狂気の科学者の妹は機械弄りが大好き 作:LR-8717-FA
リニアレール事件から数日が経ったある日のこと。
機動六課隊舎の会議室に隊長や新人フォワードメンバーを含めた六課の主要メンバーの多くが集合していた。
その議題は六課設立の理由にもなっているレリック関連事件の裏で引いている黒幕についての話。
自分たちの部隊が追っている事件の主犯格についてのメドが立ったとの事前報告がフェイトからあったのだ。
よって今後のことなどについても改めて話しておく必要があり、新人たちも同様にその場に呼ばれていた。
その情報の重要度、何より会議を提案したフェイトの真剣な面持ちを見たとあっては自然とこの場にいる全員に緊張が走る。
「ほんなら、一通りのメンバーは集まったみたいやし、始めよか」
隊長陣が着いている席の中央から身を乗り出して会議の開始を宣告するのは六課のトップである部隊長の八神はやて。
彼女もまたなのはやフェイトと並ぶ管理局の実力者であり、階級も僅か10年で二佐にまで昇格しているというエリート中のエリート。
表向きは極秘情報とされている10年前に起きた管理外世界97での闇の書事件や彼女を支える4人の家族など、
その経歴、保有戦力、その他諸々を見ても管理局内での注目度は相当に高い人物でもある。
「私達が追っているレリック事件、その首謀者について目星がついた立ったって話は事前に聞いてるよね、その点も踏まえてまず……」
はやての言葉を引き継ぐようにモニターを操作して表示させるのは共に白衣を纏った2人のある人物。
髪の色も青紫で共通し、身体的特徴も似通っているが唯一違うのはその性別と専門分野。
「まずはこっち…ドクター、ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア事件を主として多くの罪状で広域指名手配がされている次元犯罪者」
フェイトが話し始めるのはまず男の科学者の方、ジェイル・スカリエッティという人物について。
六課所属前から個人的事情によってその男のことを追っていたのだが、神出鬼没且つ表向きの情報も少ないこともあって捜査は難航状態にあった。
そのジェイル・スカリエッティが何の因果か今の自分の所属部隊である六課での主任務に大きな関わりを持ち始めているのである。
「あの、早速ですけど質問いいですか?」
「うん、どうぞスバル」
「そのジェイル・スカリエッティが主犯だと何故急に判明したのかについてなんですけど……」
まだ話初めであったが挙手をして自身の疑問を提示したのは青髪の少女、機動六課スターズ分隊03、スバル・ナカジマ。
数年前にレリックによる災害で絶体絶命の危機にあったところをなのはの手によって救われ、以来ずっと彼女に憧れて管理局員となった少女。
粗削りながらも確かな才能を持ち、シューティングアーツを用いての近接格闘術のセンスに光るものがある。
「うん、私も最初に見た時はちょっと驚いちゃったんだけど、これを見てくれるかな」
その疑問についてもフェイトはすぐに解答を提示できる準備があったようで、パネル操作でまた新たな画像が映し出される。
それは先のリニアレール事件で破壊された新しいタイプの大型ガジェットの残骸と断面図、その拡大写真の1枚である。
既存のガジェットと大きく差が無い内部構造の中、一際目を引くのがある部分に刻まれている2つのネームプレート。
「この部分……スペルも全く同一、間違いなくジェイル・スカリエッティの名前が書かれているんだ」
「これ、エリオ君がやっつけたタイプの……」
「でもフェイトさん、そのスカリエッティの仕業だとして、なんでわざわざ自分がやったみたいに堂々と宣言するようなことを……?」
少々不安げな表情も浮かべ始めているのがこの場にいるメンバーの中でも一回り小さい2人の男女。
