Re:戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ 作:絆蛙
会話を終えると舞に休むように言われたアルトは大人しく横になっていた。
無事に現実に帰還することは出来たものの、既に体に痛みは無い。
ただひとつの言葉だけが頭の中で何度も再生されていく。
『――全ての人の自由と平和を守る、戦士の名だ』
自由と平和。
言葉にするだけなら簡単なものだが、それが一体どれほど大変なのか。
人一人守ることで精一杯なアルトにとって、“仮面ライダー”という名前はあまりにも重たく感じた。
確かに強大な力だ。
人を殺そうと思えば簡単に虐殺出来るし、戦争の道具にでもなれば誰も止めることが出来なくなるだろう。
大切なのは力をどう使っていくか。
そしてアルト自身が目指す未来図がどんなものかを探さなければならない。
「――アルト」
「……紘汰」
「怪我はもう大丈夫そうだな」
思い返していると、紘汰がやってきた。
アルトの姿を見て普通に起き上がってることからそう判断したのだろう。
事実今の彼は包帯こそ巻かれてはいるが、痛みそのものはない。
「あんたの言ってた通りだった」
「だろ? それで、どうだった?」
「……次は同じようにはならない」
「そうか」
それが彼が出した答えなのだと紘汰は満足そうに笑う。
紘汰の経験から教えることは簡単ではあるが、アルト自身が答えを出したことが嬉しかったのだろう。
「だが」
「ん?」
アルトは一つだけ不思議でならないことがあった。
そのことを言うべく口を開く。
「あんたは俺にあんたの記憶を見せた」
「……ああ、気づいてたか。それが
「……」
その願いとやらは気になったが、今は聞きたいことが別のため、アルトは聞かなかったことにする。
それより本題へ。
「どうして俺を助ける? 俺に助言したってあんたの利にはならない。あんたが元々人間だったならそれを分かるはずだろ」
「なんだ、そんなことか」
「そんなこと……?」
「何、簡単な話だよ。アルトがまだ俺よりも子供で大人でないのも理由の一つだ。困ってる人を助けて悪いことじゃないだろ? けど一番の理由は、これはある先輩の言葉で受け売りで……俺の言葉じゃないんだけどな」
子供を導くのは大人の役目で、大人であり神となった紘汰にとっては当然の理由だ。
元来の性格から損得無しで人を助けるようなお人好しではあるが。
紘汰はある人物を思い出しながら、これもまた新たな世代に伝えるべく偉大なる先輩の言葉を送る。
「ライダーは助け合い……だろ?」
「ライダーは……助け合い……? それが理由か?」
「まぁな」
それはかつて欲望と自らの命に対する執着を失っていた青年の言葉。
古代の錬金術によって作られたベルトと動物のメダルで変身する戦士の言葉。
どんなに遠くても手を伸ばし続け、新たな未来を目指して歩き出した戦士の言葉だ。
「……俺には遠いな」
「一歩ずつ進めばいいさ」
「ああ」
「それより舞を含めて話したいことがある。もう少し休んでてくれ。少ししたらこっちに来る」
「わかった」
それだけを言い残して去っていく紘汰の背中を見送ると、ふと音が聞こえた。
視線を向ければ、一匹の鳥が嘴で窓を突っついていた。
そっと窓を開けると、羽ばたいてアルトの頭上を回ったかと思えば頭の上にちょこんと乗った。
前と同じ鳥だろう。少なくとも前の場所では見たことがないれら
「お前、無事だったか」
『ピィッ!』
言葉が通じてるのか定かではないが、鳥は鳴いていた。
まるで返事をしているかのようだ。
さらに何度か鳴く。
「そうか」
『ピィ? ピィピィ!』
「……名前? 付けて欲しい?」
『ピィ!』
完全に懐かれているのか名前まで求められ、名付けた経験などないがアルトは考えた。
目の前の鳥は緑色の体に黄色のトカサがある。
鳴く時はピィピィ鳴いていて、正直よく分からない未知の鳥。
「……じゃあライムで」
『ピィーッ!』
嬉しそうにぐるぐると羽ばたく。
どうやらお気に召したようで、アルトは気に入ったならいいかと体を後ろに倒すと、腰部に取り付けられたゼロワンドライバーを取り外す。
