狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き   作:LR-8717-FA

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第5話:最高に興味深い素材たち、機動六課

人類の歴史は科学技術の発展と共に紡がれてきた物、なんてことを考えてみたりもするのだが、

じゃあ現在の人類ですら遠く及ばない古代技術の数々は一体どういう過程で生み出されてきたのかということにも興味が尽きない。

その一欠片が兄さんであり私であり、レリックでもありその他多くのロストロギアでもある。

 

「変換効率も数値上昇もいい感じ、ホントに大助かりだよコレ」

 

その恩恵に預かることによって自分の欲望の幅を広げることができるというのだからこれ以上にありがたいことは無い。

大型の電子機械が休むことなく唸りを上げ続け、その下にある計測値の数字はどんどん上昇していくばかりである。

時間さえかければこうやって応用ができるのだからこの数多の次元世界は多くの実験材料で溢れているということを実感できるよ。

 

「セイン、ウェンディ、どう? レリックが見つかって以来私もこんなに大助かり。いずれは貴方達のボディ改修と能力強化にも役立てると思うよきっと」

「うわっはあ、それは楽しみだねカティ。外部抽出だけでもそれだけのエネルギーが出せるんだからきっとドクターもその辺りのことは考えてるんだろうね」

「私も生まれてから日が浅いけどこれは本当に凄いと思うっスよー。レリックもそうだけどそれを上手く活かせる辺り流石はカティって感じっスねー」

 

こんな風に素直な称賛を述べてくれる辺り本当にセインとウェンディはいい子なんだなと思う。褒められるって素晴らしいことだもの。

今度彼女たちに私自ら開発した新型の固有武装でもプレゼントしてあげようかな? セインは特に単体戦闘能力に乏しいしね。

とまあ、観客含めて何をやっているのかと言えばレリックに内包されているエネルギーの抽出と保存である。

単体でも莫大な量を含んでいる超高度エネルギー結晶体、それを自分の実験に使わない手などない。

ただ、私の手からして見てもレリックはそのエネルギー量故に不安定の塊でもあるのがデメリット。

そのまま動力源としてメカや兵器に組み込むにはまだまだ検証やデータが足りないのでそこは見送り。

で、次善の策として思いついたのがエネルギーだけを外部に取り出して別個に利用させてもらうという方法。

数年前にレリックが発見されその性質に目を通してからこの手の方法はすぐに模索を始めていたし、現にこうして実用段階にまで漕ぎ着けている。

レリックそのものを利用する実験も並行して進めてはいるが、とりあえずはこっちのやり方の方が安定性があって確かなのだ。

専用の機械でエネルギーを取り出しコンデンサに保存、場合によっては別の機械を通して変換したりコンデンサごとメカに組み込んだり。

外部抽出とはいえその出力は桁外れで、おかげで自分の兵器開発の選択肢も広がりつつあってほくほくなのだ。

 

「最近じゃこれのエネルギー使って昔の作品を色々改良したりもしてるんだよ」

「その通りよセイン。この間もチェロクアの主砲の出力を上げたりその検証をしたりで色々楽しませてもらったからねえ」

「あれも凄かったっスよねー、ディエチの全力砲撃も真っ向から捻じ伏せるとか威力がホント半端ないっスよ」

「ディエチはもう二度とやりたくないとか言ってけどねえ、とはいえあれのおかげで改良した甲斐があったって実感も湧いたんだけど」

 

中期作品のお気に入りの一つである飛行要塞チェロクアもまたレリックから抽出したエネルギーを応用していたりもする。

8年前の検証で主砲であるプラズマキャノンの最大出力は大方AAAランク魔導師の砲撃と同レベルという結果だったが、

レリックエネルギーによるスペック向上やらその他色々の改善によってアレの能力も飛躍的にアップ。

ランクSオーバーを誇るディエチにテストに付き合ってもらったが、それすらも上回る能力を見せつけていたのだから。

単一火力のスペック実験はチェロクア以来から頭打ち気味だったこともあって本当に実りある実験結果となっていた。

押し負けたディエチからは「物騒すぎるから二度と辞めてくれ」とか恨めしい顔されちゃったけどね、うふふ。

 

