狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第3話:多対単でも圧倒する弾丸

「前々から聞きたかったんだけどさ兄さん……10二連」

「どうしたのだい? 愛しい私の妹よ……Kで二連」

「あっら~それじゃあ私は2で二連です~」

「うげ……勝てるわけないじゃん、パスで」

 

地上部隊の実験用プラント襲撃から早2年程、その後も特に問題なく私たちは研究を進めている。

とはいっても何も私達は年がら年中研究漬けの日々というわけでも無く、たまには息抜きもしたくなるわけであって。

 

「クアットロやセインもそうだけどさ、何で服装があんなボディラインくっきりのピチピチスーツなのさ? 兄さんってそういう趣味?」

「えっ? ドクターってそういう考えで私達を作ってたの? あ、10の三連で」

「人聞きの悪い事言わないでおくれ、私の作品たちがああゆう格好をしているのもきちんと実用性を兼ねてのことだよ」

「そうですわよカティちゃん、私達が着用しているこのスーツは耐衝撃、耐熱、基礎能力の底上げ、その他諸々の機能が付随された優れものなんですよ~」

「ふーん、にしたってもうちょい見た目を気にした方がいいとは思うけどねえ妹ながら。A三連」

「げげっ、カティ手札強すぎだよー、またパス……」

 

アジトのとある一室で手の空いている人員でテーブルを囲んでカードゲームに興じてるなんて普段の私たちとのギャップが物凄い強いという自覚はある。

でも仕方ないもの、私だって大好きな機械弄りなら24時間休みなく続けたって別に少しも問題ないって思っているが、

それでも飽きを全く感じないというわけでも無いし、他の刺激が欲しくなることだってあるんだから。

尤も、そのメンバーがマッド科学者にその妹、陰険メガネに生け贄というもう何か色々とアレなメンツなんだけどさ。

 

「今、何か失礼なことを考えていませんでしたかカティちゃん~? あ、上がりです~」

「気のせいだと思うわよクアットロ、ほい」

「う……またパス」

「ふむ、では私も上がりだ」

「ほいきた、それじゃ私も上がりで」

「うう……うがーっ!! また私が大貧民じゃん!! これでもう5回連続だよ!? 何なのこの理不尽は!?」

 

とりあえず頭を抱えてトランプを放り出すセインの姿が見ていてとっても面白い。

大抵カードゲームというのは多人数戦になるとどういうわけか決まって一方的にハメられる生け贄が1人くらい現れるものだ。

私と兄さんとクアットロ、そして根が単純なセインでは必然的に彼女が犠牲になるのが自然な流れなわけで。

いやー、全然手札が減らずに悶え苦しんでる顔を見るのは何ともそそられるものがある。悪趣味? 自覚はしてるとも。

 

「しょうがないわよ~、セインちゃんは根が素直で単純で考え丸出しの良い子なんだからあ、私達相手じゃ先の手が筒抜けなんだもの~」

「そ、それ、全く全然褒めてない! っていうか絶対貶してるよねクア姉!?」

 

で、涙目のセインに実によい笑顔で容赦なく追い打ちをかけるのはさっき言った陰険メガネ。

兄さんの作品その4、戦闘機人の1人、クアットロ。

前線での戦闘能力最強をトーレとするなら、彼女は情報処理、電子方面での能力に絶大な力を持つ後方支援型の最強と言っていい存在。

彼女の固有能力であるシルバーカーテンはレーダーや電子機器類を含めたあらゆるを騙し惑わす幻覚能力。

自らの手を汚さず敵を自らの手のひらで躍らせ、戦わずしての勝利をもぎ取って見せる、故に私の中での通称が陰険メガネ。

 

「クアットロの言う通りよセイン。貴方は根が単純で良い子なんだからそこは素直に喜びなさい、それにそういう子をいじめると可愛いし楽しいし」

「あ~らあ、カティちゃんもわかりますかあ? この快感が」

「うわああああん!! ドクター何とかしてよ~!! カティもクア姉も鬼畜すぎるよぉ!!」

「ははは、いいじゃないかセイン。変に嫌われて距離を取られるよりはよほど愛されていると思うがね」

 

