南雲原の勇者御一行様   作:ペンギンとクマ

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特訓に入っていきますが……。



第14話 先輩って彼女いるんですか?

 個人技選手権の翌日、対東風異国館戦の作戦会議だ。フィジカルと個人技が強みである学校、春雷ではアウターワールドを破れないし、氷結の舞やグラビティデザートではチートブラスターを防げないという。各々の技の強化も必要だな。個人でのメニューが表示される。今までのメニューよりも更にキツくなっているか……。あれ? みんなところには15分間の全力疾走って書いてあるのに俺のところだけないな……。

 

「雲明、俺のとこだけ、全力疾走練習がないけど、どうしてだ?」

 

「いや、先輩毎日裏山で体力消耗が激しい状態で全力疾走やってるじゃないですか。こっちから指定しなくてももっとキツい特訓しているんで大丈夫です」

 

 あ、よく考えたらそうだった。毎日化身アームドして全力で動きながら、持続時間を延ばすためにやってるな……。最近は15分間持つようになったし、エイリアボールも問題なく蹴れるようになって来た。今左足でプレーしたら、普通のボールが軽くて威力が上がっているだろうな……。みんなにパスするときは右でやろ……。

 

「そうだ‼︎雲明君、北陽戦前に私と光君で必殺技を作ったんだ‼︎」

 

「分かりました。一度アウターワールドを破れるかどうかデータ取りましょう」

 

 来夏が雲明に提案する。春雷ができて、あの技を隠しておく必要も無くなったからね……。

 

 とはいえ、アウターワールド……。グラビティデザートとは違って動きが少ないから、後隙を狙うことはできないだろうな……。やるなら発動前……。

 

 

 ということで、グラウンドに出た。みんなも技を見るために集まってくる。

 

「では、お願いします」

 

「春雷よりもすごいのか?」

 

「行くよ‼︎光君‼︎」

 

「ああ」

 

 来夏がボールに回転をかけて蹴り込む。ボールが上がる高さは春雷よりも高い……。俺は飛び上がってオーバーヘッドで蹴る。

 

「「ヴォルカニックストーム」」

 

 来夏のキックで元々風が巻き起こっていた中に強烈な炎が加わり、辺りを灼き尽くすが如くゴールへと向かう……。

 

「これは絶対にアウターワールドを破れますね……」

 

「なんだ⁉︎今の」

 

「まるで火山が噴火したみたいな技じゃねぇか」

 

 チームメイトからの評判も良いみたいだ……。

 

「久々にやったけど、成功したな‼︎前やったときよりも回転していて威力も上がってるよ‼︎」

 

「やったー‼︎」

 

 来夏と俺はハイタッチする。

 

「東風異国館戦では、これで1点決めましょう。ですけど、春雷の粉塵効果は強いので、こちらの進化もお願いします」

 

「はーい‼︎」

 

「おう」

 

「では、それぞれのメニューを行ってください」

 

 雲明の号令で、みんながそれぞれの特訓を始めていく。

 

「暁先輩!!」

 

 祥子に声をかけられた。

 

「どうしたんだい?」

 

「あの……必殺技の練習に付き合ってください。もうちょっとで掴めそうなんです‼︎」

 

「あぁ、もちろんいいぜ」

 

 必殺技の練習を付き合うことになった。北陽戦前にも付き合ったが、そのときは完成できなかった。今度こそと意気込んでいる……。

 

「先輩、私サッカー部に海坊主の目撃情報があったから、サッカー部に入ったんです……」

 

 祥子がボールを持って、俺はディフェンスする。祥子が話し出した……。

 

「そうだったね……どんな理由でもサッカーやりたいって気持ちがあれば俺は歓迎するよ」

 

「そう言ってもらえると嬉しいです……」

 

 なぜか顔を赤らめている……。なんでだろう……。

 

「結局、海坊主は百道先輩でしたけど……」

 

 あれ気付いてしまったか……。まぁ特訓で堂々いるからな……。海坊主……。

 

「でも、動機が不純でしたけど……サッカーをやっていて楽しいって思うようになりました……」

 

「そうか……、それは良かったよ。キツい練習に取り組んで、息絶え絶えでも、楽しそうにやっているのを見て、俺は嬉しいんだ。誰かと一緒にサッカーを楽しめるって思うとな……」

