狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き 作:LR-8717-FA
フェイトと別れた後、フリードに跨った状態でようやく機動六課隊舎へと戻ってきたエリオとキャロ。
だが、2人を待っていたのはあまりにも壮絶な、悲劇的な光景。
「そ、そんな……」
「酷い……!!」
炎の海に包まれる隊舎を前にしてはエリオもキャロも声を漏らすしかできない。
自分たちの大切な場所である機動六課、それをここまでボロボロにした者がいるということ。
その元凶は探すまでも無く、六課隊舎の上空に悠然と佇んでいた。
「あ、あれは……」
「あんな巨大なの……どうやって…………」
そしてそれを前にして2人の脳裏に過るのは驚愕と絶望。
白い怪鳥、アレスタルヴォーネのその巨体はキャロの駆るフリードのそれすらも上回る大きさ。
しかも周囲にはガジェットドローンやその他兵器の姿も見えず、ほぼ単機でこの惨状を作り出したに他ならない。
フェイトが共にいるならまだしも、たった2人でどうやってあんな怪物に立ち向かえばいいのかという諦めがエリオとキャロの感情を支配し始めていたのだ。
「あっ……待ってエリオ君、あそこっ!! ヴィヴィオが!!」
「あれは…………」
そんな中で叫ぶキャロが見つけ出したのが別の方向に飛んでいく飛行型ガジェットに跨る3つ程の人影。
以前市街地で戦った召喚士ルーテシアと彼女の駆る召喚蟲ガリュー、そのガリューに抱えられているのは……ヴィヴィオ。
その時、エリオの頭の中に浮かんだのは壮絶な過去の記憶。
泣き叫ぶ自分を拘束する数人の男たちと、自分の出自、それを聞いて何も答えずに自分を見捨てた両親の姿……
「!!――――ストラーダッ!! フォルムツヴァイッ!!!」
「エリオ君!?」
「キャロ、フォローお願い!! せめてヴィヴィオだけでも!!」
いきなりの行動に驚くキャロを他所にエリオはストラーダをデューゼンフォルムへと変えてそれに跨る。
「ブーストッ!!」
『Start!』
複数の噴射口による推力で限定的な飛行能力を得たそれを用いてエリオはルーテシアたちの方へと突撃していく。
目の前の惨状はどうであれ、敵の意図が何であれ、このままヴィヴィオが連れ去られるのを黙って見ていることなどエリオにはできなかった。
もう過去の自分の様な悲劇を繰り返させるわけにはいかない、そんな強い想いを込めての決死の一撃。
「…………!!」
「ぐぅあっ!!」
その一撃もそれに反応したガリューの一蹴によって叩き落とされてしまう。
エリオは尚も諦めることなく空中で留まり、回転と共にストラーダに勢いをつけて更なる追撃を試みる。
「どぉおけえええ!!」
「…………」
迫るエリオを迎撃するのはまたしてもガリュー。
右腕にスピアを展開しながらエリオに向かってガリューは突撃していく。
キィン!!
