Re:戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ   作:絆蛙

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ここから先は過去の没案を採用した新しい話です。
ゼロワン小説なのにゼロワンの活躍はだいぶ先になるので。
ちなみに書き終えてるのはあと3話くらい。
それ終わったら書くかわからん。少なくともこの感じはダメそう、大人しく別アカの方書く



第12話 未知! 異界なる世界!?

――目を覚ました時、眩い光が一番最初に入ってきた。

眩しさに目を閉じ、次にやってきたのは背中から感じる柔らかさと草木の匂い。

自然特有の独特な匂いだけでなく、透き通ったような空気。鳥の鳴き声や動物たち。

現代社会では滅多に感じられないものばかりを感じ取る。

まるで自然の中にでも放り出されたかのようだ。

 

”俺は一体、何をしていたのだろう……“と心中で思っていた。

直前の記憶があまりに曖昧で、それでもここに居ることに違和感だけを覚えていた。

アルトの最後の記憶は瓦礫から響を守ろうとしたところ。

が、ここはどうだ?

瓦礫どころかライブ会場ですらない。かといって病院ですらなかった。

こうも自然溢れた場所に放置されるなど現代社会において有り得るはずもない。

ならば考えられることは、ひとつ。

 

「死んだか」

「いいえ、貴方は死んでないわ。大丈夫?」

「?」

 

それしかないと思ったが、否定と心配する女の人の声が聞こえた。

気配を全く感じることが出来ず、アルトは無言で振り向くと、そこには一人の女性が手を差し伸べてきていた。

肩まで伸ばした()()()()が風で揺され、清廉にして艶やかな白布の衣を纏って、警戒させないためか穏やかに微笑む神々しいオーラを放つ、一人の女性。

 

「…………()()()?」

「女神様? ……まぁ表現としてはそれが正しいかもしれないけど……それより起き上がれそう?」

「……大丈夫」

 

体の節々は未だ痛むものの、アルトは手を貸してもらって立ち上がる。

起き上がった影響か周囲の景色が見えるようになり、鮮明になっていく。

青く正常な水を湛えて水平線の向こうまで広がっていそうな巨大な湖。その湖へ向け、白い飛沫を上げる大瀑布。

彼方に視線を向ければ、陽光を浴びて燦々と輝く葉で作られたような、太く巨大な蔦の柱が青空目がけ真っ直ぐに屹立しており、空には白い雲に混じって、三日月型をした浮遊大陸がいくつも漂っている。

泉を囲むように存在する大地には草木が生き生きとしており、よほど土壌が豊かなのか、辺りを見回しても草木が枯れている所はほとんど無い。

その緑色をした草の合間からは、赤や紫、濃い青など様々な色をした見たこともない植物たちが花開き、その命を存分に謳歌していた。

人工的なものがなく、自然の美に満ちた光景はおおよそ地球のものとは思えず、アルトの記憶にもこのような場所があったような記憶はない。

人類が存在してないならば地球もこのような美しさを保っていたのかもしれない。

そう思ってしまうほどの光景だ。

 

「ここは……俺、は……一体……」

 

だからこそ、アルトは疑問だった。

死んでないなら何故ここにいるのか。

間違いなく病院に運ばれるはずで、不思議なことに体も動くくらいにはなっている。

手を開いては閉じるを繰り返しても少々の痛みが返ってくるだけで、動かなかった右腕も動くようになっている。

それに何故か体中に包帯が巻かれているのだ。

ならば何かを知っているかもしれないのは目の前の女性だろう、と視線を向けた。

すると視線に気づいてか金髪の女性が口を開く。

 

「ごめんなさい、私も分からない。私はさっき貴方を見つけたばかりなの。酷い怪我だったから応急手当はしたのだけれど……」

「そうか……。感謝する。ノイズは……?」

 

予想通り、包帯は目の前の女性だったらしい。

ならば一番聞くべきことを聞かなければならない。

そう思って聞いてみたが。

 

