狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第34話:狂気の本祭、Part7

ゆりかご周辺の空域では未だに激闘が続いている。

発着点の大半を潰しながらも尚も止まることなく出現していくガジェットドローン。

それに混じるようにして幾度も姿を現していくベルリネッタの無人兵器。

ゆりかご本体の武装も合わせて管理局側の消耗も大きかったが、それでもはやての指揮の下、局員たちは諦めることなく戦い続ける。

 

『次元航行部隊到着まであと45分、ゆりかごの軌道上到達予想時間まで残り38分……』

「7分差……それだけあればお釣りが来るやろうな」

 

その激闘の最中ではやてが通信の先でロングアーチに確認していたのがタイムリミットまでの残り時間。

中に入っていったなのはたち3人からの吉報は未だ無く、ゆりかごの浮上速度も変わらぬまま。

本局ではクロノの指揮の下、急ピッチで艦隊がこちらにむかっているそうだが、それでも残りの時間差を埋め尽くすには至らない。

このまま手をこまねいていればゆりかごの到達の方が速い可能性が非常に高い。

外での戦いも重要とはいえ、当初と比べれば敵の勢いもだいぶ落ち着いてきている。

ならば内部での詳しい戦況がわからない以上、リスクを負ってでも飛びこまなくてはいけない、はやてはそう判断した。

 

「防衛ライン、現状維持!! 誰か指揮交代や、今から私も突入する!!」

『八神部隊長!!』

「軌道上になんて上がらせへん……あんな連中に地上を好き勝手させるわけにはいかない!!」

 

ここまでの自身の消耗がどうであろうと、はやてもまたその進攻を止める為の一矢としてゆりかごへと向かう。

内部で渦巻く膨大な悪意、それを打ち払うために。

 

 

 

*

 

 

 

ゆりかご内部、玉座の間。

そこで行われている戦闘は正に一方的と呼ぶに相応しい様相を呈していた。

 

「………………」

「あ……ぅ……」

 

クアットロの制御下で聖王としての力を十全に振るっているヴィヴィオは文字通り完全無欠に等しい力を誇っていた。

それを証明するかのように、相対するなのはは既に傷だらけ、苦しげに呻きながら玉座の間の壁に深々と叩きつけられている。

溺愛するヴィヴィオとの戦いという迷いを抜きにしたとしても、2人の間にはその実力に大きな差があることも覆しようのない事実。

己が身を削る諸刃の剣、ブラスターシステムの2段階目まで解放しているなのはの力を以てしても、聖王の力を止めるには至らない。

 

「ヴィヴィ……オ」

「その名前を、お前が気安く呼ぶなッ!!」

 

苦しげにその名を呼ぶなのはに対してヴィヴィオは怨嗟の声と共に容赦なく数個の虹色の魔力弾を直撃させる。

今のヴィヴィオにはなのはのことはママではなく、ママを浚った悪魔としか映っていない。

クアットロの手による強力な精神コントロール、その強固な支配下ではなのはの声も届くことは無い。

 

『Chain Bind』

「ッ!!」

 

が、爆煙の先になのはの姿は無く、直後にヴィヴィオの耳元に聞こえてくるのはデバイス音声と、そこから繋がる自身を拘束する複数の桜色の鎖。

瞬時に背後に振り向けば、息を荒げてバインドを行使したなのはの姿がある。

如何に実力に開きがあろうとも、先の様な直射的な魔法をそのまま受けてしまう程なのはが弱い筈も無く、

何より、ヴィヴィオを助け出すという不屈の心は少しも揺らいではいないのだ。

 

「……この、程度ッッ!! はあっ!!」

「!! あうっ……!!」

 

そんななのはの想いを嘲笑うかのように、ヴィヴィオは軽く力を込めただけで鎖の拘束を引きちぎる。

基礎的な物ではあるがSランク魔導師のなのはが行使するそのバインドがどれほどの強度を持っているかなど想像するだけでも馬鹿らしい物。

その馬鹿らしいくらいに強力な拘束を何の変哲も無い、普通に力を込めただけで解除できてしまうヴィヴィオの力もまた規格外である。

続け様にヴィヴィオが放つのは先程と同じ数個魔力弾、それがなのはの周囲に展開すると同時に複数の散弾となって降り注ぐ。

防壁の上からでも1発1発が莫大な威力を伴っているその攻撃の嵐に晒され、苦痛に表情を歪めながらなのはは床へと叩きつけられてしまう。

 

