Re:戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ   作:絆蛙

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第14話 運命の勝者

 

 

 

 

『ここからは――俺のステージだ』

 

天から降臨した仮面の戦士。

鎧武。

仮面で顔はみえないが、声からして男性というのは分かる。

舞とアルトを守るように背を向けて立つ姿は先のゼロワンとは何処か比べ物にならない只者では無いオーラを感じさせた。

 

オレンジをカットしたような断面図の刀――大橙丸を手に持ち、相手を見据える。

突如現れた鎧武に強い警戒をする異形だが、ライオンマギアはガトリングガンを向けた。

アルトたちごと撃とうとした時、ガトリングガンは大きく弾かれる。

鎧武の手には腰部に帯刀していた無双セイバーが手にあり、そこから銃弾が放たれていた。

連続して放たれ、怯むライオンマギア。

 

『舞。その子のことは任せた』

「ええ、こっちは任せて。後はお願い」

 

信頼が見て取れる。

一切の不安も心配もなく、心から安堵している。

それほど信じているのだろう。

二人の姿からアルトは舞が『大切な人』だと言っていたのが目の前にいる鎧武者なのだと理解した。

 

その間にも地面から次々と何かが生まれでる。

三葉虫を思わせるフェイスカバーに覆われ、胸部・腕・脚にはマギアと同様に素体の下地の配線らしきラインが出現し、さながら人間の骨格のような姿の機械のような存在が数えることが億劫になるほど大量だ。

それに伴い、アルトは酷い頭痛に襲われた。

――トリロバイトマギア。

あれがそういった存在であり、中身も何にもないただの機械なのだと()()()分かった。

 

数は圧倒的不利。

此方の戦力は一人しか居ないというのに、鎧武は取り乱すことすらしなかった。

 

『メガヘクスやロイミュード……という訳でもビルドの世界に居たガーディアンってわけでもなさそうだな。どちらにせよ……この惑星(ほし)からは出て行ってもらうぞ』

 

そう言いつつ二刀流で構えると、動いたのは同時だった。

大量のトリロバイトマギアを中心に進軍してくる。

迎え撃つはただ一人。

ナイフ部隊の攻撃を避け、次々と斬り伏せていく。

鎧武が近接部隊を対象している間に陣形を組んだ銃部隊からは銃弾の嵐。

大橙丸と無双セイバーの底部をくっつけ、ナギナタモードにした鎧武は高速回転させることで銃弾を防ぎ、大橙丸の刀身が光り輝くと水平に一閃。

巨大な斬撃が銃弾ごと斬り裂き、爆発が起きる。

頭を下げ、頭上をナイフが通過すると肩で一体のトリロバイトを吹き飛ばす。

鎧武のプレートが左側に描かれ、右側にはフルーツを切るような、もしくは小刀のようなカッティングブレード。

中央にはオレンジが開き、断面図が装填されているドライバー。

戦極ドライバーと呼ばれるベルトの右側に着けられたホルダーからベルトに装填された果物とはまた別の――

 

 

 

 

 

 

『パイン!』

 

パインが描かれた錠前――ロックシードを取り出すと、上部のロックが外れる。

装填されたオレンジを取ると鎧が畳まれ、果汁を撒き散らしながら接近しようとしていたトリロバイトを牽制。

 

『ロックオン!』

 

『ソイヤッ!』

 

パインロックシードをベルトの中央の窪みに填め、錠前をロック。

頭上にパインが出現し、ベルトから出陣前に鳴らすほら貝と、演歌的な前口上が流れる。

迷いなく鎧武は右側のカッティングブレードを下ろすと。

 

『パインアームズ!』

 

『粉砕・デストロイ!』

 

パインが鎧武を頭から落ちてきて、鎧へと変化。

オレンジとはまた異なる、パインの(アームズ)を纏うと専用武器たるスパイクが付いた鉄球型のパインが手には出現していた。

 

『ウラアアアアア!』

 

