚も怒りが込み上げてくるが必死に抑え込もうとしていく。

 

「だったら何の用だってんだ……今のあたしらはテメエの与太話に付き合ってやる暇は無いんだ」

『おお、怖い怖い、そんなちっこい体のどこにそんな気迫が込められているのか、本当に興味深いよねえ、呪われた闇の書のプログラムさん?』

「……挑発のつもりならやめておけ、そんなくだらないこと言うためだけにわざわざ出てきたってのかよ?」

 

ゼストとアギトでさえ黙ってその場でのやり取りを見ているだけの中、ヴィータとベルリネッタの会話が続いていく。

ヴィータの言うように今のベルリネッタは物理的干渉が不可能なホログラムでしかない。

それこそできるのはこうやって不必要な言葉でヴィータのことを煽るくらいのものである。

その為だけに現れたというなら自分も甘く見られたものだと、ヴィータの中の怒りが段々と鎮まっていたのだが、

 

『くふふのふ~、でもこれを見てもまだそんなこと言ってられるかなあ? 貴方がそこの死にぞこないと戦っている間に、他の場所は色々と大変なことになってるてのにねー』

 

直後にベルリネッタが行ったのが、ホログラムの自身の周囲に複数のモニターを展開。

映し出すのはこことは違う各所での戦闘の様子。

 

「な――――」

 

それを目にした瞬間、ヴィータの体は時を止めたように停止した。

 

 

 

*

 

 

 

地上本部内部施設の一区画で繰り広げられている2人と1機による激戦。

桜色と橙色の魔力弾を一発も掠めることなく掻い潜りながら、目に付く黒翼を振りかざして宙を舞う漆黒の機体、ルチフェロ・フィーネ。

 

「シュート!!」

 

空間内を飛び回りながらのティアナによるクロスミラージュから放たれる魔力弾の連射。

六課内での訓練によって技を磨き続け、威力も精度も段違いに上がっているその攻撃。

フィーネはそれすらも全く当たることなく右へ左へ上へ下へ、縦横無尽に動き回りながら完璧な回避を繰り返すのみ。

 

「ヨソクデータヨリモ20……イヤ、30%ホドノコウジョウガミラレルナ、ダガソレデモマダアマイ」

 

内部AIがデータの分析を行いながら発するティアナの攻撃に対する機械音が発せられる。

如何にティアナが優秀な魔導師として成長を続けているのが事実であろうと、改造され新生したフィーネの性能はそれの遥か上を行く。

素体の時点でリミッター付きのオーバーSを圧倒できるだけの性能があった機体の強化版である以上、その力に対して楽観視などできない。

続けてフィーネは回避一辺倒から右腕のライフルから弾丸をティアナに向けて連射する。

 

「くっ……!!」

 

たった数発、誘導機能も無い直射的な攻撃である筈なのにその威力も速度もかなりの高ランク。

間一髪で横へと飛び退きその弾丸を回避するティアナであるがそこに浮かぶ表情は焦り。

逸れた弾丸が強い衝撃と共に容易く地面を抉り爆煙を噴出しているという破壊力。

体感的にはそれこそ今共闘しているなのはが放つ魔力弾と同等の、それすら上回るかもしれないという考えが頭に浮かんでいる。

 

「ホウケテイルヒマナドナイゾ?」

「!!――――」

 

が、それだけの性能を誇る攻撃ですらフィーネにとっては軽い牽制、ジャブのような物でしかない。

フィーネは直後に素早く両肩の細長い筒状のバインダーを前方に展開してエネルギーを収束。

蓄えられた漆黒のエネルギーがフィーネの前方に球状となって形成されていく。

 

「クラエ、『ネロ・スフェラ』」

 

攻撃名称を呟くと同時に漆黒の球状エネルギーが形を崩して発射されるのは、先程のライフル弾頭などとは比較するのも馬鹿らしい量の黒いスフィア。

一発一発に計り知れないエネルギーを蓄えたスフィアの群れがティアナを取り囲むようにしてあらゆる方向から襲い掛かる。

 

「ッ……!! レイジングハートッ!!」

 

その攻撃からティアナを守るのが別の個所から攻撃のチャンスを窺っていたなのはの行動。

ティアナの眼前へと降り立ったなのははティアナを庇うようにしてプロテクションを展開。

迫り来るスフィアの攻撃を防御しようと試みる。

 

