南雲原の勇者御一行様   作:ペンギンとクマ

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個人技選手権です。


第13話 ジェネシス計画の最終兵器

 いよいよ本日北陽学園の生徒が南雲原に来る……。

 この1週間、レギュラーの座を奪われないようにみんな練習していた……。

 

 そして、放課後グラウンドに集まっていると、どけと言わんばかりに北陽メンバーが集まって来た……。グラウンド使用、そしてスタメンを決めるために、空宮征が個人技選手権を提案する。個人技選手権か、ここでしっかりアピールできれば、スタメンの座を守ることができるな……。南雲原のみんながしっかりアピールできることを願う……。

 提案に下鶴監督も乗って来た。雲明が監督対決もしようと言う。

 

 雲明の元でサッカーして来たというのもあるからな……。試合メンバーを選ぶとなれば、南雲原メンバーになるのか……。東風異国館も迫っているというのに、互いにぶつかり合うだけの余裕はあるのかな……。下鶴監督も雲明もここで何か企んでいる気がする。

 

 

 

 夜になって、俺は喫茶タンクに入る。兵太がよく通っているらしいが入るのは初めてだ。師匠に場所を連絡して、入る。

 

「いらっしゃい‼︎」

 

 店主が出迎える。陽気な方みたいだ……。

 周りを見渡す……。あれ? 雲明と下鶴監督がいる! 何話しているんだろ? 個人技選手権か、東風異国館戦かな。どちらにせよ、今聞くのは止して席に着こう。

 

「注文は?」

 

「ぴかぴかじゅーすでお願いします。すみません。もう1人来るのでその人の注文後に持って来てください‼︎」

 

「あいよ」

 

 雲明たちは俺に気付いているのかな……。扉の開く音がした。俺は顔を上げた。俺の師匠、吉良ヒロトが俺に手を振った。俺も振り返す。

 

「久しぶりだね。元気してたかい?」

 

「はい。おかげさまで。師匠もお変わりないようで」

 

「注文は?」

 

「アイスコーヒーとビーフストロガノフで。光君も食べるでしょ?」

 

「いいんですか? ありがとうございます‼︎」

 

「じゃあ、ビーフストロガノフは2つでお願いします」

 

「あいよ。にしたって今日は珍しいねえ。最近はガキンチョの溜まり場なのに、ダンディな人が2人も来るなんてさ!」

 

 もう1人は下鶴監督のことだろう……。

 

「北陽学園の試合見たよ、すごい活躍だったじゃないか‼︎」

 

「ありがとうございます。師匠の前で流星ブレードを打つことができて良かったです‼︎」

 

「利き足とは逆で打ってもかなり威力が上がっているね。それに、相手キーパーの弱点を見抜いて、それを利用して3点取りに行くのは良い采配だったよ。3点目の技を最初使わなかったのは地面が湿っていたからだろ? 南雲原の監督もすごい采配をするものだ」

 

「そうですね。3点目を絶対に通したいから、1・2点目でタイミングをずらしたのは、振り返って見ても提案して良かったと思います」

 

「南雲原の監督はベンチにいる少年なんだろう?」

 

「えぇ。笹波雲明は病気でサッカーができなくなったって言ってました……。でも、それでも、何度ももがいてサッカーに向き合うことができたすごいやつなんです。そんな熱い子だから、背中を預けようって思えました。最初は南雲原にサッカー部がなくて、どうしようかと思いましたけど、結果的に良かったです‼︎笹波雲明に背中を預け合える仲間に出会えましたから」

 

「そっか……それは良かった……。君のお父さんに転勤を頼んだのは俺だし、光君は雷門にスカウトされてたのに断ったからね。罪悪感はあったんだ……」

 

「それで、引っ越し前に言っていた特訓の方はどうだい? 順調かな?」

 

「最初は化身アームド出すのも大変でしたが、今は全力で動いて15分保てるかなぁってところです。西ノ宮中との戦いで円堂ハルを見ましたが、化身アームド状態なら彼を越えていると思います」

 