勇ましい声と共にパインアイアンが振り回される。

それだけで直撃したトリロバイトは爆発していき、威力の高さが窺えた。

それからパインアイアンを前方に放ち、斜線上の敵を討ち倒すと、今度はまた別のロックシードを取り出す。

 

『イチゴ!』

 

『ロックオン!』

 

今度はイチゴ。

パインと入れ替えるとロックシードをロック。

頭上にイチゴが現れる。

 

『ソイヤッ!』

 

『イチゴアームズ!』

 

『シュシュッとスパーク!』

 

再びカッティングブレードを下ろした鎧武の頭上からイチゴが落ちてきて鎧へと変化する。

ただパインやオレンジと違い、鎧は左右で形が違った。

左肩がイチゴの半分より上。右肩が下の部分となっている。

手にはイチゴのマークが描かれたクナイ。

ナイフで攻撃してくる相手に対し、素早い身のこなしで右側のクナイで防ぎ、左側のクナイで腹部を斬る。少し離れた位置にいる相手にはふたつのクナイを投げ、直撃すると爆発を引き起こしていた。

腰部に帯刀している無双セイバーを抜き、イチゴロックシードを外すと無双セイバーに取り付けられている窪みに装着。

 

『ロック・オン!』

 

『イチ! ジュウ! ヒャク!』

 

『イチゴチャージ!』

 

『ハアッ!』

 

無双セイバーを頭上に向かって振るうと、巨大なイチゴクナイが放たれて空中で弾ける。

すると無数のイチゴクナイが降り注ぎ、全てのトリロバイトが爆発した。

爆発に紛れ込んでライオンマギアがクローを振るい、反応した鎧武が無双セイバーで受け止める。

互いに引かない力のぶつかり合い。

また新たなロックシードを取り出し、起動させる。

 

『バナナ!』

 

『ロックオン!』

 

『ソイヤッ!』

 

頭を振るい、イチゴの鎧をぶつけてライオンマギアを引き離すとバナナが降り注ぎ、鎧へ変化した。

 

『バナナアームズ!』

 

Knight(ナイト) Of(オブ) Spear(スピアー)!』

 

横に倒したバナナが上から落ちてきたため、鎧は左右非対称の形状をしているがバナナであることに変わりは無い。

手元には皮を剥いたバナナ型の槍、バナスピアーがあり、鎧武は連続で突いて距離を引き離し、近距離は分が悪いと判断したのかライオンマギアのガトリングガンが巨大となる。

一方で鎧武はバナスピアーに手を添え、カッティングブレードを二回倒す。

 

『ソイヤッ!』

 

『バナナ・オーレ!』

 

バナスピアーを力強く突き出すと長大なバナナのオーラを解き放ち、ガトリングガンの弾を粉砕してライオンマギアに直撃。

大爆発を引き起こした。

残りは異形のみ。

戦いを観戦していた異形は剣を向け、刀身に光が宿る。

鎧武もまた警戒を顕にすると。

 

『メシャンジャファン。フォボリャグロンシャビリェロフォンウファン!?』

 

異形は鎧武にではなく、アルトと舞がいる場所に光の砲撃を解き放った。

狙いに気づいた鎧武は即座に振り向く。

 

『させるか!!』

 

さっきほどから使っていたモノとはまた異なるロックシードが現れる。

それを手にしながら鎧武は二人の前に立つと、直撃したのか爆炎が覆い尽くし、暫くして爆煙が晴れると――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミックス!』

 

『オレンジアームズ! 花道・オンステージ!』

 

ジンバーメロン! ハハァーッ!』

 

藍色のアンダーアーマーはそのままに、黒の兜に銀色の前立て。

しかし何より目を引くのは、腰のあたりまでを覆いつくした黒鉄の陣羽織。

それが鈍い光を発する中、前衿だけがメロンの模様で鮮やかな翠に染まっている。

そして件の二人は全くの無傷であり、光の膜が発生している。

これは鎧武の電磁シールドであり、それによって護られたのだ。

 

『チェリーエナジー!』

 

『ミックス!』

 

ジンバーチェリー! ハハァーッ!』

 