「……ノイズ? 雑音のこと?」

「……?」

「?」

 

どうやら意味が伝わっていなく、数秒の沈黙が訪れた。

元々アルトが話すのが得意ではないのもあるだろう。

というか、会話が噛み合っていない。

 

「お互い情報に齟齬があるみたいね。ひとまず自己紹介しない?」

 

先に口を開いたのは金髪の女性だった。

何も分からないアルトにとっては情報は共有すべきだと思ったようで、頷くと自分から名乗った。

 

「アルト」

「アルトね。初めまして、私は()()()。よろしくね」

 

高司(たかつか)(まい)

金髪の、白衣に身を包んだ――とてもアルトが居た日常の中で着ることはなさそうな姿の女性は、そう名乗った。

 

「ああ。……それで、本題だが――」

 

ノイズの存在は誰であろうと知っている常識である。

故にノイズについて本当に知らないのかと早速話を進めようとしたその時だった。

くう、と小さな音を立てて、アルトの胃が空腹を訴えた。

 

「………」

「ふふ。まずご飯にした方が良さそうかな。その方が落ち着いて話せるだろうし、私の家に来ない?」

「いいなら」

 

普通なら羞恥心を感じるはずが、感情のないアルトは当然無表情のまま。

舞は外見同様に子供らしい姿に微笑むと、こっちだと言いながら案内するように先に歩いていく。

アルトはその後ろを着いていきながら、とても現実とは思えない景色に目を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

雄大な幹を地から伸ばし、四方に伸ばした太い枝から青々とした葉を茂らせる大樹の側に作られた、簡素ながらも落ち着いた風情を漂わせる四阿で、舞の料理を御馳走になったあと。

現代でもなかなかお目にかかれないほど見て新鮮だと分かる、瑞々しいオレンジ、よく熟された黄色いバナナ、放射状にカットされたメロン、ひと房まるごとのブドウが入った(バスケット)を持ってきた舞と共に木陰に腰掛けたまま、アルトは自身についてと自身が知る情報、最後に覚えていた記憶について話し終えたところだった。

珍しくたくさん話したため、少し休憩するように一息ついて大樹の枝越しに輝く青空を見上げる。

すると気ままに飛んでいた一羽の小鳥が、アルトの側まで羽ばたいてくると、そのままアルトの頭の上にちょこんと乗った。

 

なんだこいつ、と思いつつ動けなくなったアルトはゆっくりと首を戻して正面を向くことにしたが、鳥は羽ばたくことなく頭の上に乗ったままだ。

人懐っこいのか、アルトが珍しいのか。

聞いた情報を整理していた舞はアルトの方を見て、頭の上に鳥が乗っていることに思わず微笑む。

本能的にアルトは安全だと鳥も考えたのかもしれない。

それはさておき、舞は気を取り直すように咳を入れて口を開く。

 

「人間だけを襲い、接触した人間を炭素転換する存在……。通常物理法則化にある物理的破壊力を無効にする特性を持っている敵ね……それがノイズ」

 

――ゼロワンについては話していない。

元々話す必要もなければ、ライブ会場で共闘することになった青髪の鎧の人物。

恐らくツヴァイウィングの片翼である風鳴翼の対応を見れば正体を明かせばどうなるかなど火を見るより明らかだ。

 

アルトの話を聞いた舞は考えるように顎に手をあてがい、アルトを真っ直ぐに見つめた。

対してアルトは首を傾げる。

感情が読めないからこそ、態度に出すしかないと言うのもあるだろう。

 

「恐らく貴方は()()()()()のだと思う」

「墜ちてきた……?」

「そう、この世界。いえ、この宇宙と言った方がいいかな? 私たちが住んでいた地球にはアルトが言ってたようなノイズは存在してない。そのツヴァイウィングというグループもね」

「……は? 存在、してない……?」

 

こればかりはアルトも理解が一瞬追いつかなかった。

何を言っているのか分からない。

ツヴァイウィングはまだしも、ノイズが存在してないとはどういうことなのか。

何より、この宇宙とは。

 