「くぅ……!! ッ……ッぅう…………!!」

 

しかし、なのはが防御の一点に特化して形成した強力なプロテクションすら、フィーネの放ったスフィアが2、3発掠めただけであっさりと砕け散る。

周囲に着弾して多数の爆発を起こしながらスフィアのいくつかはなのはの纏うバリアジャケットの上からでもダメージを与えながら周囲を抉っていく。

その爆煙を見やりながらフィーネは離れた位置でバインダーを戻しながら直立不動の姿勢を保っている。

 

「はああああああ!!!」

 

攻撃着弾点とは全く違う斜め上方向から向かってくるのはクロスミラージュをダガーモードで展開したティアナ。

反応に遅れてなのはに庇ってもらう形になってしまったが、だからといってそのまま呆けているなどという選択肢を取るほど愚かではない。

スフィアを発射し終えて隙を晒したフィーネに向かって別方向からの攻撃。

 

「ナメラレタモノダ、ソノテイドノフイウチヲウケテヤルホド、ワタシガヨワクミエタノカ?」

 

だがフィーネにとってその攻撃もまた十分に予測の範疇にあった物。

ライフルの先端にエネルギーブレードを形成し、振り向きざまに右腕を振り上げながらティアナの突進に対して迎撃。

クロスミラージュとフィーネのエネルギーブレードが交差し一瞬火花を散らして拮抗。

 

「ナイフデ、タイケンヲウケトメラレルハズモアルマイ、フキトベ」

「なっ……!? くああああっ!!」

 

それも一瞬のことであり、その威力に根本的な差がある以上、ティアナがその一撃を耐えることはできない。

フィーネがエネルギーブレードを右腕ごと振り切ったのと同時にティアナの体は大きく宙を舞い、近くの壁へと叩きつけられる。

 

『Divine Buster』

 

そのフィーネを更に別の咆哮から狙っていたのはレイジングハートを構えて桜色の魔力を終息し終えていたなのは。

放たれるのは彼女の最も得意とする魔法にして、並の相手では対抗することすら叶わない圧倒的な魔力の奔流。

 

「シューーートッッ!!」

 

カートリッジシステムによる上乗せも加えたその砲撃は推定ランク以上の圧倒的な破壊力が秘められている。

如何にオーバーSを相手にできるほどの高性能機であろうとそれを真正面から受け止めればダメージは免れない筈。

タイミングもティアナを振り払った直後の隙を突いての絶好のチャンス、仕留めるまではいかないまでも命中は確実、なのははそう踏んでいたのだが、

 

「……タイミングハワルクナイ、ガ、ヤハリマダタリナイ」

「!?……そんなっ……」

 

左腕を眼前に突き出して形成されるフィーネのプロテクション。

時間にして1秒前後、たったそれだけの簡単な動作でなのはの放った砲撃はいとも簡単に止められ、桜色の魔力は虚しく霧散する。

まるで大人が子供の手を捻るかのようなその一連の所作になのはも驚きを隠せない。

 

「なのは隊長!!」

 

と、その段になってティアナが吹き飛ばされたその先から立ち直り、なのはのすぐ横へとやってきていた。

身体各所に傷跡が見られ、度重なる戦闘と敵の猛攻からの回避動作の為に魔力もかなり消費している。

なのはもなのはでティアナ程のダメージは負っていない物の、魔力消費に関しては同じような物だった。

 

(どうする……ティアナも上手くやってくれているけど…………それでも敵との実力に差がありすぎる……!!)

 

ここまでの攻防を通してなのはがわかっているのは、目の前の漆黒の機体の想像以上の実力。

ティアナにしたって決して足手まといなどではなく、敵の攻撃を緻密に分散し、こちらの行動に合わせて的確な選択ができていると評価している。

ただ、ティアナの援護となのはの攻撃を合わせても尚、それが全く通用しないのが今相対している敵なのだということ。

現にフィーネはなのはとティアナの攻撃のほとんどをかわしきり、いくつかはプロテクションで防ぎながらも本体へのダメージは皆無。

内部エネルギーにも相当な余裕があり、このまま戦闘を続ければどちらが勝利するかは明白である。

予測が甘かった、と言えばそれまでかもしれないが、それでもなのははベルリネッタが生み出したであろう新兵器の実力を前に追い込まれつつあった。

 