「…………」
「ぐあっ……!!」
一瞬の交差と響く金属音、ガリューは腕のスピアを真っ二つにおられ、エリオは右肩から血を流しその痛みに動きを止めてしまう。
その背後から迫っていたのはエリオを見下ろすように向けられていたいくつもの機械の眼光。
「マダネズミガ、マギレテイタヨウダナ……」
「エリオ君ッッッ!!」
涙声で叫ぶキャロの言葉も虚しく、エリオの上空へと移動していたアレスタルヴォーネの放つ複数の攻撃。
両翼の砲台から一斉に発射されたレーザー砲の攻撃、その全てがエリオに直撃して彼を海上へと叩き落としていた。
「あっ…………ああ……」
「ソノメニヤキツケルガイイ、コレガキサマラノタドル、オロカシイマツロダ」
絶望で声を上げる余裕すら残されていないキャロの前に立ち塞がるのは
エリオを迎撃した後、ゆっくりと振り返ったアレスタルヴォーネの巨体。
正面から見据えたその正に怪物としか言いようのない相手を前にキャロは何もすることができない。
そして次の瞬間、アレスタルヴォーネの放ったプラズマキャノンの閃光がフリードとキャロに迫っていた。
*
とある海上空域で相対している1人と1機。その戦闘もまた一方的な展開となっていた。
直立状態で浮遊する紅色の機体に対して、いくつもの翠色の弾丸から逃げ惑うようにして空中を飛び交うのは金色の閃光。
「ニゲルノデセイイッパイトイウトコロカ? フェイト・テスタロッサ」
「くうぅ……!!」
悔しげに呻きながら背後から高速で迫るいくつもの弾丸、リナスの放ったホーミングレーザーを回避していくフェイト。
ザンバーフォームのバルディッシュを両手に戦闘に臨んでいるフェイトが、戦闘開始からそれによって攻撃を行えたことは一度も無い。
相対直後に距離を置くように後方へと下がったリナスが取った行動は、背部ユニットから只管に誘導式のホーミングレーザーを発射し続けること。
「ダロウナ、カイリョウマエノワタシニスラカナワナカッタノダ、マスターニカイゾウサレ、サラナルチカラヲテニシタ、ワタシニカナウドウリナド、ナイ」
その数、威力、速度、誘導性能、描く軌道、どれを取っても付け入る隙が全く見当たらない。
元より以前の戦闘で相対したアンジェロ・リジネ1号機の改良型である、アンジェロ・リナスの最も大きな変更点がその増設されたホーミングレーザーなのだ。
右手に装備されたライフルの射撃制度ですら、以前にフェイトを十分に追い詰めていたというようにそれすら上回る攻撃量。
機動力に優れたフェイトですら回避に専念するしかできない、いやその回避すらまともに行えない程に追い込まれている。
『Plasma Lancer』
当然、フェイトも単に回避を繰り返すだけでは終わらない。
敵の僅かな攻撃の嵐の隙を縫うようにしてバルディッシュから放たれる超高速の直射弾。
敵機影とホーミングレーザーの弾丸双方を狙って放たれる金色の閃光。
「ナメルナヨ、ソンナカタテマドウゼンノコウゲキデ、マスタージマンノ、ワタシノサイコウノブキヲオトセルトオモッタカ?」
「ッ…………!!」
その攻撃すらも軌道を少し変えて襲い掛かったホーミングレーザーによって掻き消され、リナスへ到達する前に全て消滅。
プラズマランサーによる魔力弾は単純に見ても一発ごとがAA級の高い威力を誇り、発射後の誘導性能も可能な相当に高位の魔法である。
近接戦闘主体のフェイトが使っているとはいえ、それは並の魔導師が使う射撃魔法を大きく上回る性能を持っている。
そしてリナスの放つ無尽蔵に等しい量のホーミングレーザーの弾頭はそれすらも更に凌駕する力があるということ。
「くあっ……!!」
と、前方斜め下方向からぐねぐねと動きながら迫っていた別のホーミングレーザーの弾頭が2発、フェイトを掠めていく。
バリアジャケットの上からでも十分なダメージを与えていくその攻撃の苦痛にフェイトは表情を更に歪めてしまう。
ソニックムーブも含めた機動力上昇の為の魔法の多用によって魔力も大幅に消費し、額やバルディッシュを握る両手には多量の汗が滲んでいる。
以前のアンジェロ・リジネすらも超える圧倒的なまでの敵の性能、フェイト管理局内で戦ってきた中で今、最も追い込まれた状態にあった。
「マッタクガッカリダ、コレナラオイコムヒツヨウモナカッタカモシレンナ」
「え――なっ……!?」
「キヅキモシナイカ、カイヒニセンネンスルバカリデソコマデサンマンニナッテイルトハナ」