 

 みんな真剣に取り組んでいるけど、楽しくやっているのだ……。ジークを除いて複数人でやるのが1年ぶりだったってのもあるのかもしれないけど、余計に俺も嬉しくなる。

 

「先輩……」

 

 また顔を赤らめている。

 

「行きます‼︎」

 

 祥子が突破しようと仕掛けてくる……。

 

「ブルートミュンスター」

 

 俺は横に飛ばされて、地面と口付けする……。

 

「先輩っ‼︎大丈夫ですか?」

 

 祥子が駆け寄ってくる。

 

「安心してほしい。大丈夫だ。必殺技が成功するかどうか見るには、やっぱり技をくらった方が良いからな……成功できて何よりだよ」

 

 俺はすぐに立ち上がってどこも問題ないと手振りで示す。

 

「ありがとうございます‼︎先輩のおかげで完成しました!!」

 

「技が完成できたのは、祥子の努力があったからこそさ。俺は完成したその瞬間に立ち会えて良かったよ」

 

「あの……」

 

「どうしたんだい?」

 

「必殺技が完成したついでに聞いてみたいことがあるんですけどいいですか?」

 

 俺に聞きたいこと……? 

 

「なんでもいいよ」

 

「あの……先輩って……」

 

 

 

 ────

 

 水分補給しよっ! あれ、ベンチに置いてなかったっけ? 

 

 あっそうだ部室においてるんだった‼︎

 

 私は部室まで取りに行く。

 

「あの……先輩って……」

 

 ん? この声は祥子だ……。思わず木陰に隠れる……。話している相手は光君だ。光君みんなから引っ張りだこだよなぁ。祥子、光君に何しようとしてるんだろ……。ま、まさか……告……白……、じゃ……ないよね? 

 

「ふふっ。木陰から覗いて何してるんですか? 来夏ちゃん」

 

 後ろからホムラちゃんに声をかけられた。微笑む姿はまさに聖母だ。

 

「あ、ホムラちゃん! なんか気になるじゃん、祥子が光君に何話そうとしているか……」

 

「普通にサッカーのことじゃないですか? みんなの必殺技の特訓によく付き合ってくれるって聞きましたよ。嫌な顔ひとつもしないで応じてくれるのもあってチームの中でも頼りやすいんですよ……きっと」

 

 やっぱりそうなのかな……。うちの北陽以外のサッカー経験者男性陣を考えてみる……。桜咲は熱いやつだけど見た目が厳ついし、柳生もちょっと違う……。ジークは親身になってくれるけど、発言が気になってしまう……。雲明君は、ぐさぐさ言葉で刺される。となると、自然と木曽路か光君になるんだよね。

 

「チームの女子陣は大体光君に聞くね。私も必殺技のアドバイスいっぱいしてくれたしなぁ」

 

「えぇ、きっとそうです! いつものことですし、ここでこそこそせずに、部室に行きましょう!」

 

「分かった! そうする!」

 

 そうだ……。必殺技の相談だ……。

 

「先輩は……彼女いるんですか?」

 

「え?」

 

 祥子の質問に思わず、また足を止めてしまう。

 え? それを聞いちゃう? 南雲原で禁断の質問とされているそれを……。

 光君は柳生や四川堂君に次ぐほどに入学当初からモテモテだった……。でもどちらかというと、あの2人よりも隠れファンが多いという感じだ。それは、光君が東京から引っ越して来たというのもある。大都会から田舎に来た男の子……。それだけでも眩しい存在なのに、あの金髪翠眼の美少年、自信家で爽やか、誰にでも優しいものだから、絶対に東京に彼女がいるって噂されている。同学年の女子は誰も聞かないのだ……。聞いたら、その恋心が叶わぬものと知ってしまうかもしれないから。光君も噂されているのは知っていそうだけど、何も言わないから、禁断の質問となっている。

 

 ジジジジ! 

 

 ん? なんか鳴ってる? 

 

「轟力降臨!」

 

極・雷神斬光剣(アルティメットライジングスラッシュ)

 

 ゴォ──ーン‼︎‼︎

 

 グラウンドの方で凄く大きな雷の音が聞こえた……。

 

 でも、光君まだ口を開いていなかった。良かった! あの音で聞き逃したかと思ったぁ。

 

「いるよ」

 

 ヘ? 今いるって言った? 