「バンサクツキタカ? ニタイイチトハイエ、ヨクココマデモッタモノダト、イッテヤッテモイイクライダガナ」

「……まだよ、まだ私たちはこんなところで倒れるわけにはいかない!!」

「イイダロウ、ナラバソノ、ナケナシノジシントキボウ、スベテショウメンカラウチクダイテゼツボウサセテヤル」

 

その実力差に酔いしれる様にフィーネが発するのは余裕の言葉と挑発の数々。

それでも尚、愛用するデバイスの名に恥じないなのはの闘志は少しも揺らぎを見せること無い。

どんな強敵が相手であろうとこの先に進んだスバルも含めて、未だに各所で戦いは続いている。

故に、自分たちがこんな場所で立ち止まっているわけにはいかないと。

その言葉に答えながら再びバインダーを展開してエネルギーを溜めこむフィーネに呼応するように、なのはもレイジングハートを構えて魔力を収縮。

 

「なのは隊長……まさか、本気で……!!」

 

その側にいるティアナが吹きすさぶ突風に目を細めながら感じるのは膨大な魔力の集束。

ディバインバスターすらも超える、名乗派が扱う魔法の中でも最大級の火力を誇るその集束魔法。

レイジングハートの先端に形成された桜色の魔力は今までとは比較にならない規模となって膨れ上がる。

 

「スターライト……ブレイカーッッッ!!!」

「『ネロ・リネア』」

 

互いの掛け声とともに正面からぶつかり合うのは桜色と漆黒、2つの巨大な閃光。

一直線に相手目掛けて放たれたそれらは真っ向から衝突し、辺りに眩い光と衝撃を発生させていく。

 

「きゃあっ……!」

 

そのエネルギーのぶつかり合いにティアナはまともに立っていることすらできず、目を抑えながら膝を着いてしまう。

やがて数秒間の拮抗の後に2つの閃光はその一方がもう一方を飲み込んで……

 

 

 

ドォオオン!!

 

 

 

耳を劈くような爆音と爆発に新たな衝撃、2つの力のぶつかり合いの果てに起きたそれによってティアナの体はまたしても吹き飛ばされる。

 

「っ……クッ……! な、なのは隊長……!」

 

どうにか目を凝らしながらティアナは立ち上がり、爆煙の先にいるであろうなのはの安否を確認しようとする。

なのはが放ったのは彼女の本気であるスターライトブレイカーによる一撃。

敵の火力がどれほどであろうと、流石にそれを真正面から受け止めて敵が無事であったことなど今までありえない。

自分の遥か先を行く実力者であるなのはに対してのそんな希望的観測も含めた願いにも似たティアナの感情。

 

「…………ぁ……」

「ヤハリ、リミッターツキデハコンナモノカ、モットモ、ゼンリョクデアロウト、コノテイドナラ、モンダイナカッタロウガナ」

「ああ………あ…………!!」

 

しかし、爆煙の晴れた先に広がっていた光景はそんなティアナの想いを容易く打ち砕く絶望。

目を見開き固まるティアナの前にいたのはうつぶせに倒れ込むなのはと、未だ何らダメージを負わずに健在のフィーネ。

それが意味すること、なのはのスターライトブレイカーすら決定打どころか手傷を負わせることもできなかったという、敵との想定以上の実力差。

 

「逃げ……て……!! ティアナ……!!」

「ゼツボウシタカ? ナラバキサマモ、ココデタオレロ」

 

必死に顔を上げて絞り出すように発せられるなのはの声、それを聞いても時が止まったように直立するティアナ。

そのティアナに向けられていたのは一瞬にして肉薄しエネルギーブレードを突きつけたフィーネの姿だった。

 

 

 

*

 

 

 

チンク、ノーヴェ、ウェンディ、3人の戦闘機人の前に立っていたのは正に鬼神とでも呼ぶにふさわしい存在。

膨大な魔力を辺りに撒き散らしながら立っているスバル、その目に宿るのはいつもと蒼とは違う、機械的な機能の込められた黄。

 

「返せ…………!!」

 