前衿がさくらんぼの模様に変化する。

手の中には赤色のアーチェリーのリカーブボウを簡略化したような形状をした武器が握られている。

次の瞬間。

鎧武が姿を消した。

異形の鎧が火花を散らし、一度や二度ではなく何度も火花が散る。

それは鎧武が高速移動することで為せることであり、鎧武が止まった頃には異形は膝を着いていた。

 

『レモンエナジー!』

 

『ロックオン!』

 

次に取り出したのはレモン。

アームズが消失し、レモンとオレンジの鎧が現れる。

 

『ソイヤッ!』

 

『オレンジアームズ! 花道・オンステージ!』

 

『ミックス!』

 

ジンバーレモン! ハハァーッ!』

 

オレンジとレモンが合わさり、異なる形状へと変化しながら鎧武に被さると今度は前衿がレモン模様に変化した姿へと変化する。

ソニックアローにレモンエナジーロックシードを装着。

カッティングブレードを一度倒し、鎧武が必殺技を発動した。

対する異形も対抗するようにか先と同じく剣に光を溜めて。

 

『ロック・オン!』

 

『ソイヤッ!』

 

発射。

光に対し、レモン色のオーラ纏いながらぐるぐると回転しながら跳躍して回避した鎧武はソニックアローから矢を発射。

交互に並んだオレンジとレモンの輪切り型が生み出され、足を突き出してライダーキックを放つ。

 

『セイハァー!』

 

『オレンジスカッシュ!』

 

ジンバーレモンスカッシュ!』

 

『ッ……!』

 

オレンジとレモンの輪切り型エネルギーを交互に通り抜けて放たれるライダーキックに舌打ちのようなものをした異形の背後に裂け目(クラック)が出現する。

ライダーキックが直撃するより早くその中に飛び込み、ライダーキックがぶつかるより一寸早く裂け目(クラック)は閉じて爆発だけが引き起こされた。

 

これが乱世の世を勝ち抜いた天下無双の鎧武者。

その姿をアルトは最後まで見届け、ついに限界となったのか瞳は閉じられ、その意識が闇の中へと沈んでいく。

 

「……ル……!? ア……ト……! アルト……!」

 

意識が完全に消える前、舞が呼びかけて鎧武がこちらに向かってくる姿が最後視界で捉えた光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

01。

010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな数字だけが浮かび上がる真っ白な空間の中、アルトの意識は目覚めた。

体を起こせば体が半透明となっており、まるで肉体そのものではないような錯覚を覚える。

またしても謎の場所に居るアルトは頭を押さえる。

あの時感じた頭痛が未だに残っている。

それから次々と今までのことが思い出してきた。

謎の全身鎧の異形。謎の言語。唯一聞き取れたのは黄金の果実とやら。

しかも強さはノイズを遥かに凌ぐ。

シャイニングホッパーになってようやく戦える程で、渡り合う事は出来なかった。

なおかつ植物を操る力を持ち、光を反射、纏う能力を持つ存在。

それからマギアの存在と、危機に駆けつけてきたゼロワンとは違うベルトとアイテムを使っていた鎧武者。

 

――圧倒だった。

アルトは一度たりとも目を離すことなく見ていたが、強さが別次元とすら思ってしまった。

もしあの鎧武者が敵だったならば、なんて未来(みらい)はアルトは考えたくなかった。

なぜならそうだったのであれば、仮にもう一度シャイニングホッパーに変身したところで敗北は揺るがないからだ。

マギアや大量のトリバロイト相手に無双する姿はまさしく圧巻。

アルトが苦戦し、敗北したあの異形にだって互角に渡り合い、敵が撤退を選ぶほどの力。

そこから先の記憶は、無い。

 

「舞は……」

 

自身を助けてくれただけでなく、最後まで庇おうとしてくれた女性。

果たして今の自分自身が生きているのかどうかすらどうでもよく、アルトは彼女のことを考えていた。

そんなとき、01の数字以外何も無いはずの空間に風が吹き、吸い込まれるようにアルトは振り向いた。

すると。

 