「色々と奇抜だからねーカティの作るメカは。そう言えばチェロクアも最近別タイプを完成させたみたいに言ってたけど」

「うんうん、レリックエネルギーのおかげでようやくチェロクア・ピューマも完成したし。まあ今となっては少し時代遅れな感もあるんだけどさ、と、ウェンディ、そっちの機械止めといてくれる?」

「はいはーい、お安い御用っスよー」

 

機械の1つが抽出完了のアラームを発していたのでウェンディに手伝ってもらってみたり。

数年前から開発を進めていたチェロクアのマイナーチェンジ版であるチェロクア・ピューマも少し前に完成に漕ぎ着けている。

飛行戦力というだけで貴重品故に、色々と試してみたくなることも多いのだ。

見てくれは殆ど別物と化しているけど大火力による制圧という点では同一のコンセプト。

技術向上でコストも少しだが抑えること出来ているし、その気になれば……というよりもういくつか同型の物を完成させたりもしている。

オリジナルタイプも含めて同時出撃なんてさせようもんならそれはもう大変なことになるだろう……と、言いきれれば良かったんだが。

 

「要するにいい加減に火力偏重式兵器ばかり作ってるわけにもいかないだなコレが」

「そういうもんなんッスか? 難しいことはよくわからないけどチェロクアとかタルーガでも十分に凄いメカだと私は思うっスけどねー」

「6年前の検証でもわかってることだけどやっぱ相手によってはどうしても動くだけの的になるのよ。ぶっちゃけた話トーレとかなら攻撃に当たらずにスクラップに出来るだろうしさ」

「それは単にトーレ姉が飛び抜けて速くて強いってだけだと思うんだけど……」

「それが事実だとしてもトーレ級の敵が管理局にいないってわけではないでしょセイン。だからそういう連中にも対抗可能なヤツを色々と作らなきゃいけないわけで」

 

完全な装甲重視の面制圧火力型だったが、それでも的確に武装だけ破壊してほぼ無力化するという芸当をあのティーダという魔導師はやって見せていた。

管理局内でも一握りいるかいないかという割合だろうけど、それでも極稀にそういった怪物は間違いなく現れてくる。

チェロクアタイプも飛行型とはいえ結局はタルーガと同じコンセプト、のんびりゆったり空を飛ぶ鉄塊に他ならない。

高機動で飛行魔法を駆りながらの的確な射撃やら格闘戦やらを行える天才魔導師にでも遭遇したらそれではいお終いである。

今の所そういうのにはティーダ以来会ってないので予測でしかないが、それが実証される日はいずれやってくるだろうと。

 

「その点も含めて今進めているのが高機動型とか汎用型の小型無人兵器ってわけよ。アレが完成すればそれこそS級魔導師も軽く捻れるってわけ」

「うーん成る程ねー、私も設計図だけ見せてもらったことあるけど面白そうだと思ったし、何というか怪物チックというか天使みたいな感じでさ?」

「理論値だけ見れば結構馬鹿げてるとは思うっスけど、それでもカティなら遠くない内に作れちゃいそうとか思えるっスもんねー」

「その為の試作の試作の試作くらいの段階の奴があの高機動特化型の鳥兵器でもあったってわけよ。あれを煮詰めていけば1発も当たらないコンセプトの機体も作れる自信あるし」

 

実質的にティーダ・ランスターにトドメを刺した機動性重視の試作兵器。

あの時はタルーガタイプで消耗させてからの弱い者いじめ目的同然での使い方だったが、

正直なところデータ上では相手が万全の状態だったとしても攻撃の9割方は余裕で回避できていただろう。

大型の火力で圧倒するのもいいが、小型の物に詰め込めるだけ詰め込んで翻弄するってやり方も素敵に思えてくる。

 

「まあでもホントのとこ言うと人型、鳥型にしてるのは私の美意識優先でもあるんだけどさっ」

「あぁ~……やっぱりそんな感じなんだねカティ」

 

何呆れたような顔をしているのだセイン、いいじゃないか人型メカ、カッコいいしロマンがあるし。

それで性能も折り紙付きとなればこれ以上ないくらいの逸品だろうに。

兵器とメカの開発は実用性とロマンの両立が華なのだよ、どっちかだけ追及するのは私の嗜好に反するのだ、えっへん。

 