地獄の亡者が唸るようにして放たれたスバルのその一言。

そこに込められた憎悪、怒り、あらゆる感情は彼女の今の様をまじまじと表すかのよう。

一歩、また一歩とゆらりと近づきながら右腕のリボルバーナックルのカートリッジを連続ロードしていく。

今のスバルは正に爆発寸前の核弾頭のようなおぞましさとでも言うべきか。

 

「ギン姉を…………返せエエエエエエエエッッッッ!!!!」

 

次の瞬間、空間そのものを物理的に破壊するかのような轟音の叫びと共にスバルの感情が爆発。

狂戦士の如く拳を振り上げて向かってくるそれを右腕のガンナックルから放つ弾丸で迎撃するノーヴェ。

 

「だああああああああッッッッ!!」

「お構いなしかよ……!!」

 

それに対してスバルは回避も防御も見せずにただ只管叫びながら向かってくるのみ。

敬愛する大切な姉をボロボロにされたという現実を前に、今のスバルは完全に怒りの感情一色に支配されている。

ノーヴェの弾丸が腕を、肩を切り裂き鮮血を撒き散らすが、それすらも全く気にせずに突進する。

 

「うらああああああ!!」

「な……そんな馬鹿なっ……!!」

 

怒りと共に振り下ろされるその右拳をノーヴェは眼前に防壁を展開して防ぎ、そしてそれは一瞬の内にガンナックルごと粉々に砕け散る。

驚くノーヴェが感じ取ったのはスバルのその一撃が単に怒りに任せた直接的な打撃に留まらない類の攻撃であるということ。

防壁に攻撃が打ち付けられた瞬間に感じた違和感のある衝撃と震動。

 

「どぉおおおけぇええええええ!!!!」

 

その分析を与える隙すら全く与えずに吠えるスバルによる次なる攻撃がノーヴェに迫る。

振り上げられたスバルの右足による一撃をノーヴェは反対の左足によって受け止めるも、

交差した瞬間にまたしても感じたのは先程と同じ強い衝撃と震動。

戦闘機人の機械の肉体、いや機械だからこそより深刻なダメージとなるその一撃によってノーヴェ左脚部は深刻なダメージを受ける。

 

「ぐあああっ!!」

「ぐううっ!!」

 

直後に起こる爆発によって跳ね飛ばされるノーヴェとスバル。

先の二撃によるダメージでよろよろと立ちあがるノーヴェの前に、同じように立ち上がったスバルは尚もカートリッジのロードを繰り返して魔力を高めるのを止めようとしない。

 

「……ノーヴェ、ウェンディ、アレは姉が押さえる、ここから離脱しろ!」

「り、了解っス!」

「ま、待てよ!! いくらチンク姉でもあんなヤツ相手に1人で!!」

 

その様子を窺い、敵の攻撃の性質を判断したチンクが伝えたのは他2人の離脱。

ウェンディはともかくとしても同じ近接戦主体のノーヴェでは、今のスバル相手では分が悪すぎる。

ターゲットの片方は確保してある、ならばここは自分1人だけで相手をし、ノーヴェとウェンディはここから離れた方がいいとの判断。

その自分1人だけが損をする役割にノーヴェが抗議の声を漏らすが、

 

「案ずるなノーヴェ……姉ならば、奴に触れずとも戦える!!」

 

その言葉と同時に放たれるのは複数のスローイングダガーと、チンクの固有技能であるランブルデトネイター。

スバルの足元に突き刺さったそれらは強力な爆発を起こしてスバルの肉体にダメージを与える。

未だに納得しきれない表情を浮かべながらもノーヴェはウェンディと共にギンガを収納したケースを片手にその場を離れていく。

 

「うあああああっ!!! がああああああっ!!!」

 

姉を連れて逃げようとする敵を前にスバルは吠える、只管に吠えながら追いすがろうとするも、

それを阻むのはチンクの放つランブルデトネイターによる爆発。

防御も回避も捨てた今のスバルにそれを防ぐ手立ては無く、爆発によって尚も足を止められてしまう。

 

「邪魔ぁ…………すんなぁああああああアアアアアッッッッ!!!!」

 

