狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第4話:そして歯車は更に回転を速めていく

常々疑問に思うのだが、管理局の魔導師というのはピンキリがありすぎてならないということだ。

8年前に仕留めたなのはちゃんや6年前のランスターのような単独で化け物染みた活躍を見せる天才もいれば、

何人束になった所でゴミ掃除の要領で次から次へと処理が出来てしまうような凡人の集まりもいたりする。

というより普通に考えて後者の方が当たり前なんだろうけど、じゃあそれって戦力的にアテになるのとかも思ったりするのだ。

 

「あーウェンディ、次はポイントCの方の殲滅お願いできるかしら?」

『了解っスよカティ』

 

時間は流れてあれから6年、新暦換算で75年、私という存在が稼働を始めてからでももう15年も経過している。

戦闘機人も兄さんの研究下で予定通り数を増やしていき、その活躍の場を更に広げているといった感じだ。

で、今何をしているのかと言えば、自分の開発した兵器やら戦闘機人の実戦データ取りその他色々でモニタリング中という感じ。

そういう意味では脳みそトリオが定期的に回してくれる、「自分たちに都合の悪い連中の非合法的な排除」という、

まあ言ってしまえばゴミ掃除のお仕事はなかなかに都合が良かったりもするんだよコレが。

 

『ど、どうなってるんだ……!! 俺たちが手も足も出ないなんて化け物か、こいつらは』

『弱音を吐くな!! ここで全滅するようなことがあれば、管理局の正義にだって関わるんだぞ!!』

 

正義ねえ……倫理や道徳と並んで私にはどうでもいい言葉の1つだな、うん。

表の人間はそういうの含めて法と秩序で己の欲望を縛り、ある程度の折り合いをつけて生きていくのが当たり前なんだが

生憎と私も兄さんもそういったリミットなんて知ったことかなんです。だってそうあるように生み出したんだもの、1番のスポンサー様が。

 

「その管理局の正義とやらが私の玩具で蹂躙される、あら嫌だ安っぽい正義なんですねえ、というわけでドーン」

『う、うわあああああああ!!』

 

私の一挙手一投足によって画面の向こう側の魔導師たちが成す術も無くばったばったとなぎ倒されていくんだから本当にたまらない。

タルーガタイプを4機程と大量の簡易量産式自律機械……局の方ではガジェットドローンって名前で呼び始めてたっけ?

ともあれそのガジェットを大量投入と、プラスして最近ようやく安定稼働を始めた飛行型ガジェットなんかもチラホラ。

それに加えて更に戦闘機人を3人程送り込んでいるっていう始末なのだからこれはもういじめという領域を軽く超えた何かだろう。

現に今回殲滅を指定されて交戦中の管理局の部隊なんだけど、規模こそ大きいが正に烏合の衆という言葉がぴったりの連中。

ぶっちゃけガジェットや戦闘機人がいなくてもタルーガの面制圧砲撃だけでも手も足も出ていないという有様なんだから。

やっぱり一部の連中が飛び抜けておかしいだけで管理局の魔導師なんてのはこういうのがスタンダードなんだろうか?

 

「だというのに万年人手不足に喘いでいるってそれなんかもう色々ダメなんじゃないの? っと、こっちも凄い凄い」

『でえええりゃああああああ!!』

「うわお、ステゴロの格闘戦ってのも見ていて気持ちがいいねえ。相手がすごい勢いで吹っ飛んでいきますよって」

『聞こえてるっスかカティ? ポイントC側の部隊の殲滅、完了したっスよー』

「おやおやこっちもなかなかのスピード、上出来だよウェンディ。流石は兄さんの傑作たちだね、実に仕事が早い」

 