「あははー、そうやって無い胸張ろうとするカティも可愛いっス――」

「ぽちっとな」

「ってうわああああ!! いだいいだいいだい!! じょ、冗談!! 冗談っスよカティーーーー!!」

「言っちゃったねウェンディ……カティ相手に胸の話は禁句なのに……」

 

うるさい黙れ、生まれた時からナイスバディの連中につるぺたすとーんな私のコンプレックスが理解できるものか。

こんなこともあろうかとラボに撃退用システム兵装を取り付けておいて良かった、マジックハンドでウェンディがきりきり締め付けられているっていうね。

うわはははは、人の機嫌を損ねるようなことを平気で言うアンタが悪いのだよウェンディ。

……でもこの数年で結局自分の幼児体型を気にしていることを認めてしまったことが一番悲しい、ぐすん。

チンクだけはこの苦しみわかってくれるからホントに嬉しい、こっちから話題振ると嫌な顔されるけど。

 

『やあ、楽しんでいるみたいだねカティーナ』

「あら、兄さん」

「お、ドクターどうしたの?」

「ごめんってばーー!? だーかーらー早く止めてれっスカティーー!!」

 

やんややんやの大騒ぎにモニターで割り込んでくる兄さん。

とりあえず少しすっきりしたからシステム兵装を停止させて兄さんの方に向き直ってみる。

 

『いやなに、ガジェットドローンが新しいレリックを見つけたらしくてね、それを君にも教えておこうと思ったんだ』

「それは、まあ吉報だけどそれだけで言う必要もあるかな? 基本レリック関連についてはオート操作だしよっぽどの相手でも出ない限りはあのガラクタだけでも十分対処可能でしょ?」

「だよねー、ガジェットも何だかんだで局の魔導師相手にはそこそこの戦果は出してるし」

「ぜえーっ……ぜえーっ……冗談抜きで死ぬかと思ったっスよ……」

 

フルマラソン後のランナーみたいな息の荒げ方。ふんだ、お前が悪いのだよお前が。

それは置いておくにしても兄さんの報告に私はどうにも懐疑的な反応をしてしまう。

現状のガジェットはレリック含めたロストロギア関連の物質に反応して行動するようにオートメーション化してあちこちに散らばせている。

基本的に多数が同時に行動しているからそこそこ手練れの魔導師部隊とでも遭遇しない限りは多少の損失があってもガジェットを回収できる。

万一その手の優秀な相手が出てきた場合は私がガジェットを手動操作に切り替えたり、場合によってはこっちの兵器を送り込んだりで対応しているのだ。

 

「……あー、要するにその手の普通じゃない手練れが首を突っ込んできているってことでいいのかな?」

『理解が早くて助かるよカティーナ……そうとも、今回の案件にはとても興味深い実験素体が出てきてくれているのだからね、君にとっても、そして私にとっても』

 

常日頃から欲望全開で興奮している気があるが、それでも10年以上の付き合いがあるからわかることもある。

今の兄さんはいつも以上に喜びを隠しきれないといった状態にあるんだと。

一体兄さんの興味をここまで掻き立てる相手とは何者なのだろうと私にもそんな考えが出てきていたのだが。

 

「…………へえ、これはまさか……」

 

次いで兄さんから提示されたモニターに映し出される今回のレリックを発見したポイント、

そのポイントに向かっている管理局の魔導師部隊についての別動隊からの簡易的な収集データ。

そこに映る名前と顔写真を見たら、確かにこれは私にも兄さんにも大いに関わりのある相手だと思い知らされた。

 

 

 

*

 

 

 

エイリム山岳丘陵地区、山岳沿いに建設されたレール上を走り続ける一台のリニアレール車両。

実はこのリニアレールは極秘でレリックを輸送していたのだがその反応を周辺のガジェットドローンが察知。

内部に侵入された上に車両のコントロールすらも奪われてしまい、止まることなく暴走を続けていた。

従来のⅠ型のみならず周辺空域にはリニアレールを守護するように多数の飛行タイプのⅡ型ガジェットが飛び交い、

更に車両内部にはこれまで会敵の無かった大型タイプのⅢ型ガジェットすらもいる。

 

「同じ空は久しぶりだね、フェイトちゃん」

「うん、なのは。フォワードのみんなの為にも頑張らないとだね」

 

その事件の担当となったのがつい最近新設されたばかりの新部隊である古代遺物管理部機動六課。

そして今、空を華麗に舞う2つの閃光が同部隊の隊長格である高町なのは一等空尉とフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官の2名。