「そうか……ただでさえ今は化身使いが希少となったからね。元々知られていない化身の次のステージ、化身アームドはもはや絶滅していると言っても過言ではない……おそらく少年サッカーでこの領域まで到達できているのは、光君だけだよ……」

 

 そう言ってもらえて嬉しい限りだ。

 化身アームドは松風天馬世代で出て来たもの。しかし、どちらかというと200年ぐらい後の人たちが使っていて、未来から侵略されて知ったというケースだ。侵略者のことを知らない人は化身アームドを知らない。俺は師匠に昔教えてもらえたから知っているだけだ……。だが、使っていて分かる。明らかに素の状態や化身を出している状態よりもパワーもスピードも上がっているのだ。

 

「まだまだ、長く使えるように精進します‼︎ところで、化身の話で聞きたいんですけど、デュプリってメリットあるんですか? やったことなくて、あんまりイメージが湧かないです……」

 

 デュプリも未来からの侵略によって分かった化身のテクニックの1つだ。何でも化身を使って分身を出すみたいだが、体力消耗が激しいらしい。人数不利を何とかするために使っていたのだとか……。メリットで良いものが思い浮かばないから、試したことがない……。多分あれ、分身をどう動かすかにも脳のリソースを割く必要があるんじゃないか……。実例にあるフェイやアスタという男はどうやっていたのか。未来人だから確かめようがない……。

 

「そうだな……俺も試したことはないけど、1人でゲームメイクする練習には使えるんじゃない? かなり負荷がかかるけど、選手全員の思考を理解してどう動いて行くか考えるには役立つと思うよ……」

 

「なるほど……対戦相手の動きを映像で見て、その動きをさせてシュミレーションはできますね……」

 

 言われてみると、シミュレーションには役に立つのかもしれない……。誰かに手伝ってもらう必要ないもんな……。

 

「それか、分身して合体技を使うとかかな。1人でやる分威力は落ちるし負荷がかかるだろうけどね」

 

 そっか1人でスーパーノヴァを打てるということか。

 

「似たような事例だと、分身して皇帝ペンギン2号を打つけど、それって1号じゃないかということですか……」

 

「概ねそうなるね」

 

「大会規定にはデュプリ使って良いか書かれてませんよね。いくら本人のパフォーマンスが下がるからといって、試合中に圧倒的な人数有利な状況になってしまうので、流石に使用は認められないですよね……」

 

 いくらでも出していいなら、22人でやりますとかになって、デュプリ11人でみんなでキョンシーできるようになるからな……。その間に俺たちが悠々、攻めることも守ることもできる。

 

「あぁ、認められないだろうな。あくまでも練習でだけだね……」

 

 となると、練習のための練習をすることになるなデュプリは……。できるようになれば、シミュレーションとしては役立てるだろうけど……。

 

「次は東風異国館でしょ? 準決勝の相手」

 

「はい。ほぼ全員外国人留学生とは聞いています。雷門との試合を見ましたけど、やはりフィジカルが強いですね」

 

「テクニックでも何とかできないほどのフィジカルがある学校だね。それでも、フィジカルに勝つにはタクティクスだからね。そこを対策しないといけない。彼らの映像を解析したんだけど、彼らは戦術がないから無駄に力を使い過ぎているんだ。だからね途中から弱点が出てくる……ほらこれを見てよ」

 

 無駄に力を使い過ぎている……か……。

 

「⁉︎後半、明らかに能力が下がっている……。体力切れ‼︎」

 

 つまり、この体力切れを早くさせるために防御に徹して、前半から動き回らせるかすれば……

 

「うちの勝機が見えて来ますね……」

 

 突然後ろから声が聞こえた。見たら雲明がいた。

 

「やぁ、君が南雲原の監督笹波雲明君だね。俺は吉良ヒロト。よろしく頼むよ。下鶴改監督も、久しいね。イナズマジャパンとネオジャパンの試合以来かな……」

 

「あぁ、噂はかねがね聞いていたが、こうして会うのは25年ぶりだ……」

 

「伝説のイナズマジャパンのFW、吉良ヒロトさんにお会いできて光栄です! 暁先輩とはどういったご関係なんですか?」

 