必要なくなったからか帯が収納され、ドライバーを見つめた。
あの時は気にしてる暇がなかったが、これもまた謎である。
力を求めた。
これ以上、生き残ってしまった自分以外が死なないように。
生きるべき人が死なないように。
そうしたらこの場にはないはずの力が、ここへとやってきた。
以前とは違った力ではあったが、戦うための力が。
「……何故俺は、生きてるのだろうか」
『ピィ?』
「分からない。俺が生きる意味は、あるのだろうか」
葛葉紘汰。
仮面ライダー鎧武。
彼の人生を見てもなお、アルトにはそれが分からなかった。
何故ならアレは葛葉紘汰の生き様であり、アルトとはまた違うからだ。
その答えはアルトがアルト自身で出さなければ意味が無い。
誰も教えてくれる者は、いない。
少しして紘汰がやってくると、テーブルを挟むことになった。
目の前には金髪――ではなく、黒髪で鎧や白布ではなく一般に売ってるであろう肩までしかないオレンジの上着とチェック柄の服を着ている紘汰と白いTシャツに身を包んだ舞。
尊厳な存在ってよりも対等であろうとしているようにも見える。
アルトにも見覚えがあった。
これはまだ、彼らが“人間”であった頃の姿と。
「さて早速だが、この周辺には特にこれといって気配はない。今なら話せるな」
ジンバーピーチという聴力を強化する形態になってまで探ったらしく、それでも気配がなければこの惑星から離れてると見ていいだろう。
話す時間くらいはあると判断してか、情報交換が始まった。
「まずアルトはアイツを、あの鎧を知ってるか?」
「いや。もう片方のライオンは知っている」
「どんなやつか分かるか? あの感じからしてベルトの力だと思うんだけど……」
「あれはマギア。悪意によって暴走する……怪人だ。中身は恐らく……ただの機械で自我はない」
「機械……。ロボットの暴走……みたいなものなのね」
「ああ……ただあれは……人間の悪意によって生み出されたものだ。人類を滅ぼすために。俺はそれを……あれを知ってる気がする……」
記憶には当然の如くない。
しかし知らないのに、頭の中で“マギア”という単語が浮かぶだろうか。
もしかしたら自分は知らないだけでアレを知るような場所にいたのでは、と考えたが分からないものは分からない。
「人間の悪意……か」
「……あの甲冑は?」
「アレはオーバーロードだろうな」
「ええ、間違いないわ。植物を操る力を持っていた上に、あれほどの実力があったもの」
「フェムシンムの生き残りかどうかまでは分からないが……この惑星に来たことから狙いは間違いなく、黄金の果実だ」
「あんたたちが持つ、知恵の実か」
神に等しい、いや神そのものの力を発揮出来る究極の力を持つ果実。
確かにアルトでも単語のひとつで聞き取ったのはその一つだけだ。
間違いないだろう。
「そうだ。だけど……黒幕は別に居ると俺は思う」
「……何故だ?」
「あのマギアってのは唐突に現れたんだろ? であるなら生み出したナニカがいるはずだ。現にここにはアルトがいる」
「……俺?」
「異なる世界に存在するはずのアルトがここにいて、アルトが知る敵が現れた。そして俺にアルトを頼んだ存在――それから考えたらどうしてもな」
「…………」
確かにオーバーロードならまだしも、マギアがここを襲う理由はない。
しかもアルトが必殺技を発動した、隙だらけになる絶好のタイミングを狙ってきた。
紘汰が言う存在は分からないが、言い方的に敵ではないだろう。
「……正体不明の敵か」
「そうなるな……なに、大丈夫さ」
「何を根拠に……俺は――」
あのオーバーロードにすら負けた、と言おうとして、口を籠らせた。
紘汰一人であるならば勝てるかもしれない。
黒幕はどうであれ、オーバーロードを相手に有利に立ち回っていたのだ。
歯が立たなかったアルトと違って。
「言っただろ? 俺は1人じゃない。ここには舞もいるし、アルトもいる。人はひとりじゃ出来ないこともたくさんあるさ。俺だって完璧じゃない。間違えることだってあるし……今までもたくさん間違えてきた。だけどそれでいいんだ」