「――舞のことなら心配はいらない」

 

そこには、一人の男が居た。

金色の髪と目は舞と同じく右目が赤いオッドアイで、銀色の鎧に身を包んだ男性。

いつの間に現れたのか、ただその体は霞に映った光学映像のようにぼんやりとしていて、アルトと似たような状態なのだろう。

 

「あんたは……」

「葛葉紘汰。そうだな、分かりやすくいうと宇宙の神様――ってところかな?」

 

両手を広げて、広大な宇宙というものを手で表現している。

 

「……それとも君にはこう名乗った方がいいか? “仮面ライダー鎧武”」

「仮面ライダー……鎧武……? 神様……」

「……俺はアルト。仮面ライダーゼロワン……らしい」

「よろしくな、アルト」

「ああ……それで。なぜ、ここに? そもそも、ここは……」

 

自己紹介を程々にアルトは本題へ入る。

そもそもアルトはここにいる理由すら分からないのだ。

この場所が何処かも。

 

「ここは君の中。精神世界とでも言えばいいか」

「俺の、中……? なら、なぜここに……」

「助けを求める声が聞こえたんだ」

「助けを……? 誰の?」

「そうだな……君を大切に思う存在、かな」

「……?」

 

紘汰は分かっているのか天を仰いでいるが、そう言われてもアルトの脳裏には――誰も浮かばなかった。

その誰かとやらは分からない。

分からないが。

 

「……俺はどうやって出られる?」

 

分からないならどうでもいいという結論を出したアルトはここから抜け出す方法を知るために聞く。

確かにここから抜け出せないのも事実。何をすればいいかも分からず、誰かとやらは分からないものの、生きてるならばいつまでもここに居るわけにはいかない。

 

「さぁ……」

「……は?」

 

だからこそ聞いたと言うのに、まさかの返答に固まる。

そんなアルトに紘汰は苦笑すると、続く言葉を紡いだ。

 

「誤解しないでくれ。確かに俺ならアルトを戻すことが出来る。でも、それだけじゃ意味が無いんだ」

「……意味?」

「そうだ。心からアルトが帰りたいと思わなくちゃならない」

「何を、言って……」

「本当は気づいてるんじゃないか? アルト、君は――――」

 

理解出来ないアルトに対し、紘汰は彼の根本の、奥底に眠る想いに対して突きつけるように胸へと指差す。

 

「生きたい……そう思ってないだろ?」

「――――」

 

アルトの動きが完全に停止する。

見透かされているかのように、確かな確信を持った発言。

違うならば否定すればいいだけの話。

しかし、アルトは否定をしない。

 

「言っただろ。ここはアルトの中、精神世界。アルトが心から思ったならば、それが反映される世界。戻れない理由は君が何処かで戻りたくないと、生きたくないと思っている証拠だ」

「……俺は」

 

そう、精神世界の主であるアルトの意思に反することなど有り得ない。

戻れず、ここに留まる理由はまさにそういうことなのだろう。

 

「俺は……分からないんだ」

「……」

 

紘汰は聞き手になっている。

アルトが話しやすいように。

喋りやすいように。

 

「俺には記憶が無い。感情も無い。何かを大切に想う気持ちもない。なんにも無い、空っぽ。なのにこうして生きて、また生きて、ここでもまた俺は生き延びた」

「昔、ある人達に言われたことがあったんだ。守って、と。でも俺は……その一人を守れなかった。生きてはいるが、守り切ることが出来なかった。俺には力があった。守れる力があって、救える力があって、仮面ライダーの力を持っていた。なのに目の前で多くの命を奪われていく光景を目にするばかりだった」

 

それはアルトが別の次元、元の世界に居た時の話だ。

ここに来る直前の記憶が蘇ってくる。

ライブ会場が爆発し、鴻毛のように軽くて、あっさりと消えていく命。

幼馴染が目の前で破片が突き刺さり、出血して倒れた姿。

守り切ることが出来なかった証。

 