だがそれ以上に特筆すべきは彼女自身の人柄、その性格面であろう。

能力がそうであるように彼女もまた実に気持ちの良い、表の世界で言えば腹黒い性格の持ち主であることは言い切れる。

何せ彼女の楽しみの一つが「弱者や無力な者を手のひらで転がし好きなように蹂躙し、苦しんでいる様を見ること」だと言えばそれもわかると思う。

生みの親である兄さんや戦闘機人の先立ちであるウーノ、彼女の教育係のドゥーエなどを除いてその他の全てを見下している節すらあるんだから。

これを陰険と言わずに何と呼べというのか、表の世界だったら絶対に友達出来ない性格だと思うよホント。

 

「2年前の襲撃の時もとってもいい顔するようになりましたもんね~やっぱり無抵抗の相手をぶっ潰すのは何にも勝る快楽になりますもの~」

「まあね、あの時のことは私もホントよく覚えてるよ。自分らの隊長がやられて隙だらけの所を後ろからズドン。いやあ惨めにアジトの通路を転がっていったのはたまんなかったよね」

 

そんな彼女の好みを理解できるどころか共感さえ抱いているのだから私も大差ない存在なんだろうけど。

言ってしまえばクアットロは最も生みの親、つまりは兄さんに近い素体だとも言える戦闘機人の完成系だ。

一部例外が存在するとはいえ、基本的に周りの全ては自分の道具、自らの目的を果たし欲を満たす為なら何を犠牲にしようと構わない。

それが兄さんと、そして私の根底にもある思考であり、それに似通った行動原理を持つクアットロこそ、私達の仲間として一番相応しいのかもしれない。

まあそもそもこの場にいる私達全員が生を受けた時点で、一般で言うところのまともに分類されるなんて絶対にありえないんだけどね。

 

「うぅ~……カードのことはいいよもう。それよりもドクター、もうすぐ新しい子が完成するんだったよね?」

「ああ……ナンバー9ノーヴェの完成は間もなくだ。それに続いてナンバー11、ウェンディの製作も順調に進んでいる」

「兄さんの研究もだいぶ進んできているわよね、9と11が目覚めれば早9人目か。ホントどこの大家族って感じ」

 

標的にされてるセインの唐突すぎる話題転換だけどまあ別に気にしない、あんまり苛めすぎても可哀想だし。

兄さんの言っている通りセインに続く新しい戦闘機人が完成を間近に控えている。

製作過程の関係で7と8をすっ飛ばしてだが、ナンバー9となるノーヴェは夏頃には稼働する予定となっている。

続いてナンバー11のウェンディもノーヴェに次いで製作が進んでおり、2年もすれば完成する見通しだ。

 

「にしてもノーヴェのベースになった遺伝子があの青髪ナックル魔導師だったんだっけ? 私も聞いた時はちょっと意外だったかな、あんなのでも役立つ部分はあると」

「んふふ~ドクターの研究の成果の一翼を担えたのだから感謝しないといけませんわね~。きっと元よりもずっと強い子になりますわよ」

 

リノチェキロンの主砲の一撃で息の根刈り取ったクイントとか言ったあの魔導師だが、兄さんとしてもとんだ拾い物だったらしい。

あの時の戦闘の一幕で分かるようにあの魔導師は近接戦闘においてなかなかの実力を発揮していた魔導師。

そこに目を付けた兄さんがプラントの戦闘跡地から彼女の血液を採取、それを戦闘機人実験に組み込んでみたという話。

で、そのおかげで結果的にナンバー9の研究速度が飛躍的に進んだという結果が挙がっているのだから万々歳であろう。

兄さんの役に立ったというだけでもまあ良かったのかな? なんて、今自分で凄い悪いこと言ってる気がする、うふふ。

 