プライベートでの仲の良さも去ることながら、管理局内でも指折りの実力者として認知されているエース・オブ・エース。

 

『反応確認、来ます!!』

「シューーートッ!!」

『Short Buster』

 

白いバリアジャケットを纏うなのはのその手に携えるのは10年近くもの相棒となる愛デバイス、レイジングハート・エクセリオン。

部隊編成の規則の関係上、現在は共に魔力リミッターをかけられてAAランク相当にまで能力がダウンしているものの、

ガジェット部隊とその攻撃の隙間を縫うようにして高機動を行いながら砲撃を発射し正確に敵を撃ち貫いていく。

その光景は正に圧巻の一言であり、とてもリミッターが付いているとは思えないくらいの活躍ぶりだ。

 

「数は多いけど、これくらいなら……!」

『Accel Shooter』

 

かと思えば瞬時に急停止を行いがら空中で一回転し後方の敵を退け、更にカートリッジロードから誘導弾の発射へと繋げる。

不意を突かれた形になったガジェットの大群は成す術も無くその誘導弾をその身に受けて一度にいくつもの爆発が巻き起こる。

 

『Haken Slash』

「はあああ!!」

 

その爆煙を掻き分ける様に姿を現すのは対照的な黒い姿の魔導師であるフェイトと鎌状のデバイス、バルディッシュ・アサルト。

AAランクという魔力量からはあまりにも不釣り合いな巨大な魔力刃から振るわれる黄金の刃の斬撃。

高速回転しながら一直線に飛んでいくそれは一度に複数のガジェットを真っ二つに切り裂いていく。

 

『ガジェットⅡ型、更に反応消失、残り12!!』

『ふええ……相変わらずなのはさんもフェイトさんも凄い活躍だなあ』

 

後方で通信を担当する部隊であるロングアーチから見てもその実力は驚異的としか言いようが無く、同時に味方であることがとても頼もしい。

縦横無尽に空を飛び交う白と黒、絶えることなく放たれ続ける桜と金の閃光、それに続くように起こり続けるいくつもの爆発。

六課がほこる隊長格2人が空を抑えているからこそ、リニアレール侵入を担当する新人たちの仕事も捗るし、上空戦力の殲滅は時間の問題と誰もが思っていた。

 

『いえ、ちょっと待って……この反応は……!!』

「シャーリー、どうしたの?」

『なのは隊長、フェイト隊長、気を付けてください、近くの上空に新たな大型の熱源を確認! 数は3!』

「大型が3機……敵の増援部隊――――なのはっ!!」

『ぶ、物理破壊型の砲撃を確認!! 推定威力Sランクオーバー!!』

 

 

 

ボシュウウウ!!!

 

 

 

慌ただしく現状報告を行うロングアーチからの情報を整理しきる前に2人の眼前に突如として迫ってきたのは、2人の全身をも軽く飲み込めるような白い光の奔流。

咄嗟にその反応を察知したフェイトによってなのはもまたそれに気付いて共にどうにか回避を成功させる。

いきなりの急展開に驚きを隠しきれない2人だが、その閃光が放たれた原因が何者なのかを捉えて更に表情を変えさせられることになる。

 

「!?…………あの黒い機体……もしかして……」

「うん……間違いないよフェイトちゃん……8年前のあの日に私の砲撃を真っ向から受け止めたあの……しかも今回はそれだけじゃない……」

『て、敵の詳細解析不能! で、でも何なのこのデタラメな数値とAMFの濃度は!?』

 

ロングアーチの反応に戸惑いが混じるのも無理からぬこと、順調に敵戦力を殲滅しつつあったなのはとフェイトの前に現れた3つの機影。

内2つは見覚えの無い薄い円盤のような形をした浮遊体だったが、その間に挟まれる様に存在している機体は忘れる筈も無い。

嘗てエース・オブ・エースの砲撃を真っ向から撃ち破り、膨大なAMFを撒き散らす悪魔的な兵器として管理局内でも恐れられていた漆黒の要塞であった。

 

『チ、チャージ確認!! 次弾来ます!!』

「フェイトちゃん!!」

「わかってる!!」

 