「そしてここに来て……俺はまた、守られてしまった。舞に。それだけじゃない。俺は同じように守り切ることが出来なくて、あんたが居なければ何も守れないまま終わっていた」

「何も無い俺が生き長らえ続けて……何の意味がある。生きるべき人が居た。俺より持っている人たちはいっぱい居た。喪うべきは俺だ。だというのに俺には“仮面ライダー”の力があった。この力はなんだ。俺は何者だ。なぜ俺には感情がない。なぜ俺は、生きなくちゃならない? 俺は生きている意味があるのか……? 俺には何も守ることは出来ないというのに、こんな力を持っていても何も成せないというのに――」

 

アルトが意識を芽生えて感じ、あのライブ会場をきっかけに感じたこと。

今も彼を蝕む本当の想いなのだろう。

無力感。

力が無くて守られるならばこんなことを思うことは無いだろう。

だがアルトには戦う力があり、人を超える力があり、バケモノの力がある。

仮にゼロワンの力がなかったとしても、アルトの予測能力は“超常の力”と言っても過言では無い精度を誇っているのだ。

それこそ、多くの人を守れるはずの力。

 

「それが今、アルトが思っていることなんだな。悪いけど俺には答えてやることは出来ない。アルト自身が見つけなくちゃならないからな。でもな、その力のことなら俺も分かるよ」

「……同情はいらない。あんたほどの力がある者に――」

「……同情じゃないさ。俺も昔は、この力に悩んでいた。俺の力は偶然手にした力で最初は戸惑ったものさ。『変身』することに憧れて、思っていたことから異なってはいたが『変身』出来た時には喜びのあまり必要のない時に力を使ったこともある。どこまでも『ごっこ遊び』でゲームだと思っていた。『本当の命懸けの戦い』を知って、変身出来なくなったこともあった」

「…………」

 

昔を懐かしむような、何処か遠い場所を見るように目を彼方に向ける紘汰にアルトは何も言えない。

力そのものすら分からないアルトには何も言う資格がない。

ただ、どこか眩しくて視線が自然と下に下がった。

 

「それでもこの力は俺しか使えなかった。俺にしかできないことをやり遂げるための力。俺はそいつを引き受けるためにもう一度戦う決意をした。それが“大人”が言う責任ってやつだと思ってな」

「責任……」

「力について悩んだっていいんだ、アルト。俺もそうだったけど“仮面ライダー”は誰だって悩む。最初から答えを持ってるやつなんて居ない。悩み、悔やみ、それでもこの力をどう使うか。どう使っていくか。何のために戦うのか。すぐに答えを出す必要なんてない。今はとにかく後悔しないように行動すればいい。だからこの言葉を送るよ」

「――諦めない限り道はある」

「アルトも生きていかなくちゃならない。亡くなった人のことを想うならば背負っていけばいい。目的がないならば、目的を探すために」

「目的を探すために……生きる……?」

「ああ。それを生きる理由にして、今度は多くの人を救っていくんだ。喪ってしまったもの以上に多くの。そしてもっとたくさんの世界を見るんだ。もっとたくさんの人と出会うんだ。そうすればいつかの未来(みるい)、アルトにも答えってのが見えてくるだろうさ」

「…………」

 

生きる気力が芽生えたかのように、アルトは胸を強く握りしめる。

言われた言葉を仕舞うかのように。

そして顔が上げられ、瞳には確かな意志というものが宿っている。

それを見てか紘汰はフッ、と柔らかな笑みを口元に浮かべてアルトの頭に手を置いた。

 

「それとアルトは既にもう、人を救っている。守れなかったと言ってたけどさ、アルトは舞を守り切ったんだ。ここから戻ったあと、聞いてみればいい。同じことを言うと思うぞ」

「……そう、だろうか」

「嘘は言わないって。さあ、もう大丈夫だよな。戻ろう、アルト。目覚めの時間だ」

 

アルトの様子からそう判断したのだろう。

だがアルトは紘汰の手を掴んで、口を開いた。

 

「待ってくれ。最後に、教えて欲しい」

「……ん?」

「……“仮面ライダー”ってのは……なんなんだ」

 