「2年前の部隊といえばなんだけど兄さん、人造魔導師の方についてはどうなのさ。脳みそトリオも言ってたけどあのゼストってのは結構良い感じの材料だったんでしょ?」

「その通りだよカティーナ、彼を無事に目覚めさせることが出来ればとても素晴らしい作品となりうる……Sランク魔導師の量産、考えるだけでも胸が躍るものじゃあないか?」

「ドクターならそれくらいのこともお茶の子さいさいですわよねえ、もう1人の方は役立たずで終わりそうですがウーノ姉様がその子供を連れてくるみたいですし~」

 

チンクが撃破したあの部隊の隊長、ゼスト・グランガイツと言ったか、彼もまた兄さんの研究素体として保管されている。

戦闘機人計画よりも遅れの生じている人造魔導師計画であるが、こっちも軌道に乗れさえすればまた安定した戦力の確保に繋がることは間違いない。

管理局が絶対視している魔法の力、それは未だに一部の選ばれた者にしか発現せず、その中で優秀と称されるのは更に一握り。

そんな不安定極まりない戦力の安定化を目指しているのが人造魔導師や戦闘機人なんだから、寧ろ兄さんには感謝してほしいくらいじゃないかという。

クアットロの言っているように兄さんの研究はやりよう次第では世界の為になる研究であるとも言えるんだから。

まあ、ぶっちゃけた話管理局やミッド地上の平和だの戦力だのっていうのに一切合財興味は湧かないんだけども。

 

「うっわあ相変わらず悪そうな顔してるねドクターもクア姉も……そういえばカティの方はどうなの? 最近の研究は順調?」

「順調も何も私はいつでも好き勝手やらせてもらってるだけよ。試したいけど埃を被ってるメカだってまだ結構残ってるしね」

「カティちゃんはドクターの妹ですもの~地上のゴミどもなんて簡単に吹っ飛ばせる兵器もいっぱい作れますしねえ?」

 

クアットロの言葉を敢えて否定する必要も無い。だがもっと言えば地上の人間を積極的に潰すとかそういうのはあまり関係ない。

私は私の気の赴くままに色々なメカを開発し、そして実戦という形で試してみたいという欲望のままに動いているだけ。

その過程で地上の無力な命や関係ない命がいくら犠牲になろうがなるまいが心底どうでもいいとしか思ってない。

というかクアットロと同じく、自分の作った成果で敵を蹂躙し絶望させ一方的に屠ることもまた私の楽しみなんだから。

 

「地上用の制圧兵器はいくつかいいのが揃ってるから後は空戦戦力なんだよねえ、チェロクア・ピューマはいい感じに出来上がってきてるけどあれも結局は火力偏重型だし」

「うーん、確かにカティの作ってる奴って今の所みんな火力特化型だもんね」

「セインもそう思うでしょ? だから一度くらいはトーレのような機動力重視のヤツを作ってみたいなあって感じで進めてるのがあるんだけどさ」

「なに、私の妹である君なら少々時間はかかれど造作も無い事さカティーナ。君の発明は私と同じ、世界をメチャクチャにしても尚余る楽しみのための物なのだからね」

 

また偉く物騒な物言いである兄さんの言葉だけどそれもまた事実なんだから否定しようがない。

私はジェイル・スカリエッティという狂気の天才の妹として存在している、それもまた1つの真実。

私の作るメカは大半が趣味の範疇で実用性重視とは言い難いけど、かといってそんじょそこらの雑魚に負けるような出来損ないを量産したって何の得にもならない。

チェロクアのプラズマキャノンがAAAランクと同等という時点で改善の余地は大いにあるのだから。

火力に関しては砲門の絶対数を増やすことでも解決するが、やはり単一火力でSランクオーバーは軽く叩き出せるようにしたいよねと。

そんで更に今の研究課題は機動性重視のメカ。そもそも私自身が圧倒的火力で全部ぶっ潰すのが好きっていうのもあるけど、

だからといって何でもかんでもロマン火力系のメカばかりでも相手によっては動く的にしかならない可能性だってゼロではないんだから。

そんな感じで機動力を重視したメカを1台、殆ど試作段階とはいえ製作中だったりするんだけど。

 