尚も膨れ上がる怒りと共に天を仰いで叫ぶスバル。

その足元に展開されるのは魔導師の魔法陣ではない、目の前のチンクと同じ戦闘機人の形成する特有のプレート。

その光景に少々たじろぎながらもチンクはナイフを放っての次なる一手を敢行しようとする。

 

「ぐぅうらあああああああアアアアアアッッッッ!!!!」

「馬鹿な……速すぎるッ……!!!」

 

その行動に移る前にスバルがチンクの眼前へと迫って爆発的に高まったエネルギーと共に拳を振るい落とす。

回避は間に合わないと判断したチンクが取った行動は固有装備の一つであるシェルコートによる防壁展開。

チンクを包み込むようにして形成されたそれは、施設規模の破壊にすら耐えうる強固な防御力を持っている。

 

「うわあ!! ううっ! うわああ! うあああああああ!!!」

 

それでも尚スバルは一切退くことなくその防壁に向かってただただ攻撃を繰り返すのみ。

殴る、殴る、只管に殴り続ける、両手から血が吹き出ようがその打撃を一切緩めることは無い。

その一撃ごとに加えられるのはノーヴェの時と同様の膨大な衝撃とそれに伴う振動。

スバル・ナカジマ、タイプゼロセカンドの持つ固有技能……震動破砕と呼ばれる物。

 

「うううらあああああああッッッ!!」

「ぐわああああ!!!」

 

その攻撃は鉄壁を誇る筈だったチンクの防壁すらも破壊して見せる。

悪鬼と化したスバルの猛攻に成す術無くチンクは床を跳ねながら吹き飛ばされてしまう。

 

「ギン姉ッ!!」

「いか……せん……ッ……!!」

 

この悪鬼を先に進ませるということはつまり、今の自分と同じことをノーヴェとウェンディに味あわせてしまうことに他ならない。

それだけは避けなければとボロボロのチンクが放ったのは、ナイフを大量に展開してからの一斉爆発、オーバーデトネイション。

その攻撃への反応が遅れたスバルは、マッハキャリバーが自動で形成したプロテクション諸とも爆発の中へと巻き込まれる。

が、それでも尚、倒れることなくゆらりゆらりとスバルはチンクの方へと向かってくる。

 

「返せ…………ッ……!!」

 

バリアジャケットの大半は破れ、全身は傷だらけになり至る所から血が流れ出ている。

限界以上の高負荷に両足のマッハキャリバーもズタボロで各所からスパークを発している。

そして、最も目を引いたのが左腕の一部の表皮が崩れ、そこから覗いている機械部品。

それは身体を改造されたことの証、彼女が戦闘機人であるということの証明。

 

「ギン姉を…………!!」

 

それでもスバルは止まることは無い、相対するチンクに向けてその怒りを叩きつけることしか頭に無い。

大切な姉を奪い取ろうとしている敵は完膚なきまでに潰す、感情はただその一点だけに向けられている。

 

「返せよぉおお!!」

「ッ…………!!」

 

涙と共に叫びながら拳を振り上げるスバルを前にして、身体へのダメージが甚大なチンクはその場に蹲ったまま何もすることができない。

自分の最期を悟ったかの如くチンクは固く目を閉じる。

 

 

 

ズシャアッ!!

 

 

 

「は……な――――」

 

故に、双方極限状態にあったスバルもチンクもそれに気付くのが遅れていた。

チンクのすぐ目の前の地面から突如として飛び出してきた1つのカギ爪クロー。

一直線に放たれたそれはスバルの脆くなった左腕部分に直撃し……それを抉り取る。

鮮血を撒き散らしながら宙を舞う機械の左腕と呆然と立ち尽くすスバル。

 

「間一髪!! 今の内に逃げるよチンク姉!!」

「助かった……!!」

 

安堵の表情を浮かべるチンクの前に姿を現したのはディープダイバーによって地面から飛び上がってきたセイン。

ノーヴェからの応援要請を受けて隙を窺っていたセインは、ダイバードラゴンによる一撃でスバルを退けた上で登場。

そのままチンクの体を抱えてディープダイバーを発動したまま地面の下へと潜っていく。

 

「ギン…………姉……」

 

その光景を前に最早どうすることもできないスバルは、蓄積されたダメージと左腕の激痛により、

同じく機能を停止したマッハキャリバーと共にうつぶせに倒れ込んで意識を手放した。

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