体力の消費によって注意力が散漫になっていたフェイトは気付かなかった。
今まで離れた位置から聞こえていた筈の機械音が自分のすぐ横に近づいていたこと。
その先に視線を向ければ左腕に形成したエネルギーブレードをフェイトの眼前に付きつけていたリナスの姿があったこと。
「くうっ!!」
咄嗟にバルディッシュを構えて防ごうとするも行動に移るのが遅すぎた。
まともな迎撃態勢ではなかったフェイトと攻撃に集中していたリナスの行動に圧倒的な差があったのは一目瞭然。
エネルギーブレードの一撃によってフェイトは吹き飛ばされ、ふらふらと高度を下げていく。
「アシモトガオルスニナッテイルナ、オロカナヤツメ」
「ぐあああああっ!!」
その間にも尚、リナスの放った大量のホーミングレーザーの攻撃の手が緩まることなど少しも無い。
リナスの放った一撃で今までどうにか保っていた回避行動が一気に崩れたフェイトに全方向から襲い掛かるいくつもの翠色の弾丸。
防壁を展開してもその破壊力の前では何ら意味を持たず、フェイトは敵の攻撃の嵐に成す術も無く飲み込まれていった。
連続して起こる爆発、そこから逃れる様にして一気に落下していくフェイトの姿。
「くっ……は……はぁ……はぁ……」
「ホウ? マダケンザイノヨウダナ、マア、ミテワカルクライニ、マンシンソウイダガ」
その途中で何とか踏みとどまり、バルディッシュを構え直しながらリナスの姿を捉えるフェイト。
しかし、リナスが言うように今のフェイトが誰の目から見ても明らかなくらいにボロボロである。
体の各所に傷があり、額からも多量の汗が流れ呼吸も荒い、バルディッシュを握る両手も下がり気味。
それでも尚、その両目に宿る強い意志だけは少しも損なわれていなかったが。
(でもどうする……!! このままじゃこっちが負けるのは時間の問題……はやてに頼んでリミッターを解除してもらうにも、それでも勝てるかどうか……!!)
だが、いくら気持ちを強く持とうとフェイト自身も分かっているように敵との実力差は圧倒的。
敵の攻撃をロクに回避できない上にダメージは全く与えられていない、その上今の自分は満身創痍。
何より、これまで分析してきた情報を考えれば例え自分が全力だったとしても確実に勝てる見込みが無かったということ。
敵の圧倒的な火力、攻撃精度、それらを踏まえてリミッター解除に踏み切った所で形勢逆転にまで至れるかどうか。
(くっ……こっちの見積もりが甘かったのかもしれない……なら、今すぐにでも……!!)
アンジェロ・リジネとの交戦からフェイトが何もしていなかったわけではない。
新人たちへの教導や自身の執務官としての仕事の僅かな合間を見つけては、フェイトも自己鍛錬や敵の分析は決して怠らなかった。
実力をセーブされている状態だとしても、敵の性能向上も踏まえての予測を何度も重ねてきていたのだ。
しかし、眼前に展開されているのは無情そのもの。管理局内でも有数の実力者であるフェイトですら追い込めるだけの兵器を敵は送り込んできたという現実。
ならばもう少しも迷っている暇は無い、フェイトはすぐさまはやてに通信を入れて現状の打破を考えるも、
「マアイイ、コロスマデハイカズトモ、コレイジョウイマノキサマニツキアウギリモナイノデナ」
「え――なっ……!!」
それだけの考えを導き行動に移すまでにフェイトが要した時間はそれこそ1秒にも満たない僅かな、刹那に等しい時間だったと言えよう。
しかし、その一瞬の時すらリナスという最高クラスの性能を持ったその紅色の機体にとっては十分すぎる隙となっていた。
フェイトが気付いた時にはもう遅い、彼女を取り囲んでいたのはいくつもの灰色の球状のユニット。
墜落から停止、次の行動に移るまでの間にリナスが放出し展開を終えていたそれらの銃口は全てフェイトに向けられている。
「サラバダ、プロジェクトFノサイショノイサンヨ。ナンバー3トナンバー7ニハ、キタイハズレダッタトツタエテオコウ」
何の感情も込められていないリナスが発した機械音と同時に背部の発射台からホーミングレーザーが追加で発射され。
それと同じようにユニットからも一斉に同質の弾頭がフェイト目掛けて一斉に放たれる。
その攻撃から逃れるべくフェイトは動こうとするが、今までの比ではないそのホーミングレーザーの弾丸の嵐は
既に逃げる場所などない程に隙間なく展開され、フェイトに向かってきていた。
ズドドドドドドッ!!!