『お楽しみの所を申し訳ありませんが、ドクター、緊急の通信が入っております』

 

などと自分の研究状況についてあれこれ考えている矢先にモニター通信が繋がり出てくるのはいつものウーノ。

相も変わらず落ち着き取り払った声だが何やら急ぎの用事が入って来たらしくて。

これはもしかするともしかするかもしれないぞ、うん。

 

「おや? わざわざこのアジトに向けて緊急通信とは何事かな」

『我々と協力関係にある違法魔導師……現在、管理局の首都航空隊の魔導師に追跡されているとのことです』

「そんな役立たずのことなんて放っておけばいいのではないですかあウーノ姉様~?」

『今回ばかりはそうも言ってられないわクアットロ、この男はガジェットドローンの実験データ収集も含めてそれなりに私達の繋がりがあるの、万一のことを考えるとただ見捨てるというわけにもいかないでしょう』

 

別のモニターに映し出されているのは管理局でもマークされている1級犯罪者のある違法魔導師。

兄さんや私自身の研究の捨て駒として、脳みそトリオに支障が出ない程度にこうした裏での人脈もある程度築いていたりもするのである。

それでその裏のつながりの1人がヘマやらかしてヘルプを求めていると、全く何て情けない。

本来ならそんな役立たずさっさととっ捕まって迷惑をかけない程度に消えてくれと言いたくなるのが本音なんだけど、

今回はウーノさんの言うように完全無視というわけにもいかない。

当然最低限の情報しか握らせてないから例え管理局に捕縛されたところで、そこから私達に辿り着くなんてことはまずありえないがこれまたゼロとも言えない。

であるなら先に出向いて消すか、追ってきている魔導師の方を潰すかのどっちかってことになるんだけど。

 

「……よし、救援信号と座標の位置データはわかってるよね、なら私が出向くとしましょうか」

『貴方がですか、カティ? しかし首都航空隊の手練れとはいえわざわざ貴方の作品を持ち出すほどのことでもないと思いますが』

「ちっちっちっ、だからこそだよウーノ。単体戦力相手でも過剰戦力で全力で叩き潰す、それ、私のポリシー」

「なあんて尤もらしいこと言ってますけど~要は弱い者いじめして遊びたいってだけよねえカティちゃん?」

「正解♪ グーよクアットロ、グー」

 

両手の親指を突き出してグーのポーズを取るなんてしてはっちゃけてみたり。

うん、久々の実戦機会だし作ったまま埃被ってる子たちをいくつか表で暴れさせたいってだけなんだよね。

単体戦力に過剰戦力とか残酷だって? 大いに結構、勝てるか勝てないかのギリギリの戦いなんてのを楽しむ趣味は無いんで。

試作兵器の実験ならともかく、最初から勝ち目の薄い戦いに自分から望んで行こうとするようなマゾ属性持ち合わせてませんので。

それに私、痛いの大嫌いだし。基本モニター越しだから痛いなんてことはまずありえないんだけどさ。

 

『ふう……仕方ありませんがまあ、この程度の案件なら誰を出しても同じでしょうし、いいでしょう、貴方に任せますカティ』

「了解だよ、話が早くて助かるよウーノ、じゃあ早速いつも通り準備と行きますかね」

 

ウーノの方としても今回のヘルプコールの意図とその先どうすればいいのかくらいは把握している。

最悪のシナリオがまともな状態のまま管理局側に捕縛されてしまうというシナリオに他ならない。

つまりその最悪さえ回避できるのなら、後はどう遊んでも構わない(●●●●●●●●●●●●)、と、つまりはそういうことなのだから。

 

「ククク……いい顔をするようになってきたじゃないかカティーナ。君の兄として実に嬉しいことだよ」

「ん、まあ私は私のしたいようにいつも通りやってくるだけだよ兄さん。その為に兄さんからこれも貰ったことなんだしさ」

 

心底楽しそうな狂気的な笑みを浮かべてくる自分の兄に負けじと笑い返してみたり。

そして見せびらかすように自分で言ったコレ――左手に装着されたカギ爪型の特化型デバイスを掲げて見せた。

 