「はああっ!!」

「ッッ……!! あと少し……お願いだから、頑張って……レイジングハート……!!」

 

追撃は休むことなく続き、ヴィヴィオは眼下のなのはに向かって再び魔力弾を発射。

直線的な軌道でありなのはは防壁で対処するも、その破壊力もまたなのはの魔力と体力を削るに十分すぎる物。

敗北への着実なカウントダウンが進んでいく中、なのはの狙いは目の前のヴィヴィオではなく別の所にあった。

このまま自分がヴィヴィオと戦いを続けてもいずれ敗れるのはなのは自身にもわかっていること。

ならば、その戦いを演出している元凶の方を見つけ出して止めなくてはいけないのだと。

 

「ブラスター2!! クリスタルケージ、ロック!!」

 

その為に自分が成すべきことは少しでもヴィヴィオの動きを封じること。

なのはは宙へ舞い上がり、魔法陣を展開すると同時に更なる力を解放していく。

周囲に浮かび上がる小型機、ブラスタービットがヴィヴィオの周囲を飛び交い、

そのまま殺気の物よりより遥かに強力な桜色の魔力の鎖でヴィヴィオの体を縛り付ける。

それに続いてブラスタービットがヴィヴィオの周囲に展開するのは三角錐型の魔力障壁。

ブラスターシステムからなる膨大な魔力による強固な二重の拘束が瞬く間に完成していた。

 

「……同じ魔法はっ、私には通用しないッッ!! でやあっ!!」

「くぅっ……!! あ………!!」

 

その縛りすらも聖王であるヴィヴィオ相手では短い時間稼ぎにしかならない。

聖王の持つ能力の一つである高速データ収集、そこから紡ぎだされる情報でなのはのチェーンバインドの特性は既に把握済み。

どれだけ強度が上がろうとヴィヴィオにとっては何ら意味を持たずに、またしても力技で突破されてしまう。

次いで行われるのはもう一つの高速であるクリスタルケージの障壁、それに対して何度も拳を打ち付けること。

その1発ごとの衝撃でクリスタルケージの障壁にダメージが与えられ、それに連動するようになのはにも激痛が走る。

 

『あはははは!! 予想通りですよ陛下? その悪魔の使ってるブラスターシステム、遠慮なしにどんどん使わせてやってください♪』

 

なのはとヴィヴィオの攻防をその掌の内で眺めている、ゆりかご最深部のコントロールルームを通してクアットロの笑い声が響き渡っていく。

一連の戦闘を通してクアットロが完全に解析を終えていたなのはの切り札、ブラスターシステム。

術者の耐えうる体の限界を遥かに超えた力をもたらす自己ブースト、故にその代償もハイリスク。

システムの下で撃てば撃つほど、守れば守るほど、その分だけ魔導師もデバイスも命を削っていく。

そのシステムを解放しても尚、地力では自分の操るヴィヴィオが上を行っている。

ならば、敵に力を使わせるだけ使わせて死にかけになるまでじっくり料理してやればいいだけ。

命を削ってまで戦いに挑んでいる愚かな魔導師を好きなように転がしている快感にクアットロの歓喜の笑みが止まらず続いていた。

 

「でええええいっ!!」

「ぐああっ!!」

 

クアットロの解析を証明するように幾度かの連撃の末に粉々に破壊されるクリスタルケージの檻。

瞬間、今までとは比較にならない痛みがなのはの全身を駆け巡り、動きを鈍らせる。

その隙をヴィヴィオは逃さず、瞬時に飛び上がってなのはに直接拳を叩きつけてその身体を吹き飛ばす。

既に何度も繰り返されたこの光景、なのはに蓄積されているダメージはどんどんその量を増していく。

 