だとするなら戦闘機人の方が戦力的に安定するというヒゲオヤジの切望していることも本当に間違いじゃない気がするっていうね。

流石に先に挙げた一部の化け物ども相手には厳しいかもしれないけど、それでもこうやって単機でも敵部隊を抑え込めるだけの実力があることを証明している。

材料と資質さえ揃っていれば確実な戦力として量産が可能、これが本格化すれば管理局の人手不足なんて瞬く間に解消。

私からすれば正にいい事づくめの画期的な技術じゃないかとばかりに思えてしまう、だというのに。

 

「んー……やっぱりおかしいよねえウェンディ? こうして貴方達のような優秀な子が生まれてくるっていう実績もあるのに、どうして管理局の連中はそれを使おうとしないんだか」

『そうっスねー……局の連中はあたしらの存在みたいに道具として命を弄ぶのがいけないこと、なんて考えてるから使わないんだってドクターから聞いたことはあるっスけど』

「それ本当にくだらないよねえ、魔導師だって普通の人間を超えた力の持ち主であることは変わりないのに、それを後天的に作ることの何が悪いのやら」

『うだうだ小難しい事言ってんじゃねーよカティ、そんな意味だの理由だのなんて考えるだけ無駄だろ、あたしらはあたしらの為に、そしてドクターの目的の為に戦いを続けるだけだ』

「おっと、Dポイントの殲滅も終了と。いやあお仕事ご苦労様だよノーヴェも」

『ふん、AMSで攻撃が通じない相手をブッ飛ばすだけ、こんな簡単なことテスト段階の武装でも楽勝だったさ』

 

ま、正直な所別のモニターで仏頂面を浮かべているノーヴェの言う通りなんだろう。

戦闘機人も突き詰めれば今の所は兄さんの道具でしか無く、その自覚の下で戦いに赴いているのは全員に共通していることだ。

極の戦力になるかどうかとか倫理や道徳があーだこーだなんてのはご機嫌取りをしているスポンサーが決めればいい事であって

私たちは私たちのやりたいようにやらせて貰えばそれでいい、小難しいことを考えるだけ無駄なんだろう、うむ、実にシンプルで分かりやすい。

 

『こちら増援部隊、現場に到着した、直ちに援護と救助を――――』

「おっとと、実験動物の追加投入ってね、じゃあセイン、せっかくだから手筈通りにテストお願いねー」

『了解、ってうーんやっぱり重いなあこれ……よっこらしょっと』

 

 

 

ズガガガガガガガガ!!!

 

 

 

別のポイントから飛んできた追加の魔導師部隊もそのすぐ近くに潜んでいたセインがあっという間に不意打ち殲滅ってね。

何を持たせているのかと言えば今後自分の兵器に活かすための試作型のガトリングランチャー。

直接戦闘手段を持っていないセインにこうして自分の兵器を貸し与えてテスト代わりに使ってもらっているという感じ。

地面の中に潜んでガトリングの砲門だけISで露出させるもんだからいきなりの攻撃に敵も成す術無し。

前々から思っているけど壁や地面に潜入可能とかホント色々理不尽且つ役立つ能力だと実感させられる。

 

『うわっととと……カティ、これ威力凄すぎない? 反動で腕痛いし増援部隊の連中も凄いことなってるよー?』

「んーまあ対人兵器としての威力は十分立証された感じかな? ともあれ協力感謝だよセイン、なかなかいいデータが取れたからね」

 

屍累々とは正にモニターの先に映っている光景を指すんだろう。

タルーガとガジェットの大群で粗方抑えているところに加え、別の区画にいた魔導師部隊もノーヴェとウェンディで殲滅完了。

増援部隊も今し方セインと彼女に持たせた試作ガトリングランチャーで全滅を確認している。

あっちもこっちも残っているのは死体だらけ、普通の人間じゃ直視できないなかなかにスプラッタな映像になっているね。

うん、自分や兄さんのの研究成果でこういう地獄を生み出せてると思うと胸がすくような晴れやかな気分になってくる。

 