次の瞬間、リナスの見下ろす先でそのホーミングレーザーの攻撃群が全てフェイトに直撃していく。
逃げることも防ぐことも、声を上げることすら叶わないフェイトはその攻撃に飲み込まれるままに墜落していった。
*
地上本部で、六課隊舎で、場所は違えど倒れていく機動六課の仲間たち。
「スバル!! ティアナ!! エリオッ!!! キャロッッ!!!」
(シャマルッ!! ザフィーラッッ!! みんな、しっかりしてください!!)
目に涙さえ浮かべてヴィータは叫ぶ、ベルリネッタの展開したモニターの先にいる仲間たちに向かって叫び続ける。
ヴィータの中にいたリインもまた同じことをしている。
その叫びは届くことなく、ヴィータの目の前に映し出されいるの無惨にも敗れ去った機動六課のメンバーだけ。
「フェイトッッ!! なのはッ!! おいなのはッッ!!! 頼む、返事してくれなのはぁッ!!」
戦闘機人に、無人兵器に、次々と撃破されていく光景を前にヴィータは何もできない無力感にとらわれて泣き叫ぶしかない。
まるでそれは8年前の焼き直し、倒れる仲間を前に自分は何もすることができないという現実。
ヴィータを支配していくのは絶望の感情ただ一色だけ。
『くふは……くふははははははッッ!! いい声で泣いてくれるじゃないの鉄槌の騎士ッ!! クアットロから聞いたとおりねッ!! こうやってちょっと煽ってやれば貴方はそうやって子供みたいに泣き叫ぶしかできないってねッッ!! 本当に最高だわッッ!!』
「……外道が」
「こ、ここまでする必要……あんのかよ……っ」
協力関係にあるゼストやアギトですらあからさまな嫌悪を浮かべるベルリネッタの狂気の笑みが響き渡る。
自分の新型兵器のお披露目ともう一つ、自らの快楽を満たすために行われたヴィータへの狂笑。
騎士道精神を重んじ、正々堂々を趣とするゼストに足止めをさせている間に他の場所を壊滅させ、その現実を突きつけて絶望させる。
たったそれだけの為にベルリネッタはホログラムを使って相手の感情をより煽るためにこうして姿を現していたのだった。
『ねえねえどんな気持ちッ!? 自分で守るって誓った仲間たちを結局こうやってまた死にかけさせてるッッ!! そんな無様な今の貴方はどんな気持ちなのかなッッッ!!』
「ッッ!! てんめぇええええええええ!!!!」
(いけません、ヴィータちゃん!!)
笑う、肩を竦めて両手を広げて少しも抑えることなく大声で笑い続けてヴィータを挑発するベルリネッタ。
仲間の惨状とその言葉の数々に、ヴィータの中の絶望の感情が一瞬にして理性を凌駕する膨大な怒りへと切り替わる。
リインの静止もお構いなしに、目の前にいるのがホログラムであるということすら忘れてヴィータは突撃していく。
ズブシュッ!!