だが現れたのが自分たちにとって忘れえない因縁の敵だろうとその感慨に浸っている暇すら与えられない。

今度は両サイドにいる白い円盤型の機体が機体上下それぞれに取りつけた砲門を回頭させながらなのはとフェイトを狙い撃つ。

その破壊力もまた並を遥かに超える物であり、まともに相手をするのは危険と判断した2人はそれぞれ別の方向に飛び上がってそれを避ける。

 

「…………(ギギギギ)」

 

だが円盤型の機体の攻撃手段はそれに限らずであり、別方向から迫ってきていたフェイトに対して側面の小さな穴のいくつかからレーザーを発射。

その攻撃によってフェイトはまたしても距離を取らざるを得なくなり、3機の要塞から離れる様に後退していく。

 

「ディバインバスター―ッ!!」

 

なのはの方もまた激化を続ける白い機体の主砲と側面部のレーザー砲塔の攻撃を掻い潜りながらも砲撃を放つ。

ガジェットならば複数を同時に巻き込みながらも尚威力が衰えないなのはにとっても十八番である魔法だが、

 

「…………(ブゥウウン)」

「ッ!!」

 

白い機体は避ける事すらせずに真っ向からその攻撃を高濃度のAMFによって掻き消して見せる。

そのお返しと言わんばかりに上部の主砲から更に白い閃光を発射するが、それもまたなのはに回避される形となる。

お互いの攻撃は防がれるか避けられるか、互いに一進一退の攻防となっていた。

 

「AMF濃度が異常に上がっている……恐らくはあの3機の機体から発せられている」

(うん……全力ならともかく、今の私達じゃ闇雲に攻撃してみたところで効果は薄い、かな)

「それに黒い方はともかくとしても、白い方は回頭可能な主砲に側面のレーザー砲台で死角を潰してる……正直言って、普通にやろうとしたら掻い潜るのは難しいね」

 

敵の行動をある程度視認した上での確認を行うなのはとフェイト。

黒いタイプの機体の攻撃手段が機体前面に目立つように配置された主砲のみであることは8年前に判明していることだ。

かといってそれを補うように頑強な装甲と高濃度のAMF発生装置も装備しており、並の攻撃では撃破するのはかなり難しい。

しかもロングアーチからの通信を踏まえれば初撃の時点で8年前より攻撃そのものの出力も向上していると見ていい。

一方で今回が初遭遇となる白い機体もまた素の装甲と高濃度のAMFによって防御力が高い。

攻撃手段も主砲が2門に側面部のレーザー砲が多数と黒い機体以上に隙が無く、並の魔導師なら近づくのも難しい。

魔力リミッターによって能力が抑えられている今の自分たちには少々荷が重い相手と、そういう風に認識していた。

 

(でも、だからって今の私達が絶対勝てない相手じゃない。そうだよね、フェイトちゃん?)

「当然、ここでアイツらを野放しにしたら新人のみんなが危なくなる。何より、一度負けた相手にまた負ける程、なのはも私も弱くない」

 

念話の先にいるなのはも自分と同じように自信に満ち溢れた笑顔を浮かべているだろうことはフェイトにとって容易に想像できること。

楽に勝てる相手ではないことは確かだが、逆に絶対勝てない相手ではないというのもまた2人の間の共通認識。

素の装甲が厚くAMFによってこちらの攻撃も減衰させられているが、それだけで攻撃を通す手段が全く無くなるわけでは無かった。

 

(それじゃ……前はお願いね、フェイトちゃん!)

「うん、なのはも気を付けて!!」

 

そして目の前の巨体3つを撃破する算段も既についている。

それを改めて確認した後、なのはがまず3機から遠く離れる様に後退していく。

その行動を確認した3つの機影がなのはを狙い撃とうと攻撃のチャージを開始するのだが、

 

「せやあ!!」

 

そこを狙っていたかのようにフェイトが単身で機影群に突っ込んでくる。危険を察知した白い機体の側面部によるレーザー群が発射されるのだが、フェイトはやはりそれらを難なく回避。

如何に攻撃の手数が多かろうと、AMFやリミッターで力を抑えられていようと、並の攻撃速度で捉えれらる程フェイト・テスタロッサ・ハラオウンという魔導師は甘くは無い。

魔力刃によるフェイトの斬撃はやはり装甲をAMFによって減衰させられてダメージには至らなかったが、

 