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、共にフェイトが隊長を務めるライトニング分隊の03と04。
エリオはその特殊な出自故に家族と離れ離れにされ、一時期辛い生活を強いられて荒んでいたこともあったが、今ではフェイトの保護下で管理局員として立派に働いている。
キャロは竜召喚のスキルを用いるアルザスの少数民族であるル・ルシエの里の出身者。
彼女もまたエリオと同様にその身に秘める強すぎる力の所為で一族を追放され、管理局内でたらい回しにされていたところをフェイトによって救われている。
2人もまた敬愛するフェイトの為に腕を磨いており、その実力を着々と伸ばしつつある将来有望な原石だ。
「愉快犯によるかく乱を狙ったミスリードか……本人だとしたら自己顕示欲によるもの、という線も否定しきれないわ」
「うん、フェイトちゃんと同じ意見。流石に鋭いねティアナ」
そんなエリオとキャロの疑問に答えを示したもう1人の新人になのはは素直な称賛を向けている。
ティアナ・ランスター、スバルと同じスターズ分隊の一員で04。
執務官を志しており、魔法の腕前も銃型のデバイスを用いた正確無比な射撃や高度な幻影魔法などを使い、総合的な戦闘力はなかなかのものである。
スバルとは訓練校時代からの付き合いで、六課でも同じ分隊に所属している女房的な存在となっている。
「どっちにしてもホンマにスカリエッティによるものやとしたら、わざわざレリックのような危険なロストロギアを狙う理由についてもある程度予測が付く、というのがフェイト部隊長の見解や」
「レリックを狙う理由……それは一体なんなんですか?」
「それについてはまだ情報が纏まってないから話せないんだけど……スカリエッティはその通り名通り、生命操作や生体改造に対して異常な知識と情熱を持っている。そんな男にレリックを奪われるのがどれだけ危険なことか……」
はやての言葉から引き続くティアナからの質問、それに答えるフェイトの表情は真剣さを増す一方。
その裏にある真意までは読み取れないものの、どれだけ危険な相手かということはその顔と口調でティアナだけでなくその場にいる全員が理解できることだった。
加えて、フェイトにとってスカリエッティという男は自分の出自にも大きく関係するある技術を構築した存在でもあり、
その男の得意とする生命操作も合わせて未だに研究が続いていることを想像すると自然と感情が揺さぶられてしまうのだ。
「……? エリオ君、どうしたの?」
「……いや何でもない、気にしないでキャロ」
そしてその点についてはフェイトだけでなく、彼女の庇護下にあるエリオにもある物だった。
自分が家族と離れ離れになることになったその理由、そのことについてはもう個人的な恨みも無く克服した感情であるはずだったが
やはり元凶となった相手が今の自分たちの追っている相手だと知った時の感情の変化、それはすぐ側にいるパートナーのキャロでも容易に違和感を感じられる程だった。
「そして、そのスカリエッティと同レベルに危険な相手も今回の事件に関わっている可能性がある」
そのスカリエッティのある程度の説明が終わって更に続くもう1人の女性科学者についての情報提示。
なのはの言葉とに続くようにモニターの数が増えていき、その中にはガジェットとは違う兵器についても表示されている。
その1つである黒い大型兵器はなのはだけでなく、多くのメンバーに動揺を与える物だった。
「ネームプレートに刻まれていたもう1つの固有名詞、カティーナ・ベルリネッタ。質量兵器を始めとする多くの違法兵器開発や使用の罪でマークされている次元犯罪者」
「スカリエッティと同じで今までその足取りが掴めなかったんだけど、どういうわけかここに来て彼の名前と一緒にそれが提示されていた」
フェイトの説明を引き継ぐのははやてを挟んでもう1つ先の席に着いていたなのは。
フェイトにとっての因縁ある相手がスカリエッティだとするなら、なのはにとってのそれはベルリネッタなのである。