「そして年号も違うわ。アルトの言っていた年が正しいならこの世界よりまだ未来の世界だもの。私たちは今は令和――となっているわ」

「……俺は、過去に来たのか?」

 

アルトが住む世界は2041年。

しかし舞が言うようには令和となり、2040年どころか30年にすらなっていない。

そうなればアルトがそう思うのは自然なことだが、舞は否定する。

 

「私は時間を遡ったことはあるけれど、アルトは普通の人でしょ?」

「ああ」

「時間を行き来する力があるならまだしも、アルトにはそんな力はない。そうなると()()()()送り込んできたか、迷い込んできたかのどちらか。どちらにしてもアルトは私たちの宇宙に墜ちてきたのよ。それも並行世界、つまりパラレルワールドじゃなくて次元の移動……と言ったところね」

「次元の移動……俺が生きている世界とはまた別の世界で、別の歴史を歩んだ別の時間ということか」

「そうなるわ。私が聞いた限りでもそういった力を持つ存在は何人か知っているけれど……私たちになんの理由も説明もなくアルトを連れてくることはないだろうし。……()()()()の仕業でもないでしょうしね」

 

最後の方は小さくて聞こえなかったが、アルトが知らないだけで意外と世界の移動が出来る存在はいるらしい。

世界は広いんだな、などと呑気なことを一瞬考えてしまう。

少なくともそういった超常現象はアルトにとっては神様のイメージがあったのだが、目の前の人物が神様、いや本物の女神様なのだということはアルトも今となっては完全に解っていた。

とりあえず残すのも良くないだろうと一息つくようにオレンジを食べてみる。

甘くて柔らかく、果汁も多くてプリプリとした果肉に口に残らない皮。

今まで食べたことがないほどに新鮮な味を感じられる。

頭の中が少しクリアになったような気がした。

思考能力が戻りつつあり、そうなると浮かんでくるのは。

 

「なぜ、俺を……」

「何か覚えとかない? そういった力を持つ存在とか」

「……ない」

「そっか……。大丈夫よ、私が必ず元の場所に戻してあげる。それにね、私だけじゃないの」

 

残念ながら目を覚ましたらここに居たアルトには手がかりはないが、舞は空を、宇宙を見つめた。

釣られてアルトも見上げるが、何かが見えるわけではない。

 

「……どう、いう……?」

「今はちょっと出かけているけれど、あの人が帰ってきたら帰す方法が分かるかもしれない」

「……あの人?」

「そう、私の大切な人。強くて、優しくて、たとえ泣きながらでも、一歩ずつ前に進んでいく人」

 

それほど信頼を寄せている人物なのだろう。

アルトには全くピンと来なかった。

大切な人など、理解出来るはずもない。

 

「たい、せつ……」

「アルトには居なかったの?」

「……分からない」

「分からないって?」

「俺には感情がないらしい。他人の感情も自分が何かを感じることもない。味覚や痛覚はあるが、それだけだ。喜びとやらも悲しみとやらも楽しさとやらも笑顔とやらも――何もかも、俺にはない。だから大切と思うことも分からない。せいぜい物ならば大切な物だったのだろう……と客観的に推測するしか出来ない」

 

覚えもなければ人のことすら分からないのがアルトだ。

感情がないが故に、他者の感情すら彼には理解出来ないものとなる。

一応ドライバーやプログライズキーは大切なものと思ったが、それも目覚めて持っていたことから記憶喪失前の自分が、もしくは感情があったかもしれない昔の自分が大切にしていたかもしれないから大切だと判断したまでである。

 

「それは……寂しいね」

「さび、しい……?」

「ええ、それに悲しい。まだ子供なのに、貴方は数奇な運命を辿っている。その道中なんだわ。家族が居ないこと、記憶がないということ、感情がないというのもこの世界に来たことも。きっとアルトはこれからも様々な運命と戦うことになる……そう思ったら、ね」