『白い機体の主砲チャージ確認、間もなく発射されます!!』

「!!……バルディッシュ、カートリッジロード!!」

 

ロングアーチからのその通信を待っていたとばかりにフェイトは瞬時に下がって魔法陣を展開。

カートリッジシステムによる連続ロードによって爆発的に魔力が高まっていく。

その間にも白い機体2つの上部砲門が閃光を収縮し、今正にフェイトを撃ち落とさんとけたたましい音を上げ始めていたが

 

「トライデント……スマッシャーーーッッ!!!」

 

フェイトの掲げた左手とその先に展開された魔法陣から放出される3条の閃光。

トライデントの名を体現するかの如く発射されたそれらが貫くのは発射秒読み段階まで来ていた白い機体の主砲部分。

攻撃手段の部分である以上どうしても防御が薄くなってしまうそこに叩き込まれた閃光により、内部に溜め込んだエネルギーと連動。

そのダメージが本体内部にまで伝搬して白い機体は大爆発とともに木端微塵に分解される。

何より恐ろしいのはトライデントスマッシャーの閃光は1機目を貫いたまま2機目の白い機体の砲門をも貫き、全く同様の結果をもたらして見せたこと。

ちまちました攻撃が通じないなら防御の薄い部分を狙って一撃で倒せばいい、その考えは見事に的中しあっという間に敵戦力は3分の1となる。

 

『黒い機影のチャージも確認、発射まで推定15秒!!』

「了解……なのは、準備は?」

(オッケーだよフェイトちゃん、こっちもチャージ完了!!)

 

唯一フェイトの砲撃の的になっていなかった黒い機体もまた機体前面の主砲でフェイトを狙っていた。

しかし、装甲を重視した故に絶対的な機動力に大きく劣るその機体は離れていくフェイトを追い続けることができない。

そんな黒い機体を遠く離れた位置で狙っていたのが先程後退していたなのは。

彼女もまたフェイトと同様にカートリッジロードによって魔力を上昇、レイジングハートの切っ先には今正に発射されんと輝く桜色の閃光。

 

『Divine Buster Extension』

「シューーーーートッッッ!!!!」

 

咆哮と共に撃ち放たれたそれは見る者を魅了する膨大な桜色の魔力の奔流。

その砲撃が寸分の互いも無く一直線にチャージを行っていた黒い機体の砲門部分に吸い込まれるようにして激突する。

そして、白い機体の最期を再現するかのように内部のエネルギーと共に一際大きい爆発を起こして黒い機体もまた破壊された。

 

『やりましたっ!! 撃破確認です!!』

『車両内、上空の敵反応はすべて消滅、スターズFもレリックを確保!!』

『リイン曹長から通達、車両コントロールも無事に取り戻したとのことです』

 

なのはとフェイトが上空の敵を無事に倒したのと時を同じくして、リニアレール内での事も片付いたようだ。

ロングアーチからの通信を聞いてなのはとフェイトもほっと一息といった様子である。

 

「お疲れ様なのは、やったね!」

「うん、フェイトちゃん!!」

 

互いにニコリと笑顔を見せ合う。なのはにとっては8年前の負傷の原因の1つとなった相手であっただけに、その勝利も普段以上に特別な物だった。

 

 

 

*

 

 

 

兄さんの隣でモニター観戦していた私ははっきり言って空いた口が塞がらないって感じだった。

データ上で確認したから、リミッターかけられたAA2人くらいなら3機犠牲にして1人くらいは撤退か戦闘不能に追い込めるかなーなんて考えてたのが甘々だったということ。

最初の方こそ互角に戦っていたが、あの2人が行動を開始した瞬間にチェロクアもチェロクア・ピューマもあっさり爆散。相手は殆ど消耗してないし無傷。

前々から自分で言っていた『火力偏重の機体はエース相手じゃ的と化す』を、またこんな形で実感させられるとは思わなんだ。

 

『刻印ナンバー9、護送体勢に入りました。追加の戦力を送りますか?』

「んあ……いいよいいよ、レリックを一個取り逃したのはもったいないけど今の所有効に動けそうな作品は無いし、下手なの送りつけてもゴミを増やすだけだから」

 

別モニターからのウーノからの報告もどこか上の空って感じだった。

何せ今の私の興味の対象となっているのは目の前のモニターに映し出される最強の魔導師部隊、機動六課唯一つ。

 