「よっしそれじゃ今日のお仕事はこれでおしまい。セイン、ノーヴェ、ウェンディ、3人ともご苦労様でした。今、転送の準備をするからねー」

 

仕事は完遂、データも上々、良い事づくめで終わって本当に万々歳という感じ。

その仕事に協力してくれた戦闘機人たちにも労いの言葉をかけながら後始末を始めることにした。

 

 

 

*

 

 

 

「たっだいまー!! お仕事ちゃんと終わったよドクター!」

「ああ、ご苦労様だったねセイン……それにノーヴェもウェンディも」

「今日の戦果もなかなかのもんだったっスからねー、ドクターが作ったこれも試作とはいえなかなかのモンだったと思うっスよー」

「君たちの固有武装にはまだまだ改善の余地があるからね……今回の戦闘データを基にして更なる能力アップを進めていくとしよう」

「今日みたいな雑魚連中相手なら今のままでも十分だと思うけどな」

 

転送も滞りなく完了して私と兄さんや他のメンバーのいるアジトの中央広間へと戻ってくる戦闘機人3人。

内2人は前にも話した現状の兄さんの作品の中では比較的最近に稼働を開始した作品。

ナンバー9のノーヴェとナンバー11のウェンディの2名、共に前衛ポジションの戦力としての能力を赴きに開発されている。

ノーヴェの方は8年前の襲撃の際に入手したクイントという魔導師の遺伝子を転用して培養した近接格闘の適性を高めた作品。

実際に今日の襲撃も試作のナックルとローラーで戦場を駆け回り、殴る蹴るの大暴れで魔導師部隊を圧倒していた。

性格付けの段階によるものなのかやたらと血の気が多くて好戦的でいっつも不機嫌そうなのがたまにキズだったりもするんだけど。

一方でウェンディの方は固有武装として持たせているこれまた試作の総合兵装ボードを用いての前衛での射撃戦闘能力を高めている。

設置、直射、誘導、更には砲撃や防御も兼ね備えておりこれまた前衛戦闘能力に関してなかなかの性能を発揮している。

性格もセインと近くて親しみやすい明るくていい子だと思う、イコール弄ると面白いという意味でも共通してるけど、うふふ。

 

「ドクター、カティ、セインたちが帰って来たって聞いたけど」

「ん、丁度今正にってところだったね。そっちの作業も問題なく進んでるディエチ?」

「イノーメスカノンのテストも今終わった所、ドクターの想定通りのデータは取れてると思うよ」

「そうか、それは実に喜ばしいことだねディエチ」

 

と、その段になって更に姿を現すのが茶髪を後ろで縛っている物静かな雰囲気の戦闘機人。

ナンバー10、ディエチ、長距離狙撃、砲撃能力だけを只管に高めた一点集中型の能力を持つ。

彼女の砲撃能力は最大出力でSランクオーバーにも達し、一撃の破壊力は機人の中でも随一。

基本火力特化の傾向が強い私としてもそういった意味で結構うらやましかったりする、見た目に反して人付き合いも意外と良かったりするし。

 

「これで後2人ですね、ドゥーエと騎士ゼストは仕方ないとしてルーテシアとクアットロはどうしたのかしら?」

「お嬢はともかくとしてもアイツが遅れるのはいつものことだ、どうせまたよからぬことでも企んでいるに違いない」

 

元から部屋にいたウーノとトーレの2人、セインやチンクも合わせてこの部屋には今殆どのメンバーが集っている。

因みにドゥーエというのはその名が示すように戦闘機人の1人にしてナンバー2。

管理局内での潜入捜査任務を主としている個体なのでアジトに帰ってくることは非常に稀だ。

もっと言うと基本他人は見下す傾向のクアットロがドクターを除いて唯一尊敬の念を抱いている、彼女の教育係だったりもする。

要するにクアットロに慕われているというその事実だけでドゥーエの方の性格もわかってしまうようなものだが。

セインやウェンディみたいな素直ないい子もいれば、ドゥーエやクアットロみたいな陰湿な奴もいるなど本当にウチのメンバーは様々である。

まあ付き合い方の程度の違いはあれど、私は基本的にみんな好きだし向こうもある程度の信頼は置いてくれているからいいのだけど。

 