「ひとりじゃ出来ないことでもそこに誰かがいれば、共に立ち向かう誰かがいれば例え困難な道であろうと乗り越えることが出来る。互いを理解し合い、手を取り合えば必ず道は開くと俺は信じてるんだ」
「共に立ち向かう、誰か……」
「だから俺は心配してないよ。むしろ頼りにしてるぜ、アルト!」
そう言って紘汰は郎やかに笑いながらアルトの肩を叩いた。
例え神という存在になろうと、完璧であろうとしていない。
神だって間違えることはある。
であるならば人なんてもっと間違えるだろう。
だからこそ、共に居る誰かが居れば間違えずに済む。困難なことであろうと共に立ち向かうことが出来る。
「全く紘汰は……。ねぇ、アルト」
見慣れた舞は何処か呆れつつも口角は上がっていて、アルトに声を掛けた。
「アルトは自分で思ってるより強いのよ」
「俺が……強い?」
「そう、何故なら貴方は立ち向かったもの。どんな理由であれ、本当に弱い人間は誰かの危機に誰かのために立ち向かうことなんて出来やしない。それも自分の命が関われば、よりね」
「…………」
そう、アルトには変身する力はなかった。
変身出来る力を再び手にしたのは立ち向かった直後の話。
変身する力がなくても体1つで食らいついたアルトを、誰が弱いと言えるだろうか。
力がなくても守ろうとしたアルトを弱いと言える者がいるだろうか。
居ないだろう。
そしてアルトは勝てない相手にも立ち向かい続け、負けてなお足掻いていた。
本当に弱い人間には、それが出来ない。
ヒーローの条件とは、“逃げない”ことである。
例え撤退するようなことがあろうと、本当の意味で逃げることはしない。
立ち向かい、足掻いてもがき続けるのがヒーローなのだ。
守るべきものを、守るために。
「紘汰……舞……」
まだ会ったばかりだというのに、二人は既にアルトを大切な仲間と見てくれている。
既に背中を預けるに値すると、信頼までしてくれていた。
葛葉紘汰の人生を見たら分かるものだ。
彼は決して
最初は偶然拾っただけの変身する力。
次々に与えられた力。紘汰はたまたま力を手にしただけの普通の人間だった。ただ“変身”することに憧れを抱く、大人のような子供。
闘いから降りる機会は何度もあった。現に降りてしまったこともある。
だが紘汰は迷いながらも、人を守りたいという一心で世界最強の力を欠片を手にした。たとえその先に得られるものが、賞賛でなく、大切な人達との絆を全て断ち切られるという地獄であっても。拒み、忌み嫌われることになろうとも。
紘汰は誰に唆されるでもなく、自分の意思で大切な人達が生き残る世界を選んだ。生きていて欲しい人達を守り抜くことを選んだ。
舞もまた、諦めずに運命に抗い、なにより信じ続けてきた。周囲の圧に屈せず、在り方を曲げることなく自己を貫き通す意思の強さ。紘汰たちとは違う、心の強さを持つ者。
そうして彼らは人から、全知全能の力を得て神へと至った。
その全てが、今のアルトには無いものだ。
否、彼が持つものとは“仮面ライダーの力”以外に何があるのだろうか。
分からない。
分からないが、生きる目的を探すために生きる必要がある。
そのためにはアルトは、彼のように。彼らのように
「……俺も、前に進む」
「……ああ。それがいい。今のアルトなら進めるだろうさ」
「そうね、いい顔になってる」
感情が表には出ていないものの、覚悟というものを垣間見た紘汰と舞は、
そうして空気が和やかになる中――
突如として、轟音が響いた。
空気が変化し、戦士の顔へと変化した紘汰が立ち上がると、アルトもまた立ち上がった。
互いの視線が交差し、頷くと紘汰もアルトも舞も、全員が外に出た。
迷いなく走る二人の後をアルトが追うと、暫く走ったあとは先程の泉の近くだった。
「これは……」
「どうやら向こうは準備を整えてきたらしい」
そこに居るのは、鎧に身を包んだオーバーロード。
しかしその姿は以前と違い、甲冑がより分厚く強固になっている他、白銀ではなく黒が入り交じっている。
さらに周囲には数百は居るのでは、というほどに無数のトリロバイトマギアと――葛葉紘汰の記憶の中で見た、インベス。