いや、正確に言うとこの会議を開くことになったリニアレール事件の時からそうなったというのが正しいか。
「事件後の報告で簡単には聞いていると思うけど、私とフェイト部隊長で破壊した上空の追加戦力……黒い大型要塞と白い飛行兵器が計3機」
「……そんでもってその内の1つはなのはにとってもでっけえ意味のある敵だった、話半分くらいなら知ってんだろ?」
「は、はい……確か、8年前のある事件で当時のなのはさんの魔力に匹敵する破壊力を持った凄い兵器だったとか……」
今まで一切の言葉を発さなかった筈が突如として口を開いたのがなのはの横に控えていた赤髪の少女。
スターズ分隊副隊長にしてはやての大切な家族でもある、鉄槌の騎士、ヴィータ。
10年前の闇の書事件の主犯の1人でもあり、守護騎士の一員でもあった彼女は他の騎士たちと同様に管理教員としての任を全うしている。
そのヴィータの問いかけに答えるスバルであったがその口調はどこかたどたどしい。
なのはが意図的に伏せているということもあるが、管理局内でも8年前の事件についての情報はあまり詳細が表に流れておらず、スバルとしても断片的なことしか話せない。
ただ、自分の憧れの人物であるなのはすらも手を焼かされたことのある危険な兵器であるということだけは強く印象付いていた。
「私も遭遇した、8年前に出現してから詳細の掴めなかった謎の兵器の突如としての再出現、それと同質の兵器の複数確認」
「つまり、これだけの戦力を用意できる以上、ガジェットや兵器群を開発し、糸を引いているのはベルリネッタ本人の可能性が高いということ」
「そうなっている以上、スカリエッティの方も本人の確率が大きくなり、そして現在、2人は手を組んで行動している可能性も高いいうことや」
部隊長3人による主犯格についての情報の一通りのまとめと予想、その内容は新人たちの不安と緊張を更に高めていく物。
ジェイル・スカリエッティとカティーナ・ベルリネッタ、共に最悪クラスの犯罪者にして高度な技術を有する科学者。
その2人がどういう理由か協力関係にあり、ガジェットドローンを始めとした兵器類によるロストロギア、レリックの収集。
そうである以上、自分たち六課との衝突は確実なものとなり、この2人の強大な犯罪者を相手にしていくということになる。
「つまり今後相手をすることになるのはガジェットに留まらない。ベルリネッタの保有する兵器群は勿論のこと、スカリエッティの方からも何らかの戦力が出てくるかもしれない」
付け足しをするフェイトの言うように、前回のリニアレール事件だけでも3機もの巨大兵器が上空に出現。
その場は隊長陣2人による活躍もあってさしたる被害も出さずに場を収めることに成功している。
だが、相手の思想や技術力を考えればあの程度のことで終わることなどまずありえないと言っていい。
今後はもっと強力なそして大量のガジェットとは違う別の兵器が立ちはだかることだってありえる。
その時、六課の隊長格だけでなく新人フォワード陣にもその刃が向けられることであろう。
「即ち、今後の任務と戦いは更に激化していく。お前たちも今以上に鍛錬に励み力と英気を養っておけ、ということだ」
「「「「はい!!」」」」
不安で萎縮していた新人たちを鼓舞するように言葉を投げかけるのはヴィータとは逆にフェイトの側に控える桃髪長身の女性。
剣の騎士、シグナム。はやての家族にして彼女を守護する騎士の一画にしてリーダー格であり、ライトニング分隊の02、副隊長を務める。
自身の性質もあって新人との鍛錬にはあまり積極的に関わらないのだが、その内に秘めている覚悟と闘志は他のメンバーにも決して劣らない物。
なのは達隊長陣と肩を並べるシグナムの言葉を受けて、新人たちもその闘志を再燃させて力強くうなずいて答えて見せていた。