「は~い、お待たせしましたみなさん、それとルーお嬢様もご到着なさいましたよ~」

「ごきげんようドクター、カティ、それにみんなも」

「やあ愛しいルーテシア……私も久方ぶりに君に会えて嬉しいよ」

「ん、久しぶりだねルーテシア、元気してた?」

「うん……カティの方も元気そうで何より」

「遅いぞクアットロ、集合時間に遅れることはいつものこととはいえ今日はどこで時間を食っていた?」

「ごめんなさいトーレ姉さま~今後の計画の見直しですとか、ルーお嬢様の調整やら世間話で色々と~」

 

反省という2文字は彼女の脳内辞書には無いのであろうクアットロ、実に清々しいまでの図々しさ満載の口調だ。

そのクアットロの隣にいたのがこじんまりとした桃髪の少女、ルーテシア・アルピーノ。

8年前の管理局員の襲撃の際に人造魔導師素体として回収したメガーヌ・アルピーノの1人娘。

ウーノの手回しで脳みそトリオから身柄を確保してもらったその娘もまた親と同じ人造魔導師素体で、現状では最も完成度の高い個体である。

その改造の際にアレコレ色々弄った関係で性格の方は物静かで淡々としているけど、他人への挨拶くらいはちゃんと出来る良い子だったり。

魔導師ランクもSに近い高ランクで、彼女のメインである召喚魔法によって私たちにとっても非常に重要な戦力である。

そのこじんまりとした外見故にもう何というか抱き着いて猫可愛がりとかしたくなるくらいの愛らしさというか……いけない、ちょっと思考が暴走気味。

 

「さて、ようやく全員が揃ったことだしそろそろ始めるとしようか」

 

ルーテシアとクアットロが自分の席に着いた後、待ちわびたように両手を広げて宣言する兄さん。

机の前にオート機能で運ばれてくるのは淹れたての紅茶と作り置きの茶菓子。

これ私の自作、暇だから作ってみた。やっぱり話し合いには美味しいお茶とお菓子が付き物だもんね。

尤も、まともに口を付けてくれるのはやっぱりセインやウェンディとかの素直組くらいなのがちょっと悲しんだけど、くすん。

 

「我々が活動を始めてから早20年以上が経過した……戦闘機人は順調に数を増やし、人造魔導師もまたルーテシアのような素晴らしい個体が誕生した。計画は実に順調に進んでいると言える」

「そしてドクターの妹君として誕生したカティの協力もあり、ガジェットを始めとした無人兵器群もその数を着々と増やしている」

 

私が生まれる以前からずっと活動を続けているのが兄さんとその側近であるウーノ。

そして兄さんが語ったように戦闘機人はこの場にいないドゥーエも含めて現在9人、その誰もが並の魔導師を遥かに凌駕する技能をそれぞれ持ち合わせている。

加えて残りの素体であるナンバー7、8、12の製作も滞りなく進行している。

ウーノが付け加えたようにガジェットドローンの量産も順調、アジト深部の保管庫は連中で溢れ返っている始末だし外で活動中の個体もまた多い。

 

「そういや質問なんだけどさカティ、また新しいタイプのガジェットを作ったんだっけ?」

「そ、Ⅰ型やⅡ型とはまた違う装甲重視の大きいのをね。所詮は使い捨てのデコイだけどある程度強力な奴も作っといたほうがいいかなと思いまして」

 