紘汰の険しい顔からヘルヘイム産のインベスではないようだ。ヘルヘイム産のインベスであるならば黄金の果実を持つ紘汰の支配下に置けないわけがない。
メガヘクスがそうであったように、複製されたと見るべきか。
「舞」
「ええ、二人とも気をつけて」
『ピィー?』
「……分かってる。舞、こいつを頼んだ」
頭の上で首を傾げる鳥を舞に預け、舞が身を隠すのを確認した二人は改めて敵に向き合うと、互いに『変身』するために戦極ドライバーとゼロワンドライバーを取り出すと腰に宛てがう。
『ゼロワンドライバー!』
装着されたベルトからそれぞれのベルト帯が巻き付き、固定される。
一方でアルトはゼロワンドライバーに搭載された機能のひとつとして衛星ゼアと無線接続され、人工知能に匹敵する演算速度を持つヒューマンマシンインタフェースが構築される。
『ガウゴシュシェジョショ』
だからといって言語が理解出来るはずがない。
はず、なのだが。
『
分からないはずのオーバーロードの言葉を、アルトは即座に
「目的は……俺たちらしい」
「分かるのか?」
「なんとなく」
「そうか……けどコイツらも分かり合うことが出来るような存在じゃないみたいだな!」
変身を待つことなく、インベスとトリロバイトマギアが襲いかかってくる。
分かれるように避けるとトリロバイトの銃弾をアルトは予測して避け、紘汰は襲いかかってきたインベスに飛び蹴りを食らわせると、相手の体格を利用してバク宙。
銃弾を回避して着地すると、インベスをトリロバイトの方へ蹴り飛ばす。
アルトに関してはトリロバイトの攻撃を利用し、トリロバイト同士が銃弾で撃ち抜かれていた。
しかし羽根を生やしたインベスが迫り、アルトは咄嗟に防御の体勢へと入り――体を丸くした。
その瞬間、駆けてきていた紘汰がアルトの背に手を着き、空中から襲いかかってきたインベスを蹴り落とす。
即座にアルトが腕を引き、トリロバイトのナイフが空振るとアルトが後ろ回し蹴りで蹴り飛ばしていた。
「行くぞ、アルト!」
「ああ」
距離を離した隙を逃す二人ではない。
紘汰はオレンジのロックシードを。
アルトはシャイニングホッパープログライズキーを。
互いに起動させる。
『オレンジ!』
『シャイニングジャンプ!』
『オーソライズ!』
アルトが右腕を上空に掲げるとプログライズキーが発光し、円形のゲートが出現する。
施錠された南京錠を解錠するように手首を曲げると横から縦に鍵穴が動き、同時に模様が動いてロックが外されたかのようにゲートが開かれる。
残った中央に小さな光が縮小化し、次にバッタの模様が浮かび上がって大きくなっていくとゲートから輝く大きなバッタのライダモデル『シャイニングホッパー』がオンブバッタのように小さな別のバッタのライダモデルを背に乗せて現れる。
「ぉおおらっ!」
一方で紘汰は体を左右に大きく振った後に右腕を上にあげ、ドライバーに装着するとロックシードをロックするように叩いた。
『ロックオン!』
開かれたクラックの中から丸まったオレンジの鎧が紘汰の頭上に展開される。
和風とほら貝の待機音が流れる戦極ドライバーと重低音のゼロワンドライバーの待機音が場を支配する中で、シャイニングホッパーは喜びに満ちたように周囲をぴょんぴょん跳んで、それが相手の牽制になっていた。
主人であるアルトを守ってくれたからか、それとも今までの行動を知っているのか感謝を示すように紘汰に伏すと、紘汰は目を丸くしたあとに笑いかけた。
「おおっ、バッタか! なんつーか1号を思い出すな! ははっ、そうか。よろしくな!」
流石神様と言うべきか、データから生まれた存在と言葉を交わしたらしい。
やっぱりこのバッタは意思があるんじゃないかとアルトは思ったものの、準備は万端。
令和から、
「変身」
「変身!」
プログライズキーを挿し込み、カッティングブレードが同時に降ろされる。
『プログライズ!』
『ソイヤッ!!』
『The rider kick increases the power by adding to brightness』
アルトは右手で左から右に向けて振るうと自らシャイニングホッパーが飛び込み、データネットが二体のバッタを捕まえる。