「スカリエッティやベルリネッタ個人の捜索は私が引き続いて進めておくから、とりあえず新人のみんなは今の所頭の片隅に留めておくくらいでいいから」
「そう、シグナム副隊長が言っていたように今のみんなに大切なのは確実に力を付けていくこと。前線ではいつでも私やフェイト部隊長、その他の隊長のみんなが付きっきりってわけにもいかないから。だからせめて、新人のみんなだけでも敵を抑え込めるようにしていく。それが私たちの役目でもあるから今後もしっかり付いて来てね」
話を締めくくるように伝えられたフェイトとなのはの言葉に答える新人たちの表情もまた真剣そのものだ。
その様子を見ているはやてたち隊長陣もいずれ大成するであろう大きな原石たちの未来を思い、自分たちも頑張らねばと決意を新たにしていた。
*
「まーったく、改めて洗い直せば直すほど、ぶっ飛んだ部隊だってことを認識させられるわねえ」
リニアレールの事件から早数日、こちらも本気でやらせてもらうと決意表明したはいいけど基本的な行動は変わらない。
今日も今日とて自分専用のラボに篭もって自作メカの山に埋もれながら専用のモニターと只管にらめっこだ。
今は何を調べているのかと言えば件の部隊である機動六課の詳細データと各担任の戦闘能力を主とした個人データについて。
「部隊長の時点であの闇の書の申し子、その周りを固めるは守護騎士と2人のエース……隊長陣だけで規定違反オーバーぶっちぎりなのに全員にリミッター付きで無理やり押し込むとは考えたもので」
最早私や兄さんじゃなくてもある程度管理局のシステムを聞き齧ったことのある人間ならこの部隊がどれだけ異常なのかすぐにわかる。
管理局では戦力の偏りが発生しないよう、特にAAからAAAランク辺りの魔導師を境にしてその配置を制限される。
ところがどっこい六課隊長陣の保有ランクは全員がSからニアSというとんでもない連中ばかり。
それが5人も同じ部隊にいるって時点で偏りもクソも無い、その気になれば次元世界の1つくらいは壊滅させられるんじゃないかと冗談抜きで言えてしまうような連中。
ではそれをどうやって1つの場所に収めたのかと言えば間違いなく先のリニアレール事件の計測でも判明した能力リミッターにある。
あの時チェロクア小隊と交戦していた高町なのはとフェイト・テスタロッサはこっちの計測では精々AAランクがいい所といった数値の魔力量だった。
本来Sランク級の魔導師がここまで極端に力を落とし、大した違和感も無く戦場を駆け巡っていた理由となれば、やはり能力リミッターが最も有力な線だろう。
こっちの想定が正しければ大小の差はあれど恐らく隊長格全員はその能力をセーブされているに違いない。
尤も、リミッター付きで私の兵器群を容易く破壊して見せている辺り、彼女たちには保有魔力ランク以上に実戦経験の戦闘センスに優れていることも考慮しなくてはいけない。
これまた条件はわからないが仮に隊長格全員がそのリミッターを解除し、全力全開の状態で交戦することになった場合……うん、考えるだけでばかばかしいくらいだよ。
「生き残った上にその腕前を更に高めている……うん、これはこれで実にうれしい結果だよなのはちゃん、くふふふ」
とはいえ、私の心を占めているのは以前から言っているように悔しさや諦めよりもそれを上回る歓喜に他ならない。
AAランクという状態でも他を圧倒する砲撃の威力を誇り、それが全力になった場合の破壊力は正に想像を絶するものだろう。
かといって現状の私のメカのように動きのトロい砲台役というわけでもなく、高速機動による空中戦も難なくこなす射撃のエキスパート。
まともにやりあって彼女、高町なのはことなのはちゃんに勝てる魔導師や兵器なんてどこに存在するのやらという感じである。
だからこそ、私の研究意欲はより掻き立てられ、8年前のあの日と同じように全力のエースを正面から叩き伏せた時……その時の快楽は如何ほどの物になるのかっていうね。