「はあ……はあ……く……!!」

『うっふふのふ~、ま~だ立ち上がれますか~、懲りない人ですね貴方も?』

 

だが、その身がボロボロになりながらもなのはは決して折れることなくまた立ち上がる。

どうしようもない状況下でも足掻き続けるその様はクアットロにとって実に滑稽な物で、嘲笑の言葉が絶えることなく発されていく。

自分たちの主であるドクターの最高傑作、聖王の生まれ変わり、その力を使用して敵のエースを追い込んでいく。

これ以上ないくらいのシチュエーションにクアットロの心は高ぶり続け、酔いしれていった。

 

『あははは――――……? これは……?』

「やっと……見つけた…………!!」

『!!……エリアサーチ……まさか私を見つけ出す為だけに……?』

 

だからこそクアットロはその物体が自身のすぐ背後に迫るまで気付くことができなかった。

歓喜の笑いを瞬時に掻き消すその物体の正体、なのはが事前にゆりかごの至る所に散らばせていた広域探査魔法、ワイドエリアサーチ。

その内の1つが遂にクアットロの潜む最深部のコントロールルームを探し当てていたのだ。

それがハッタリではないことは、玉座の間にいるなのはの様子を見ればクアットロにもすぐにわかることだった。

 

『だ、だけど私は最深部にいる……真反対のそんな場所から私をどうにかすることなん……て――――え……』

 

例え居場所が割れようとも敵には自分をどうにかする手段などありはしない。

クアットロが持ち直した余裕がすぐさま更なる驚愕に変わるのはモニターの先にあった信じられないその光景。

ヴィヴィオを三度バインドで封じた上で、なのはがレイジングハートの切っ先を向けるその先は、何も無い筈の玉座の間の床。

そう、何も無い筈の床、その直線方向に存在しているのは……クアットロのいる最深部のコントロールルーム。

 

『まさか……まさか…………!! まさか――――!!?』

「……ブラスター3ッッ!!!!」

 

そんなことが出来る筈がない……いや違う、あの白い魔導師は過去に同じことをしていたではないか!!

なのはの狙いを察知したクアットロの表情が絶望に彩られる中、なのはは一切の躊躇なく最後のリミットを解放していく。

その身を襲う更なる激痛と共に膨大に膨れ上がる魔力がレイジングハートの切っ先に何枚もの翼と、巨大な魔力光球を形成していく。

既に魔導師1人が生み出せる魔力の限界など容易く突破している筈だというのにそれでもなのははその暴走にも等しい魔力の増幅を止めようとはしない。

限界までカートリッジのロードを続けて、自分の持てる力の限界を超えてその魔力を高めていく。

巨大に、膨大な力を蓄えて巨大化していく桜色の魔力球、その直線上に存在するのはヴィヴィオを苦しめている元凶であり、この先に起こるであろうことに何も出来ずに恐怖で震えるクアットロ。

 

「ディバイン…………バスタァアアアアアアアッッッッ!!!!!!」

『ああッ……!!!!イヤァアアアアアアアアアアアッッ!!!!!』

 

そして咆哮と共に一気に放出された桜色の魔力の放出、撃ったなのはですら止められないだろう今までの中でも最大級の威力のディバインバスター。

暴走同然に放たれたその力は一直線に、玉座の間の床と何枚もの装甲版を突き破りながら最深部へと向かっていく。

やがて肉眼で見えた天井を突き破りながら降下してくる桜色の魔力の本流。

恐怖に怯えて叫びながら逃げ出そうとするクアットロであったがそれは何の意味も成さず、ディバインバスターの魔力にその身を飲み込まれてコントロールルームごと沈んでいった。

 

「あ……ぐっ……はぁはぁ…………!!!」

 

勿論、それだけの馬鹿げた力の使い方をしたなのはに圧し掛かるリスクはこれまで以上に巨大な物である。

ブラスター3の解放とゆりかごの上から下をそのまま貫くほどの破壊力の砲撃。

痛みに今にも倒れそうな体に鞭を撃ちながら、なのははまだやるべきことが残っているというその一心でなんとか体を奮い立たせていた。

 