そのネットにアルトの肉体が背後から包まれると筋肉質な真っ暗な素体の姿に変わった。
黒いスーツに赤いラインが走り、顔は機械の顔が透けて見えて機械人間という印象を抱かせる。
そして頭からオレンジを被った紘汰の肉体は鎖帷子を彷彿とさせる紺色の素体に変化し、両腕には雲のような籠手の鎧と足には編み込まれた装甲が鳥の翼を模して備わっている。
『シャイニングホッパー! 』
『オレンジアームズ!』
さらに発せられた音声とともに、ゼロワンの体に金色のラインが走り、胸部と両肩には蛍光イエローのバッタの脚を思わせる意匠が施され、目の部分にも同じような蛍光イエローの触角が脚のように折りたたまれて装甲のようにくっつく。
それにより、機械だった顔はバッタを思わせる姿へと変化を遂げる。
対して鎧武の方はというと、被っていたオレンジのアーマーが展開。
『When I shine,darkness fades.』』
『花道・オンステージ!』
鎧となり、変身アイテム同様オレンジそのものを思わせる鎧を纏う。
兜の前立てにあたる金色のフロントブレードは兜を象徴するものだろう。
変身の際に果汁を撒き散らしていたが、オレンジの意匠を持つ戦国風の鎧を身に着けた鎧武の姿と、金色のラインがあり、黒をメインに蛍光イエローが入っているシンプルな姿に“変身”したゼロワンの姿があった。
『ここからは――俺たちのステージだ!』
オレンジを輪切りにしたような武器、大橙丸を肩に背負いながら鎧武が力強く宣言し、ゼロワンはアタッシュカリバーを取り出して敵を見据えていた。
風が吹く。
そして。
『……!』
『ハアッ!!』
ゼロワンが高速で接近し、オーバーロードに斬りかかった。
そんなゼロワンを援護するように腰から引き抜いた無双セイバーから銃弾を放って集おうとしていたインベスやトリロバイトを狙うと、次々と斬り捨てながら中心へと乗り込む。
『――
『!!
異なる言語ではなく、全く同じ言語にオーバーロードが反応する。
数時間前まで言葉が通じなかったのだから、驚くのも無理はない。
『デュエシェンム』
デュエシェンム。
そう名乗った。
鍔迫り合いをしながら、今度は名前を聞いているような気がして、ゼロワンもまた名乗った。
『ゼロワン。仮面ライダーゼロワン』
『
『
両手剣が引かれ、前のめりになるゼロワンの腹部に添えられた剣がゼロワンを吹き飛ばした。
転がるゼロワンに対し、発光したデュエシェンムは先回りし、剣を叩きつける。
咄嗟にアタッシュモードに切り替えたゼロワンは直撃を免れたものの、両腕に響く衝撃にアタッシュカリバーを落とす。
剣を持ち替え、再び突き刺そうとする前にゼロワンの瞳が赤く発光した。
行動パターンの出現。
どれもこれも反撃に繋がるものであり、デュオシェンムは地面に剣を突き刺す。
それだけで一帯が消し飛んだ。
ゼロワンは逆予測により生み出した攻撃ではなく逃走の行動パターンで抜け出している。
何とか距離を離して地面に着地するが、アルトの肉体に多大な負荷が掛かっている。
数時間前より早く、シャイニングホッパーが出せる限界出力を既に超えている。
相手が強くなった、証拠。
それほどの強敵。
『ハアッ!』
ゼロワンが声に反応して視線を向けると、鎧武は発光した大橙丸がカットしたフルーツのような斬撃が周囲を薙ぎ払っており、新たなロックシードを取り出していた。
『スイカ!』
攻撃を中断した鎧武に襲いかかろうとしていたトリロバイトが外れた際のオレンジの果汁に吹き飛ばされ、頭上には超巨大なスイカ玉。
躊躇しかねない大きさだが、鎧武は躊躇することなくアーマーチェンジする。
『ロックオン!』
『ソイヤッ!』
スイカが落下し、そこには巨大なスイカ玉だけが残った。
一見自滅にしか見えず、インベスたちも近づいてはぺちぺち叩く。
そして。
『スイカアームズ!』
『大玉・ビッグバン!』
回転したスイカが周囲のインベスやトリロバイトを轢くと、それだけで爆散する。
そこにやってきたのは龍そのものの見た目をしたセイリュウインベス。
『ヨロイモード!』