 

そう言って彼女は、舞はアルトの頭をそっと撫でた。

優しい手のひら。

他者を慈しみ、知り合って間もないアルトに対して心を痛めている。

それはきっと、人という存在を超越した存在が故の視点でもあるのだろう。

それとももしくは、この先のアルトの運命を考えて憂えているのか。

アルトにとって目の前の女性は見たことがなかった。

両親という存在はアルトには居ない。

幼馴染の両親は自分を受け入れてくれる珍しい存在だが、好んでアルトから関わることは無いために親しいとは決して言えない。

優しくしてくれることから嫌ってはいないのだろうが。

しかし目の前の女性はどうだろうか。

感情がないというアルトを受け入れ、アルトのために心を痛め、アルトのことを不気味に思うこともなく、優しくただ心配する。

今まで生きて会ったことがないような相手が故に、アルトもどうすればいいか分からなくなって大人しく撫でられていた。

ただもし、自身に母親が居たならばこのような女性なのだろうか……と二人の幼馴染の両親が浮かんで、そう思った。

 

もちろん、舞がここまで真摯になっているのはアルトが警戒する必要のない人物というのもあるだろう。

彼はここに来てから一度も嘘をつくことも敵意を向けたこともない。思ったことを口にしているだけである。

わざわざ嘘を吐く必要というものを感じられないのもあるが、そもそも嘘を吐く理由がよく分かってないというのもあるかもしれない。

長いことたくさんの人間を見てきたが、アルトのような人間は舞も見たことがない。

 

「これからどうするかは考えてる?」

「いや……何も」

「じゃあ帰れるまでここで暮らしましょう。ここには私とあの人以外に人は居ないからアルトが警戒する必要もないし、ここにいれば何か手がかりが見つかるかもしれない」

「手がかり……俺がここに来たから……何か、その理由が……ある……ってことか」

「そうだね。わざわざこの惑星(ほし)に来たもの。地球じゃなくて、ね」

 

薄々感じてはいたが、やはり地球ではなかったのだと今の発言でアルトは理解した。

実際にアルトは行き先がない。

感情が無くても空腹は感じてしまう。

死については何とも思ってないが、わざわざ死にたいと思ったことは無い。

それも感情に分類されるため、思うはずもない。

逆に生きなければならないとは思ったことはあった。

いや、今も同じだ。

自分は生きなくちゃならないと、目に見えない何かが常に告げてくる。

魂、というやつだろうか。

そこにこびり付いた思いなのかもしれない。

それはきっと、記憶を失う前の自分が思ったことなのだろう、と。

 

「俺がいても、いいのか……?」

「ええ、もちろん。その方が私も帰してあげられるから。さっき言った通り、ね」

 

そう言って舞は柔和な微笑みを浮かべる。

宣言通り、帰る手段を一緒に探してくれるらしい。

アルト一人では見つけるのは難しいだろう。

地球ではないとはいえ、好きに調べたら迷惑をかけるかもしれない。

親切にしてくれた相手に対して仇で返すなど、アルトはするつもりもない。

協力者を得た方が合理的だ。

 

「なら、世話になる……」

「それじゃあ決まり! ゆっくりでいいから、一歩ずつでも進んでいきましょう。止まっていたら何も変わらないけど、一歩でも進もうと思ってたら感情だって記憶だって蘇るかもしれないもの。そうしたらアルトの()()()()()も分かるようになるでしょ?」

「……そういう考えも、あるか」

 

諦めていたものではある。

正確には、それすら興味を持てない。

しかし自分を理解するという点では舞の言葉も最もか、とアルトは思った。

ひとまずは今あるスイーツでも食べておこうと手を動かして、頭の上に乗っていた鳥が突如と羽ばたく――

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。

既視感。

あの時の、ここに来る前の、ライブ会場でも感じた“嫌な予感”としか表現出来ない感覚が全身を襲う――

 

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