仮面ライダーとは何なのか。

どうしてゼロワンも鎧武も、同じく仮面ライダーと呼ばれるのか。

その名前に何か特別な意味があるはずで、その特別な何かに対しての答えを、紘汰は持ち合わせていた。

それは――

 

「――全ての人の自由と平和を守る、戦士の名だ」

「自由と、平和……」

 

かつて多くの仮面ライダーが集まり、始まった平成ライダーの歴史と同じ石から生まれた怪人(アマダム)と戦った際に希望の魔法使い(ウィザード)に言われた言葉を送ると、その答えを最後に紘汰が手を頭上に掲げる。

すると世界が崩れていく。

数字だらけの世界も白い世界が黒へと変わっていき、気がつけば紘汰の姿はもうなかった。

体が自然と落下していく中、アルトはただ答えられた”仮面ライダー“の意味を頭の中で反芻していた。

そうして世界は、完全に崩壊し、砂のように微かな音を立てて流れ散っていく。

その僅かな間に、知らない記憶が頭の中で高速再生されていた。

アルトの脳の処理能力が加速し、それらの情報を全て一瞬で記憶していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここからは俺のステージだ!』

 

『違う! 強さは力の証明なんかじゃない!』

 

『強い奴の背中を見つめていれば、心砕けた奴だってもう一度立ち上がることができる! 誰かを励まし、勇気を与える力! それが本当の強さだ!』

 

それは果実の鎧(オレンジアームズ)を纏う戦士、アーマードライダー(仮面ライダー)鎧武の物語。

始まりは偶然だった。

友に誘われ、森に覆われた異世界である『ヘルヘイム』で怪物(インベス)に襲われ、その時に友人が落とした戦極ドライバーと異世界内で入手した果実が変化したオレンジロックシード。

その力を使い、変身したのが始まりだった。

命懸けの戦いだと思い知らされ、恐怖から変身出来なくなったことがあった。

仲間が居た。

その背中を見て、再び立ち上がる決意が湧いた。

強さが何なのか、自分なりの答えを出した。

そうして次々と戦いが起こっていく。

 

敵意をむき出しにした怪物(インベス)

信念を、あるいは悪意を込めた刃を振るう鎧の戦士(アーマードライダー)

容赦なき運命を征服した超越者(オーバーロード)

時に“敵”を見出したい人類。

そして世界に進化と変化を求める、理由のない悪意そのものであった。

激化していく戦いの中で鎧武もまた新たな力を手にし、進化を果たしていく。

 

『ミックス!』

 

『ジンバーレモン! ハハァーッ!』

 

力について悩み、自分のためだけに使う力ではなく使い方を考え、人を守るように力を使うようになっていく。

だが、そんな彼を打ち砕くかのように失って、喪っていく。

親しい関係ではないものの、自分と同じアーマード(仮面)ライダーであり仲間で、目の前で怪物と化してしまった一人の若者。

嘘に縛られた仲間と築いていた、永遠に続くと信じていた友情。

それでも散り行く形を嘆いたって無常な現実が待つだけで。

信じたいもののために戦いに身を投じていく。

考えても解らなかった答えは傷つけられて見えてきて、進むべき明日の道を見つけていく。

 

『犠牲だと!? 冗談じゃねぇ! 犠牲と引き換えの希望なんて冗談じゃねえんだよ! そんなものは、ただの絶望だ!』

 

しかし、犠牲を否定し続けた彼もまた、犠牲によってその命を救われていた。

友が落とした物、戦極ドライバーは友が怪物と化した際に落としたものであり、彼は初めて変身した時にその命を奪ってしまった。

犠牲の上で、救われてしまった。

友の犠牲によって希望を手にした。

そうしてまた解らなくなって――

 

『カチドキアームズ! いざ、出陣! エイ、エイ、オオオオオオオッ!!』

 

それでも。

それでも真実を飲み込み、今度は同じ徹を踏まないためにまた立ち上がる。

何度も傷つき、倒れ、己の罪に押し潰されそうになろうと。立ち止まることはしなかった。

 