セインの挙手に応えるように私がモニターを切り替えて表示させるのは、大型の球体という様相をしたⅢ型のガジェット。

従来品とは比較にならない出力のレーザーと高濃度のAMF発生装置、大型のベルトアームで細かい作業や格闘戦もある程度こなせる。

基本はⅠ型の団体でのゴリ押しでもいいのだが、それでもある程度は単体での戦闘をこなせるタイプを求めてサクッと作ってみた物。

コストはそれなりに嵩むけどまあそれでもオリジナルタイプの半分以下なのだからそこそこの数も用意できる。

実戦テストはまだ行っていないが、それでもまあB~Aランクくらいの魔導師なら単独でどうにか撃破できるかな? くらいのスペックは見積もってある。

 

「そのガジェットの今の主任務が例のアレの回収だからねえ、アレのおかげでこっちの個人的研究もだいぶ躍進してるし。やっぱ古代の技術はすんばらしいよ、うん」

「そうとも……いずれ来たるべき器に刻むこととなる王の印……アレの力は驚異的な物なのだからね」

「その確保と実験のゴタゴタでドクターの研究所がいくつか失われてしまったのは痛手だったがな」

「あ~らあ、それくらいなら問題ありませんことよチンクちゃん? あれもまたドクターの研究を進めるのに必要な犠牲だったんですもの~」

 

クアットロとチンクのやり取りにあるようにその品物を巡って何回か大爆発が起こったりもしているのだ。

超高度エネルギー結晶体、通称レリック。これの確保をガジェットにプログラミングして動かしているのが現状。

あれの暴発でミッドの空港が吹っ飛んだなんて話もあったような無かったような、まあそれはどうでもいいとして。

とにかくそのレリックがもたらすエネルギーは絶大な物で、扱いさえ間違えなければ非常に優秀なエネルギー源として用いることができる。

管理局の連中じゃどう足掻いても無理だろうし、精々ロストロギア指定して封印処理が関の山なんだろうけど、

私と兄さんの知能だったらそれくらいも簡単、現に兄さんはあのレリックを用いることで人造魔導師研究の進みを早めたくらいなのだから。

 

「そのレリックがあればええと、ルーお嬢様のお母様も目を覚ますんっスよね?」

「うん、ドクターはそう言っている。11番のレリックが見つかればあの人は目を覚ます、そうすれば私にも心が生まれるんだって」

「もちろんだともルーテシア……君のお母さんを目覚めさせるためにも、私は君に協力し、そして君自身にも頑張ってもらっているのだから」

 

ぶっちゃけ言うと殆どが嘘なんだけどね、うふふふ。

別に特定のレリックが無くてもメガーヌ・アルピーノを蘇生させるだけなら兄さんにとって造作も無いことだ。

ただ、人造魔導師として優秀な個体に仕上げるためにそれが必要になるというだけ。

尤も、現状でのメガーヌの存在価値はルーテシアともう1人、この場にいない人造魔導師を従わせるための云わば人質、鎖のような物だ。

もっと言えばレリックが見つかっちゃう方が彼女にとっては悲劇でしかないとも言える。

何せその時点で新しい人造魔導師として改造されるのだからそうなったらもう親子共々日の下を歩くことは絶対に出来ない。

言ってしまえば完全に詰みだ。どう足掻いたところでこの物静かで無垢な少女は私たちの手ゴマとして働くことしか許されない。

いたいけな少女をこんな風に好き勝手動かすなんて……何ともそそられるシチュエーションでもう。

それについてはクアットロもやっぱり同意してたみたいだし、彼女も彼女でルーテシアに色々とエゲつない『仕込み』をしているし。

 

「そういえば最近は地上本部も色々と新型兵装で成果を上げてるなんて話を聞くけど、アレもみんな君の力添えなのカティ?」

「もちだともディエチ。あんなんでも一応スポンサー様だから私の兵器のほんのちょっぴりくらいは使わせてあげてもいいかなってね」

「しかしいいのか? お前の兵器群はドクターにとっての我々と同じような存在だろう? それを易々と表に貸し与えるなど」

「当然、使わせてるのは魔力運用を前提にした劣化コピーだけだよ? まかり間違っても管理局の連中に心血注いだ私の愛しい作品を使わせてやるものかって―の」

 