 

 

*

 

 

 

で、舞台はあっという間に移り変わって例の違法魔導師との合流地点、ヘルプコールに快く出てやった後、こっちのサポートである地点へと転移させる。

そして、予めこっちのラボから転送を完了させた私の作品たちの配置場所へと移動させておいたんだけど。

 

『…………ガ………………ィギッ……』

「うーん、我ながらちょっと加減を間違えたかなあ? いくら撒き餌にするって目的とはいえここまでポンコツになるとは思わなかったよ、反省反省」

 

追跡してきてる敵の魔導師を誘い込むまで暇だったから、少々『まともではないやり方』で件の違法魔導師で遊んでたんだけど、

2分も持たない内に廃人同然になっちゃいました。うん、やっぱり兄さんやクアットロみたいに生体相手の遊びはまだまだ未熟なんだね私ってば。

まあそれはそれとして、肝心のターゲットがこんな状態になっている以上、既に目的は達成されたと言っても間違いじゃなかったりする。

今回の目的は飽くまで口封じ、目的となるターゲットがまともに言葉も話せない状態なのだから管理局に捕まろうが何しようがどうでもいい。

 

「でもそれじゃあ面白くないんだよねえ、大型2つに試作機1つ、魔導師1人相手にどれだけ持つかはわからないけどせっかく持ち出したんだから使っておかないとくたびれ損だし」

 

モニターの先に映っているのはかなり広大なドーム状の建造物の内部、廃人状態の違法魔導師に今回用意した私のメカがいくつか。

敢えて生かしているのも魔力反応を消さずに追っ手に対する釣りエサとして使っているに過ぎない。

わざわざそうしているのだからこのまま何もせずにメカたちをこっちに呼び戻すだけでお終いじゃ単なる二度手間なのだ。

せっかくだし少しはお楽しみしてから終えたいよねって感じであって。

 

「ま、その心配も杞憂で済みそうなんだけどさ。おいでなすったおいでなすった」

 

モニターのレーダーに映るのは自分の用意した物とは別の紅点、つまりは件の違法魔導師を追ってやってきた管理局員。

一度こっちで転移させたのにもう追いつくとはよほど優秀なのだろうか。尤も、その優秀さが仇となるだろうけど。

そして数分もしない後、建物の入り口が勢いよく開かれて突入してくるのは1人の年若い男性魔導師。

 

『!?……これは、どこからこんな巨大兵器を…………!!』

「いらっしゃいませー、ようこそお越しくださいましたって感じだねえ」

 

モニター越しに音声で伝えてやるように既に目の前の魔導師は既にこっちのテリトリーの中、後は好きなように料理するだけ。

正直な話すぐに回れ右して応援を呼びに行くっていうのが一番確実な方法なんだろうね向こうさんとしては。

まあ、そんなのたくたやってればこっちが違法魔導師を連れて遠くに逃げてしまうっていう予想もしちゃうだろうけど、そんな気更々無いんだけど。

 

『……その声の主に告げる、時空管理局、首都航空隊所属、ティーダ・ランスター一等空尉。お前はそこにいる魔導師の協力者か?』

「その通り、って言ったところでどうするつもりなのかな? 尻尾巻いて逃げるも良し、無謀に戦うのも良し。好きにすればいいと思うんだな」

『……だと言うのなら、管理局員としてやるべきことをやらせてもらう!!』

 

 

 

ズドォン!!