「しかもそれだけじゃなく他の隊長陣はもちろん、新人フォワードにも目ぼしいのが色々揃っている……うん、素晴らしいなあ、本当に素晴らしい実験体の集まりだよ機動六課は!」
なのはちゃんと肩を並べるエースでもあるフェイト・テスタロッサ。プロジェクトFの遺児の1人。
彼女もまた高い実力の持ち主で特に近接戦闘に優れたこれまた最強クラスの魔導師。
副隊長であるシグナムとヴィータもまた同様に隊長陣と肩を並べる元闇の書の守護騎士たち。
何よりその下を固める新人フォワード陣……兄さんが注目しているもう1人の残滓であるエリオ・モンディアルは竜召喚のスキル保有者であるキャロ・ル・ルシエと共にⅢ型ガジェットを撃破したという功績持ち。
それ以上に私の目を引いたのはもう2人の新人であるスバル・ナカジマとティアナ・ランスターの2人。
「兄さんの研究よりも昔に完成していた成功体の機人……ゼロセカンド、まさかこんな所で会えるとはねえ……ノーヴェとかとぶつけさせたら面白いことになりそうだよ」
戦闘機人関係の資料やら研究やらを積極的に行っている私達だからこそ知り得る数々の極秘情報。そこから導き出されるスバル・ナカジマの素性と保有能力について。
彼女ともう1人の姉がどういう経緯であの時襲撃してきたクイント・ナカジマの娘になっていたかは知らないが、何というか作為的な物すら感じざるを得ない巡り合わせという感じ。
その内に抱える心境がどうなっているのかはまだわからないが、少なくとも管理局でまっとうな魔導師をやれているというだけで大体想像はつく。
そんな彼女に兄さんの作品である機人のみんなを……時にクイントをベースに生み出されたノーヴェとかをぶつけたらどんな展開になるのか……!!
「ふふ、ふふふふ。想像するだけで楽しいっていうね……!! その点に関してはこっちのランスターもそうなんだし」
なのはちゃんやテスタロッサと同様に私の兵器群に単独で大打撃を与えるという驚異的戦果を見せつけてくれたティーダ・ランスターの妹。
リニアレールでの戦闘記録でもスバル・ナカジマ、ゼロセカンドと共に30機近いガジェットを撃破したという情報が挙がっている。
個々の実力は大したことないガラクタの戦果で推し量りきれるものでも無いだろうが、それでもランクB魔導師としては十分優秀と言える逸材だろう。
何より彼女は私が直接的にその手にかけたランスターの身内……
彼女の正確無比な射撃能力に対する興味と同じくらい、その真実を突きつける楽しみもまた私の胸を熱く焦がしていく。
「いつ以来かなあ、こんな気持ちにさせられたのは……だからこそ、私の研究はもっともっと加速していくんだけど」
いつだって自分の作品が敵を捻じ伏せる様を見るのは楽しい。
力無き者を一方的に蹂躙するのも大好きだが、力ある者を絶望の淵に叩き込んだ上で踏み潰すのはもっと強い快楽を得られる。
その為の実験体が機動六課の魔導師たちで、兄さんも強い興味を注いでいる最強の魔導師部隊。
彼女たちを打倒すために私もまた自分の研究を加速させ、いつか実現させる六課の壊滅と彼女たちの跪く様をこの目に焼き付ける為なら……くふ、くふふふ。
『失礼、お時間はよろしいでしょうかカティ』
「おっとウーノ、全然大丈夫無問題。今は調べもの中だったから緊急の用件だろうと余裕でオールオッケーよ」
あの日以来気持ちは昂り続ける一方でどうにも止まらないし止めるつもりも無い。
そんな風に考えていた矢先に入ってくるのはお馴染と化しているウーノからの通信。
声色からして事務的な連絡か何かだろうしこれまたいつも通りに耳に通しておけばいいだけだろう。
『ゼストとルーテシアが活動を再開したとのことです、一応貴方にもお伝えしておこうかと』
「ん~成る程ねえ、まああの2人も今の所形式上は大切な協力者だし状況報告は大事だよね、ルーテシアとは特に懇意にしたいとも思ってるし。報告ありがとうだよ」