「ッ……ヴィヴィオッ!!」

「!!……なのは、ママ……!!」

 

傷ついた体に鞭打ち駆け寄っていくのはなのはの拘束を解除し終えていたヴィヴィオ。

その様子は先程までとはまるで違う、クアットロの制御下から開放されて己の感情を取り戻し、両手で頭を抱えながら苦しそうに呻いていた。

自分のことをまたママと呼んでくれたその姿になのはは確信を持ち、今度こそヴィヴィオを助けられると近寄って行ったのだが、

 

「!! ダメッ!! 逃げてぇええ!!」

「あッ!!!」

 

悲痛な叫びと共にいきなり繰出されるのはなのはに対する拳の一撃。

それをまともに喰らってしまったなのははまたしても、その体を大きく跳ね飛ばされてしまう。

何が起きたのかわからない、ヴィヴィオは自分を取り戻したはずじゃないのか。

衝撃をどうにか抑えて踏みとどまったなのはが困惑と共に見たのは涙で顔を濡らすヴィヴィオの姿。

同時に起こるのはゆりかご内部に響き渡るアラートと、今までとは違うエネルギーの反応。

 

「ダメなの……もう帰れないんだよ……ヴィヴィオ…………ただの…………」

「ッッ!! そんなことはない!!」

 

制御を失い戦意を喪失した今のヴィヴィオを蝕んでいたのはゆりかごの防衛機構の1つ。

ゆりかご自身がその身を守るため、鍵となる聖王をその支配下に置き、元凶となる敵対者の排除を聖王の意志とは無関係に行わせるという物。

だが、今のヴィヴィオの心に浮かんでいるのはシステムの支配下によるものだけではない。

諦めることなく言葉をぶつけていくなのはを前にしても、ヴィヴィオの心は変わらない。

 

「わかったの私……あの人たちに改造されて…………このゆりかごを動かす鍵にされて……今までなのは……なのはさんと親子ごっこをしてただけの……昔の人間のコピーで、戦うためだけの兵器でしか無くて……」

「違う……ヴィヴィオ、そうじゃないよ!!」

「優しい言葉で私を惑わさないで……!! 本当のママなんて最初からいなかった……覚醒までの間に守ってくれて、魔法のデータ収集をさせてくれる人を探してただけ……!!」

「違う!! ヴィヴィオが、私やみんなが大切に思ってるヴィヴィオはそんな存在じゃない!!」

「違わないよッッ!! 現にこうやって私はなのはさんを傷つけているだけでしかないじゃない!!」

 

あの襲撃の日に攫われて、狂気の科学者たちの悪意をその一身に受けて、その果てに辿り着いてしまった真実の数々。

自分にはママなんていない、いたとしてもそれは遥か昔、自分のオリジナルの人物が生きていたずっと昔のこと。

コピーでしかない自分に肉親など存在するはずがない、ベルリネッタの言っていたように大好きだったなのははママの代わりでしかない偽りの関係だった。

それらのどうしようもない現実に怯えて泣いているヴィヴィオは、聖王などと呼ぶには程遠い、怖い物を前にして震えている子供でしかなかった。

 

「違うよ……生まれ方がどうであっても……私を傷つけるのが怖くて、そうやって怯えて泣いているヴィヴィオはヴィヴィオでしかないよ……偽物でも作り物でも無い……私が愛してる大事なヴィヴィオは貴方1人だけなんだから」

「そうじゃない……そうじゃないんだよ……私にはなのはさんと一緒にいる資格なんて……!!」

「資格も何もいらない!! 私はただこれからもヴィヴィオとずっと一緒にいてあげたい、例え本当のママじゃなくても、私がヴィヴィオといたいって気持ちは変わらない!!」

 

そうやって怯えているヴィヴィオが自分の知るヴィヴィオだからこそ、なのはもその心を少しも揺らがせることなく自分の想いを只管にぶつけていく。

自分の大好きな、機動六課のみんなと一緒に楽しく笑っていた、辛いことがあってすぐに泣きだしていた、転んでも1人で起きられず、ピーマンが嫌いで……

そして、自分が落ち込んでいた時に一生懸命に頭を撫でて慰めようとしてくれた純粋無垢な女の子。

自分にとって唯一無二の存在であるヴィヴィオを助けるためになのはは今、自分の持つ全てを吐露しているのだ。

 