スイカから展開され、アームズの如く鎧を纏った鎧武が巨大な薙刀であるスイカ双刃刀を手にセイリュウインベスとぶつかりあった。
炎を吐くセイリュウインベスの炎をものとせず、一閃。
『ジャイロモード!』
装甲に組み込まれたバーニアが両肩に展開し、空中を飛行すると両手指先のバルカン砲で地上の敵を殲滅すると、スイカから抜け出す。
ちょうど再びゼロワンが行動パターンを出している時で、左右から展開した行動パターンではなく、正面から蹴りかかっている。
デュエシェンムは蹴りを受け止め、足を掴んで地面に叩きつけていた。
叩きつけられた際に体が浮き、足を上げて攻撃を加えながら回転することで体勢を整えたゼロワンが動くより早く、剣から放たれた光がゼロワンを弾き飛ばした。
そんなゼロワンをオレンジアームズに戻っている鎧武が受け止め、地面に着地した。
『大丈夫か?』
『……問題ない。あとはお前だけだ、デュエシェンム』
『…………』
並び立つゼロワンと鎧武に対し、配下は誰もいない。
どれだけ数を揃えたとて、歴戦の戦士たる鎧武に大した実力もない者が集まろうが大した時間稼ぎにもならない。
それを分かっているはずなのに、わざわざそうした。
何か狙いがある、と鎧武が警戒していた。
『
白銀の光が剣に集い、それを空中に放ると無数の小刀が落ちてくる。
薙刀にして回転させ、小刀を弾く鎧武と違ってゼロワンは高速移動で避け、アタッシュカリバーを転がるように回収するとデュエシェンムに体を向ける。
小刀から極小のレーザーが放たれ、その場でバク宙することで避けたゼロワンは手を地面に着きながら、行動パターンを出現させて次々と避けていく。
『……! 待て、アルト!』
『Progrise key confirmed. Ready to utilize.』
あからさまな分散に気づいた鎧武が止めようとするが、次々と放たれるビームを斬り捨ててる間にゼロワンがアタッシュカリバーにシャイニングホッパープログライズキーを挿入していた。
ライトゴールドの光が刀身に纏われ、残光を残しながら高速接近。
『シャイニングカバンストラッシュ!』
黄金の光と銀色の光がぶつかり合い、小規模の爆発が起きた。
すぐさまゼロワンが上空へ弾き飛ばされるように出てくる。
『アルト!』
『う、しろ……!』
『!?』
駆け寄ろうとする鎧武に声を上げ、鎧武は咄嗟に薙刀無双スライサーを背後に振るう。
金属音が響き、力負けする鎧武が僅かに弾かれ、返し刃に対して弾かれた勢いを利用して背後へ倒れた鎧武は反撃に手放した薙刀無双スライサーを蹴りつける。
瞬間。
デュエシェンムの姿が消えた。
鎧武の周囲に行動パターンを出現させ、ゼロワンが正面へ出現するのと同時に。
『CHARGE RISE!』
『FULL CHARGE!』
アタッシュカリバーが上空へ弾かれ、隙だらけとなったゼロワンに銀色の光が――
『オレンジスパーキング!』
カッティングブレードを三度倒した鎧武がオレンジを鎧に戻しながらゼロワンの前に躍り出て、鎧と剣が衝突し合う。
そしてまた消える。
『これは……!』
『……見えない』
ガラスに光と光が反射し続けてるかのように光の線だけが残る。
高速移動で対抗しようにも、ゼロワンのシャイニングホッパーですら追いつける速度ではなかった。
鎧武の歴戦の戦士としての勘が働き、ゼロワンを押すと二人の間に剣が振り下ろされていた。
しかしすぐに背後から斬られる感覚があり、鎧武とゼロワンは為す術もなく何度も斬られて倒れる。
『どうにかして動きを止めねえと……!』
このままでは形態を変えることもままならない。
するとゼロワンが突然立ち上がる。
『アルト?』
『ようやく……能力が分かった』
『本当か?』
『任せてくれ』
『わかった』
縦横無尽に光が走る。
攻撃を仕掛ける様子はなく。
『……ラーニング完了』
ゼロワンが、アルトの“予測”が終えた、数秒後。
海面の光が強く反射した、一瞬。
反応したゼロワンが両手刃を肩に叩きつけられ、片膝を着いていた。
『
しかしデュエシェンムが驚愕した様子を見せる。
何故ならゼロワンが肩から火花を散らしながらも、両手刃を両手で逃がさないように抱えていたからだ。