「……まさか生きていたとはねえ、それも前よりもずっと強くなってのし上がっているとは。しかもその部下がナカジマにランスター……加えてそっちは」

「そう……生きて動いているプロジェクトFの残滓……まさかこんな所で巡り合えるとは私も思わなかったよ」

「成る程、兄さんがいつも以上にハイな理由がよーくわかったよ、これだけ面白そうなのがいっぱいいれば心も踊るってもんだよね」

「そうだろう……そうだろうともカティーナ! これだけの案件を前にして喜ばずにはいられないさ」

 

いつも以上に高らかに笑う兄さんのその言葉は私にとっても非常に共感できるもの。

8年前の時点でAAAランク級だった白いエースに、兄さんの研究の原初とも言える存在のタイプゼロセカンド、嘗て私の作品を単独で殆ど無力化して見せたランスターの身内。

それに加えて兄さんがその基礎を紡いだプロジェクトFの成功体が2人に滅多に見れない竜召喚の魔法の使い手。

過剰戦力もいいところな無敵に近い魔導師たち……それはイコール、私たちにとっては最高位の実験動物にもなる可能性があるレアな存在。

 

「チェロクアの方もそうだけど新人連中も一筋縄ではいかないみたいだしねえ……まさかⅢ型ガジェットがああも簡単にやられるとはちょっとね……」

「おや? もしかしてガラクタとはいえ自分の作品を壊されて悔しいのかい、カティーナ?」

 

単体戦力を高めて導入した新たなⅢ型ガジェット。それを撃破して見せたのは隊長格ではなく実戦経験も乏しい新人2人。

複数とはいえランクB2人程度の相手にやられるほどヤワじゃ無かった筈なのに結果はこれだ。

兄さんの言っていることも完全に嘘ではない、確かに悔しさもあるっちゃある。

 

「……いやあ、それ以上に燃えてきたよ。私の研究もまだまだ甘かったんだってことがよくわかってさ。あっちが最強の部隊で挑んてくるならこっちも最高の作品で迎え撃たなきゃ失礼だよねって」

「ククククク……見事、その言葉を聞けて嬉しいよカティーナ、やはり君は私の妹なのだね」

 

既にコンセプト的に遅れ気味だった火力偏重型だったとはいえ、それでも私が精魂込めて作り上げた作品であることに間違いは無い。

それをいとも容易く壊して見せた機動六課の魔導師たち……実に、実にそそられる物がある。

これは現在進行させている機動性重視や汎用式の兵器のプランも大幅に早める必要がある。

管理局があのような最高戦力を用意した以上、こちらもこれ以上妥協するわけにはいかない。

脳や胸や、それどころか全身を駆け巡るスパークの如き昂揚感……機動六課はそれだけの魅力ある実験体たちなのだと。

 

「いずれ目に物見せてあげますとも機動六課……私の作る最高の作品たちで、いずれはお前達全員を完膚なきまでに蹂躙してやるよ……くふ、くふふふふ……!!」

 

その昂った気持ちを抑えきれず、兄さんと同じような獰猛な笑みを浮かべて見せたりもしていたのだった。




◆チェロクア改

レリックから抽出されたエネルギーと専用のコンデンサーによって改良したチェロクア。
外見上の変化は無いが基礎スペックの向上と主武装であるプラズマキャノンの威力が高められている。
その威力は最大チャージでSランクオーバーにも達する物となっている。


◆チェロクア・ピューマ

チェロクアをベースに新しく開発した大型無人飛行兵器。改良型のオリジナルと同様にレリックエネルギーが用いられている。
重量感ある黒い機体のチェロクアとは対照的に、白いカラーの薄い円盤型の見た目となっている。
武装は機体上部と下部に1門ずつ装備されたプラズマキャノンと機体側面に計64門備え付けられているレーザー砲。
プラズマキャノンは180°回頭が可能で死角をカバーし、その砲撃が届かない位置も側面部レーザー砲でフォローしている。
最大出力こそオリジナルには劣るが総合火力では上回り、高濃度AMF発生機も健在の大火力兵器である。
尤も、オリジナル共々機動力の低さと攻撃の瞬間の狙い撃ちによって、その大きな弱点を露呈する形となってしまったが。
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