チェロクアやタルーガ、リノチェキロンとかその他諸々の無人兵器を地上の防衛戦力で使わせたらそれはまあ、結構な成果を上げるんだと思うよ。

でも却下、そんなの天地がひっくり返ったってあり得ない。私の作品は私の為だけに使えばいいの。

トーレの言う心配なんてはなからするだけ無問題。外に渡しているのは側だけ適当に真似た粗悪品、別に手放してもいいかな程度の価値しかない。

そもそも質量兵器を搭載できずに魔力オンリーって縛りがある時点で私の創作意欲は10分の1以下なんだから心底どうでもいい。

そんな品物で嬉々として防衛を担っているヒゲオヤジとその部下の人たちは何て言ってやったらいいやらである。

 

「現在開発が進んでいるアインへリアルでしたっけ~? アレも確かカティちゃんのリノチェキロンの長距離狙撃主砲をベースにした代物でしたよね?」

「そうだよクアットロ。連中はあれを過ぎた力だの地上防衛の要だのでてんやわんわ揉めてるらしいけど相変わらずゴタゴタが好きなんだなって思うわけよ」

 

何度も言っているが私達全員の共通認識として地上世界も次元世界の平和も全く以て興味が無い。

好きなように実験し好きなように戦い好きなように蹂躙する、それが私と兄さんとみんなの全て。

適当に貸し合与えている玩具についての是非で海と陸がやんややんや騒ごうが勝手にやってろという感じなのだ。

 

「あとは器と……私達の新たな住処にしてドクターの最高の夢、アレの完成さえ達成されれば……」

「だよねえウーノ、あんだけデカけりゃ色々改造のし甲斐もありそうだし、やっぱ後は器の確保だよねえ」

 

その辺は数年前にドゥーエが聖王教会の連中だまくらかして頑張ってたみたいだけどその点については未だに良い報告は上がってない。

だがまあ時期的にもそろそろだろうし例え時間がかかってもアレにはそれを十分許せるだけの絶大な価値がある。

それの完成、起動こそが兄さんの夢の到達点にして新たな始まり、私達全員を新たなステージへと導くための物。

その為の力がガジェットで戦闘機人でレリックで……そして私という存在でもある。

 

「こっちの兵器開発もレリックの発見含めて順調に進んでるし、いずれは兄さんの作品も軽く超えられるだけのプランも組みあがってきてるからねえ。私としても益々気合が入るってもんだよ」

「嬉しいねえカティーナ……やはり君という妹は私にとっても大いに大切なんだということを証明してくれているのだから」

「ふふん、兄さんに比べたら私なんかまだまだ、もっともっとたくさん試していずれは管理局の連中をもっとぎゃふんと言わせてやる予定なんだからね」

 

火力偏重型の兵器も益々改良を重ねてきているが、それ以上に重要視しているのは機動性重視とそれに連なる小型、人型の無人兵器。

雑魚を蹴散らすだけならともかくとして、大型の兵器は相手によっては的にしかならないというのはこの数年間でも実証されていること。

故に機動力の確保実験も加えての総合性能に優れた新しい兵器プランを進めている真っ最中。

エネルギー源についてはレリックの研究によって殆どクリア済みだから、後は試行錯誤を重ねて組み立てていくだけという感じ。

この頭の中にある自分の理想を現実で形にしていくというのもまたとても楽しい事。

そしてその現実となった兵器、メカを外の世界で自由に暴れさせるのが至上の喜び、私の原動力なのだから。

 

「何にせよ、いずれ来るであろう祭りの日の為に更なる活躍を期待しているよ? 私の愛しい娘たち、そして同士たち」

 