『確かに俺は過ちを犯した。だからこそ、同じ過ちが繰り返されるのを見過ごせない!』

 

『俺は諦めない! 犠牲が必要だって言うなら、それを求めた世界と戦う!』

 

『誰かを守れる力があるのに、それを使わなくて後悔しないのか?』

『そうだな、お前なら大丈夫だ。絶対!』

 

『俺は違う! この力は、戦えない人達を守るために!!』

 

諦めることを、しなかった。

世界を支配する理不尽に、世界を覆い尽くそうとする絶望に、屈することなく抗い続けた。

時に仲間たちと共に。時に別の世界の戦士である赤と青の戦士(キカイダー)と共に。時に列車の戦隊(トッキュウジャー)と共に。時に昭和と平成(レジェンド)ライダーと共に。

世界を変えるために。希望の代価に犠牲を要求する、世界のルールそのものに戦いを挑み続けた。

 

『十分かどうかなんて、分からない。今、俺に何ができるのか。考えなきゃならないのはそれだけだ!!』

 

壊すための力だとしても、使い方次第で変わるのだと。未知の強さをこの手に――

 

『後悔なんてしてる暇はない! 俺は先に進む! そう裕也に誓ったんだ!』

 

『フルーツバスケット! ロック・オープン!』

 

『極アームズ! 大・大・大・大・大将軍! 大・大・大・大・大将軍!』

 

争いはまた争いの種を残し、時が経つまま悲しみの実を育てる。

逃げたいならば降りればいい。

だが、決めたのだ。先に進むと。

たとえ、手に入れた力がどんなものであったとしても。

その力の果てに待つのが、残酷な運命だったとしても。

鎧武はその手を伸ばす。

この世界最強のパワーの鍵を開け、誰もが求める未来を目指すために。

 

『確かに人は傷つけ合うけどそれだけじゃない。きっと分かり合うことが出来る。俺はそれを信じて戦う!』

 

『俺の味方かどうかなんて関係ない! 守りたいものは変わらない! たとえ俺自信が変わり果てたとしても!』

『犠牲なんかじゃない! 俺は、俺のために戦う!』

『俺が信じた希望のために! 俺が望んだ結末のために!』

 

そしてようやくフェムシンム――超越者(オーバーロード)との戦いが終わりを迎えた。

 

『いいや。俺はお前だけには負けない! お前を倒し、証明してみせる! ただの力だけじゃない……本当の強さを!!』

 

だというのに。

世界を変えるほどの力を持つ黄金の果実を求め、あらゆる諦念と絶望に屈しなかったもう一人の戦士(オーバーロード)と、世界の命運をかけた激戦が始まる。

まさしく乱世の群雄割拠。

最強と最強の戦いの、乱世を超えた果て。

 

『守りたいという祈り。見捨てないという誓い。それが俺の全てだ!』

『泣いていいんだ。それが、俺の弱さだとしても……拒まない。俺は、泣きながら進む!』

 

ついに運命の勝者となった鎧武は――葛葉紘汰は、『神』へと至る。

 

『ここで未来がないのなら、別の世界を探せばいい。諦めない限り道はある。この宇宙の果て、まだ誰にも知られていないどこでもない場所。そして俺が望む未来の在りかだ。この世界を滅ぼして支配するよりも、新たな世界を一から創り出す。これが、俺たちの新しいステージだ』

『世界を望むがままに塗り替える……その力が俺のものならどんな闇も恐れない。大丈夫さ、俺は1人じゃない』

『いつだって未来(みらい)は闇の中だ。だからこそ、光を灯しにいく価値がある』

 

この宇宙の果て。まだ誰にも知られていない、どこでもない場所へ。

滅ぼすのではなく、彼がそうしたいと信じてきたように。

今度は一から創り出すべく、舞と共に旅立っていく。

新たな世界(ステージ)へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い海の底から、ゆっくりと体が浮上していくような錯覚を覚えながらアルトは夢の世界から完全に覚醒を果たす。