 

 

 

「ふふん……クイックショットとはなかなか味な真似してくれるねえ」

 

言うなり首都高躯体の魔導師、ティーダが瞬時に超加速を行ってこっちの兵器の片方の主砲を2つほど潰して見せたりするからこれまた驚き。

今回用意した地上防衛用、專圧用の大型無人兵器のタルーガなんだけど、これまた火力と装甲に特化した戦車タイプ。

リノチェキロンみたいな長距離砲撃は出来ないけど、その分主砲の砲門数を増やして他にも大量のミサイルやら迎撃機銃やらを積み込んでみたり。

因みに今回持ち出したのは2つ、ローネタイプとリージョタイプってのなんだけど、武装が異なるだけで基本スペックは同じ。

機動力は皆無な分、足を止めての面制圧には打ってつけのメカなんだけどさ。

 

『シューーートッ!!』

 

目の前にいるティーダ・ランスターの動きがもう凄いのなんの。

一等空尉という肩書が詐欺臭くなるような縦横無尽の飛び回りと正確無比な射撃の連続。

こっちはさっきから主砲やらレーザーやらミサイルやらを大量に撃ちまくっているって言うのに。

その雨霰を避けるわ防ぐわ手に持ってる銃型デバイスの射撃で撃ち落としまくるわで八面六臂の大活躍。

 

「とはいえ、その程度の弾丸じゃあタルーガの装甲を撃ち抜くには火力が足りないみたいだけどねえ」

『ぃ……!!』

 

忌々しげに呻きながらも攻撃と回避の手は全く緩めないのだから流石と言ったところか。

ローネタイプの実弾キャノンがティーダを狙い撃っても地面を抉るだけだし、それに続いてリージョタイプの多連レーザーも相手に当たらず天井を焼くだけ。

 

『なら……そこだっ!!』

 

そしてもって敵の攻撃の正確性もほんの数分の交戦の間に益々正確性を増してきているのだからこっちとしても意外。

装甲を貫けないとわかったら、今度はこっちの武装を無力化する方向で攻め手を変えてくる辺り頭の回転もとっても早い。

こちらの攻撃を的確に捌きながら次々と魔力弾を撃ちまくって撃ちまくってタルーガの武装に命中させていく。

 

「おっと主砲がまた破損、ミサイルランチャー発射台もまた1つ、いやあ凄い、正直侮ってなあ、うん」

 

自作兵器の中では比較的古いタイプだったとはいえ、まさか魔導師1人に殆ど潰されるとはまたしても驚き。

数年前のなのはちゃんもそうだけど単体でこれだけの実力を発揮できるとかホント、管理局にはたまに化け物がいるから恐ろしいもんだ。

現にこのタルーガだって1機だけでも十分に並の魔導師数十人を相手にし、制圧するのに十分なスペックを持っていた筈なのに、

僅か数分の攻防の内にこっちの兵器の構造を大まかに理解し、武装の弱い部分を正確に撃ち貫いて無効化していく。

いやはや全く恐ろしい才能だよ、射撃戦に関しては相当なエリート、エキスパートなんだろうねこのランスターという魔導師は。

 

『せやああ!!』

 

と、余計なことを考えている間に死角から放たれたカートリッジロードからの連続射撃でまた主砲が破損。

気付いてみれば2機のタルーガの殆どの武装が無力化され、残ってるのは接近用の迎撃機銃くらいという有様。

お見事、今回ばかりは自分の兵器がいともも容易く潰されたことよりも相手の力量を素直に褒めたくなる。

 

『はあ……はあ……これで殆ど片付いたな、これだけの兵器を用意できるという時点でお前たちを無視するわけにはいかない。この魔導師を捕縛してからすぐに追わせてもらうぞ』

「うんうん、こっちとしても驚きだよ。タルーガはもっと火力の充実と装甲の強化が急務だねこれは、それに」

 

とはいえ本来のスペックでならそれだけの過剰戦力の武装を単独で大半潰したとあればその為の消費魔力も推して知るべし。

であるなら、更に追加の戦力を送り込んだりして見ればこっちが楽に勝てちゃうのは道理なわけであって。

 

 

 

……ギュルルルル

 

 

 

『何、新手……!! ぐおあっ!』

「せっかくなんでもう少しだけ実験に付き合ってもらおうかなあ、これで生きてれば後は好きに帰るなりなんなりしていいからさ」

 

それをわかった上で待機させていたもう1機、件の機動力特化型の試作機を送り込んでみたり。

先端が鋭く尖った鳥型フォルムのそれは猛獣の呻きにも似た機械音を発しながら空中に留まっている。

すれ違い様にティーダの肩を脚部のカギ爪で切り裂いてみたり。

 