 

「あのぉ、大丈夫ですか? 来夏ちゃん……」

 

「え? あ、う、うん。大丈夫‼︎」

 

 ホムラちゃんに心配されて、とりあえず平気だと取り繕う。

 

「今、彼女いるって言ったね光君……」

 

「えぇ、確かに口にしていましたね」

 

 ホムラちゃんもそう言うってことは、幻じゃない……。

 

「ま、まぁ、水取りに行ってくるよ‼︎」

 

 明るく振る舞って部室に向かう。やっぱり前に部室で電話かかって来たときの、ジークが言っていた赤袖って子なのかなぁ。稲妻KFCでチームメイトだったみたいだし……。

 

「忍原先輩、どうかしたんですか?」

 

 雲明君に声をかけられた。表情に出ちゃってたかな? 

 

「ううん、何でもないよ。大丈夫‼︎」

 

 

「ここで、大丈夫って言う人大体大丈夫じゃないんだけどなぁ」

 

 雲明君の呟きは私には聞こえなかった。

 

 

 ────

 

 

「ジークも元々は FWなんだよな?」

 

 柳生に聞かれた。

 

「おう、そうやで。ワイが入ったときはもう FW2人おったし、足りてないDF行こか思ったからな」

 

「ジークの必殺技中々すごいんだぜ‼︎」

 

 空宮が話し出した。まぁ、ジュニアカップで何回も戦っとるからな。

 

「中々ってなんやねん。そこは最高にや」

 

「ほう、それは是非1度見てみたいものだな」

 

 品乃も話に入って来た‼︎

 

「ワイの奥義にビビってちびるなよ空宮」

 

「ちびらないよ! 何回も見たし」

 

「俺がキーパーをする」

 

 陣内がキーパーやってくれるそうや。陣内は位置に着いた。

 

「おおきに。ほな……」

 

 ジジジジ! 

 

「轟力降臨!」

 

極・雷神斬光剣(アルティメットライジングスラッシュ)

 

 ゴォ──ーン‼︎‼︎

 

 大きな雷鳴が鳴る。しばらく周りは静寂に包まれた。ええで、別にこの静けさも好きや、ワイは……。

 

「俺が何もできなかっただと……」

 

 陣内は悔しがっとるようや……。グラビティデザートのグの字も言わせず入れたさかいな。

 

「ほう、雷轟の名は伊達ではないようだ……」

 

 品乃が関心しとるな。

 

「いつ見てもすげぇや……」

 

「アウターワールド破れるんじゃねぇのかこれ」

 

「えぇセリフや。もっと言うてぇ。言うてぇ」

 

 またシーンとなった。

 

「なんや、リアクションそんだけかいな……ま、ええわ」

 

 東風異国館倒したいからなぁ。ワイも後半隙あったら点入れよか……

 

 にしても、忍原とホムラは木陰で何しとんのや。ま、ええわ。

 ワイらは練習を再開した……。

 

 

 

 

 ────

 

 

『おい、炎の輝公子。ちょっと話を聞いていけ!』

 

「ん? どうしたんだね? ウサギ」

 

「次の試合、あんたはどう見る?」

 

「どう見る……か。野生中は空を封じて、いつもの戦術でやっていけば問題なく勝てると思うが。不破は違うのか?」

 

「いや、俺も概ね同じだ。俺の世界からは抜けさせない……。炎の輝公子、たまに俺の世界を焼き尽くすのはやめてくれ……」

 

「む……。善処する」

 

『じゃあな。早く寝ろよ! 夜更かしは美容の敵だぞ』




暁光
彼女がいると答えた人。彼はこれから起こることに気付いていない……。

桃井祥子
クラスメイトが聞いてこいとうるさかったため、勇気を出して彼女がいるか聞いてみた。途中赤面していたのは、純粋に暁光の言葉が聞いていて恥ずかしかったから。

忍原来夏
暁光に恋心を抱いていたが、桃井祥子の質問の回答を聞いて失恋……。みんなには見せまいと思っているが、結構メンタルにきている。

縷楠冨理翔
シュート技をお披露目。彼の技が校内に轟く。

炎の輝公子
帝国学園の選手。たまに不破の世界を焼く。
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