 

「今の、記憶は……」

 

自分ではない、また別の人の人生。

歴史。

それが誰のものなのか、そして誰がこの記憶を自分に見せたのかを、アルトは理解した。

 

「――おはよう、アルト。よく眠れた?」

「舞……。ああ、問題ない」

 

舞に頷きながらアルトは違和感を覚える。

あれほどのダメージを負い、その上ここに来る前から大怪我を負っていた。

普通ならば肉体の何処かに不具合が生じてもおかしくはなく、アルトも腕の1本や2本は動かないと思っていた。

だというのに、怪我そのものが無かったかのように動くようになっている。

これも“神様”の力なのだろうか、と思ったが、それしかなさそうだったのでアルトは確定させた。

それよりも。

 

「……悪かった」

「え?」

 

全ての記憶を見て、先の対話を得て、アルトは舞と話すことになったら決めていた。

謝る、と。

当然急に謝られても普通は意味が分からないため、困惑する舞は仕方がないだろう。

主語が抜けているせいで、何に対して謝ってるのか分からないのだから。

 

「俺はあんたを守り切ることが出来なかった。俺がもっと強ければ……」

「……アルト」

「……?」

 

無意識に握り拳が作り出される。

それはここに来る前の出来事も含まれているのか、今回のことなのか。

そんなアルトに対して舞の呼び掛ける声はとても優しい。

そうしてアルトの傍に腰を降ろすと握り拳の上にそっと手を置かれる。

 

「そんなことない。アルトはちゃんと私を守ってくれたわ」

「だが俺は負けて……」

「……負けたっていいのよ。アルトは本当の意味では負けてない。貴方が居たから紘汰が間に合った。紘汰が来るまで時間を稼ぐことが出来た。それはアルトが居たから出来たこと。アルトが戦って、守ってくれたから紘汰も守ることが出来た。貴方は私と紘汰、二人を守ってくれたのよ?」

「……舞」

 

そう、もしアルトが仮面ライダーでなければ。

もしアルトがゼロワンに変身しなければ。

あの状況であるならば舞の命は奪われ、次にアルトも殺されていただろう。

“もしも”であったとしても、アルトが戦って時間を稼ぎ、命を救ったことに変わりは無い。

例えそれが敗走という形になろうとも、鎧武が間に合ったのはゼロワンが体を張ったからだ。

 

「確かに今のアルトから見たら紘汰は強く見えるかもしれない。だけど紘汰もね、最初から強かった訳じゃないの。たくさん傷ついて、倒れて、負けて、挫けて、背負って、それでも泣いてでも突き進んできただけ」

「負けたって生きてる限り負けてない。一度負けたなら次に勝てばいい。また負けたらまた次こそは勝てばいいの。アルトにはまだ()()()()があるのだから」

「次こそは負けないように頑張りましょう? アルトの運命はまだ、決まってないもの」

「…………」

 

紘汰との対話の時の記憶が蘇っていく。

言っていた通りだった。

守ったのだと。

それに舞は責めることもせず、どちらかと言えば導くように慰めてくれて。

 

「それから……ありがとう、この惑星(せかい)のために、私たちのために戦ってくれて」

 

そう、笑顔でお礼を告げた。

言葉の数々に温もりがあって、確かな優しさがあった。

力が自然と抜けて、アルトは目を閉じる。

そうだ、紘汰も全てを守って勝っていたわけではない。

負けて、喪って、奪われて、それでも立ち上がり続けたからこそ今がある。

失うことは彼の起点でもあったのだ。

 

「……ああ。こっちこそ……ありがとう」

 

目を開いてちゃんと視線を向けながらアルトはたくさんの意味を含めて、感謝の言葉を述べた。

すると舞は目をぱちくりと瞬きさせた後に、優しく微笑む。

 

「どういたしまして」

 

そう返す舞を見ながら変わらず表情は無表情ではあるが、アルトは次こそは必ず勝つと強く決意した。

あの強い背中を見たからこそ、アルトはまた立ち上がることが出来たのだ。

 

 

 

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