「!!………ガッ……ハ……」
『本当に……本当に無様で滑稽だよねえ……!! だからこそ、貴方はまた何も守れない、あの時と、同じようにねッッ……!!』
だからこそヴィータは気付けなかった、自分の背後から迫っていたその敵の姿に。
自分の肉体を貫通するその一撃で紅い花を咲かせながら朦朧とする意識の中でヴィータが見たもの。
それは8年前に今の自分と同じようになのはのことを貫いた、忘れもしないあの敵の姿であった。
*
機動六課隊舎、未だに火の手が上がり続け多くの人たちが倒れているその場所で膝を着いて泣きじゃくる少女が1人。
「なんで……こんな……」
直撃の寸前でフリードが回避を行い、眼前に迫っていたプラズマキャノンを避けようと試みたのだが、それでも上に乗っていたキャロへの直撃をどうにかかわしただけに留まり、フリードはその閃光をモロに食らってそのまま墜落してしまっていた。
キャロもキャロでそれによって地上に投げ出され、その衝撃で身体各所にダメージを負っており、まとももに動けるような状態ではない。
「どうして……どうしてこんな酷いこと……!!」
シャマルが、ザフィーラが、他の多くの六課職員たちが自分たちの居場所を守ろうと戦っていた。
一緒にいたエリオもフリードもヴィヴィオを助けるために、自分を庇うために頑張ってくれた。
それでも尚、この地獄は晴れることなく、それを作り出した白い怪鳥は未だに健在である。
やっと見つけた自分の居場所、それを一方的に蹂躙されていく光景を前にしてキャロの中のある感情がふつふつと膨れ上がっていく。
「……竜騎召喚……ヴォルテーーーーール!!!!」
天を見上げて感情のまま泣き叫ぶキャロのその声に呼応するかのように彼女の背後に現れるのは巨大な召喚魔法陣
六課隊舎を焼く炎すらも上回る巨大な火柱を伴って姿を現すのは四枚の羽を広げる巨大な黒竜の姿。
アルザスの地の守護竜、大地の守護者、キャロの持つ最大の切り札、召喚竜、ヴォルテール。
「壊さないで……!! 私達の居場所を……!! 壊さないでぇええええええッッ!!!!」
キャロの心の底からの感情の叫びに呼応してヴォルテールが行うのは魔力の集束。
溜めこめられたそれが3つの炎熱となって放たれる、咆哮する炎、ギオ・エルガの一撃。
3つの火炎の渦が向かっていくは、キャロの守りたかった居場所を燃やし尽くした元凶、白い怪鳥、アレスタルヴォーネの巨体。
「……ココニキテ、コンナモノガデテクルトハナ、マスターモ、オヨロコビニナロウ」
その攻撃すらアレスタルヴォーネは臆することなく機械的に対応していく。
眼前まで迫っていたその炎にぶつけるのは、主砲の砲口前に形成した黒いスフィア。
機動六課に最も甚大なダメージを与えたそれはアレスタルヴォーネのすぐ近辺でギオ・エルガの火炎と拮抗し、そのサイズを急激に巨大化させていく。
キャロの切り札、ヴォルテールの一撃、それにすらも対応して見せる火力をアレスタルヴォーネは持っていたのだ。
「スバラシイナ……」
最後に発せられた機械音は搭載されたAIの本心か、それともこれを見ているだろうマスターに向けての物だったのか。
ギオ・エルガと黒いスフィアは互いにその莫大なエネルギーを伴ったまま空中で大爆発。
そこから生じた圧倒的な衝撃によってアレスタルヴォーネの巨体すらも大きく吹き飛ばし、そのまま海上へと叩きつけていた。
*
混乱の収まらぬミッド地上に響き渡るのは2人の狂気の科学者の高らかな宣言。
いくつものモニターと共にスカリエッティとベルリネッタは狂ったように言葉を発し続ける。
『ミッドチルダ地上の管理局員諸君、私と親愛なる妹からの細やかなプレゼント、気に入ってくれたかな?』
『滑稽だよねえ、本当に滑稽だよねえッッ!! 治安維持だとかロストロギア規制だとかそんなくだらない理由で力を抑制して怠けていたツケがこれなんだからさッッッ!!』
『まあ、今日のこれはそんな現状に憂いていた私と妹からの恨みの一撃だとでも思ってくれたまえ……!!』