『
『っ……こ、うた……!』
剣が食い込む。
それでもなお、離す様子はなく。
鎧武は迷いなくアタッシュカリバーを手に取り、デュエシェンムの腹部に添える。
そして。
『オレンジスカッシュ!』
『カバンストラッシュ!!』
オレンジの力を纏ったイエローとオレンジの斬撃がデュエシェンムを吹き飛ばした。
解放されたゼロワンが倒れる前に鎧武が支える。
『アルト、よく分かったな』
『……あいつの性質は恐らく、光だ。一度……見たことが、ある。光と光の間を移動出来る……光の速度で』
『そういう事か……正体はアレってことだな』
鎧武の視線の先には、周囲に突き刺さっている小刀。
そして海面に反射する太陽。
次々と移っては移りを繰り返していたということだろう。
元々一度経験していたというのもあってアルトは見極めることができた。
『――
強い力の波動が土埃を巻き込む。
二人の視線の先には、両手剣を両手で握りしめたデュエシェンムが真っ直ぐに構えてるのが見えた。
剣先には光球が生み出されており、途方もない力を感じる。
『あぶねえ!』
『……!』
デュエシェンムが剣を突き出した瞬間、光のビームとも呼べるものが二人に襲いかかった。
ゼロワンの身を守るように前に躍り出た鎧武が身を呈し、あまりの威力にゼロワンは衝撃で軽く転がってしまう。
『っ……紘汰……』
『フン……
再び同じ動作に入った、その瞬間。
妙な違和感をゼロワンとデュエシェンムが感じた。
巻き起こった爆煙が、吹き荒れる――
『オォーッ!!』
それは旗。
旗印。混戦する戦場で敵味方を明確に区別し、同士討ちを防ぐためのもの。また、大将の居場所を知らせて軍を統率する、自軍の士気を高める、個人の武功をアピールして恩賞を得るといった意味合いで戦国の世にも用いられてきた、鎧武の紋章が入った旗。
『カチドキアームズ!』
勝鬨を上げよ。
今こそ勝利を、凱歌をここに。
出陣するのは、戦を駆け抜ける鎧武者。
『いざ出陣!』
『エイ、エイ、オオオオオオオッ!!』
周囲を鼓舞する叫び声を挙げながら、鎧武カチドキアームズが無傷で
その姿は、あまりに従来のものと掛け離れている。
三日月に加え、徳川家康所有・歯朶の葉前立てを思わせる兜飾り。前立てが4本あるのが目視できる。
上顎部分が大型化し、複眼も完全ではないながらもよりハッキリ分かれたものに。
何よりも最大の特徴は鎧に覆われた部分が多くなったこと。
全身から肩から腕までかけてのカチドキアーマーに下半身を覆うカチドキブロックによって重装甲の鎧と化している。
そして装甲中央部の「カチドキラング」には鎧武の紋章が描かれたコアが存在していた。
片手には火縄型のアームズウェポン、火縄大橙DJ銃がある。
『まだ行けるよな、アルト』
『……言うまでもない』
隣に並び立つゼロワンが地面を踏みしめる。
その瞬間。
大砲が放たれた。
剣で真っ二つにするデュエシェンムに対し、ほぼ同タイミングで接近したゼロワンが受け取っていたアタッシュカリバーで斬り裂く。
金属音が響き、強固な鎧に妨げられてるものの甲冑を掴んで頭突きをしていた。
それは流石に効いたのか互いに踏鞴を踏む中、その隙に鎧武が駆け抜けながら銃身のターンテーブルであるDJテーブルをスクラッチし、DJピッチと呼ばれる出力調整スイッチのツマミを中央に回すことでモードを切り替える。
さらに再びスクラッチした鎧武の火縄大橙DJ銃から散弾銃が近距離から放たれた。
火花が散り、突如背後から現れたゼロワンが飛び蹴りを食らわせ、再びスクラッチしてモードを切り替えた鎧武から大砲が放たれ、直撃直後にゼロワンのライダーキックが炸裂した。
『ぬぅうう……!』
再び小刀を放出するも、それらはマシンガンモードに切り替えた鎧武が消し去り、ゼロワンが握りしめた無双セイバーとアタッシュカリバーの二刀流で畳み掛ける。
二刀を持ってして両手剣を受け止め、流すように逸らすと遠心力を活かした二刀の剣が胸を斬り、無双セイバーを逆手持ちに切り替えて背後に突き刺すと背後から出現したデュエシェンムが直撃する。
『!?』