 雲明は気になる人の情報を家族構成なり家庭環境なりを調べ尽くすと、兵太から聞いたけど、俺のことは調べてないのか。知ってて聞いてる可能性もあるけど……。

 

「父さんが吉良財閥の経営する会社の社員なんだ。父さん忙しかったから、小さいころはお日さま園というところに預けられることもあってね。それで、師匠と出会ってサッカーを教えてもらうようになったんだ」

 

「なるほど、暁先輩が強くなったのは吉良さんから直接指導されていたからなんですか……」

 

「俺以外にも6人教えていたからね……。みんなストライカー像が違うから、光君をどういう風なサッカープレイヤーに育てるか喧嘩になったんだ……。それで光君がみんなから指導受けるって言い出してね。すごくきつかったと思うけど、乗り越えたんだよ」

 

「こうして、世代最強FWと呼ばれるようになったんですね……もしかして、その他の6人もすごい人たちなんですか?」

 

「え、あぁそうだね。地上最強イレブンの監督だった瞳子姉さん、ファイアードラゴンの 南雲晴矢、涼野風介、イナズマジャパンの緑川リュウジ、ネオジャパンキャプテンで現・聖堂山監督砂木沼治、ホーリーロード時代の雷門の優勝メンバー狩屋マサキっていうメンバーで各々好きに教えていたよ」

 

「なるほど、つまり暁先輩はエイリア学園の各チームキャプテンと対抗した雷門中の監督に教わった、25年越しのジェネシス計画の最終兵器という訳ですね」

 

 いや、まぁ確かに狩屋さん以外そうだけど……。師匠がエイリア学園のときの有名な方の名前を使わずに言ってその事実を濁したんだから……師匠恥ずかしくなってるよ……。黒歴史なんだから……。

 

「あ、あまり昔のことを掘り返すのは……ね。ま、まぁこのデータチームのみんなに見せて、役立ててよ」

 

「ありがとうございます。これを見て作戦を立てていきます‼︎」

 

「あれ? 雲明がそれを言うってことは、監督対決するって言っていたけど、実際は雲明がやるって話になったんですか?」

 

「いや、それはまだ秘密だ」

 

 下鶴監督に濁された……。

 

「そうでした、先輩。さっき、すごくこっちが恥ずかしくなることを言っていたので、東風異国館1点取ってください」

 

 ってことは、スタメン確定なの? 

 

 

 

 ──翌日──

 

 個人技選手権になったのだが、下鶴監督が選んだのは、俺たち南雲原メンバーだった。なるほど、お互いがお互いのチームのサッカーをやるということか……。相互理解のためには必要だな……。

 

 

 DFに入ろうとしたとき、監督に声をかけられる。

 

「今回はベンチにいてもらう。ジェネシス計画最終兵器としての実力を見せてほしいが、君はどちらが監督になったとしてもスタメンとして選ぶ……抜ける暁の代わりに最先、DFに入ってくれ」

 

 監督……その表現気に入ったのか……。

 

「はい! 分かりました」

 

 俺は眺めるだけか……。大人しく試合を見ることにする。個人技選手権だが、雲明に監督になってもらうには南雲原は負けないといけない。だが、スタメン落ちはしたくない……手は抜けないのだ。

 

 試合が始まる。

 

 早速北陽の面々が上がってくる。どうやらブロック・ザ・キーマンをするのはジークのようだ。DFにいるジークに使うとはなかなか攻めているな……。ホムラの方に友部仁が移動する。さて、彼女の実力はどうだろうか。

 

「オーバーグロウ」

 

 友部仁が仕掛ける。が、特に眩しがっている様子もなく……

 

「フレイムノヴァ」

 

 彼女の周囲に円状に炎が舞い、拡張していく……。ボールを奪う。

 

「ブレイズエンド」

 

 ボールが炎の剣となり回転して前に進む。騎士部登和が正面からくらって飛ばされる。

 

「零由さん‼︎」

 

 零由先輩にボールが渡る。

 

「イリュージョンボール」

 

「来夏さん‼︎」

 