『こちらこそ。それともう1つ、最高評議会の方からガジェットの運用についての通達がいくつかあるのですが』
「あー……どうせそっちはオート化の弊害の無差別的な破壊についてでしょ? 一々一つ一つの細かな戦況なんて把握してる暇ないんだからそれくらいは大目に見てくれって言っといてよ」
『承りました』
以前の会合にも顔出しをしていたルーテシアとそのパートナーの1人でもある騎士ゼスト。
あの人たちもまた兄さんが進めている研究の成果の1つであり私たちにとって重要な戦力。
完成度は戦闘機人よりも大きく劣っているとはいえ、それでも兄さんの手によって飛躍的な進みを見せている人造魔導師の実験素体。
その人造魔導師研究の信仰を誰よりも望んでいるのが私たちの1番のスポンサーにしてクライアント、最高評議会こと脳みそトリオだ。
正直な所、自分の肉体すら持たないあの哀れな老害たちが生に執着して何の楽しみがあるのやらと思わなくもないが連中の思惑などどうでもいい。
一応は私や兄さんの研究環境を整えてくれているお得意様なのだから、必要な限りは適当にご機嫌を取っておけばいいだけ。
逆に言えば必要なくなったらその時点で切り捨てればいい、兄さんも同じようなこと言ってたしね。
「レリックの収拾に機動六課という部隊の出現、そしてルーテシアやゼストも動き出している……ん、今後の展開が実に楽しみだよねウーノ」
『はい、ドクターもカティもそれぞれの研究が更なる発展を遂げますよう……』
何だかんだでウーノとの付き合いも長い、兄さんと同様に細かい作業ではかなりお世話になっている。
彼女もまた私や兄さんの作り出す作品と世界に思いを馳せてくれているようで、その事実がまた私の感情の波ををより大きく強くさせていた。
*
機動六課隊舎、ヴィータの私室。
その部屋の主であるヴィータは自分のデスクのモニターである資料に目を通していた。
「あの時、なのはを落としたアイツの片割れが、よりにもよって今現れるなんてな……」
鋭い視線を向けるその先に映っているのはリニアレールの事件でも出現した黒い飛行要塞。
その事件の際はシグナムと共に後方待機にあったのだが、要塞出現の報を聞いた時は正直な話、すぐにでも飛び出してしまいたいくらいだった。
なのはの砲撃を真っ向から撃ち破り致命的な隙を与え、彼女に大きな傷を負わせる要因の1つとなった無人兵器。
ヴィータにとってはそれはなのは以上に恨みの篭もる相手であり、あの時なのはを守れなかった弱く情けない自分の姿を思い起こさせる象徴でもある。
「それを作ってるってのがコイツ……カティーナ・ベルリネッタとか言ったか……」
視線だけでなく1人呟くその声にすら怒気が混じり始めている。
生物ではなく兵器である以上、それを作り上げた者が存在するのが当然。
そしてなのはと自分の怨敵である兵器の製作者こそが、目の前のモニターに映し出されている女科学者、カティーナ・ベルリネッタ。
その彼女が今の機動六課が追っている事件の黒幕の一角であるという情報はヴィータにとっても驚愕の内容。
わかっているのはリニアレール事件のことも踏まえ、その忌むべき敵が未だに違法な研究に身を染めて多くの不幸を撒き散らそうとしているという現実。
できることならいますぐにでもこのニヤケ面の女科学者に全力の一撃を叩き込んでやりたいと思っているくらいなのである。
「……いいさ、六課で追ってるってならあたしも全力を尽くすだけだ、なのはやみんなことは……今度こそあたしが守ってやるんだ……!」
その憎しみをぐっと飲み込んで決意を新たにするヴィータ。
今の自分は機動六課スターズ分隊の副隊長であり、隊長のなのはをサポートし、部下の新人たちを教え導き守る立場にある。
10年前の闇の書事件の終結後、はやてや他の守護騎士を始めとして紡いできた居場所と多くの温もり、そして自分が守れなかった背中。
その全部をひっくるめて今度こそ自分の力で全てを守りきって見せると硬く心に誓うのであった。