『くそっ……シューート!!』

「無駄無駄、さっきまでの火力バカとは真逆の発想の兵器なんだもん、適当に撃ったところで当たったりはしないんだよコレが」

『早い……うぐっ!!』

 

魔力消費が激しいってのもある故、明らかにさっきまでとは回避速度も射撃の正確性にも低下が見られている。

尤も、万全の状態だったとしてもこの試作兵器は装甲を削りに削って機動力に特化させた代物。

これで追いつかれたりしたら流石に私もショックだったりする。

といっても、今の攻撃と動きでその心配ももう無いだろうという確信は持てたんだけどさ。

 

「ほーらほら、もっと頑張って動かないと、でないと当てられないし避けられないしでいっぱいいっぱいだよ?」

『ぐうう……く、くそっ……!!』

 

生殺しもいいところとは正にこのこと。

機動力だけを追求した結果、攻撃手段が体当たりしかないんだけど消耗した魔導師1人相手ならそれでも十分。

苦痛の表情を浮かべながら必死に攻撃を掻い潜り、こっちに攻撃を当てようとするが今度はまるで当たらない。

現状魔力を消耗した状態でもかなりのスピードは出てるのにこっちの兵器はそれを遥かに上回る。

敵の弾丸を華麗に避けながら脚部のカギ爪でチクチクと相手の腕を足を、至る所を痛めつけていく。

さっきまで自信満々にこっちを追い詰めていた相手があっという間にこっちの手の内でされるがまま……何と一方的で楽しい光景なんでしょうねこれ。

 

「ほい、もう一発、足頂きだよ」

『ぐあっ……!!』

 

既に満身創痍で動きもだいぶ鈍っているところに相手の両足めがけて高速アタック。

その衝撃に吹っ飛ばされてティーダ・ランスターは墜落。

うん、これくらいで十分かな。こっちとしては楽しいんだけどあんまり長々やってると本当に増援に来られても面倒だから。

 

「というわけでまあそこそこ楽しかったかな。そんじゃさようなら、ティーダ・ランスター」

『がはっ……ぜえ――――!!!』

 

 

 

ザシュウ!!

 

 

 

地面に倒れ伏したティーダ目掛けて一直線に突っ込んでいくこっちの試作兵器。

成す術も無くクリーンヒットし、機体先端の尖った部分が相手の腹部に突き刺さる。

鮮血を撒き散らしながらそのままされるがままに付き飛ばされて壁へと激突。

うん、これはもう助からないね。ご愁傷様ってやつかな。

違法魔導師の捕縛を優先しないで素直に引いてから応援と一緒にまた追い直せば良かったのにねえ。

 

『…………ティ……アナ……す…まない……』

 

事切れる寸前に誰かの名前を呟いたような気がしたがそれもまたすぐに記憶から消えたことだ。

その後は破損したタルーガ2機と試作兵器を転送して回収。

 

 

 

その後、エサ代わりとして捨て置いた廃人同然の違法魔導師を後続の局員が捕縛したり、件のティーダ・ランスターの殉職について何かゴタゴタがあったりしたらしいが、

それもまた私には関係の無いことだ。




◆ローネ・タルーガ
◆リージョ・タルーガ

基礎設計自体はリノチェキロンよりも前に完成していた地上制圧、拠点防衛用目的の無人兵器。
面制圧火力と装甲に特化した機体だが、空戦魔導師相手だとリノチェキロン以上に頑丈な的になるだけの場合もあり。
共通の武装は多量のミサイルランチャーと迎撃用機銃、加えてローネタイプは実弾式キャノン、リージョタイプはレーザー砲を主力武器としている。
火力に関しては折り紙付きであり接近を許さなければその面制圧力は凄まじい物がある、それも当たればの話だが。


◆機動性特化型試作兵器

詳細不明。鳥型のフォルムをしており、名称通りにスピードに優れる。
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