地上本部施設でそれを見ているはやても、カリムも、レジアスも、オーリスも、
その他多くの局員たちも誰一人として声を上げることができない。
今の自分たちと周囲で繰り広げられている惨状が、彼らを止めることができなかったという証明でしかなかったのだから。
『でもでも忘れないことだよ? この惨劇を望んでいたのは他でも無い……貴方達管理局そのものだっていうことをさッッ!! それを私も兄さんも忠実に実行しただけなんだからねえッッ!!』
『そうとも……私たちも君たちと同じように人間を愛し命を愛する者……だから直接的に命を奪うような真似は極力控えたとも』
『ま、巻き込まれて勝手に死んだ能無しは知ったこっちゃないけど?』
『忌むべき敵を一方的に蹂躙できるこの技術が欲しければ……いつでも私達に依頼をくれたまえよ?』
『現品そのままってわけにはいかなけど……まあ今の貴方達の技術を超える劣化コピー程度ならいくらでもくれてやるからさッッ!!』
『フフハハ…………アハハハハハ……アーーーッハッハッハッハッハッハッ!!!!』
『くふはははははッ!!! はははははははははッッッ!!!!』
スカリエッティが笑う、ベルリネッタも笑う、2人の科学者の狂笑がモニターを通して響き続ける。
中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ちる……その予言が最悪の形で的中したことを告げているかのように。
◆アンジェロ・リナス
総合性能重視の人型無人兵器、アンジェロシリーズ、その試作機リジネの1号機を改造して生み出された最新型の1つ。
紅色のカラーリングにより有機的になった背部の両翼以外は外観に大きな変更点は無い。
しかし、テスト段階にあったリジネから各種基礎性能は大幅に底上げされており、
予測データとしてはリミッターを解除した六課隊長陣とも互角に渡り合えるとされている。
また、内蔵されているAIもリジネからより発達した高度な物へと置き換えられている。
武装はリジネと共通の右腕の連射式ライフルと左腕のシールドに内蔵されたエネルギーブレード。
それに加えて本機最大の目玉武装が機体背部に内蔵された発射台から放たれるホーミングレーザーと複数の無線式ユニット。
このホーミングレーザーは一発ごとの威力、誘導性能、速度といった各種スペックがかなりの高レベルであり
それでいて一度に大量の発射が可能という優れものである。
機体内部に装填された無線式ユニットから放たれるのも同質の性能であり、
機体本体と散らばったユニットから展開される手数の多さはSランク魔導師であろうと容易く捉えることができる。
アンジェロシリーズの改良プランの1つ、攻撃量を重視しての射撃強化プランの完成体。
◆ルチフェロ・フィーネ
アンジェロ・リナスと同じようにリジネの2号機を改造して作られた最新型の1つ。
漆黒のカラーリングと巨大な黒翼、そして細長くなった筒状のバインダーという禍々しい外観となっている。
リナスと同様に基礎性能の時点でリジネを大きく上回る改造が施されており、その時点でかなりのハイスペック。
やはりリミッター解除状態の六課隊長陣相手でも全く引けを取らない予測データが挙がっている。
AIもリナスと同じでより高度な自己判断を可能とする発展型。
武装もリジネと共通の物に加えて、改造されたバインダーのエネルギーを利用して放たれる各種攻撃が特徴となっている。
散弾タイプのネロ・スフェラはエネルギー集束後に多数の黒いスフィア弾丸を発射。
細かな誘導制御は効かない物の、一発ごとの威力はリナスのホーミングレーザーすらも大きく上回る威力となっている
集束タイプのネロ・リネアはため込んだエネルギーをそのまま黒い閃光の砲撃として放つ。
従来の火力偏重型兵器の主力武器と比べてもチャージ時間が大幅に短縮されている上に、
それでいて威力はSランクオーバーとかなりの高性能となっている。
アンジェロシリーズの改良プランの1つ、攻撃種類と最大火力に優れた多機能搭載型の射撃強化プランの完成系。