 来夏までボールが繋がる……。だが、今の南雲原には問題がある。

 それは決定力だ。個人技選手権であり、連携技は禁止である。春雷が使えないので、正面で陣内伍兵から取れるメンバーがいない。いや、ジークがいるのだが……ブロック・ザ・キーマンで動けない。

 

「ぐるぐるシュート」

 

「グラビティデザート」

 

 止められた……。南雲原メンバーは技の強化とかも考えていく必要があるだろうな。

 

 それ以降もお互いがお互いのサッカーに混乱して、点を取れず膠着していた。だけど、いつもより楽しんでいるように見える……。監督の指示を見ながらどう動けば良いか自分で考える。どう攻略するか試行錯誤するのが楽しいもんな‼︎

 

 

 

 試合結果は0-0で引き分けだった。あれ? 引き分けだったらどうなるんだ……。

 

「みんな聞いてくれ。私は監督を辞任し、この学校を去る」

 

 北陽メンバーはみんな驚いていた。突然言われたらそうなるよな……。

 でもどちらも残っている状態だと、片方の意見だけ聞くみたいになって、チーム内での信頼構築ができない。信頼構築できないとなると、負けてしまう……。下鶴監督はこれからチームが勝つために去るのか……。

 

「この北陽・南雲原混成サッカー部の指揮は笹波雲明に一任する。笹波君お願いできるかな?」

 

「分かりました」

 

「難攻不落とも言われるフィジカルと個人技に長けた『東風異国館』……。それを倒すにはチームメンバーが理解し合い完全に1つとなったチームでしか成し得ない。だからこそこの試合で相手のことを学び自らの弱点を知る。このチームは北陽よりも戦術に長け、南雲原よりも結束が強いチームにならなければならない。いいなお前たち……全国に行けよ」

 

 下鶴監督の俺たちに向けた最後の言葉だ。そうだ……1つになるからには確実に全国への切符を手に入れないとな。

 

「監督、本当に行っちゃうんですか」

 

「ああ……世話になったな」

 

 空宮征が前に出てお辞儀する。

 

「監督! ありがとうございました」

 

 続けて北陽メンバーもお辞儀した。

 

「ありがとうございました!」

 

「……空宮、その涙は円堂ハルを倒したときに取っておけ。それと……笹波雲明!」

 

 嬉し涙は最後に……か。俺は雷門を倒したらどんな感情になるのだろうか、上手く想像できない……。

 

「!」

 

「チームを頼んだぞ……」

 

「はい……」

 

 下鶴監督は学校から去って行った……。

 

 

 ────

 

『ゴォ────ル‼︎ これで試合終了‼︎白恋中、予選決勝でも10-0と圧勝‼︎』

 

 予選決勝といえど、こんなものか……。

 

「もう行くの〜?」

 

「朱鞠、俺はもう行く……ここに残る理由もないからな……」

 

 待っていてくれ……。乙女仙次郎は必ず……。

 

 俺の往く道はこの道だ。

 

 交わることはない。

 




暁光
ジェネシス計画の最終兵器さん。好物は飲み物とボードゲーム。特に大好物はぴかぴかじゅーす。化身アームドの持続時間増加を目指す。デュプリ会得はスルーすることにした。噂に聞いたデュプリ出して同時にティラノとミキシマックスするセカンドステージチルドレンとんでもないなと思っている。7人の指導によって今の彼に至る。

吉良ヒロト
暁光の師匠。好物はビーフストロガノフ。暁光の引越し前に化身アームドについて教えて、修得するように課題を課した。そのときにエイリアボールも渡した。

笹波雲明
下鶴改と話しているときに暁から自分のことを言われて恥ずかしくなった。よって、1点取る刑に処す。暁光の指導者を聞き、あれこの名前ってよくよく考えたらエイリア学園じゃないと気付く。

下鶴改
みんなが1つになることを願いチームから去る。エイリア学園襲来の体験者なので、笹波雲明の言ったジェネシス計画の最終兵器という表現を気に入る。当事者だし、チームメイトだった杉森がエイリア石に飲まれているため、全然笑える話ではない。

謎の男
白恋中のストライカー……
乙女仙次郎を恨んでいるらしい。
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