驚くデュエシェンムに対して、行動パターンを出現させたゼロワンが真横から現れ、その逆から現れたゼロワンをデュエシェンムはやはり剣をぶつける――直前。
瞳が赤く光ったゼロワンがさらに真横から出現してX字に斬り裂いた。
そこへ鎧武の大砲が吹き飛ばす。
『
『……俺は1人じゃない。1人では勝てなくても、紘汰がいる。だから俺は余計に負けられない』
『何より、俺を超えられるのはただ1人――』
『ロック・オン!』
『一、十、百、千、万、億、兆! 無量大数!』
鎧武がカチドキロックシードをコネクタースロットであるドライブベイに装填。
エネルギーが充填される最中、ゼロワンはベルトに突き刺さっているプログライズキーに手を添える。
『俺だ』
『行け、アルト!』
『カチドキチャージ!』
『シャイニングインパクト!』
カチドキのエネルギーが込められた砲撃を、さらにゼロワンが蹴り飛ばす。
橙色とライトゴールドが混じった輝きがデュエシェンムに向かう。
『――ミョシュイブリョミャファショ!!』
銀色の光球が放たれ、砲撃と光球が衝突し合い――光球が弾けた。
2人のライダーの力が込められた砲撃は勢いを無くすことなくデュエシェンムに直撃し、大爆発を引き起こした。
『……やったか?』
『いや、まだみたいだな』
必殺技を与えてなお、爆煙の中には無事なデュエシェンムの姿がある。
しかし剣を地面に突き刺し、甲冑にはヒビが入っている。
『ぬうぅ……』
片膝を着くデュエシェンムに歩いて近づいたゼロワンがアタッシュカリバーを向けた。
もう終わりだと、そういうように。
『……
『……何?』
『
何か意味深な発言をするデュエシェンムに理解出来ず、とにかくトドメを刺そうとゼロワンはシャイニングホッパープログライズキーをアタッシュカリバーへと――。
『……アルト? どうした?』
挿そうとしていたゼロワンの動きが完全停止し、そんなゼロワンの肩を鎧武が怪訝そうにしながら触れる。
『ぐっ……!?』
すると、カチドキアームズの重量を持ってしても鎧武が大きく弾かれた。
地面を転がり、鎧武が顔を上げたその先には――。
『う、ぐぅ……アァッ……!』
一瞬オーバーロードの力かと考えるが、どうにもそういうわけではない。
援軍。
否。
罠。
否。
『そういうことかよッ!!』
そして全力で駆け出す。
『アルトから離れやがれッ!!』
そうして、鎧武は拳を握り締めてゼロワンの背中を全力で殴った。
黒い瘴気が弾け飛び、その瘴気は狙いを変えたかのようにデュエシェンムへと飛んでいき、受け入れていた。
『ぐ、ぉおおおおおおお!!』
すぐにゼロワンを抱えて離れる鎧武はゼロワンの無事を確かめて、黒い瘴気を見つめる。
すると黒い瘴気に完全に覆われたデュエシェンムは黒い甲冑へと変化し、斬撃が放たれた。
『くっ!?』
斬撃を受け止める鎧武だが、カチドキアームズの装甲を持ってしてもダメージを受けて片膝を着く。
しかしカチドキの装甲のお陰かゼロワンの身は守られていた。
『紘汰……すまない』
『気にすんな。それより……』
『……あれ、は……なんだ?』
二人の視線には
思わず顔を覆ってしまうほどの風圧。
そうして闇から、何かが生まれる。
『――ブラッドオレンジ!』
『レモンエナジー!』
『まさか!?』
聞き覚えのある鎧武は驚愕した。
――かつて希望の魔法使いと仲間たちと共に、武神ライダーたちと共に討ち取った強敵が使っていた力。
『ロックオン!』
闇が弾ける。
途方もない悪意と力の波動に、それだけで二人の身が一気に吹き飛ばされる。
『ブラッドオレンジアームズ! 蛇の道・オンステージ!』
『ミックス!』
『ジンバーレモン! ハハーッ!』
それは葛葉紘汰が過去に策略にハマり、闇に染まった際に使用した闇の力。
全身が真っ黒になり、特徴である羽のような模様もなくなっているが、あの時と違って白銀から血に染まってるかのように真っ赤となっている。
その正体は。
『武神鎧武……!』
武神鎧武・ブラックジンバーレモン。
えーということで。
伸びる気もしないし書く気力が続くとは思えないので、続き書いてないので続きません。
中途半端ですがありがとうございました。
そのうち消す。