「だから……本当の気持ちを……ヴィヴィオの本当にしたいことを、なのはママに教えて……!!」

「…………私……は」

 

ヴィヴィオと同じように涙で濡れて、だけどもヴィヴィオを安心させるようににっこりと笑顔でなのはは両手を広げてみせる。

どこまでも真っ直ぐで純粋で、自分のことを本当に心から愛し心配してくれているなのはの不屈の心、その想いがヴィヴィオの悲しみに埋もれた本心を引きずり出していく。

 

「……私も大好き……なのはママのこと……!! ママとずっと一緒に居たい……だから……助けてなのはママッッ!!!!」

「助けるよ……いつだって、どんな時だってッッ!!!!」

 

遂にその耳で直接聞くことのできたヴィヴィオの本当の心と言葉。

ならば、その懇願に母親である自分が背くことなど許されない。

確かな決意を胸になのはは自信に満ちた表情でヴィヴィオに答えて見せて、再びその魔力を爆発的に高めていく。

どうしようもない事態に怯え、助けを求めて泣いている愛する娘を助け出すために。

それができるというのなら、例えどんな無茶をしようと、どれだけ自分が傷つこうと構わない。

足下に魔法陣を展開し、なのはは最後にして最大の魔法を行使するための準備へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

「あぐっ!!」

「!!! ヴィヴィオッッ!!!!」

 

しかし、漸くわかり合えたなのはとヴィヴィオの絆を引き裂くように状況が急変したのは正にその時。

自分が作った物とは違う、不気味さの漂う何本もの青い紐にその身を拘束されたヴィヴィオが悲痛な声をあげる。

何が起きたかわからないまま、なのはは魔法の発動を停止させてヴィヴィオに駆け寄ろうとしたのだが、

 

「おっと、動いてもらっちゃ困るっスよ? でなけりゃ最大出力で後ろから頭をドッカーンっスからね」

「貴方、たちは……!!」

「この子のコントロールをクア姉に丸投げしてたのは失敗だったのかな? まあいいや、流石にここで聖王まで失うわけにはいかないからさ」

 

急変した事態になのはの理解が追い付いた時には、その場の悪意が全てを支配し終えた後であった。

なのはがゆっくりと後ろに振り向いた先にいたのは、両手で携えたライディングボードの砲口を真っ直ぐになのはに向けているウェンディと、

その傍らでニヤニヤと笑いながら同じように言葉を発していたセイン。

 

「いやいやいや、じつーに興味深い物見せて貰っちゃったよッッ!! うんうんうんうん、やっぱり貴方は最高だったよなのはちゃんッッッ!!」

「!!…………カティーナ……ベルリネッタ……!!」

「はい正にその通り。でもその前に1つだけ直接言わせてね? 貴方絶対人間じゃないよなのはちゃん? ゆりかごの端から端を1人でぶち抜くとかただの化け物だからね? たまたま総司令室が直線軌道上に無いから良かったんだけどさあ?」

 

助け出せたはずなのに、それを直前で狙いすましたかのようなタイミングで乱入してきた全ての元凶の1人。

いつの間にか現れていたヴィヴィオのすぐ側で尚も狂気の笑みを絶やさずにパンパンと手を叩いていたベルリネッタの姿になのはの表情が再び歪む。

その怒りを受けてもベルリネッタは己の在り方を少しも崩すことなく、更に言葉を続けていくだけ。

 

「ま、そんなことはどうでもいいんだよ。化け物には化け物をぶつければいいだけだからねえッッ!!」

「ヴィヴィオを……ヴィヴィオをどうする気!!」

「どうもしないよ。この娘はこのゆりかごの維持に重要な存在。殺しもしないしこれ以上傷つけもしない……まあ、それ以外のあれこれはいくらでもしちゃうだろうけど?」

 