両手を広げて感極まったように高らかと宣言する兄さん。それを聞いて全員が各々の面持ちである。

私も私で今後更に進んでいくだろう自分の研究と兄さんや戦闘機人のみんなの活躍。

それを想像するだけで内心笑いが止まらない実に高揚した気分になっていた。

 

 

 

*

 

 

 

管理局地上本局、レジアス・ゲイズ中将の私室。

机に両腕を置きながら座っている彼に報告を行っているのは秘書にして娘でもあるオーリス・ゲイズ。

 

「実動部隊からの報告が挙がっています、例の施設から供給されている可動式砲台チギャーレは順調に戦果を挙げているとのことです。先日も違法魔導師部隊の壊滅に成功したと」

「ふん……あの忌々しい小娘がよこした兵器なのだ、それくらいはこなしてもらわねば釣り合わん」

「それに関係することでもあるのですが、アインへリアルの建造もまた予定の工程よりも早期に進んでおり、こちらも順調です」

「それは何よりだ、あれの完成は地上の秩序維持そのものに関わっていると言っても過言ではない。今後も遅らせるなよ」

 

淡々と報告書を読み上げるオーリスにその厳格な顔つきを崩すことなく受け答えをするレジアスという光景はいつものことである。

可動式砲台チギャーレ、これもまたカティから地上本部に回されている防衛用兵器の一種でありその戦果に関する報告。

従来の防衛兵器を上回るスペックによって確かな結果を残しており、現場で実際に使用している局員からの評判も上々とのこと。

同時にレジアスも重用しているアインへリアルという新型の防衛用砲台の建造についても問題なく進んでいる。

 

「ただ、アインへリアルの方についてはやはり本局からの進言が避けられない状況にあります」

「全く忌々しい……連中は相変わらずこの地上の平和を軽視しているのか、それもいつも通りにこなしておけ」

 

地上と本局の確執は今に始まったことではない。

事件規模が圧倒的に違う本局側ではより優秀且つ多くの戦力が求められており、その割を地上が食っているのが現状だ。

だというのに地上側が少ない知恵を絞って新しい兵器の開発に着手しても本局側はそれを過剰戦力と批判してくる。

レジアス自身がタカ派であり強引な政策を推し進めることが多いこともあり、その溝はなかなか埋まらないのだ。

 

「それとあの男からも連絡がありました、例のプランも滞りなく進行しているとのことです」

「そのことは当分あの男に任せておけばいい、アレの手綱は最高評議会も握っている、いずれは全てこちらの手中に収めるだけだ」

 

故にこのレジアス、最高評議会からの命令もあるが裏ではジェイル・スカリエッティとの繋がりがある。

尤も、彼自身もスカリエッティにいつまでも好き勝手させておく機など毛頭無く、

いずれはその全てを横からかっさらい、試験運用という形でその戦力を地上の防衛戦力として蓄えるという野望もある。

戦闘機人に独自規格の無人兵器、それらがもたらす恩恵の為に敢えて外法に目を瞑っている。

 

「全てはこのミッド地上の恒久的な平和を守っていくためだ……その為に必要なことだということはお前もわかっているだろう」

「はっ」

 

親と娘ではなく飽くまでも上司と部下という関係の下でオーリスは敬礼を返す。

地上の平和の為ならどんな力だろうと手にして見せるという覚悟、その歪んだ考えが段々と取り返しのつかない深みに入ろうとしている。

それはレジアスとオーリスに共通した覚悟であり、未だに自覚をしていないことでもあった。




◆チギャーレ

タルーガをベースに作成した量産タイプの可動式砲台。
四角形のボディに四脚、機体上部に魔力式の大型単装砲を装備している。
並の攻撃ではビクともせず、魔力砲による攻撃力もなかなかのものだが、
総合的なスペックそのものはタルーガから相当にダウンさせられている。
拠点防衛を主として既に地上本局の部隊でいくつか運用されている。
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