パチンと指を弾くと同時にベルリネッタ達3人とヴィヴィオの足元に浮かび上がる魔法陣。

それはなのはもよく知る、ベルリネッタが戦力を送り込んでくる時に使っているのと同じ召喚魔法陣。

 

「役者は揃い舞台も万全、全ての決着は駆動炉でつけようじゃないのッッ!! そこで待ってるからさ? 私もこの子もシグノリアも、ズタボロにしてやった貴方のお仲間もさッッッ!!」

「ママぁ…………ママァアアッッ!!」

「ヴィヴィオッッッ!!!! あうっ……!!」

「精々泣いて悲しんでちょうだいなッッッ!! 偽りの親子ごっこをまだ愚かにも続けたいって言うんならッッッッ!!!! その気があるなら来なよッッッ!!! 更なる絶望を仲間と一緒に見たいっていう覚悟があるならねッッッ!!! くひは、くひはははははは!!!」

 

その手を取ろうと伸ばしたなのはの片腕は虚しく空を切るだけ。

高笑いと共にベルリネッタはヴィヴィオと共にその姿を玉座の間から消していた。

 

 

 

*

 

 

 

進攻する敵の粗方を片付け終えたミッドチルダ地上。

 

「ティア!! 大丈夫だった!?」

「私の方は何とかね……アンタこそ、ギンガさんは……心配はいらなかったみたいね」

 

その渦中でスバルとティアナは無事に合流を果たしていた。

スバルの両腕に抱えられているギンガの姿を見てティアナもそれに安心したように笑みを浮かべていた。

そして直後、2人の前に機動六課のヘリが降り立つ。

 

「シャマル先生!!」

「ギンガはこっちで預かるわ、それと……少し前から中のなのはちゃんたちと連絡がつかなくなっているの」

 

ヘリの中からまず現れたシャマルがスバルからギンガを受け取り、その体を抱え直す。

同時に2人に告げるのはゆりかご内部での変容。

地上側の敵の主要戦力の殆どは倒し終え、残るガジェットは防衛ラインでも十分に抑えることができる状態に持って行けている。

だが、肝心要のゆりかごの歩みは止まることなく続いており、軌道上到達まで残された時間も少ない。

内部で何が起きているかはわからないが、このまま指を咥えて眺めているだけでは最悪な事態が引き起こされるだけ。

 

「つまるところあの中じゃ戦いが続いてるってこった……」

 

シャマルに続いて銃型デバイス、ストームレイダーを肩に担いで姿を現したのはヴァイス。

絶体絶命の危機にあったティアナをその狙撃で救った今の彼はどこか何かを吹っ切ったような笑顔であった。

そのヴァイスの促した視線につられる様にヘリ内部へ振り向いたティアナが見たのは1台のバイク。

 

「インドアでの救助任務……陸戦屋の仕事場だ、行けるなッ!!」

「「はいっ!!」」

 

スバル、ティアナ双方が追っている傷は決して小さなものではない。

救護のリーダーであるシャマルがいるとはいえ、時間的な問題を考えても応急処置が精々であろう。

それをわかっている上でスバルもティアナも躊躇することなくその命令に力強く答えて見せていた。

激闘の最中にいるのはゆりかごで戦っている隊長たちも同じ、寧ろ自分たちなんかよりもずっと危険な戦いを繰り広げている。

ならば、まだ余力のある自分たちがその支援に向かうのは当然のことだと。

 

「スバル……これを……」

「あっ……ギン姉……」

 

シャマルの腕の中でギンガがスバルに託したのは待機状態の自分のデバイス。

スバルの持つそれと同じ母親の形見の1つ、自分にはもうそれを活かす力は残されていないからせめてと託した物。

 

「…………必ず、助け出してくるのよ……なのはさんたちを……」

「……うんっ!! 任しといてっ!!」

 

スバルの声にも瞳にも、そこに宿る意志にも一切の迷いは存在しない。

残された最後の戦いの舞台へ向けて、スバルはティアナと共に進みだすのであった。




全員まとめて絶望させてしまえ……
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